ALSHARD ff Campaign Replay 巨大な柱を思われせる鈍色の建造物が、そこには3本建っていた。 天を貫かんと雲間まで積み上げられたそれらは、まるで天界へ憧れる3匹の蛇が我先にと空へ昇るようですらあった。 ――帝都グラズヘイム。 3つの積層都市が寄り集まった真帝国の首都は、その圧倒的な存在感を訪れる者に与え、もし都市へと足を踏み入れれば、世界屈指のカバラ技術で整備された人類の英知と恩威を知る事となる。 その積層都市の最上層である教会ブロックをエレベーターに乗って移動すること数分、帝都であるにもかかわらずその部屋の周囲は仰々しい程の警備体制が敷かれていた。 「……よって積層都市ヨハネの、いや母体との区別をつけるためヨハネ=パトモスと呼ばせてもらいますが、その建造は機械神ゼウス=エクス=マキナの定める運命(プラーン)第一段階であると共に、この混迷期を脱する唯一無二の計画だと考え――」 「馬鹿な! 貴公が憶測で進めている計画を、我等が神の運命と呼ぶとは!」 「ガラール卿に対して馬鹿とはなんだ。貴公こそ枢機卿の名に恥じない結果を出してみたらどうだ?」 「なんだと!?」 部屋には円卓が置かれ、それを15の椅子が囲んでいる。空席は1つだけであり、残りの席には白を基調としたマントに身を包んだ真帝国を動かす14人の枢機卿達が一同に会していた。 議題は『世紀末へ向け遅々として進まない西方地域への救済活動の原因と対策』――彼らにとっては救済だが、される方から見れば真帝国による世界制服の遅延を議題にしているのだ。 会議は表向き平静であったが、その机下では明らかな派閥同士の争いが行われていた。 空席の右に座り教会組織の全てを統合運営する権限を持つ聖務枢機卿アルフレッド、空席の左に座り真帝国軍を統括管理する権限を持つ軍務枢機卿マクシミリアン、会議室の円卓は両陣営を見えない線で2つに分けているようであった。 「諸君、少し落ち着きたまえ」 威厳有る低音が会議室に響き、髭を生やしモノクル(片眼鏡)をかけた壮年の男――軍務枢機卿マクシミリアン――が場を鎮める。紛糾したきっかけを作ったガラール卿が目礼し、会議は再び冷静さを取り戻し淡々と進み始めた。 お決まりの社交辞令で会議が終わってから数日後。 レオニード・ガラール枢機卿はグラズヘイム内にある邸宅へと帰宅すると、使用人達に指示を出しつつ自らの唯一の家族の元へと足を運ぶ。 『アルベルト』と拙いならが丁寧な字で手書きされたプレートがはめられた扉をノックすると、内側から扉が開かれ、愛らしい少年の声が出迎える。 「お父様!?」 そこには、今は亡き妻との間に出来た一粒種、今年で8歳になる1人息子 ――アルベルトが笑顔で待っていた。 MIDGALD MILLENNIUM PHASE−01「少年時代」◆キャラクター作成◆ GM:では、これよりアルシャードffキャンペーン『ミッドガルド・ミレニアム』を始めようとかと思います!一同:『お〜〜!!』 GM:とはいえ、とりあえずは世界観の説明やキャラクター作成をアルベルト相手に行うので、他のPLは自己紹介をするまで勝手に1人で作っていて下さい(アルシャードを知っている読者の方も、自己紹介まで読み飛ばしてもらって構いません)。 ディアン:先生! 俺もあんまりやった事ないから解らないんだけど……。 GM:お前もか……OK、じゃあ2人に説明しながらキャラクターを作ろう。 アルベルト:まずはアルシャードの説明をお願いします。
※解説1 「アルシャードff」
アルベルト:ファンタジーですか?こういった解説において、今回プレイするアルシャードff(フォルティッシモ)の説明を補助的に入れていきたいと思う。まずアルシャードとはラグナロクと呼ばれる戦いで神々が滅びた世界"ミッドガルド"を舞台に、プレイヤー達は滅びた"神の欠片(シャード)"に選ばれた者"探索者(クエスター)"となって、理想郷アスガルドを求めて大冒険を繰り広げるTRPGである。 GM:スタンダードファンタジーと呼ばれています。世界観としては中世ヨーロッパの牧歌的な村や自然を想い浮べてくれればいい。ただ、世界の7割を支配している真帝国と呼ばれる国があるのだけど、その国ではカバラと呼ばれる機械技術が発達していて、主要都市や軍隊は飛行戦艦やバイクなど現代的な産物も使っています。 ディアン:じゃあ普通の民家は素朴な作りだけど、その真帝国の主要都市ならビルが建ってるの? GM:まさにその通り! ディアン:か、格差あるなぁ(笑) GM:ではキャラクター作成の前に今日のセッションの予告を読み上げます―― 今回予告―― 辺境の村バーラル。 そこは真帝国の脅威も無く、またクリーチャーに襲われる事も無い、まさに平和な田舎の村だった。 しかし、人々は知らなかった。世界は虚無に侵食されつつあったことに……。 今、平和な村に奈落の影が落ち始める。 ミッドガルド・ミレニアム 第1話『少年時代』 神話の欠片が、キミを待っている。 ディアン:このバーラルって村に危機が迫るって話か。 GM:簡単に言ってそうですね。ではキャラクターを作成するうえで、まずはクラスを選らんで下さい。
※解説2 「クラス」
アルベルト:イメージで選んで良いのですか?クラスには、戦士たるファイター、回復魔法を使うホワイトメイジ、攻撃魔法を使うブラックマジシャン、盗賊のスカウト、と言った馴染みのものから、放浪者ヴァグランツ、アカデミーの卒業生で魔導の先達者ヴィザード、企業に仕えしエージェント、精霊と契約せしエレメンタラー、武士道を極めしサムライ、砂漠の民ジャーヘッド、賞金稼ぎや遺跡荒らしのハンター、パンツァーと呼ばれる移動装甲二輪に跨るパンツァーリッター、永劫を生きる巨人族アルフ、神が作りし戦闘機械ヴァルキリー等があり、PCは最低3つのクラスを組み合わせることで作成される。 GM:構いませんよ? ゲーム的なバランスは後ろでセコセコ作っている2人が考えるでしょうから、主人公2人はイメージ優先で作っていいです。 ディアン:じゃあファイター入れよう、それとパンツァーリッターかな? バイク乗るのはカッコイイ。 アルベルト:僕はエレメンタラーと、あとは……やっぱファイターは入れたいなぁ……。 ディアン:GM? これって3つ選ぶの? ファイターを重ねるのは? GM:有りです。ファイター×3とかも可能です。 ディアン:ならパンツァーリッター×2、ファイターにする。 アルベルト:僕はエレメンタラー、ファイター×2。 GM:見事なまでに攻撃的な……――
その後、クラスにより決まった能力値を算出し、クラスごとの特技(特殊能力・魔法・技術・特殊装備など)を取得。剣や鎧などの初期装備を決定する。
ディアン:ハルバードとランスと……全部パンツァーに収納かな?(笑)アルベルト:この加護って言うのは? GM:ふむ。キミ達が選んだクラスには、それぞれ滅んだ神々の力、シャードの加護が備わっているんだ。キミ達はその3つの力をその身に宿していて、1セッション中にそれぞれ1度だけ加護の力を使える。 アルベルト:神様の力を使えるって事? GM:そうです。ダメージを一瞬だけ上昇させたり、人を生き返らせたり……もちろん効果は加護の種類によるけどね。 ディアン:――とりあえず全部データは写した。 GM:OK、では次はパーソナルデータを決めるんだけど……先に2人言って置かないといけない事があります。 2人:『???』 GM:ごほん、今回のお話はキャンペーンのプロローグであり、本編の8年前からスタートします。アルベルトとディアンは今日のセッションではまだ一般人です。 アルベルト:つまり? GM:せっかく作ったキャラクターデータを今日は使いません。 ディアン:なんだよそれ(笑) アルベルト:せっかく作ったのにー。 GM:本編を盛り上げる為にも、今日はじっくりキャラクターの過去をプレイして下さい(笑) 次回からはちゃんとそのデータを使ったセッションなので安心を。 ディアン:まぁ解った。 アルベルト:今日は少年時代を楽しみます(笑) GM:はい、前向きで宜しい(笑) ではシャードの形状や色と、8年後を踏まえたパーソナルデータを決めましょう。 ◆自己紹介◆ アルベルト・ガラール(ファイター/ファイター/エレメンタラー)GM:それではキャラクター作成も終ったので自己紹介をお願いします。 アルベルト:はい。名前はアルベルト・ガラール。本編は16歳で行きたいので今日は8歳でやります。緑の瞳に、白い肌、髪は灰金(アッシュブロンド)色です。 ディアン:なんか良い所のお坊ちゃんな容姿だ。 アルベルト:良い所のお坊ちゃんですよ? ライフパスの出自が[芸術家]で、邂逅が銀十字軍隊長のヴィルヘイム・グーデリアンへ[慕情]だったので、帝国軍に入るのが夢な帝国貴族の子です。 GM:なるほど、ならばキミは真帝国の枢機卿の1人息子というのでどうだろう? アルベルト:枢機卿って偉いのですか? GM:真帝国で3番目の地位だ。1位は皇帝、2位は聖務枢機卿と軍務枢機卿、そして3位が残り12人の枢機卿。 ディアン:それって凄い偉いじゃん!? アルベルト:超良いとこのお坊ちゃん(笑) GM:境遇は何になった? アルベルト:[秘密]です。いつか世界の秘密の一端を垣間見て、真実の探求をするようになるみたいです……が、それは8年後の話。 GM:まぁそれは追々やって行きましょう。 アルベルト:一人称は"僕"の少年、いつも一緒なのは毛並みの良い犬のシグルド。ちなみにメスです。 GM:了解、本当にお坊ちゃんだ。 ディアン・ノースウィンド(ファイター/パンツァーリッター/パンツァーリッター) GM:次はダブル主人公の片割れ、どうぞ。 ディアン:名前はディアン・ノースウィンド。黒髪にブルーの瞳、少し浅黒い肌をしているけど、それは毎日外を駆け回って遊んでいるから。今は9歳の田舎少年だ! アルベルト:田舎って何?(笑) ディアン:馬鹿にすんなよ? 出自は[指導者]だから親はバーラル村の村長だ(笑) いや、村長は老人のイメージだから孫って事にしよう。両親は死んだ(笑) GM:まぁそこは問題無い。ただ、こっちから1つ設定を追加して良いかな? ナンナという今回登場するキーNPCをキミのお姉さんにしていいかい? ディアン:問題無いよ。じゃあ10歳ぐらい年の離れたお姉さんがいる。 アルベルト:邂逅は何を振ったの? ディアン:反帝国組織プリムローズの象徴的存在、ソフィー・ウィルマーに[幼子]らしい。8年後はレジスタンスに加担してそう(笑) アルベルト:せっかく友達になるのに! ディアン:仕方ないさ。俺はいつか売られるんだ……なんせ境遇で[売買]を振ってしまったからな。温室育ちのお前とは違うんだ(笑) GM:では2人にはセッション中に村で邂逅してもらいますが、共通するのは2人とも同年代の友達がいないって事で。 アルベルト:いないの? GM:その方が盛り上がるでしょう(笑) バーラル村に子供はディアンしかいなくって、アルベルトは枢機卿の息子だし同レベルの子がいなかった……って事で。 2人:『りょ〜か〜い』 ヒューベロンド(ファイター/ホワイトメイジ/パンツァーリッター) GM:続いて3人目のPC。ちゃっちゃと作っていた人その1、どうぞ。2人には今回……ガラール枢機卿の凄腕の護衛って設定でいきます。 アルベルト:僕のお父様の? GM:そうです。真帝国軍人で階級は大尉。まぁキャンペーンの正規PCではなく、今回限りのキャラだと思うのでその設定で宜しく。 ヒューベロンド:わかった。……よしOK、じゃあ自己紹介をしよう。俺の名前はヒューベロンド、枢機卿の身辺警護役である軍人だ。茶色の眼に茶色の髪、現在24歳の青年…8年後には32歳だ(笑) ディアン:おじさんになるんだ(笑) ヒューベロンド:まぁ登場は今回限りの可能性も高いが……その分、データバランスは取った。 GM:攻撃の≪トール≫に復活の≪イドゥン≫、確かにパーティーのバランスを取りましたね……でもなぜパンツァーリッター? ヒューベロンド:それはディアンの将来を見越してさ。その辺はセッションが終る頃には解るだろう。 アルベルト:ヒューベロンドさんはどうして真帝国に? ヒューベロンド:出自が[賞金首]で追われる立場だったんだが、そこをガラール卿に助けられ真帝国に仕えるようになった。シャードは腕輪に赤い楕円形のクリスタルがはまっている。バスタードソードで戦うぞ。 バサラ(スカウト/スカウト/アルフ) GM:では最後、ちゃっちゃと作っていた人その2、どうぞ。 バサラ:名はバサラ、男で外見は20代のアルフ。灰緑の瞳に銀の髪、出自で[帝国兵]を振ったので左手が義肢になった。この機械腕にはライン状のデザインが入っていて、実はそのラインが俺のシャードだ。 アルベルト:アルフって? バサラ:かつて神々と共に暮らしていたと言われる種族だ。巨人族と呼ばれ人間より頭ひとつほども身長の高い美しい種族。レリクスと呼ばれる神話の時代に古代のアルフたちが作り出したアイテムを継承し、それを扱うことができる。だが、俺達の大半はウートガルドという別大地に移住し、今のミッドガルドではほとんど見ることはできない。 アルベルト:古代人って事ですか? バサラ:そうだな。古代技術と古代のアイテムを扱える、古代人の末裔と言った所か。 アルベルト:わかりました。 GM:ガラール卿との馴れ初めはどうする? バサラ:そうだな……アルフ達からウートガルドを追放され、気がついた時には帝国にいたって事でいい。その時助けてくれたのがガラール卿だった。 GM:その恩を返す為に従事している……と? バサラ:それもあるが俺の境遇が[修行]だからな。強い奴と戦うには真帝国にいる方が手っ取り早いんだ。 GM:邂逅はどうなりました? バサラ:邂逅は[主人]と出たが……ガラール枢機卿でいいか? GM:構いませんよ。あまり登場しませんが(笑) ヒューベロンド:ああ、なら俺の邂逅[友人]をバサラにして良い? GM:問題無いですよ。なにが"なら"なのかわかりませんが(笑) GM:では自己紹介も終った所でPC間コネクションをお願いします。ただ、今回は主人公2人が一般人なプロローグなので、取る相手は変則的に行きま す。まずディアンからアルベルトへ。 ディアン:……[友人]? そのまんまだな。 GM:次はアルベルトからはヒューベロンドへ。 アルベルト:……あれ、僕も[友人]だけど? ヒューベロンド:いいんじゃないか? 俺は情に厚いし世話好きだ。遊び相手にはなってあげるさ。 GM:次はヒューベロンド。ここはアルベルトに取って下さい。 ヒューベロンド:[主人]……はアルベルト様のお父上に対してだからな……[幼子]。うん、これだ。 GM:最後はバサラからはヒューベロンドへ。 バサラ:……[家族]。いや、違うな……[恩人]? ヒューベロンド:俺は気にしてないぞ? 何をしたか覚えてないが(笑) バサラ:そうだな……俺は命を軽く考え敵地へ突撃するからな。それをいつもフォローしてくれているのだろう。 GM:ではセッション本編へと参りましょうか! ◆期待に胸膨らませ◆ 物語は8年前……帝国暦1998年から始まる。真帝国では"ある計画"のために、辺境の村バーラルに積層都市を建造する事が決定。 しかし、その為にはバーラルの住民には立ち退いてもらう必要があった。 積層都市完成のあかつきには、その都市への移住権を与えられるとの話だったが、慣れ親しんだ土地を離れる事に抵抗を覚える住民は多く、交渉は思うように進まなかった。 そして、この状況を打開するため、真帝国からレオニード・ガラール枢機卿が来る事となる。 枢機卿直々の説得。真帝国がこの計画をどれほど重要視しているのかがわかる行為だった。 GM:――と言うわけで、最初のシーンはアルベルト。バーラル村へと父親のレオニード・ガラールと共にキミはやって来ました。本当ならキミは関係無いのですが、枢機卿である父親の一存でやって来たと思って下さい。 アルベルト:きっと後学の為に連れてこられたんですね。 GM:ではバーラル近くの軍事キャンプ。 アルベルト:与えられたテントの中で、シグルドと遊んでいます――大人ばっかりだ、邪魔しちゃいけない。 GM:そんな事をしていると兵士がキミを呼びに来ます。父親が呼んでいるらしい。 アルベルト:では行きます――お父様、何がご用でしょうか? GM:「うむ……」――とキミを見つめたあと――「アルベルト、お前は今年で何歳になる?」 アルベルト:なんだろう? と思いつつ――今年で8歳になります。 GM:「そうか……もうそんなになるか。思えばお前の周りには同い年の友人もおらず、いつも寂しい思いをさせてしまったな」 アルベルト:いいえ、こうやってシグルドが僕と遊んでくれますから。 GM:「だが、外の世界に憧れる事もあるだろう?」 アルベルト:それは……――口ごもります。 GM:そんなキミを見て――「良い機会だ。積層都市ばかりでは無く……お前も外の世界を経験しても良い頃だろう」 アルベルト:外の世界を……ですか? GM:「この村で数日の間暮らしてみないか? と言っても、私の交渉が終るまでだがな……」 アルベルト:子供ながらに自分が邪魔なのかなぁ……と。 GM:レオニードは優しい目で――「アルベルト、私はお前の事を、邪魔だなんて思った事はないぞ」 アルベルト:あ、い、いえ、そんなこと!? GM:「それとも……外の世界に興味無いか?」 アルベルト:あの……本当は、見てみたいです。積層都市の外で皆がどうやって暮らしているのか……それに、僕と同じぐらいの……その……。 GM:「ああ、好きにすると良い。この付近を探索するも良い、生活を見るのも良い、もちろん同年代の友達を見つけるのも……な」 アルベルト:………………。――迷います。 GM:「バーラル村の村長に話は通してある。もし村で寝泊りしたいならそこで寝ても良い……あとはお前の気持ちしだいだ」 アルベルト:シグルドをなでながら――お前はどうしたい? GM:シグルドは瞑らぬ瞳でずっと見ていて……少し首をかしげて――「ワンッ♪」 アルベルト:わかりましたお父様、シグルドもああ言っているし、見聞を広めてきます! GM:「ああ」――と言った所で、アルベルトへクエストをあげます――【クエスト:友達を作る】です。 アルベルト:じゃあキャンプから村の方へシグルドと走りながら――楽しみだねシグルド、僕と同じぐらいの子……いるかな? ◆懐刀2本◆
バーラル付近に併設された軍事キャンプ。その中の1部屋に2人の青年軍人が呼び出しを受けていた。
GM:ではヒューベロンドとバサラのシーンです。ガラール枢機卿に呼び出されます――「来たかね、ヒューベロンド、バサラ」1人は鎧を着け両手剣を持った剣士、もう1人は無手のアルフ。2人とも180近い身長もさる事ながら、まだ20も前半と言うのに、その放つオーラはベテランのそれであった。 バサラ:地上は空気が悪くて肌に合いませんね――普段は積層都市の上の方にいるので地上に住む人間は侮蔑します(笑) ヒューベロンド:おいバサラ、猊下の前だぞ。 バサラ:やれやれと言ったジェスチャー。 GM:「バサラ、たまの地上は良い気分転換にならないかね?」 バサラ:はっ、猊下が仰られますれば。 ヒューベロンド:今度はこっちがジト目で見ていよう。 バサラ:……それで我々への此度の任務、建設反対派の暗殺ですか? GM:「いや、今回はそうじゃない。政治的な外交だ」 ヒューベロンド:という事は、誰かの護衛ですか? GM:「ああ、お前達2人には私の息子、アルベルトの護衛を行ってもらいたい」 ヒューベロンド:アルベルト様の? GM:「思えばアルベルトにはいつも辛い思いをさせて来た。数年前にあれの母親が亡くなって、私は仕事にばかりかまけていたからな……」――アルベルトの世間勉強の為、村にお泊まりの話をします。 ヒューベロンド:了解しました……ですが、本当にアルベルト様の自由にさせていいので? GM:「構わんよ。アルベルトはああ見えて私の子供である事がどういう事か、理解している。分別は付く」 バサラ:しかし猊下、このような辺境ではいつクリーチャーが現れるやもしれません、我等が付いているとはいえ……。 GM:それが不思議なことに、この付近ではクリーチャーの被害が無いらしい。目撃例も稀との事です。 バサラ:それは……怪しいですね。 ヒューベロンド:この付近が純粋に平和なだけか……もしくは、クリーチャーさえ恐れる何かがココにはあると言う事か……。 GM:「だからお前達を護衛につけるのだ。無論、私の取り越し苦労であって欲しいがな」――では2人には共通のクエストを渡します――【クエスト:アルベルトを守る】 ヒューベロンド:了解致しました。 バサラ:お任せ下さい。 ◆少年達の出会い◆
真帝国辺境にあるバーラル村は、大人たちにとって平和そのものだった。
GM:ではディアンのシーンです。だが、村に暮らす唯一の子供ディアンにとって平和は退屈そのものであり、村は小さすぎて飽きを感じていた。やんちゃな少年が求めるのは、いつの時代も同じ……冒険。 そんなわけで、ディアンは最近村から少し離れた森の中に、秘密基地を作って遊んでいた。 ディアン:森の中で1人遊んでいよう。蔓とか組んで秘密基地を作ってる。もちろん、近づくものには罠と鳴子が発動する(笑) GM:じゃあ鳴子が鳴り――「きゃっ!?」という声が。 ディアン:獲物がかかった! かかれーー!!――と1人で叫びつつ行きます(笑) GM:行くとキミの姉ナンナが片足を引っ張り上げられ、罠に掛かっています。 ディアン:なんだ姉ちゃんか。 GM:「なんだ姉ちゃんか……じゃないでしょ! 早くコレを取りなさい!」 ディアン:しぶしぶ罠を外します。 GM:「もう、こんな罠ばっかり増やして……動物でも捕まえるつもり?」 ディアン:動物じゃないよ。敵はいつ攻めてくるか解らないんだ! GM:「最初の獲物がお姉ちゃんでどうするのよ?」 ディアン:違う! 最初の獲物は自分だった……(笑) GM:「あ、あんたって子は……まぁいいわ。1人で遊んでいてもつまらないでしょ? おいで、友達が出来るかもよ?」――ナンナはキミの手を引いて村へと帰って行きます。 ディアン:友達が? なんで? GM:「最近、村に帝国の人達が来ているでしょ?」 ディアン:うん、なんか一生懸命に会議している奴だよね? 俺嫌いだよ、皆して俺を仲間外れにするんだもん。 GM:「ディアンはまだ小さいから」――ナンナは少し笑って――「実はね、その帝国の方のお子さんが、村で数日間暮らしてみたいって言っているの」 ディアン:子供? GM:「あなたと同じぐらいの男の子よ」 ディアン:へぇ〜。 GM:と、家に到着します――「今、お爺ちゃんとお話していると思うから行ってみなさい?」 ディアン:じゃあ行ってみよう。 GM:アルベルトは登場して下さい。 アルベルト:行儀良く、村長さんの前で椅子に座ってお茶を飲んでいます。 ディアン:俺は身だしなみも整えず、そのままの恰好でドアを開け――ヤッホー♪ アルベルト:ちょっと驚いた顔で見よう。 ディアン:爺ちゃんの事は無視して――キミが帝国の子供? アルベルト:咳払いして、椅子から降りて――僕はアルベルト=ガラール。レオニード=ガラール枢機卿の息子で、しばらくこの村に滞在させてもらいます。よろしく――手を出そう。 ディアン:あ、ああ、えっと、俺はディアン、爺ちゃんの孫だ。宜しくな!――握手を。 アルベルト:ちょっと驚く、いつも握手するのは大人ばっかりだったから、同じような手の大きさと握手するのは初めて。 ディアン:俺は動物とばかりだからなぁ(笑) アルベルト:と、そこでシグルドがワンワンッ♪ ディアン:お、犬? アルベルト:こっちは僕の友達でシグルドって言うんだ。 GM:シグルドもすぐにディアンに懐きます。「ワンワンッ♪」――それを見てナンナが――「良かった、すぐに仲良くなれそうね。さ、夕飯の準備しなくちゃ」――とナンナがエプロンをつけた所でシーン終了。ディアンへのクエストは『アルベルトと沢山遊ぶ』です。 ◆新鮮な世界◆
結局、アルベルトはそのまま村長の家に泊まる事になり、いつもと違う木製の固いベッドで目を覚ました。
GM:アルベルトのシーンです。今までのベッドと違い、木で作られた固めのベッドで起きます。アルベルト:おはようシグルド……あれ? ああ、そうか……お父様に言われて村に来てたんだっけ? GM:と、別の部屋からナンナの声がします――「アルベルト君、起きてる? 朝ご飯できたわよ〜?」 アルベルト:あ、はい! すぐ行きます! GM:行くとやっぱり質素な朝食が並んでいます。 ディアン:俺は寝坊していてそこにいない。 GM:「まったく、ディアンは……ディアンー! 早く起きなさい!」――と呼ぶが。 ディアン:起きません。 アルベルト:それなら、僕が起こしに行きますよ。 GM:「いいのよ、アルベルト君はお客様だもの」 アルベルト:いいえ、お世話になっているのは僕ですから、それぐらい僕が――とディアン君の部屋へ。 GM:「良くできたお子様だわ……やっぱ都会の子は違うのかしら?」(笑) アルベルト:じゃあディアン君の部屋へ―― ディアン:入ると鳴子が鳴ります。 アルベルト:えっ!? ディアン君! ディアン君起きて! この部屋おかしいよ!! ディアン:んあ……まだ俺は眠いんだ……。むにゃむにゃ。 アルベルト:ちょっとディアン君起きてよ! 変な音が鳴り止まないんだ! ディアン君!! ディアン:んん……あれ? ああ、そうか帝国の……――と起きて、枕元のボタンを押して鳴子を解除。 アルベルト:い、今の……何? ディアン:ああ、俺が作った鳴子さ。爺ちゃんが勝手に部屋に入ってくるからね。もっとも、朝は目覚まし代わりだけどさ(笑) アルベルト:目覚まし時計と侵入警報アラームを合体させたようなモノかな? 凄い、そんなのを作れるなんて!! ディアン:そうかぁ?――目を擦りながら――簡単だぜ、こんなの? アルベルト:いや、凄いよ! 外の子はみんなそうなの!? びっくりしたなぁ〜! ディアン:外の子って言っても、俺以外はこの村に子供居ないし解んないけど……でも、これが凄いって言うなら、後でもっと凄いの見せてやるよ! アルベルト:本当に!? ディアン:ああ! 森の奥にいっぱい作ってあるんだ(笑) アルベルト:それは楽しみだな♪ ね、シグルド? GM:「ワンワンッ♪」 ディアン:よし!――布団を投げて――朝飯食いに行こうぜ! アルベルト:うん! ◆バーラル村にて◆
アルベルトが村に一泊したその日の朝、ヒューベロンドとバサラの2人組もバーラル村へとやって来ていた。平和にさえずる鳥の声や、森の香りを運ぶ風に吹かれていると、なんとも時間の経つのが遅く感じる……そんな平和な村だった。
GM:ではヒューベロンドとバサラです。ヒューベロンド:村を2人で歩き回っているかな――昨日のアルベルト様、外に出てどうなる事かと思ったが……なかなか楽しそうじゃないか? バサラ:いや、無理をしているに違いない。 ヒューベロンド:そうかぁ? ま、この村にも1人アルベルト様ぐらいの子供がいるらしいしな。 バサラ:まさか! そのガキと遊ばせる気か!? ヒューベロンド:アルベルト様も子供なんだ、それが当たり前だろう? バサラ:猊下は何を考えているのか……こんな汚い場所で、地べた這いの子供なんかと遊んだら、坊ちゃんが汚れてしまう!! ヒューベロンド:地べた這いって……お前(笑) バサラ:はっ! まさか坊ちゃんはここで朝食を取っておられるのか!? ヒューベロンド:いや、そりゃあそうだろう? バサラ:なんて事だ……噂じゃ岩のように硬いパンに、塩の味しかしないスープ、そんなものが出されるんだぞ!? ヒューベロンド:どこの刑務所だよ。いくらなんでも偏見過ぎだろう(笑) まぁ、昨日村長の家を訪れた時、ナンナさんが俺たちも一緒に泊まったらと聞いて来ただろう? そんなに心配なら今日からでも泊まるか? バサラ:信じられん――という顔を。 ヒューベロンド:お前がそう言うと思って、昨日はキャンプに戻ったんじゃないか……。 GM:さて、村を散策していると、珍しいものを見るかのように村人達がキミ達に視線を向けています。と言うのも、帝国兵はガラール卿の警護で来ている人達がいるのですが、その人達は交渉の時以外はやって来ないので、キミ達のように村を散策している帝国兵が村人は珍しいのです。 ヒューベロンド:まぁ気にはしないわな。 バサラ:ふん……――無視する。 GM:やがて、見ている村人の中から数人、勇気を出して話しかけてくる若者達がいます――「ちょっと軍人さん! あんた達積層都市から来たんだろ?」「あのさ、帝国ってさ、どんな風な暮らしなんだ? 俺、すっごく興味あってさ!」 バサラ:お前等のような地べた這いは、一生行けない場所だ!!(一同爆笑) ヒューベロンド:待て待て!(笑)――若者達に向き直って――帝国ではカバラというクリスタルを使った技術が発達していてね、とても便利な生活が出来ている。
※解説3 「カバラ技術」
GM:「じゃあ、今の俺たちよりずっと良い暮らしができるんだな!?」帝国により生み出された、シャードを利用した技術の総称。本来、シャードはその資質を持った者にしか扱うことができないが、カバラは誰にでもその使用を可能とさせる画期的技術である。 構造的にはシャード、もしくは人工的に作られたクリスタル(擬似シャード)を、リアクターと呼ばれる動力機関に封入する事で無尽蔵にエネルギーを得られるゾーン(シャードの大きさに比例して広がる領域)を発生させる。そのゾーン中で起動する機械をカバラと呼ぶ。 ヒューベロンド:ああ、特に積層都市は雲をつくほどの高さでね、移動にも空を飛ぶエアカーを使うし、沢山の飛行艇も離着陸している。都市内にいれば自然災害に会う事も無いし、食料や物資は飛行艇で頻繁に入って来て商業ブロックへ卸される。本当に便利な所さ。 GM:若者達は本当に関した様子ですね――「でも、やっぱり俺たち田舎者は住めないんだろ?」 ヒューベロンド:そんな事は無い。我等が真帝国は実力主義だ。誰だって受け入れる。商売でも腕っ節でも、自分が力になれると思う事があれば、いつでも帝国は門戸を開いているさ。 GM:「実力主義かぁ……いいな、それ!」――と青年は感激してます。 バサラ:ヒュー、お前はいつから帝国の広告塔になったんだ? ヒューベロンド:この村との交渉は猊下の役目だ、少しばかり手伝っても罰は当たらないさ。 バサラ:……おい村人、そういうわけだ。それに都市が完成すれば、ここの連中は全て移住権を認められているんだ。さっさと快諾するんだな(笑) GM:「いや、俺たちは皆そう思ってるよ……でも年寄り連中がさぁ」――若者達は皆顔を見合わせます。 ヒューベロンド:反対されてるのか? GM:「ああ、ご先祖様から代々続くこの森の恵みを失うのは良く無い……とか、都市が出来ればこの森はなくなっちゃうんだろう? 年寄り連中はそれで反対しているんだ」 バサラ:ふん、都市に移れば自然災害だけでなく、自然発生したクリーチャーどもの被害にも遭わなくなる。自分の命と森、天秤にかける事じゃないだろう。 GM:「いや、それがクリーチャーってここじゃ殆ど見かけないんだ……だから年寄り連中も『魔物に襲われないのは森の加護があるからだ……その森を破壊するなど!』ってわけ?」 ヒューベロンド:そう言えば猊下もそんな事を……。 バサラ:偶然だろ。 GM:「ああ、偶然……だと思うんだけどな……」――そこで【知覚】の判定をして下さい。
※解説4 「判定方法」
ヒューベロンド:……駄目だ、1と2を足して達成値6(笑)指定された[判定値]に2D6の出目を足した数が[達成値]である。[達成値]がGMの提示した難易度以上なら判定は成功とみなされる。この時、別キャラクターとの対決の判定で[達成値]が同じだった場合、リアクション側が勝利する。これを"リアクション優先の法則"と呼ぶ。 また、2D6の結果がクリティカル値(通常は12)以上なら自動成功、ファンブル値(通常は2)以下なら自動失敗となる。 バサラ:俺は13だ。 GM:バサラは解ります。若者達が一瞬、暗い顔をしました。嫌な事を思い出した……そんな顔を。 バサラ:………………。 GM:「仕事中に邪魔しちゃってごめんよ、それじゃあ」――若者達は去って行きます。 バサラ:ヒュー、気がついたか? あいつら何か隠しているようだ。 ◆森の冒険◆
ディアンに先導されアルベルトはその森へと足を踏み入れた。
GM:ではディアンのシーンです。そして少年達は、木漏れ日の差し込む森の中を走っていく。 深い緑の匂い、大地の暖かな色、姿を見せない小鳥や動物達のかすかな鳴き声、どれをとってもアルベルトには驚きと新鮮さの連続だった。 ディアン:アルベルトとシグルドと一緒に森へ――じゃあ秘密基地への道は絶対に内緒だからな! アルベルト:うん、約束する! ディアン:シグルドもだぞ? GM:「ワンワン♪」――木漏れ日の中、少年2人は森を行きます。 アルベルト:気持ち良いなぁ……。ね? ディアン君! ディアン:気持ち良いって言われてもな、普通だろ普通? アルベルト:普通か……凄いなぁ――と森の空気で深呼吸したり。 ディアン:おいアルベルト、早く来いよっ! アルベルト:あ、うん、今行くー! GM:では基地の方へ近づいて行くと……「キャンキャンッ!!」――シグルドが罠に掛かって木に吊り上げられます(笑) アルベルト:シグルド!? ディアン:あ゛〜、そこは踏んじゃ駄目だって言ったのに〜。――スルスルっと罠を解除。 アルベルト:シグルド大丈夫!? GM:「ワンワンワンッ!!」――興奮覚めないです。 ディアン:また設置し直しだよ、結構大変なんだぜ? アルベルト:ディアン君、危ないじゃないか! ディアン:場所さえわかってりゃ危なく無いって、あ、そことそこも踏むなよ、危ないから。 アルベルト:う、うん……シグルド――と抱いてディアン君の後を進む。 ディアン:ここが秘密基地さ!――と1番奥へ到着。 ヒューベロンド:と言った所で登場しよう。登場難易度は? GM:7です。
※解説5 「登場方法」
ヒューベロンド:……11で成功――「おおおおお!?」――後ろの方で叫び声が上がる(一同爆笑)シーン内に存在していないPCがシーンに登場するためには、基本的に[登場判定]という判定を行い。これに成功する必要がある。 アルベルト:プロの軍人が子供の罠に!?(笑) GM:バサバサバサっ! 飛び立つ鳥達! バサラ:ヒューの横に登場……成功。ヒューを斬ろう――この恥さらしが! ヒューベロンド:芋虫のように腹筋で避ける!(笑) バサラ:避けるな!! ヒューベロンド:避けるわ!!!(一同爆笑) ディアン:敵だ! 行くぞ!! アルベルト:え、今の声……どこかで(笑) GM:では少年2人が行くと、罠に掛かったヒューベロンドをバサラが―― バサラ:斬り捨てた。 ヒューベロンド:いや、避けてるから! アルベルト:ヒューベロンドさん! バサラさん!? ディアン:え、知り合い?――と、罠を外そう。 バサラ:坊ちゃん大丈夫でしたか? しかし、こんな所に罠を張るとは……どこのどいつが! ディアン:あ、俺。 バサラ:そうか……貴様か!!――ゆっくりと近づいて―― アルベルト:ディアン君も悪気があってやったんじゃないんだ、バサラさん許してあげて! バサラ:坊ちゃんがそう言うのならば。 ヒューベロンド:まったく、久しぶりに昔を思い出したよ……まさか判定も無しに引っかかってしまうとはな(笑) GM:自分から引っかかったんでしょう!?(一同笑) ディアン:アルベルトに聞こう――なに、このカッコ悪い大人と、怖い大人。 ヒューベロンド:か、かっこわるい? バサラ:怖い……だと? アルベルト:ああ、2人は僕のお父様の護衛なんだ、帝国でも屈指の戦士さ。 ディアン:へぇ〜屈指の戦士ねぇ……――とヒューベロンドの方を見つつ。 アルベルト:それより2人とも、どうしてここに? ヒューベロンド:ガラール卿のご命令で、アルベルト様の身辺警護を仰せつかりました。 バサラ:頷こう。 アルベルト:そうか……でも大丈夫だよ、村の人達は皆親切だし、シグルドもいる。心配しないで。 ヒューベロンド:解りました。アルベルト様のことはシグルドに任せましょう。ただ、何かあった時はすぐに言って下さい、我々は近くに控えておきますので。 アルベルト:うん、ありがとう。 ディアン:その間に基地から釣り竿を持って来て――なぁアルベルト、釣りに行こうぜ! 近くに川があるんだ! アルベルト:釣り? 何それ? ディアン:知らないのか? こうやってエサを付けて――と適当な虫を捕まえて針に付ける――川に入れると魚が喰らいつくんだ。それで釣り上げるのさ! アルベルト:虫を釣り針に刺すのを見て――うわあああああ!?――ヒューベロンドさんの後ろに隠れる!(笑) ディアン:なんだよ、本当に知らないのかよ? アルベルト:だって今、ディアン君、虫を!!! ヒューベロンド:はっはっはっはっ、アルベルト様は初めて見て少し驚いただけですよね? しかし釣りか……懐かしい。俺も子供の頃はよくやったなぁ。でもエサに付けるなら森の虫より、川にいる川虫の方が食いつきはいいぞ? ディアン:お、カッコ悪いおじさん知ってるね(笑) ヒューベロンド:お、おじさん? バサラ:ふっ(一同爆笑) ヒューベロンド:笑うな、お前も子供から見たらおじさんだろうが(笑)――アルベルト様、せっかくの機会です。普段食べている魚が、どうやって確保されているか釣りを知るのも良いと思いますよ? アルベルト:う、うん……。 ディアン:よし、行くぞアルベルト! ◆バサラ1人◆
その森は確かに静かで動物達も危機感無く暮らしていた。
GM:ではヒューベロンドとバサラのシーンです。だが、歴戦の戦士であり、戦いを求め生きてきたバサラは解る。 この森にはクリーチャーこそいないかもしれないが、それより性質の悪い"何か"が存在する事を……。 ヒューベロンド:いや、俺はアルベルト様と一緒に釣りに行くぞ。バサラも護衛だし同じじゃないのか? バサラ:護衛はお前に任せる。俺は残って危険な罠を片っ端から破壊する。 ディアン:ええ!?(笑) バサラ:俺はスカウトでもあるからな、子供の作ったトラップなど一目瞭然、全破壊だ(笑) ヒューベロンド:ひでー(笑) GM:バサラは全てを破壊しました。 バサラ:それが終ったら森の探索だ。クリーチャーは本当にいないのか? GM:それはいなさそうです。動物達も平和に暮らしています。 バサラ:怪しいな……嵐の前の静けさの気がする――≪デジャ・ヴュ≫を使用。この森は本当に平和なのか?すでに何か危険な事でも起ころうとしているのではないか? GM:ではあなたは今まで経験して来た中から掬い出したのか、封印された記憶が蘇ったのか……とにかく、この状況はあと数日だと推測されます。 バサラ:危険が迫っている……もしくは、すでに危険な何かが起こったのか?――若者達の顔が頭をよぎる。 GM:ではそう考えながら森を散策していると、バサラはやがて開けた場所に出ます。そこには木で作った十字が立てられた簡素なお墓があります。 バサラ:墓……か。 GM:名前は彫ってないですが、誰かが頻繁に来ているのか獣道のように森に跡が付いています。お墓には花が置かれており、最近も誰かが来たようですね。 バサラ:GM、もう一度≪デジャ・ヴュ≫を使う。これは若者達が隠していた事と関係があるか? GM:ええ、関係のある事です。 バサラ:すでに危険は一度起こり、今再び迫りつつある……か――去っていく。 ◆釣り遊び◆
森を横切るその川は、流れの真ん中に行けば行くほど荒々しく、アルベルトは思わず見惚れてしまった。
GM:シーンはアルベルトです。釣りのために川にやってきました。シグルドがはしゃいでいます。積層都市で見る噴水と同じ水の流れのはずなのに、その川は生きているように力強かった。 バサラ:ドッポーンッ! GM:入った!? じゃあシグルドは泳いでいます(笑) アルベルト:シグルド!?――慌てて呼び戻します。 GM:シグルドは呼ばれて岸へ上がると、ブルブル震えてから寄って来ます。 ディアン:よし、じゃあ釣りをするぞー(笑) アルベルト:シグルドをハンカチで拭きながら――でも、どこに魚が置いてあるの? ディアン:置いてある? 川の中見てみろよ、いっぱい泳いでいるだろ? アルベルト:じゃあ見てみます――本当だ! 魚が動いているよ! へぇ〜。 ディアン:よっと――と岩をどかして川虫を捕まえて針につけます。 アルベルト:そっちにやって来て気持ち悪い顔を――うあぁ。 ディアン:ほら、お前も針にエサを付けろよ? アルベルト:え、でも……。 ヒューベロンド:登場――アルベルト様、やってみたらどうです? シグルドも期待してますよ? アルベルト:う、うん……えいっ――と捕まえた虫を針に刺す――あうう。 ディアン:よし! じゃああとはそれを川に垂らせばいいんだ。こうやってさ――と釣りを始める。 アルベルト:同じようにやって――これでいいの? ディアン:そ! あとは待つだけ! GM:では少し時間が経って……――。 ディアン:アルベルトの竿が引きます(笑) アルベルト:あ、あれ? ねぇディアン君、なんか竿がグングンしているんだけど!? ディアン:それ釣れてるんだよ! 竿を上げて! 早く早く!! アルベルト:力一杯引き抜く!!
キラキラと水滴を太陽に反射させながら、綺麗な弧を描いてアルベルトの頭上を飛ぶ。
ディアン:虹鱒じゃん! けっこう大きいぞ♪針が偶然外れ、虹色の帯を持った魚がアルベルト達の後ろ、石だらけの川原で跳ねていた。 アルベルト:はー…はー…はー…――とじっと魚を見つめたあと、だんだんと興奮して来ます(笑) GM:シグルドも「ワンワンッ!」と魚の周りを回り――ガブッ(笑) アルベルト:ガーンッ(一同爆笑) GM:シグルドは魚を加えたままアルベルトの方を見て――『違うの?』 ディアン:よーし! 次は俺が釣り上げるぞー♪ アルベルトも早くエサを付けろよ、魚いなくなっちゃうぜ?(笑) アルベルト:シグルドから魚を放させながら――え、いなくなっちゃうの? それは困るよ!――と岩を引っくり返して、さっきまでの恐怖はどこへやら、自分で川虫を捕まえて針に付け川に垂らします――ディアン君! ディアン:ん? アルベルト:釣りって楽しいね♪ ◆友情の芽生え◆
ヒューベロンドはじっとその光景を眺めていた。
GM:ではヒューベロンドは?村で唯一の子供で、いつも1人であったろうその少年と、大人たちに囲まれ、子供らしさを失っていた少年が、今は十年来の親友のように釣りに興じている。 ふと軍人である事も忘れ、こんな平和が当たり前に続いていくと想いたくもなる。 ヒューベロンド:少年2人が釣りに興じている間、薪を集めて魚を焼く準備をしていたって事で。 GM:じゃあ3時ぐらいですかね、釣りにも飽きて魚を焼いてるってことで……アルベルトとディアンは自動的に登場です。 アルベルト:僕はヒューベロンドさんに聞こう――ヒューベロンドさんも、昔はこういう事していたの? ヒューベロンド:まぁ、ガラール卿に拾われるまでは1人で生きて行く必要がありましたからね。何でも自分でする必要があったんですよ。 アルベルト:へぇ〜。 ディアン:俺は魚を焼いている間に木の実を取ってきたって事で――はい、甘くて美味しいぜ? アルベルト:あ、ありがと――食べ方解らず貰ったまま見ていよう。 ヒューベロンド:ほう、これはユグの実じゃないか。少年、ここら辺にはこれがなっているのか? アルベルト様、これはこうやって食べるのですよ?――と見本を。 アルベルト:じゃあ同じようにして食べよう――あ、甘い……ちょっと渋いけど。 ディアン:俺は実を取る時に手を切ってしまって、取ってきた薬草をすりこんでいよう。 アルベルト:ディアン君、その怪我! ディアン:ああ、さっきちょっと引っ掛けちゃってさ。でもこれ塗っておけば大丈夫だから。 アルベルト:ヒューベロンドさん? ヒューベロンド:頷いて少年の手を取ろう――≪ヒール≫……回復。 GM:傷跡すら無く回復します。 ディアン:目を丸くしよう――凄いなあんた!? ヒューベロンド:ま、こういう力もあるってことさ。 ディアン:帝国ってやっぱ進んでるんだなぁ、凄いや。 アルベルト:ちょっと鼻が高い(笑) GM:では焼いた魚を食べ終わった頃、お腹も膨れた所でこのシーンを切りましょうか? アルベルト:あ、もう1つやりたい! 食べ終わってから――ねぇディアン君。 ディアン:ん? アルベルト:僕、凄い楽しかったよ! ありがとう! ディアン:いや、俺も楽しかったぜ? いつも1人で遊んでいるからさ……お前がいたからかな?(笑) アルベルト:本当!? 楽しかった? 僕と居て! ディアン:ああ、本当楽しかった(笑) アルベルト:じゃあ少しもじもじしてから……――あの、ディアン君、僕と友達になってくれる……かな? ディアン:いいぜ? 俺も友達欲しかったし! アルベルト:ありがとうディアン君!――最初と違って力いっぱい握手します! GM:シグルドも楽しそうに周りを回っています。 ディアン:よし、なら俺の事はディアンって呼んでくれよ。実は"ディアン君"って呼ばれるの気恥ずかしかったんだ(笑) アルベルト:うん……わかったよディアン(笑) ◆村人の迷い◆ 帝国軍が村近くに設営したキャンプへ引き上げて行った後、村長の家では村の年寄り衆と若者達が集り、数十と繰り返した話し合いが始まっていた。少ないとは言え、今までとは違う規模の帝国兵達に、村長はいつに無く息を消沈して口を開く。 「どうすればいいのだろうな……ワシは、若い者たちの為にも都市に賛成した方が良いと思うのだが……」 若者達が顔を見合わせ明るい顔になる。しかし、同時に年寄り衆からはいつもの反論が告げられる。 「しかし村長、あんな事があったばかりじゃぞ、あれはこの村において祟りだった。……わしらは今まで通りやっていても暮らしていける、クリーチャーもいない。これ以上、波風立てるのはやめた方がよい」 それはもっともであり、改革より伝統と安定が求められる村の方針としては間違った事ではない。 「何考えているんだ! 帝国がタダで村の復興に手を貸してくれるっていうんだ、こんなチャンスは2度と無い! 豊作の年もあれば凶作の時だってある、でも積層都市に入ればそんな心配しないでいいだろう!」 いつの世も若者達の意見は似たようなものだった。ただ、時としてその意見は時代に見合った的を射たものにもなる。事実、村の大人達の何人かは、今回の要求は受け入れた方が良いと思っているのも事実であり、その決断も時代の流れだと諦めている老人もいる。 それでも話は平行線だった。頑固な年寄り衆と、引かない若者達……。 やがて、1人の青年が我慢しきれず声を上げた。 「あいつがあんな事になったのはただの偶然だって! ナンナの奴だってそれはわかってるだろう!!」 老人達が口を噤み、若者達は苦虫を噛み潰したように言葉を失う。青年はそのまま続ける。 「そうだろ、村長?」 「それは……」 「あんな事が起こる可能性があるなら、都市で安全に暮らした方が良いに決まってるじゃねーか!」 GM:――と、そんなマスターシーンです。 バサラ:そこに登場する……成功。会議している家の外で壁にもたれながら――なるほど…な。 ◆大人の現実◆
時間はあっと言う間に流れ、気がつけばあんなにも眩しく見守っていた太陽も、今は森の下へと隠れてしまっていた。
GM:では日も落ちた頃です。ディアン:もうこんな時間か、そろそろ帰んないと姉ちゃんにどやされちまう。 アルベルト:じゃあ川に石を投げて、飛び石とかしつつ――え、もうそんな時間? ディアン:ああ、姉ちゃんを怒らせて夕飯食えなくなったら大変だぜ?(笑) アルベルト:うん……名残惜しそうに川を。 ディアン:別に今日だけってわけじゃないんだし、また来れば良いじゃないか。 アルベルト:そっか……そうだよねディアン! また来よう! ヒューベロンド:帰り道は≪ムーンライト≫で照らしながら森を歩こう。完全に保護者だな、俺。 ディアン:また魔法かぁ――すげーなー、帝国の人って何でもできるんだな? ヒューベロンド:帝国軍人だからって何でも出来るわけじゃないさ。俺はこういう事ができるが、一緒にいたバサラは別の力を使うしな。 ディアン:へぇ〜。 アルベルト:そうだ、ディアンは将来何になるんだい? ディアン:将来? う〜ん、考えた事もなかったなぁ……アルベルトは何になりたいんだよ? アルベルト:僕? 僕はもちろん帝国の軍人さ。お父様のように立派な人になるんだ。 ディアン:ふ〜ん……。 GM:と、家に到着します。ナンナが出てきて――「お帰り……って、こんなに泥だらけになって!」 アルベルト:ご、ごめんなさい。 ディアン:別にいいじゃん? バサラ:都会の良い子と、田舎の悪ガキだ(笑) GM:と、ここでディアンは解ります。なにかナンナが無理しているような感じがします――「危ない事とかしてないでしょうね!」 ディアン:なんだろう……でも火に油を注ぐと嫌だから何も言わない(笑)――するわけ無いだろう? それに、このおじさんもいたから大丈夫だよ! GM:「もう! 沸かしてあるから、さっさとお風呂に入ってきなさい!」 ディアン:はーい、行こうアルベルト! アルベルト:うん! ヒューベロンド:じゃあ俺はここで帰るか――ではアルベルト様のこと、宜しくお願いします。 GM:「いえ、こちらこそ何のお構いもできなくて……そうだ、夕飯でもご一緒にいかがですか?」 ヒューベロンド:そうですね……――少し考えてから――キャンプに報告に言ってからご馳走になっても宜しいですか? GM:「わざわざ戻って来て……ですか?(笑)」 ヒューベロンド:これでも軍人なのでね。アルベルト様達がお風呂から出る頃には間に合わせますよ。 GM:「解りました。じゃあヒューベロンドさんの分も用意しておきます」 ヒューベロンド:じゃあ一端キャンプへ戻る。 バサラ:ではヒューベロンドが村から帰ってる途中で登場――お前はもう少し、帝国軍人としての誇りを持った方が良い。 GM:木に寄りかかりながら、影にバサラがいるんでしょうね。 バサラ:そんな感じで――一緒になって遊んでどうする。 ヒューベロンド:見ていたのかバサラ? 良いじゃないか、あんなに生き生きとしたアルベルト様は見たことが無いだろう? バサラ:ふんっ。 ヒューベロンド:それで……何か解ったか? 村人が隠していた何かを調べて周っていたんだろう? バサラ:クリーチャーがこの周辺にいないのは確かだ……だが、まったく存在しないわけじゃない。過去、誰かが被害にあった事は確かだ。 ヒューベロンド:クリーチャーのか? バサラ:さぁ……それは解らん。ただ、村人達はそれを祟りだと思っているらしい。そして都市開発は、その祟りを再び起こすことになる……そう考えている年寄りどもが反対派だ。 ヒューベロンド:その被害は今も続いているのか? バサラ:いや、たぶんその1人以降は出ていないな。だからこそ波風を立てたくないのだろう。 ヒューベロンド:甘い考えだな、そんな迷信がまかり通るほど、このミッドガルドは出来ちゃいない。 バサラ:ふん……。そうそう、その被害にあった人物だが、村長の所にいるナンナという娘と関係があるらしい。 ヒューベロンド:ほう。 バサラ:森の中に被害者のものと思われる墓が、ひっそりと作られていた。村人が祟りを恐れているなら年寄りどもが墓を作るとは思えん。村人に内緒で誰かが作ったのだろう。 ヒューベロンド:ナンナ……か。 バサラ:頷こう――お前は中から守れ。 ヒューベロンド:ああ、外はお前に任せる――村長の家へ戻ろう。 ◆子供の幻想◆
星空は宝石箱を引っくり返したような……それは本の中の世界に限った事だと思っていた。
GM:では夕飯の後、アルベルトとディアンのシーンです。アルベルトは今、それが本当の事だったと思い知らされていた。 ディアン:じゃあ屋根に寝そべって夜空を見上げながら、帝国の話を聞きたい。 アルベルト:十分に夜空に感激してから――帝国の話を? でも、あんまり面白い話無いよ? ディアン:そうなのか? アルベルト:だって、今日みたいな方がずっと楽しいよ! ディアン:俺はいつもの方が退屈だしなぁ……あ、でも積層都市だっけ? あれが建つと森も無くなっちゃうのかな? アルベルト:GM、どうなのでしょう? GM:無くなります。 アルベルト:あ……うん、無くなっちゃうと思う……。 ディアン:そうかぁ……遊び場が無くなっちゃうのは困るなぁ。 アルベルト:で、でも、都市の中にも自然はあるよ? 公園もあるし! ディアン:公園? そこって楽しいのか? アルベルト:う〜ん…、噴水もあるしアスレチックもあるし、他にも……。 ディアン:噴水!? アスレチック!? なんだよソレ! アルベルト:え、噴水を知らないの? アスレチックも?――さも当然と言うように(笑) ディアン:初耳だよ、何? 教えてくれよ? アルベルト:うん……噴水っていうのはさぁ――と両方説明します。 ディアン:へぇ〜〜そんなのがあるなら、積層都市が建つのも良いなぁ。 アルベルト:僕は……建ってくれないと……困る――少しイジケ気味に。 ディアン:なんでだよ? 建つ建たないって話し合ってるのは大人達だろ? お前は関係無いじゃん。 アルベルト:それはそうだけど……もし都市計画が無くなったら、僕はお父様と一緒に帝都に帰らないといけないし……。 ディアン:なんだよソレ、ずっとこっちに居ればいいじゃん! アルベルト:……そうも行かないよ、僕のお父様は帝国じゃ大変な仕事をしているんだ。僕だけ我が儘言うわけにはいかない。 ディアン:じっとアルベルトを見よう。1歳年下なのに、自分よりずっと大人なこいつを。 アルベルト:だから僕は、ディアンともっと遊ぶ為にも、ここに都市が建ってくれたらって思うんだ。 ディアン:な、なんだよ、そんなのずっと我が儘じゃねーか(笑) アルベルト:え? ……そうだね、確かに僕は……我が儘みたいだ(笑)
その日、少年達の笑い声が、いつまでも夜空に響き渡っていた。
◆村の禍根◆
少年達2人は、糸が切れたかのように眠りにつき、部屋にはヒューベロンドとナンナの2人が残っていた。
ヒューベロンド:夜中、少年2人が寝静まってからナンナに話をしよう。GM:ではパタンとディアン達が寝ているのを確認してからナンナが戻ってきましょう。 ヒューベロンド:食卓に座りながら――大変ですね? ちょうど遊び盛りだ。 GM:「……今、何か煎れますね、コーヒーで良いですか?」 ヒューベロンド:濃いのを。 GM:では2人分煎れて来てくれます。 ヒューベロンド:一口飲んで――うん、良い香だ。腕が良いんでしょうね。 GM:「お世辞でも嬉しいですよ」 ヒューベロンド:ふふ……まだ20にもいってないのに、弟の世話ばかりでは浮いた話も無いでしょう? GM:「そんなこと……」――と暗い顔をして――「ディアンは、本当の弟じゃないんです」 ヒューベロンド:む、話を変えられたが……これは聞いておこう、キャンペーン的に(笑) GM:「捨て子だったんです。あの子……だから必要以上に接してしまって、私達の事を家族だって思って欲しいから……」――と言うか、キャンペーンとか言わない(笑) ヒューベロンド:ふむ、では話を戻そう(笑)――それは、村で事件があってからは尚更……ですか? GM:息を詰まらせます――「どうして……それを」 ヒューベロンド:そういう仕事をしているもので。 GM:「……はい、その通りです。今回の一件がこのように長引いているのも、その事件が原因です」 ヒューベロンド:コーヒーを啜って話しを促す。 GM:「3年前の事です。私達、若者の間で村をもっと豊かにしようと、森を切り開いて開墾する動きがあったんです。計画は順調に進んで、木々を伐採したり荒地を耕したりしていたのですが……」 ヒューベロンド:事件が起こった。 GM:「……はい。クリーチャーはいませんが、狼ぐらいはいるので村にも自警団はあります。その団長が死んだんです」 ヒューベロンド:狼では無く……ですね。 GM:「あれは、あの傷跡はとても狼だとは……。それで村でハンターを雇う事にしたんです。あの人を殺したクリーチャーを討伐する為に。でも結局クリーチャーは見つかりませんでした。その後、契約が切れてハンターがいなくなってからも、そのクリーチャーは姿を現しませんでした」 ヒューベロンド:被害はその時だけだった……と? GM:首を縦に振って――「だから、村のお年寄りの方々は、あれは森を伐採しようとした罰が当たったんだ……と、森の祟りだったんだという話になったんです。だから今回の事を承諾すれば、今度こそ村に祟りが降りかかるって……事実最近――」 ヒューベロンド:最近? GM:言って良いのか迷い始めます。 ヒューベロンド:教えてくれますか? 俺でよければ力になりますよ。 GM:「最近、いつの間にか傷を負う村人が増えているんです。気が付くとふくらはぎが切れていたり、手に怪我を負っていたり……たいした怪我じゃないんです、カマイタチ程度ですし……でも、反対派の人達は祟りの前兆だって騒いでいて……」 ヒューベロンド:コーヒーを飲み干して――解りました。この村のことはアルベルト様も気に入っている。少し調べてみましょう。我々に任せて下さい。 GM:「ありがとう御座います」――ではカップを片付けに台所へ。 ヒューベロンド:窓に近づき――と、言うわけらしいぞ、バサラ。 バサラ:……登場。窓の外に居た――謎の傷害事件か。クリーチャー以外の何者でもあるまい。 ヒューベロンド:だが、村人達はここでクリーチャーが出るわけがないと思っているらしい。 バサラ:まったく、だから地べた這いの田舎人は嫌いなんだ。 ヒューベロンド:そう言うなよ。俺も猊下に拾われるまでは地べた這いの1人だったんだぜ? バサラ:ふん……明日の夜までに追い立てる、村は任せたぞ――森へ行って≪デジャ・ヴュ≫使用、片っ端から目星をつけた怪しい部分を破壊する。 ◆少年時代の絆◆
次の日の早朝、ディアンはバチっと目を開けると、いそいそと支度を始める。
GM:では次の日の――窓を開けてみれば少し冷たいがちょうど良い空気。 (これなら見れる!) 少年は早起きできた事に感謝しつつ、バッと寝巻きを投げ捨てた! ディアン:やりたいシーンがある。早朝、誰にも気が付かれないように起きだしてベッドを抜けるのですが、シグルドには見つかります。 GM:シグルドは首をかしげ――『どうしたの?』とばかり。 ディアン:しー! お前はアルベルトの所で寝てろよ? アルベルト:じゃあ登場……――ディアン? どうしたの、トイレ? ディアン:あちゃー……って思いつつ――しょうがねー、アルベルト、お前も来い。 アルベルト:え、どこに? ディアン:今から良い物見せてやるよ。姉ちゃん達にばれると嫌だから静かにだぞ。 アルベルト:あ、うん、わかった。 ディアン:急げよ。タイミングが大事なんだ――と森へ走って行く。
まだ太陽が昇っていないせいか、朝露は冷たく空気は清々しい。空はまだ暗い紫色をしており、朝日まではもうすぐだろうか。
アルベルト:う〜、さすがに寒いね?ディアン:そんな事いいから走れよ! 見られなくなるぞ!? アルベルト:待ってよディアン、見るって何をさ? ディアン:行けば解るって!――で到着するのは秘密基地です。 アルベルト:ここって……秘密基地だろう? ディアン:おう! 秘密基地には武器を貯めてある、侵入者用に罠も張ってある、でもそれだけじゃ足りない……わかるか? アルベルト:解んないよ、まだ士官学校に入ってないし。 ディアン:それは……見張り台さ! ほら、こっち――と基地の裏手に梯子が作られていて、それを俺は昇り始めます。 アルベルト:危ないよディアン! ディアン:大丈夫だって、お前も昇ってこいよ! アルベルト:シグルドとちょっと顔を見合わせながら……昇って行きます。 ディアン:じゃあ昇りきると、1番高い木の上に出ます。 GM:空はまだ星空。しかし少しずつ空の色が変わってくる。 アルベルト:やっと着いた……それで、何が見れるのさ?――ちょっと不満そうに。 ディアン:まぁ見てなって――
アルベルトが何か言い返そうとした時だった。少年の顔に光が差し込む。
アルベルト:すごい……太陽ってあんなに綺麗だったんだ……。それは山間から昇ってくる朝日。日の光に照らされ少しずつ色を変えていく空。 夜と朝の間にしか見られない、一瞬の風景。 ディアン:凄いだろう? 俺が1番好きな時間なんだ――その景色を見つめつつ。 アルベルト:今まで生きて来た中で1番綺麗だよ……街じゃこんなの見たこと無い。 ディアン:そっか……連れて来て良かった。これは姉ちゃんだって知らない俺の秘密なんだ。アルベルトは友達だからな、特別だぜ? アルベルト:うん、僕、ディアンと友達になれて良かったよ。本当に嬉しい! ディアン:へへ――鼻の下を人差し指で擦りながら照れる。
その日眺めた光景は、いつまでも2人の少年の心に焼きついたのだった。
◆村の異変◆
村の朝は早い、ある者は水を汲み、またある者は家畜の世話を開始する。
GM:ヒューベロンド、キミが寝ていると窓を通して朝日が顔を照らします。そんなありきたりの日常を、叫び声が断絶させる。 ヒューベロンド:もう夜明けか……――警戒しながらだったから微妙な目覚めだ。 GM:そんな事を感じながら、まどろみを漂っていると――『ギャー』――という若者の悲鳴が響き渡る。 ヒューベロンド:バスターソードを持って飛び出す。 GM:家の居間ではナンナと村長がアタフタしています。 ヒューベロンド:2人は家から出るな!――悲鳴が上がった方へ走ります。 GM:村のちょっと離れた所、村長の家からは近いです。そこに人が倒れています。背中をざっくりと切られています。 ヒューベロンド:≪ヒール≫……12点回復! それより周囲の気配を探る。 GM:【知覚】で判定して下さい。難易度は12です。 ヒューベロンド:……む、期待値だから合計10。特徴の[第六感]で振り直す……よし、13! GM:なら解ります。朝日に照らされて眩しいのですが、少しだけ血が空中に浮いています。 ヒューベロンド:もっと良く見る! GM:空間が歪んで見えます。歪みかたは……人型です。 ヒューベロンド:どうやら、バサラが上手くやったようだな――剣を構えよう。 ◆侵食されし者◆
興奮覚めやまぬアルベルトと、誇らしげなディアンは、朝日によって目覚め始めた森を村へと帰る。
GM:ではディアンとアルベルトのシーンです。今や2人の中に確実に芽生えた感情。 その絆は見えないけれど、2人は子供ながらにしっかりと感じていた。 アルベルト:帰りながら――ねぇディアン、明日も見に行こうよ? ディアン:どうだろう、その日の天気とか前の日の気温とかが合わないと無理なんだよな。 アルベルト:そうなの? じゃあ今日見たのはもう見られないの? ディアン:さぁ、もしかしたら見れるかもしれないし、もう見られないかもしれない。 アルベルト:そっか……。 ディアン:ま、また見られる条件だったら教えるよ、その時は一緒に見に行こうぜ? アルベルト:うん! GM:では2人はそこで【知覚】をどうぞ。 ディアン:えっと……俺は8! アルベルト:僕は11です。 GM:8のディアンは村が騒がしいのが解ります。アルベルトは10を越えているので全部解ります。太陽が昇っていて逆光だったせいで視界に写りにくかったのか……、少し行った所にナンナがいます。後ろ姿で肩を震わせています。 アルベルト:ナンナさん? GM:ナンナは――「どうして? どうしてあなたがいるの? そんな……生きているはずないのに、あなたはあの時!?」
ナンナがそこまで言った瞬間。にぶい音と共に何かが彼女の背中を突き破る。
アルベルト:えっ!?それは……手。 真っ赤な返り血に濡れた人間の手がナンナの胸に差し込まれ、背中まで一息に貫いていた。 ディアン:姉ちゃん?
貫かれた手から血が滴り、ゆっくりと引き抜かれる。
アルベルト:呆然と見ている。糸の切れた人形のようにドサァと倒れるナンナから、勢い良く赤い血が吹き出した。 ディアン:な……え? GM:ナンナを貫いた人物をディアンは見知っている。それは、かつてナンナの恋人だった男だ。当時のキミにとても優しくしてくれたクリスという青年。 ディアン:クリス……さん? GM:逆光の中、クリスはふっと笑って……キミ達に近づいてきます。 ディアン:でも、クリスさんはあの時……死んだはずじゃ……。 アルベルト:はっ!――ディアンの手を掴んで逃げます! ディアン:アルベルト? アルベルト:逃げよう!! ディアン:え、でも姉ちゃんが……。 アルベルト:ナンナさんなら大丈夫だよ! とにかく今は走るんだ!!!――シーンから退場。 ◆インビジブルストーカー◆
バサラの予想通り、その森には"奈落の落とし子(ダークスポーン)"が存在した。
GM:ここからクライマックスです。ヒューベロンドは目の前の敵を倒せばどのシーンにも自由に登場可能となります。バサラはどのシーンにでも登場可能です。クリスはディアンとアルベルトを追います。距離は10m離れています。捕まったらキミらは死ぬので必死で逃げましょう。それは奈落の種を村に蒔き、その不安と恐怖が育つまでゆっくりと待っていたのだ。 この村は、絶望の闇に侵食されつつあったのだ。 ディアン:俺等は『ザ・一般人』(笑) アルベルト:死ぬ気で逃げよう(笑) GM:まずヒューベロンドの方をやりましょう。こちらの行動値は11です。 ヒューベロンド:鎧を着て無いと思うから13だ。 バサラ:ヒューの方が早いのか……ならそこに登場。そいつを挟むように森から現れる――インビジブルストーカー、奈落の化け物か……ヒューここは任せな。
※解説6 「奈落」
ヒューベロンド:バサラ!?ミッドガルドに突如現れる虚無の空間を奈落と呼ぶ。奈落に飲み込まれて帰って来た者はおらず、これが発生した土地は、人間達に見放される。世界には奈落の使途と呼ばれる奈落を広めようとする邪悪な存在がいる。また、奈落の影響を受けて暴走した動物や存在もまた、奈落の落とし子として人々の脅威となっている。 バサラ:村の方へ別の使徒が出現しているはずだ、森にあった墓が何者かに荒らされていた。 ヒューベロンド:そうか……ここは任せる。お前との決着はまだついて無いんだ……死ぬなよ!――退場! GM:シーンPLをバサラとして、戦闘を続けましょう。バサラの行動値は? バサラ:6だ。インビジブルストーカーの方を見て―― GM:そこにはすでにインビジブルストーカーはいない! ≪奇襲攻撃≫で13命中! バサラ:ふん……14で回避。 GM:鉤爪が今までバサラがいた場所を霞める! バサラ:お前だけだと……思うなよ?――≪奇襲攻撃≫ GM:なにっ!?(笑) バサラ:義手と≪レーザーソード≫で攻撃だ、さらに≪ダブルウェポン≫も使用。 GM:しかしインビジブルストーカーは回避が高いんだ!―― バサラ:≪ヘイムダル≫使用でクリティカル命中にする。こちらを振り返った瞬間、義肢でガシッと首を掴む。 GM:インビジブルストーカーは驚愕します。 バサラ:そのまま≪レーザーソード≫で腹を貫く。ダメージは<光>の29点。 GM:<光>の29点って……即死したーー!? バサラ:ドサッっと投げ捨て――ふん、相手にならんな。
投げ捨てられたクリーチャーから闇があふれ出し、朝日の中消滅していく。
バサラ:自分を楽しませてくれる者は……やはり奴しかいないか。
◆次なる衝撃◆
アルベルトに手を?まれ、なすがままにディアンは走っていた。
GM:では追いかけっこです。今、目の前で起こった事が現実だったのか、それともただの夢なのか……正確に判断できないほど頭は混乱していた。 ただ1つだけ事実なのは、後ろから迫ってくるクリス(すでに体の各部分は崩れ怪物と呼んでも差し支えない)は、アルベルトの言う通り危険な存在だと言う事だ。 アルベルト:マイナーアクションで戦闘移動、メジャーアクションで全力移動! 36m逃げます! ディアン:え、俺って頑張っても33なんだけど(笑) アルベルト:ディアン、もっと早く走るんだ! ディアン:でも……姉ちゃんが……。 アルベルト:ディアンのスピードに合わせるって事で。 GM:ではクリスも移動をします。戦闘移動で15、全力移動で30、エンゲージします。 アルベルト:追いつかれた!? ディアン:クリスさん? GM:キミ等の行動値は? アルベルト:9。 ディアン:10。 GM:こちらは10です。ディアンだけ先に動けます。 ディアン:動くったって……アルベルトを置いては逃げれないし、待機する。 GM:では遠慮無く攻撃。対象はディアン、命中は14。 ディアン:俺!? ……無理、回避できない! アルベルト:それはかばう! 気がついたら自然と体が動いていた!!
ディアンの目の前で、再び赤が舞う。
ディアン:アル……ベルト。急に飛び出したアルベルトが眼前に立ち塞がった瞬間…… 背中から、姉と同じように真っ赤な腕が生えていた。 返り血がピュっと頬に飛ぶ。 アルベルト:逃げて……ディアン……。 GM:クリスは楽しそうに腕を抜いて、血を舐める。 ディアン:よくも俺の友達を……よくもーー!! ヒューベロンド:そこで登場しよう。ディアンの肩を掴んで――その怒りだけで十分だ。あとは大人に任せておけ。 ディアン:あんた……。 ヒューベロンド:少し離れておけ、危ないぞ。 ディアン:でも、でもアルベルトが!! ヒューベロンド:心配するな。俺はただの帝国兵じゃない……そこで見ていろ、神の欠片を宿した戦士……クエスターの戦いってものを!――≪コーーーール≫!!! GM:クリスを飛び越えるように、1台のパンツァーがヒューベロンドの前に飛び出し地面との摩擦音を上げ、ドリフトして急停車する。パンツァーのエギゾーストが戦いを急かすように響く。 ヒューベロンド:パンツァーに跨って――さぁ、始めようか。奈落の化け物さんよ! 帝国の力を見せてやろう。 GM:クリスはクエスターが相手と知り、その醜い奈落の本性を曝け出します。腕は鉤爪状に伸び、口は耳まで裂けます。今度こそブレイクぐらいはさせてみせる!(笑)
※解説7 「ブレイク」
ヒューベロンド:遅いぜ――行動値13で行動、≪チャージ≫使って命中は16!探索者はいつでもブレイクする事が可能だ。シーンに1回との制限はあるが、このブレイク状態になれば全ての受けたダメージは回復し、以降はマナなど代償を必要とする全ての力を、代償無しで使用する事が可能となる。 GM:高い……14で回避失敗。 ヒューベロンド:一撃で終らす――加護≪トール≫使用、ダメージに10D6を上乗せして……合計48の<神>属性! GM:ディアンの目の前で奈落の化け物が真一文字に両断される。クリスだったものは斬られた場所から黒い闇がはじけ、空中へと四散していきます。 ヒューベロンド:奈落へ帰れ、化け物め。 バサラ:なんだ、お前も一撃か……――登場。 ヒューベロンド:何、おまえがアレの相手をしてくれなかったら間に合わなかったさ。 ディアン:アルベルト! アルベルト!!――と、ゆすってる。 バサラ:間に合うか? ヒューベロンド:言っただろう? お前のおかげで間に合った……ってな――加護≪イドゥン≫使用。アルベルト様を復活させる。 GM:アルベルトの傷が癒え、脈拍が戻ります。 アルベルト:でもまだ気絶したままって事で。シグルドが僕の頬を舐めてくれます。 ディアン:よかった……――尻餅を付こう。 バサラ:じゃあ坊ちゃんを抱き抱えてキャンプへ戻るか、一応医者に見せないとな。 ディアン:ねえ! アルベルトは大丈夫だよね? バサラ:ふん……地べた這いの貴様に心配される言われは無い!――と去っていくのだが、途中で立ち止まると――すぐに元気になる――退場。 アルベルト:僕も自動的に退場にします。 ◆無力さを噛み締めて◆
アルベルトがバサラに抱えられたまま村から出て行く。
ディアン:良かった……本当に……良かった……――と途中から泣き始めて――っくしょう、俺は何も……ちくしょう!……うう……。ディアンはその場に座り込んだまま、アルベルトが生きていた事に安堵し……そして拳を握り絞めて涙を流した。 ヒューベロンド:ディアンの横に立って――感謝するぞ少年。 ディアン:なんだよ! 俺は何もしてねーよ! 助けたのは全部あんたじゃないか!!――八つ当たり。 ヒューベロンド:それに対して礼を言っているんじゃない。アルベルト様の為に怒ってくれてありがとうと言っているんだ。 ディアン:そんなの……そんなの当たり前だろ! アルベルトは俺の友達なんだ!――泣きながら怒ったように。 ヒューベロンド:その頭をワシャワシャと――ディアンと言ったな? ディアン:……なんだよ。 ヒューベロンド:今はまだ力が無いかもしれない……だがいずれ、お前は平和をその手で築き上げるほどの力を持つだろう、お前の瞳にはそれを成し遂げる力がある。 ディアン:……うん。 ヒューベロンド:今日の事を忘れるなよ。少年――去って行こう。 ディアン:あ、待ってくれ! いや、待って下さい!! ヒューベロンド:止まろう。 ディアン:俺に、俺にもその力を教えて下さい! 俺、強くなりたい……もうこんな思いはしたくない! ヒューベロンド:………………。 ディアン:涙も全部拭かずに、真っ直ぐに見つめます! ヒューベロンド:いいだろう。ならお前にコイツをやる――とポンとパンツァーを叩く。 ディアン:本当に!? ヒューベロンド:だがな、これを自在に扱えるようになるには相当な努力が必要だ。それが出来るか? ディアン:出来る! 出来なくっても出来るようになってやる! ヒューベロンド:いいだろう……――パンツァーを置いて去ります――これからも、アルベルト様の良い友人でいてくれよ、少年。 ◆亡き姉に誓って◆
その後、村を襲った厄災は祟りなどでは無く、奈落の化け物だったと発覚。
GM:ではディアンのエンディングからです。村の年寄り衆も迷信を信じる事をやめ、安全の保証を条件に都市建造計画に同意する事となる。 しかし、3年前のクリスに続きナンナまでが命を落とした事に、バーラル村は悲しみに包まれていた。 真帝国軍が一時的に村から引き上げて行った次の日、その日は薄暗い曇り空だった。 ディアン:帝国軍が引き上げた後、村では姉ちゃんの葬式が行われています。 GM:薄暗い空の下、暗い表情をした村人達に囲まれナンナの墓があります。 ディアン:姉ちゃんが好きだった花をお墓に供える――姉ちゃんごめん、俺に力が無かったばっかりに……。 GM:村長である爺ちゃんがディアンの肩を抱き寄せます。
少年はじっと墓を見つめていた。
ディアン:俺、決めたよ。
1人、2人と村人達が挨拶をして去っていく。 帰ろうと祖父が促すが、じっと見つめたまま少年は動かなかった。 やがて祖父も去り、その場には少年1人……気が付けば雲は晴れ、黄昏の夕日が沈む時刻だった。
夕日が沈み始め、地平線から少年の顔を照らす。
ディアン:俺もいつか、ヒューベロンドさんみたいに強くなる。強くなって姉ちゃんみたいに死ぬ人を、絶対に失くしてみせる! だから……だから俺のこと、ずっと見守っていてね。GM:夕日が一際紅く輝き、ナンナの墓もその前に立つ少年さえも暁色に染めあげる。 ディアン:俺は強くなる。絶対に……誰かを守れるよう、絶対に!!! ◆軍人の2人◆
ガラール枢機卿以下、真帝国軍は一時的にバーラル村から引き上げ近くの積層都市へと向かっていた。
GM:ヒューベロンドとバサラのエンディングです。それは計画実行可能の報告と共に、建造の技師や人手の手配を指示する為でもあった。 バサラ:場面は猊下への報告のシーンか? GM:そうですね。飛空挺の一室でレオニード・ガラールがキミ達に向かって――「懸念が当たっていて何よりだった。お前達がいなかったら、私は大切な1人息子を失う所であった……感謝するぞ、ヒューベロンド、バサラ」 バサラ:坊ちゃんは良い軍人になりますよ。ここで会ったばかりの友人を庇う……なるほど、猊下はその為に坊ちゃんを連れてきたのですね。人々を守るための、帝国軍人としての根本的な心構えを教える為に。 GM:「ふふ、そこまで見通してはおらんよ。それにアレの事も買いかぶりすぎだ」――嬉しそうに苦笑します。 ヒューベロンド:しかし、今回のことでアルベルト様が一回り成長なされた事は事実ですよ。いずれあの方は、この帝国にとって無くてはならない人物となるでしょう。 GM:「そうなってくれる事を節に望むよ」 バサラ:それは親として、それとも枢機卿としてですか? GM:「両方と言ったら、卑怯かな?」 バサラ:肩だけすくめてやれやれと(笑) ヒューベロンド:大丈夫ですよ。そう遠く無い未来、アルベルト様がそうなるまで我々が守ってみせます――キランと腕輪のシャードが輝く。 GM:「ああ、頼りにしているともクエスター。だが、シャードの力にも限界はある」 ヒューベロンド:ナンナを助けられなかった事を思い出す。 バサラ:正確には坊ちゃんがシーンを切ったから≪イドゥン≫での復活が不可能になったんだがな。 アルベルト:僕のせいだったの!?(一同笑) GM:まぁ、そうですが話を続けます――「この世界に絶対は無いのだ……だからこそ、一刻も早く完全な世界を、真帝国による千年王国を築かねばならん……これからも、尽力して欲しい」 ヒューベロンド:ここは決めゼリフか? バサラ:平和を我が手に? GM:いえ、ここでガラール枢機卿は別の決めゼリフを言います――「――これからも尽力して欲しい……全てはミレニアムの為に」 ヒューベロンド&バサラ:『全てはミレニアムの為に』 ◆神の欠片は◆
アルベルトが次に目覚めた時、そこは空を行く飛空挺の医務室だった。
GM:最後はアルベルトのエンディングです。その前に一つ質問、シグルドはどうしたい? 村に置き去りにしてディアンに預けておく? それとも今も一緒にいる?窓の外には白い雲が後方へと流れていくのが見える。 「僕は……助かったの?」 アルベルト:う〜ん。 GM:ちなみにその選択いかんによって、この後もすぐにディアンと会えるかどうかが変わります。 アルベルト:……後で決めます。 GM:了解。では飛空挺が飛び立って間もなく。目覚めると横の椅子にはガラール卿が座っています。 アルベルト:お父様? GM:「目が覚めたか……アルベルト」 アルベルト:あの……僕はあの時――。 GM:「瀕死の重態だった所を、ヒューベロンドの力で一命を取り留めたのだ」 アルベルト:ヒューベロンドさんが……。お父様、ごめんなさい。ご迷惑をお掛けしました。 GM:「謝る必要は無い。あのような危険が存在するのならば、より警備を厳重にしておけば良かったのだ。私の過失だよ」 アルベルト:いえ、油断していた僕が悪いんです……あの時、もっと早く気が付いていれば……。そうだ、ディアンは!? GM:「彼も無事さ……だが、彼の姉は……」 アルベルト:ナンナさんは……やっぱり。 GM:「アルベルト、たとえ神々の力を持ってしても、絶対なんてものは無いのだ。お前のように死の淵から生き返れる者と、生き返れぬ者。その境界線はあいまいだが、明確に存在する」 アルベルト:………………。 GM:「ヒューベロンドが傷を回復する魔法を使える事は知っているな? だが、それ以上の力を彼は持っている」 アルベルト:それ以上? GM:「ヒューベロンドの腕輪を見たか?」 アルベルト:あれは前に……ただの宝石だって―― GM:「あれは"シャード"だ」 アルベルト:シャード……神々の欠片と言われる……でも、なんでヒューベロンドさんがそれを? GM:「それは私にもわからんな、私と出会った時すでに彼はシャードを持っていた。気になるなら今度本人に聞いてみるといい……ただ1つ解っている事は、彼はシャードを持っている……そして、それを帝国内で公(おおやけ)にしてはならない」 アルベルト:人間一人が手にするには強大すぎる力だって……でもあの時、僕にその力があれば……。 GM:「そうだな……お前にその力があれば、もしかしたら救えなかった者も救えたかもしれない」 アルベルト:グッっと両の拳を握る。 GM:「アルベルト、お前はこれから成長していく度にいろいろなものを見、学んでいく事だろう。だからこそ、お前は力を得る度、常に自問しろ。自分は何の為にその力を得るのか、その力を行使するのか……をな」 アルベルト:僕は……ナンナさんのような人を作りたく無いです。僕に力があったなら、あの時ナンナさんを救うことも、ディアンを守ることもできたのに……。 GM:「解っている。私もバーラル村に関してはできる限りの援助をするつもりだ」――立ち上がってアルベルトの肩に手を置き――「もう二度と、あんな被害者は出したくないからな……」 アルベルト:……はい。 GM:「もう少し休め、あと半日も経てば付近の積層都市に到着する。体も疲れているだろう」――ドアを開け、閉まる前に――「わずかな間だったが……良い友達だったか? 彼は?」 アルベルト:初めての友達でした。そして……最高の友達でした。 GM:ガラール卿は少しだけ振り返り、父親として微笑む――「なら、それはとても良かった」 アルベルト:ドアが閉まり、それと共にシグルドがベッドの上に乗ってきます。 GM:シグルドは一緒なのか……ならこの後、積層都市の建造計画は進められ、ガラール卿とアルベルトはその新たに建造される積層都市ヨハネ=パトモスへと移住します。 アルベルト:じゃあまたすぐにディアンとは会えるんだ。 GM:そうなりますね。 アルベルト:窓の外、流れ行く空を見つめながら呟こう――皆を守れる力を……いつか、きっと。
それから数年間、アルベルトとディアンは積層都市ヨハネ=パトモスにおいて、至福の子供時代を過ごす事となる。その数年間の想い出が、どれほど価値のあるものだったのか……それに2人が気が付くのは、もう少しだけ、先の話……。
◆キャラクターデータ◆ アルベルト=ガラールクエスターLV:―― クラス:ファイター2/エレメンタラー1 加護:無し 年齢:8 性別:男 種族:人間 身長:――cm 髪:灰茶 瞳:緑 肌:白 体力:16 反射:13 知覚:13 理知:9 意思:10 幸運:12 シャード:無し ライフパス: 出自:芸術家/特徴:審美眼 境遇:秘密/クエスト:真実の探索 邂逅:慕情/コネクション:ヴィルヘイム=グーデリアン大佐 特技:無し 装備:無し 備考:真帝国枢機卿レオニード・ガラールの1人息子であり、誰よりも優しく素直な少年。 ディアン=ノースウィンド クエスターLV:―― クラス:パンツァーリッター2/ファイター1 加護:無し 年齢:9 性別:男 種族:人間 身長:――cm 髪:黒 瞳:青 肌:浅黒い 体力:16 反射:14 知覚:12 理知:10 意思:9 幸運:12 シャード:無し ライフパス: 出自:指導者/特徴:カリスマ 境遇:売買/クエスト:契約の執行 邂逅:幼子/コネクション:ソフィー=ウィルマー 特技:無し 装備:無し 備考:孤児だった所を拾われ、バーラル村で育てられたやんちゃな少年。誰にでも物怖じしない性格。 ヒューベロンド クエスターLV:3 クラス:パンツァーリッター1/ファイター1/ホワイトメイジ1 加護:ヘルモード/トール/イドゥン 年齢:24 性別:男 種族:人間 身長:182cm 髪:茶 瞳:茶 肌:黄 体力:15 反射:13 知覚:11 理知:11 意思:11 幸運:12 シャード:色彩≪赤≫ /形状≪楕円≫ /場所≪腕輪≫ ライフパス: 出自:賞金首/特徴:第6感 境遇:復興/クエスト:解放 邂逅:友人/コネクション:バサラ 特技:≪コーリング≫1/≪チャージ≫1/≪パンツァーT≫1/≪戦士の手≫1/≪ヘヴィウェポン≫1/ ≪ヒール≫1/≪マジックアーマー≫1/≪マジックシールド≫1/≪ムーンライト≫1 装備:バスターソード、ホプライトシールド、プレートメイル、パンツァーT 備考:元賞金首のクエスターであり、ガラール卿の右腕の1人。世話好きで庶民染みている。 バサラ クエスターLV:3 クラス:アルフ1/スカウト2 加護:フレイ/ヘイムダル/ヘイムダル 年齢:20(外見) 性別:男 種族:アルフ 身長:180cm 髪:銀 瞳:灰緑 肌:白 体力:10 反射:14 知覚:14 理知:11 意思:10 幸運:15 シャード:色彩≪炎色≫ /形状≪義肢のデザインライン≫ /場所≪オートメイル(腕)≫ ライフパス: 出自:帝国兵/特徴:義肢(左腕) 境遇:修行/クエスト:強い奴を探す 邂逅:主人/コネクション:レオニード=ガラール枢機卿 特技:≪デジャヴ≫1/≪レーザーソード≫1/≪ダブルウェポン≫1/≪奇襲攻撃≫1/ ≪フェイドアウェイ≫2 装備:レーザーソード、バックラー、プロテクター 備考:ウートガルドを追放されたアルフ。地上を侮蔑し真帝国を特別扱いする。真面目で戦闘好き。 ALSHARD ff Campaign Replay
MIDGALD MILLENNIUM PHASE−01「少年時代」 FIN 次回予告―― あれから5年。 アルベルトは帝都の士官学校へと入学し、着々と夢への道を歩んでいた。 ある日行われる学生演習。 それはとある人質交換作戦への同行だった。 襲撃を受ける飛空挺、遭難する学生達。 落下する飛空挺の中、アルベルトが出会う存在とは!! ミッドガルド・ミレニアム 第2話『平和への翼』 キミの翼が、神話へ続く。 |