1999年9月20日 BEAST BIND 魔獣の絆R.P.G 発売
本格ロマンホラーRPG ――エゴなくして我にあらず―― ――愛なくして人にあらず―― それは日本最後のオリジナルTRPGだった。 第6話 魔女の抱擁 GM・シナリオ作成 SIN 登場キャラクター チャチャ=ホーリー/チャチャチャ=ハロウィン
Azaとの出会いは偶然にして宿命だった。カビ臭い書庫で見つけた奇妙な本。
まるで自分の半身を求めるように本を手にした私は、そして……悪魔の力を得た。 Azaは私を守り、本能の力を振るう。私は孤独となり、絆の為に力を振るう。 それはもう正義とは呼ばないのかもしれない。それでも私は、それを信じている。 私の名は五月女さつき。魔女と恐れられる女だ。 ■零章■ GM:それではプレイを始めたいと思います。GMはSINが務めさせて頂きます……では、各キャラ自己紹介をどうぞ。チャチャ:はい! 今回はピンで参加なチャチャ=ホーリー、新都小学校の3年生! アーキタイプは地獄の道化師! GM:保護者である死神は今回いませんので、あまり暴走しないように。 チャチャ:了解であります(笑) GM:では続いて新キャラその1どうぞ。 御剣:御剣戒(みつるぎ かい)。現役の刑事をやっている。外見年齢22歳の男性だ。 チャチャ:警察って事は、野白さんと同じ死霊課なの? 御剣:死霊課? 窓際族の溜まり場"資料編纂課"なら知っているがな。 GM:まぁそんなわけで、御剣は普通の刑事です。警察機構に魔物専門の部署がある事を知るのは少し後の事となります。 御剣:そういう事だ。今は自分の目的の為に活動しやすい仕事をしているだけだしな。 チャチャ:目的? 御剣:俺の本性は魔剣で、真の銘を"朱塗刀の赫映(しゅぬりとうのかぐや)"と言う。戦国は安土桃山時代に生まれた大太刀だ。だが、今の俺は四割しか刀身が無い。俺の目的というのはその折れた半身、双子の姉を見つけ出すという事だ。 チャチャ:それで刑事なんだ。 御剣:姉は俺より本能に忠実だからな、この仕事をしていればいずれ手掛かりを掴めると思っている。ちなみに業に<全周囲攻撃>を取得しているが、これは姉と融合しないと使えない業だ。 GM:では使わないのですか? 御剣:御剣的には使えないんだ。PL的に言うと自分縛りだな(笑) チャチャ:かっこいい(笑) GM:了解しました。それでは3人目の方、自己紹介どうぞ。 五月女:五月女さつき(さおとめ さつき)。 チャチャ:早乙女? 五月女:いや、五月に女と書く。高校2年生の女性。他のクラスメートからは鋭く冷たいと言われる目をした、教室でも孤独な一匹狼。平均より高めの身長も手伝って、周囲からは不良だと思われている。 チャチャ:不良なの? 五月女:自分ではそのつもりは無い。タバコも犯罪もしないしな。ただ―― チャチャ:ただ? 五月女:趣味はバイクだ。 チャチャ:不良じゃん(笑) 五月女:違う……が、まぁそれが噂に拍車をかけている事は認めるよ。もっとも、私としては馴れ合うつもりは無いから、周囲から話しかけられないのは都合がいいけどね。 GM:「絆」を重視するビーストバインドとは思えない発言をしますね(笑) 五月女:いや、そういう絆を作らないようにするのにも理由がある。私にはAzaという悪魔が憑いていてね、それがいつ暴走するか解らない……だから、自分に近しい友人は作らないようにしているんだ。 御剣:自分に近づけば、その者が危険にさらされるから……か。 五月女:ああ。そういう事。このAzaと共生するようになり、私は人外の力を手に入れた。初めは戸惑った事もあったけど、今は上手く折り合いをつけているつもり。 GM:では主人格は核となる人間"五月女さつき"ですね。 五月女:そう。私は力を手に入れた……望む望まぬに関わらず。だけど、人に無い力があるのなら、私は私の信念に従って、それに伴う責任と行動をしようと思って生きている。 御剣:つまり魔物の事件には首を突っ込むと? チャチャ:正義の味方? 五月女:自分を正義と思った事は無いよ。ただ、少しばかり放っておけない性質でね。 チャチャ:………………。 GM:どうしましたチャチャ? チャチャ:まずいよGM、今回は2人ともカッコイイよ! 私どうしよう!?(笑) GM:じゃあ緩衝材にでもなっていて下さい(笑) そうだ五月女、キミには事前に妹がいる設定を送りましたよね? 五月女:マユという妹がいる。中学一年生らしい。確か半年前に事故で両親を失い私の家に来た。 GM:そうです。親戚の五月女家に養女に来た霧山マユという子です。元々住んでいたのが都心だったって事で、昔からの知り合いとして下さい。 五月女:絆を書き換えておく。彼氏なんていないだろうから、その分を回そう。 チャチャ:GM? 半年前ならよく遊んでもらった近所のお姉ちゃんって事で、マユちゃんを絆で取っても良い? GM:新規取得を先にしたいと? 別に構いませんよ。でも半年前って事はチャチャが不死川の家に来る前の話ですね。 チャチャ:うん、まだお父さんとお母さんと幸せに暮らしていた頃の友達なお姉ちゃん。 GM:まぁOKです。 御剣:俺はそのNPCに関わるのは無理だな、接点が無い。 GM:では【知性】にある同僚の絆を、「飯山大介」と書き換えてくれますか? 冒頭に出てくるので。 御剣:それは構わない。では大介と変えておこう。 GM:書き換えた皆さんには「愛」を6点差し上げます……それでは第六話を始めましょう。
※なお登場キャラクターのデータは最後に載せてあります。
■序章■
1999年4月、新しい年度が始まり人々が希望と不安に社会へと溢れ出る季節。
GM:最初は御剣の場面です。同僚の飯山大介と共に、キミは都内をパトカーで警邏中です。都内の混雑はもちろん交通にも現れる。 そんな混雑を避けるように1台のパトカーが大通りから1本外れた道を警邏していた。 御剣:じゃあ俺は助手席で。 GM:解りました。運転は大介がしています。混んでいる大通りをさり気なく避けて裏道に入ってみたり。 御剣:おい大介、大通りを行かないと駄目なんじゃないのか? GM:「そう言うなよ、せっかく4月で風も気持ちよくなってきたんだ。混んで無い道を行った方が気持ちいいだろ?」 御剣:絆判定(コロコロ)……失敗(笑)――駄目だ。元の大通りに戻れよ。 GM:「ったく、お前は本当真面目だよなぁ……尊敬するよ?」――大介は呆れつつも素直に車を大通りに戻します。大通りは大介の言うように車もそれなりに多いです。 御剣:大通りに出て沢山の人間を見つつ――いや、俺は尊敬される程立派じゃないさ。大介、尊敬する人物を俺以外に変える事をお勧めする。 GM:「はっはっ、じゃあお前が尊敬する人物を教えろよ? そいつを俺も尊敬するぜ? それなら文句は無いだろう?」 御剣:むぅ……誰を言おうか真面目に迷うか。 GM:まぁ、そんな他愛の無い話をしている最中、大介は気がつかないのですが―― 御剣:開けた窓に肘を乗せて、外を眺めていたり。 GM:では御剣は見ます。白い病院服を着た女の子が車の前に飛び出してくるのを!! 御剣:危ない!!――大介のハンドルを強引に取って、車をガードレールに向ける! GM:少女とぶつかりそうになった瞬間、なにか大きな気配が車にぶち当たった感じがします。そして御剣は気を失う。 御剣:う゛っ!!
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GM:暫くすると、全身を襲う激しい痛みと共に目覚めます。パトカーから投げ出されたらしく、道路にうつぶせで倒れています。御剣:う、く、……てて……――立ち上がってあたりを見回そう。 GM:周囲は沢山の車が横転したり玉を突いていたりと大惨事です。 御剣:大介は?……パトカーはどうなっている? GM:大きな高熱がパトカーをかすって通ったようで、運転席側の1/4が融解しています。 御剣:なっ! GM:大介は超高熱に融かされたかのように、手首から先とかしか残っていません。 御剣:まさか……いや、そんな馬鹿な!?――他の車は? GM:全滅です。普通の人間なら誰も生きていないでしょう。 御剣:人間技じゃ……ない?……あの時一瞬見た白い服を来た少女か? GM:それではSAを渡します――『同僚の仇を討つ』。さらに飯山大介の絆をエゴに落として下さい。 御剣:どこの誰だか知らないが、落とし前は付けさせてもらう。 ■第一章■
1999年7月、従兄弟であったマユが私の家に引き取られて1ヶ月が経った。
GM:では五月女さつきの場面です。従姉妹のマユがキミの家に引き取られ。一緒に暮らすようになってから1カ月。マユは13歳の中学1年生、キミの記憶だと明るく元気な良い子でした。今年の初めに飛行機事故にあって両親を亡くしたマユ、6月に病院から退院し、行くあてのなかったマユを私の両親は引き取った。 私自身は、マユが家族になろうと、一緒に住む事になろうとどうでも良かった。 危険に巻き込まないよう、父や母と同じく距離を置く存在……それに変わりは無いのだから。 五月女:引き取られる原因は? GM:今年の初めに飛行機事故に遭い両親を亡くしました。それで引き取り手がなかったので五月女家で引き取ることになったのです。 五月女:従兄弟だしな。 GM:マユは1カ月前まで入院していたので、まだ本調子では無いです。朝、朝食を取っている時、父親がマユに――「マユ、お前、学校を休んだんだってな? 昨夜先生から連絡があったぞ? 学校をサボって何をしていたんだ?」 五月女:マユは? GM:ビクっとして口を噤みます。 五月女:黙っていよう。 GM:「マユ、聞いているのか? そんな頃から学校をサボってどうする。まだ中学生だろう、義務教育中は学校に行く事が仕事なんだぞ」――と、マユは助けて欲しそうな視線を姉に。絆判定をして下さい。 五月女:(コロコロ)……11、失敗(笑) 黙って朝食をとっている。 GM:では絶えられなくなったマユが、朝食も途中でタタタっと階段を駆け上がって部屋に行ってしまいます。父親が――「こらマユ! 話はまだ終わって無いぞ!!」 五月女:……父さん。言い過ぎだよ――静かに食べ続けながら。 GM:「……だが、マユもうちの娘だ。甘やかすわけにはいかん」 五月女:かもしれないけど……。ご馳走様でした――心配そうに二階を見上げよう。 GM:ではSAを渡します――『マユを守る』です。 五月女:私は家族とも距離を置きたいキャラなんだけど……SA(心の拠り所)か、なんとかしよう。 ■第二章■
都心にあるとある公園で、2人の少女が遊んでいる。
GM:一年前の話です。チャチャ。姉妹のように歳の離れた少女達だった。1人は小学生、もう1人は小学生高学年か中学生だろうか。 それは1998年。今から一年前の光景だった。 チャチャ:一年前かぁ……まだ魔物である事実を知らなくって、普通に楽しい毎日を過ごしていた頃だね。 GM:そうです。キミは近所に住んでいた優しいお姉さんであるマユと、近くの公園で遊んでいたりします。 チャチャ:私が2年生、マユちゃんが6年生……登校班(地域の小学生達が集団で登校するグループ)で一緒だったのかな?――マユちゃん遊ぼー♪ 五月女:呼び捨て? チャチャ:仲の良いお姉ちゃんを呼ぶ感じで(笑) GM:「チャチャちゃん1人? いいよ、遊ぼっか?」 チャチャ:うん♪ GM:「はい、フラフープ」 チャチャ:じゃあフラフープやって遊ぶ――わーい♪ 五月女:それって1人遊びじゃない? チャチャ:はっ!?(笑)――これは一緒じゃないよ!!(笑) GM:「あはは、ごめん、ごめん。じゃあはい、けん玉」 チャチャ:うん、けん玉で遊ぶ――わーい♪ GM:「はい、縄跳び」 チャチャ:二重飛び二重飛び! ビュビュン! ビュビュンッ! GM:「はい、1人あや取り」 チャチャ:1人あや取り……って!――バシーンっと全て叩きつけて――全部1人遊びだよ! しかも遊びが古いよ!!(一同爆笑) GM:「しょうがないなぁ、外遊びはやめて家で遊ぼっか?」 チャチャ:しょうがないって言うか……マユちゃん最初からそれが狙い?(笑)
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GM:そのように遊んでいたのは一年以上昔のこと、その後、チャチャは引っ越したり、事件に巻き込まれたりし、学校も転校してしまいマユとは自然と疎遠になっていました。そんなある日、学校帰りに1人で歩いていると、道の遠くに見覚えのある人影を見ます。チャチャ:あれ? マユちゃん? GM:そうですね。ちょっとトボトボと歩いています。元気が無さそうです。 チャチャ:マユちゃーん!――呼ぶ! 気が付いてくれないなら走る! GM:「え?……あ……チャチャちゃん?……駄目、来ちゃ駄目っ!」――と言って走って行きます。 チャチャ:(コロコロ)……絆判定成功。足を止めよう――マユ……ちゃん? 五月女:そこで登場しよう。後ろからチャチャの頭に手を置いて――ごめんね。あの子最近、元気無いんだ。 チャチャ:さつきお姉ちゃん?――知ってて良い? GM:五月女が良いなら。 五月女:マユ繋がりの知り合いという事で――別にチャチャの事が嫌いになった訳じゃないから。 チャチャ:どうして? マユちゃんに何かあったの? 五月女:……ちょっとね――PLは何があったか知らないけど(笑) チャチャ:私も急に引っ越しちゃって……でも、今度家に遊びに行くね♪ 五月女:……ありがとう。今はマユも私の家に一緒に住んでいるから、来るなら私の家に来るといいよ。きっとマユも喜ぶから。 GM:では2人で「芽生え」判定しましょう? 五月女:(コロコロ)……【感情】で7点だ。「愛」が足りないから元からあった学校の友人を削ろう。 御剣:学校の友人はいないのか。 GM:一匹狼ですね。 五月女:私はそういうイメージだし問題無い、チャチャはマユを思ってくれているみたいだし共感かな? GM:チャチャは? チャチャ:私も【感情】で芽生えた……どうしよう? ろんりーウルフだとあまり遊んでくれそうにないしなぁ(笑)……恐怖で! GM:おお、チャチャにも苦手な人が(笑) チャチャ:ちょっと怖いお姉さんってイメージ。 GM:ではチャチャにSAを上げます――『笑いについて考える』 チャチャ:マユちゃん関係無いし!!(笑) ■第三章■
警視庁の資料室にて、1人の刑事がパソコンに張り付くように事件を調べていた。
GM:玉突き事故から3ヶ月、今は7月です。御剣はカモフラージュのギブスなども取れ、世間体的にも全快し自由に動けるようになりました。今から3ヶ月前、4月に起こった謎の玉突き事故。 事故に巻き込まれた人は全て死に、生き残ったのはたった1人だった。 その1人――刑事である御剣戒――は、あれを『偶然の事故』で終らせるつもりは無かった。 御剣:4月の事件はどうなったんだ? GM:不幸な偶然が重なった交通事故で処理されています。 御剣:そんな馬鹿な! 俺はあの時、白い服を着た少女を見た! あの少女を避けようと事故になった事も説明したはずだ! 五月女:その少女、魔物かも知れないのに調査に来た刑事達に言ったの? 御剣:そうか……車が融解していたんだよな……。迷うな、エゴで振って流されたら言った事にしよう。「飯山大介の仇を取る(使命)」(コロコロ)……成功。エゴに流され言ってしまった。 GM:了解です。キミは事故を調べに来た刑事に見た事を全て話してしまいました。しかし、4月の事故は普通の事故として調査は終了しています。 御剣:なんだって? 白い少女や車が融解する程の熱については調べてないのか? GM:当時の調書を調べると、そのような記述は一切無くなっています。生き残った御剣の証言も記録されていますが、そこに少女の事は書かれていません。事故の写真は普通の車がひしゃげた写真にすり替わっています。 御剣:どういう事だ? さらに調べてみるぞ。 GM:では<情報>で判定して下さい。 御剣:(コロコロ)……よし、成功。 GM:事故の調査は強引に打ち切られたようです。警察上層部から圧力がかかったようですね。 御剣:警察上層部が隠そうとしたのか? 犯人は上層部と繋がりが? GM:あ゛〜…誤解が無いように説明すると、警察組織は魔物の存在を知っていているが、それを隠している……という話を風の便りに聞いた事があります。 御剣:あの噂は本当だったのか? 魔物専門の部署があるとか無いとか……。 GM:都市伝説のようなものだと大半の人は思っている噂です。もちろんあなたもその1人です。 御剣:だが、俺は現に人間技じゃない事故現場を見た。噂が本当なら大介を殺った奴は……――「強い剣士に会いたい(欲求)」(コロコロ)……――魔物、か。俺が戦うに値するだけの強さを持っていれば良いのだがな――ニヤリ。口の端を歪めながら資料室を出て刑事課の部屋へ戻ろう。 GM:すると戻ってきた所で上司から――「おお御剣、どこ行ってたんだ! 復帰早々悪いんだが新都中学校に行ってくれ、爆発事故がおきたらしい。お前以外に手が空いて無いんだ至急向かってくれ!」 御剣:了解しました――部屋を出て呟く――爆発事故……か。どうやら、運は俺に向いているようだ。 ■第四章■
私はAzaと出会い人外の力を得た代わりに、家族や友人との絆を失った。
GM:では五月女のシーンです。学校が終わり家に帰ってくると、母親からマユが学校から帰って来ていない事を伝えられます。普通にしていても、どこか距離を置くようになったのは自分からだったが、いつの間にかその距離が当たり前になり、気がつけば1人になっていた。 傷つけたく無いから距離を置く。それが当たり前の日々。 そんな日常に突如割り込んできたのがマユだった。 マユと暮らすようになって、その少女にはなぜか距離を置けない自分を……私は不思議に思っていた。 五月女:あ、母親はいない。共働きで二人とも昼間は仕事なんだ。でも家にマユが帰ってきてないって事は解った。 GM:どうします? いつもなら中学校が終って帰ってきている時間です。 五月女:最近のマユを見ていると、友達と遊んでいるってわけでもない……か――とりあえずは家で待とう。 GM:では午後5時ぐらいになって電話がかかってきます。 五月女:出る。
その電話は、学校からの電話だった。
五月女:(コロコロ)……駄目だ。<交渉>に失敗した。なにやら学校にて事故があったらしく、生徒の所在の確認をする連絡だった。 私は事故の事を詳しく聞こうとするが……―― GM:「まだ詳しい事が解っていないので……」――と電話は切れます。 五月女:家を出てバイクに――埒があかないのでマユの学校に向かいます――ドルルウゥーー!! チャチャ:そこで登場! この前の事が気になって、さつきお姉ちゃんの家に来たって事で! 五月女:じゃあ家のガレージからバイクが急発進して来て、チャチャを轢きそうになる(笑) チャチャ:うわあっ!? 五月女:チャチャの目の前で急停車!――チャチャ!? チャチャ:さつきお姉ちゃん?……マユちゃんは? 心配だったから来たんだけど。 五月女:うん……――少し悩んでから――乗って。マユの学校で事故があったみたいなんだ。あの子、まだ学校から帰って来てなくてね。 チャチャ:後ろのシートに乗りながら――え、事故って……マユちゃんが!? 五月女:解らない……けど、嫌な予感がするんだ。
飛行機事故で両親を失い、1人ぼっちだったマユ。
私は、そんなマユに孤独な自分を重ねているのだろうか? わからない……ただ、不安だけが募った。 ■第五章■
新都中学校。1年生のとある教室。そこはガス爆発でもあったかのような惨状だった。
GM:では御剣は現場に付きました。偶然にも被害者は居ない。爆発が放課後であった事と、付近に生徒がいなかった事が幸いした。 御剣:状況は? GM:普通の警察が――「火元となるようなものは何もありませんでした。クラブの練習中だった生徒の証言によると、爆音とともに窓ガラスが吹っ飛んだ……と」 御剣:なるほど、被害が無いのは何よりだが、火元が無いというのは気になるな……鑑識はまだか?――と言いつつ、自分でも現場に入って調べよう。さっきの警察官には校舎に誰も近づかせないよう野次馬を下がらせるように言う。 GM:「了解しました」――と警察官は野次馬を学校の校門まで押し返します。現場の教室に入ると爆心地がわかります。 御剣:確かに火元は無い……か。 GM:ありませんね。そして御剣は気が付きます。爆心地と思われる場所は、完全に融解しています。 御剣:融解? それほどの超高温が? やはりあの時と同じ現象か……俺の勘が当たったな。 チャチャ:そこで登場! あんど「目立ちたい」(コロコロ)……成功! 大きな声で――でもー! 入っちゃ行けないってさっきの警察の人が言ってったよー? いいのー?(笑) 御剣:ピク。 チャチャ:廊下から聞こえます。だんだん教室に近づいてくる。 五月女:私も登場。そして「物理的活動を行いたい」(コロコロ)……失敗、でも行動はする。 チャチャ:何をするの? 五月女:チャチャに拳骨。ゴチンッ! チャチャ:いーたーいー!(涙) 五月女:目立つ事するな。 チャチャ:(コロコロ)……「目立ちたい」成功、でも(コロコロ)……さつきお姉ちゃんの絆で抑えた――うう、ゴメンなさい……。さつきお姉ちゃん、怖い。 御剣:しかし十分目立っているしな、教室のドアの所で立ち塞がろう――一般人は立ち入り禁止だ。 五月女:私の妹がこの学校に通ってるんだ。まだ家に帰ってこない。この事故に巻き込まれたんじゃないのか? 御剣:この爆発事故に? 悪いが一般人に詳しい話をするわけにはいかないんだ。 GM:と、出会ったのだし「芽生え」判定でもしますか? ――結果 御剣:「知性:チャチャ(契約)」「肉体:五月女(同郷)」 チャチャ:「感情:刑事さん(信頼)」 五月女:芽生えず 御剣:学校での事件だし子供の気持ちは汲んであげないとな。 五月女:私への同郷はなぜ? 御剣:妹を探しているんだろう? 俺も自分の姉を探しているからな、何か感じる所があるんだ――妹を心配する気持ちは解るが……ここは危険だ。さっさと出て行け。 五月女:無視して勝手に調べる。GM、<発見>が無いから【感情】でいいか? GM:かまいません。 五月女:(コロコロ)……く、失敗。 GM:でも爆心地とその融解した惨状は解ります。 五月女:じゃあいつの間にか爆心地の近くに片膝を付いて――床が融解する程の高温の爆発だと? 御剣:あ、こら!! 五月女:現場が融解する程の事故……<情報>で過去の事件を思い出したい。 GM:難しいですよ? 難易度5です。 五月女:2D振りをしよう(コロコロ)……クリティカルだ(笑)
爆心地を見た時、私はとある光景を思い出していた。
五月女:4月の交通事故……あれと同じか――つぶやく。4月に起こった交通事故の現場。警察はただの事故だと済ましていたが、私は気になって近くから双眼鏡で現場を観察したのだった。その時、確かこのように融解した傷跡があったのを思い出す。 御剣:それは聞いて驚こう――お前! あの事件を知っているのか!? 五月女:警察が握り潰したのは知っているし、ここは黙って睨みつけよう。マユが関わっているかもしれないこの事件、握り潰されるわけにはいかない。 GM:御剣は同僚を奪ったあの事故を思い出します。「破壊したい」でエゴ判定。 御剣:うおっ、そうなのか!(コロコロ)……やばい、成功した(笑) 絆で押さえ込む(コロコロ)……のは失敗!(笑)――ドガンッ!!――急に近くの壁を思いっきり殴ってしまう! チャチャ:ビクッ! としてさつきお姉ちゃんの影に――私、まだイタズラしてないよ? 五月女:チャチャを庇いながら、さりげなく観察――この男……なにか怪しい。 チャチャ:ど、どうしたの? 刑事さん大丈夫? 御剣:じゃあ落ち着こう……――ああ、大丈夫だ。4月の事故に俺の同僚が巻き込まれてね……同じ犯人だと思うと……な。 チャチャ:そんな事件があったの? 御剣:ああ、あの時と手口が同じなんだ。……詳しくは言えないがな。 五月女:お前は隠そうとしないのだな。 御剣:なんの事だ? 五月女:……なんでも。 御剣:………………。 チャチャ:ねぇGM、私も<発見>して良い? 爆心地に立って調べる(笑) 御剣:爆心地にって――おい! そこは入っちゃ駄目だ!!――チャチャの方へ行こう。 GM:爆心地か……難易度は3で良いです。 チャチャ:(コロコロ)……成功! GM:ではチャチャは解ります。ちょうど融解した爆心地には、誰か小さな子供が立っていたような大きさだけ融解を免れています。チャチャが自分で立ってみた感じだと、自分より少し大きな子供かな? チャチャ:じゃあ刑事さんに呼ばれる声も無視して、一瞬だけ真面目な顔で周りを確認して――私より少し大きいぐらい……中学生の魔物? 御剣:それは聞こえて良いのか? チャチャ:良いよ。心の中で呟いていたのがつい漏れちゃったって感じだし。 GM:じゃあチャチャに近づいていた御剣には聞こえたけど、五月女には聞こえなかったって事で。 五月女:わかった。 御剣:なら俺は止まろう。チャチャを掴もうとしてその呟きを聞く。そして心の中で思う――(魔物だと? この少女……知っているのか?) 五月女:私は後ろから刑事の肩を掴んで――おい、目撃者はいないのか? 見てなくても何かを近くで聞いたとかも。 御剣:ん、あ、ああ……いない。せいぜい爆発音を聞いたクラブ活動中の生徒ぐらいだ。 五月女:役に立たないな。 御剣:なに? いや、それより一般人は立ち入り禁止だ。すぐに出て行け。 五月女:目撃者がいないなら4月の事件との共通性は無いのか? お前なら何か知っているんじゃないか? 御剣:何を―― チャチャ:ねぇ、さつきお姉ちゃん。刑事さんも言っているしここは帰ろう? 五月女:チャチャ? チャチャ:ここは刑事さんに任せよう。ここにマユちゃんは居ないよ、きっと……。 五月女:………………。まぁマユが爆発現場に居ても困るしな……――ああ、わかった。 チャチャ:私はこの事件が魔物っぽいと感じて、一般人(だと思っている)さつきお姉ちゃんを、この事件から引き離そうとしているって事で。 御剣:ああ、ここは俺達に任せろ。ほら、さっさと出て行け。 チャチャ:出て行く。退場します。 五月女:最後に一つ――刑事さん、1つ聞いていいかな? 御剣:……なんだ。 五月女:今、目の前に4月の犯人が現れたら? あんたはどうする? 御剣:エゴ(コロコロ)……絆(コロコロ)……押さえた――無論、捕まえるさ。警察としてな。 五月女:………………。――それには何も言わずに去っていこう。
事故現場で会った刑事の目には、只者じゃない光が宿っていた。
それは普通に生活していたら決して灯る事の無い光だ。 あれは目的の為なら力を振るえる光。 もし犯人が4月の事件と同一人物なら、あの男はきっと力を抑える事はしないだろう……。 嫌な予感が少しずつ広がっていく。幾度となく経験した感触……。 私は、この事件を調べる事が、闇の世界へ一歩ずつ踏み出す事だと知っている。 私の中で……Azaが身じろぎする。 ■第六章■
警視庁は刑事課の一室。夜勤では無いにも関わらず、御剣戒は1人事件について調べていた。
御剣:俺は深夜遅くまで事件について調べています。ついでに昼間出会った金髪の少女(チャチャ)についても調べます。4月の事件、そして今日起こった爆発事故。 なんとしても犯人を追い詰め、そして……―― GM:では資料を広げて調べていると、部屋に1人の男が入ってきます。真っ赤なコートに長髪の年齢不詳。 御剣:知っている人ですか? GM:話したことは無いですが、有名な窓際課――資料編纂課――の課長です。名前は紅(くれない)。 御剣:窓際と言いつつ課長か――どうしました? ここは部署が違いますよ? GM:紅課長はドアの所に立ったまま――「キミは今日あった爆発事件について調べているようだな」 御剣:関係ない部署からのツッコミに不機嫌に答えます――ええ、担当ですから。 GM:「忠告しておく。今のまま、平穏な生活が送りたいのなら……もうこの事件には関わらない方が良い」 御剣:何を言ってるんです? まだ原因も犯人も解ってないのに、手を引けるわけが無いじゃないですか。 GM:「それには及ばんよ。明日にはただのガス爆発だったとカタがつく」 御剣:はっ? あんたは何を言ってるんだ? あそこにガスのパイプは無かった。そんな適当な理由で片付くわけが無い。 GM:「そう思うなら、そう思っているが良い。明日になれば解る」――紅はそう言うと部屋から出て行こうとします。 御剣:そこで気がついて呼び止める――待て! 4月に起こった交通事故、あれを握り潰したのはあんたか!! GM:紅は振り向いて――「言い忘れていた……その事故に対しても、これ以上調べるのはやめるんだ。引き返せなくなるぞ」 御剣:ふざけるな!! 俺の友人はあの事故で死んだ! いや、アレは事故なんかじゃない! 誰も信じなくても、俺はそれを知っている!! GM:「……まぁ、オマエが深入りすると言うのなら、これ以上止めはしないさ」 御剣:………………。 GM:「諦めずに調べると言うのなら、今年の初めに起こった飛行機事故を調べてみるが良い」 御剣:あんたは……いや、あなたは何を知っている。 GM:「"同じ側の住人"……キミと、私と……そしてその資料の少女もな」――とチャチャの資料を見つつ。 チャチャ:はっ!? NPCにバラされた!?(笑) GM:紅は暗い廊下をカツカツと靴音を響かせて去って行きます。 ■第七章■
中学校で事故があった日。夜になってもマユは家に帰って来なかった。
GM:その日、マユは帰ってきませんでした。別に何か証拠があるわけじゃない……けれど、私には確信があった。 あの事故に、マユが関わっている確信が……。 五月女:夜、父さんの前に行って、面と向かって聞きます――最近のマユ、少し変だと思う……お父さんはどう思う? GM:「正月旅行で飛行機事故に遭って、両親をいっぺんに亡くしたんだ、元気もなくなるだろう。昔ウチに遊びに来ていた頃と変わっていても仕方の無い事だ」 五月女:それは私も理解してる。 GM:「それに……その飛行機事故で唯一生きていたのがマユだっただろう。奇跡の少女として騒がれたのも、マユには辛かったのかもしれないな」 五月女:……私が聞きたいのはそこじゃない。ここ十数日のマユについて……本当に何も知らないの? GM:「………………」――父親は黙ります。<交渉>して下さい。 五月女:父さん、マユは私の妹だ。何か事件に巻き込まれているかもしれないんだ――(コロコロ)……成功。 GM:「……マユからは口止めされていたんだがな……」――そう呟くと父親は語ります――「マユはな……奇跡の子としてマスコミで騒がれたせいか、学校でイジメにあっているんだ」 五月女:!?――GM、それは初耳? GM:初耳です。父親は続けます――「病院から退院して中学に登校し始めてかららしい、父さんと母さん、担任の先生とも相談して対処して居たんだが……」 五月女:それは……どうして……私には……。 GM:「お前には言わないでくれと、マユが泣いて頼むんだ。言えるわけが無いだろう……それに、マユは父さんと母さんにとっても実の子と同じだ。親が力になってやらずに誰がやる」 五月女:でも……だからって……なんで私に言わずに。 GM:「わかってやってやれ。私や母さんはいつも仕事でマユとはあまり面識が無かった。だがお前は違う、事故の前から、マユはお前にだけは懐いていたじゃないか。だからマユは――
私は解っていた。
GM:「――マユは、お前に心配をかけたくなかったんだろ……。言えばお前にも迷惑がかかると思ってな」父親が次に何を言うのかを。 そしてそれは、私が1番聴きたくなかった言葉であるという事を。 ――ずしりと胃に鉛を注がれたかのような重みを感じた。 『言えば迷惑がかかると思って』 ――その言葉は……ずいぶんと聞きなれた言葉だった……。 ■第八章■
一方、マユについて自力で調べようとするチャチャは、保護者の持つ資料(過去の新聞の山?)を引っくり返していた。
チャチャ:そこまで解ったら、さつきお姉ちゃんの家に行く。登場して〜?やがて正月に起こった飛行機事故と、奇跡の少女と騒がれた事実、そしてマスコミから逃げる為に、名前の伏せられた病院に入院していた事を知ることになった。 五月女:じゃあ登場しよう。私は自分の部屋で1人立っている。ドアに背を向けて窓から外をじっと見ている。部屋には勝手に入って来ていいので。 チャチャ:じゃあお邪魔します……って入って来よう――ガチャッ……さつき、お姉ちゃん? 五月女:いいよ、好きなとこ座って。 チャチャ:ベッドとかに座ってから――あのね、マユちゃんの事で―― 五月女:――チャチャ。あなたはマユの事をどう思ってる? チャチャ:え? マユちゃんの事を?……もちろん、友達だよ♪ 五月女:じゃあ、友達になら、チャチャは何でも話す? 嘘も付かなければ、隠し事もしない? チャチャ:あう、それは私にとっても心にナイフが刺さるよ……。親友のさくらちゃんを思い浮かべながら――うん、友達だもん。何でも言い合うよ。嘘なんて付くわけ無いじゃん☆ GM:「涼宮さくら(友情)」の絆で振りなさい。 チャチャ:うぐ(コロコロ)……成功。でも私は地獄の道化師! エゴ「イタズラしたい」で打ち消す(コロコロ)……これも成功! 素直な笑顔で嘘を付く!! 五月女:なら私はチャチャの笑顔に心打たれよう……その真っ直ぐな瞳に自分の心が痛む。 チャチャ:うう……でも、ここは言えない。言えるわけない。 五月女:私は……無理だ。どんなに心を許していても、何でも言い合える親友だとしても、入って来て欲しくない一線がある。言えない事が私には……ある。 チャチャ:さつきお姉ちゃん……。 五月女:私には、誰にも言えない事がある。……だからかな、だからマユの事にも気がつかなかったし、私は……、私は自分の事さえ解っていなかった……。
私がマユを心配するのは、マユを自分と重ねていたからだろう。それは確信に近い。
五月女:私は……マユが養女になるって家で暮らし始めても、あの子を慰めた事は1回も無いし、話を聞いてあげた事も無かった。
だからこそ、今のマユが、誰とも会おうとせず逃げ回っている事も理解できる。 今のマユは……まさに私自身だ。
今、私は自分がどうしようも無く卑しい人間だと思ってしょうがない。
五月女:安…心…してたんだ。自分だけじゃないって、孤独なのは自分だけじゃないって。私はなぜ、マユが1人ぼっちになり家へやって来た時、すぐに手を差し伸べてあげなかったのか。 『……傷つけたく無いから距離を置く……』 詭弁だ。 私はそれを理由にマユを助けなかった。 私はそうやってマユが孤独になるのを見て、心の底で―― チャチャ:………………。 五月女:私は最低の人間だ。いや、私は人間のつもりで、いつの間にか心まで悪魔になっていたのかもしれない……人が不幸になっていく様を傍観し、それで安堵を得る……身も心も、本当の悪魔に。 チャチャ:違う……違うよ! 五月女:なにも違わない。あの日あの時から、私は少しずつ人間じゃなくなって行ったんだ……。今だってマユの事を助けに行かずに逡巡してる。マユが今、1番会いたくないのは私だと解るから、それを理由に、私はマユがさらに落ちるのを待っている。 チャチャ:そんな事無い! さつきお姉ちゃんは本気でマユちゃんの事を心配してた! 入っちゃいけない事件現場まで忍び込んでマユちゃんの事聞いてたじゃん!! 五月女:寂しくフッと笑って首を横に振ろう――私が本当にマユを救おうとしたかったのなら、私はこうなる前に気が付いてあげられていたはず。でも私は解らなかった……解ろうとしてなかったから。だからマユが本当に助けて欲しいと求めていた手に、気が付いてあげられなかった……。 チャチャ:……何か、あったの? 五月女:………………。 チャチャ:………………。 五月女:……マユ、学校でイジメられてたんだ。事故のせいで目立ったせいかな? それとも、事故のショックで元気が無くなったからかもしれない……、とにかくそれで、イジメっ子たちに目を付けられて……。 チャチャ:そんな……。 五月女:GM、爆発事故の当日、マユがイジメっ子に呼び出しを受けて、事故のあった教室に行っていた……とか、そういう裏は取れる? 父親から話を聞いて、すぐに調べると思うんだけど。 GM:難易度2の<情報>で。 五月女:(コロコロ)……3で成功。 GM:その通りです。4人グループに呼び出しを受けていたそうです。 五月女:あの日も、マユは呼び出されていたみたいなんだ……。 チャチャ:マユちゃん……――私は「何かを破壊したい」のエゴを振ります(コロコロ)……失敗。でも行動!――許せない! お父さんとお母さんが死んじゃったら、すっごく辛いんだ! そんなマユちゃんをイジメるなんて……絶対に、絶対に許さない!! 五月女:チャチャ? チャチャ:そのイジメッ子達の名前と住所教えて! 私が仕返ししてやる!!!
思ったまま、感情のまま行動する目の前の少女に、私は思わず心が熱くなる。
GM:チャチャが叫ぶのと声が重なるように、五月女の中のAzaが言います――『殺せ、そいつらを殺せ……』――エゴ「物理的活動を行いたい」を振って下さい。なぜだろう? マユを助けなかったのは、マユを自分と同じ孤独にするためのはずなのに……。 五月女:(コロコロ)……成功。その4人を心の底から殺したくなる。
Azaが拳を振るえと背中を押してくる。
五月女:マユの絆で押さえる(コロコロ)……成功。戸惑いつつ――バキッ!!――壁を殴る。なぜだAza? 私もお前も、マユが落ちるのを待っているのでは無いのか? 私の問い掛けに、悪魔の嘲笑を含んだ声が答える。 『我は汝が欲望の炎に、油を注いでいるだけだ』 私の欲望? 私はその4人が憎いのか? 『何を今更……共に行こうぞ。汝が思うがまま……』 チャチャ:ビクッとして興奮が止まる。 五月女:チャチャがいるので冷静になりつつ、心の中で自分の行動に理由をつける――(マユが事件の中心なら、きっとその4人が関係している、今は自分の欲望とやらに身を任せよう。ただ、……普通の人間であるチャチャを巻き込むわけにはいかない……) GM:なるほど。 五月女:チャチャ、イジメのことは私に任せて欲しい。家族の私が、何とかしたいんだ。 チャチャ:……うん、わかった。 五月女:代わりにマユが入院していた病院……――と住所を教えます――入院していた時、マユに何か変わった事が無かったか聞きに行ってくれるかな? マユが両親の事を引きずっているなら、当時の看護士なら何かマユから聞いているかもしれない。 チャチャ:うん、わかった。私行って来る。 五月女:気をつけて。 チャチャ:うん!!――退場。 五月女:ではチャチャが消えた所で私の影が悪魔に変わる。ゴゴゴゴゴ……。 GM:「物理的行動をしたい」をもう一度。 五月女:(コロコロ)……成功。絆で押さえる(コロコロ)……押さえた――駄目だAza、殺しに行くわけじゃない。殺しに行くわけじゃ……。
私の心の中でAzaが呟く……
――『ならば、何をしに行く?』―― 冷たい悪魔の言葉に、私は返す言葉が無かった。 ■第九章■
窓際課の奴に言われ、御剣が過去の事故を洗いなおしていた。
GM:――と、そんな情報が手に入ります。正月の飛行機事故、奇跡の少女、霧山マユ、入院した匿名の病院。 霧山とは五月女マユの元の苗字だろう。そして、その入院していた病院の場所は……。 飯山大介が死に、あの病院服の少女を見た、4月の事故現場のすぐ近くだった。 御剣:俺はどうすればいい……あの少女は大介と、関係ない一般人をたくさん殺した……。だが、あの子にもその身を案じる姉がいる。 GM:そうですね。 御剣:それにあのチャチャ=ホーリーと言うこの少女――資料の写真を見つつ――本気でマユという子を心配していたのは確かだ。それとも人殺しが露見する事を恐れた演技だったのか? チャチャ:信じて〜(笑) 御剣:じゃあチャチャの絆で(コロコロ)……信じよう(笑)――いや、とてもそんな事をする子には見えなかったが……。 GM:これからどうしますか? 御剣:次の日、その病院へ行ってみる。何か情報があるかもしれないしな。 GM:了解です。では御剣は匿名のその病院へとやって来ました。 チャチャ:なら登場! 病院で看護士さんから聞き込みし終わって、病院から帰る所です。ちなみに看護士さんから何か情報って聞けた? GM:それは<情報>か【知性】で判定して下さい。 チャチャ:<情報>なんて無いし、【知性】は2だよ(笑) なので<愛情でカヴァー>(コロコロ)……4で成功、達成値は半分になるから2! GM:マユが入院している時、マユの部屋ではやけに物が壊れたり、夜中に火の玉を見たりした看護士がいたそうです。 チャチャ:普通に怪奇現象だし……。 GM:それに話によれば、入院した頃のマユは、ずっと「お母さんが助けてくれた」とか「お母さんは今も一緒にいる」とか言っていたらしいです。 チャチャ:お母さんが? 一緒にいるって言うのは入院した時だけ? GM:いえ、マユが退院するまで何度か同じような台詞を聞いた看護士もいたみたいですね。 チャチャ:そうか……嫌だなぁ、事件の真相がなんとなくわかったよ。 GM:五月女に連絡しますか? チャチャ:……しない。私がマユちゃんだったらどうだったろう?って考えると、答えが出ないもん。迷う……。トボトボ歩きながら呟いてる――お母さん……か。 御剣:そこで声をかけよう――ちょっといいかな? チャチャ:え? 御剣:キミは、五月女マユの姉と一緒にいた小学生だね? チャチャ=ホーリーと言ったかな。どうしてこんな所に? チャチャ:べーつーにー。 御剣:……。実は五月女マユについて調べていてね。どうだい、そこの喫茶店でちょっと話そうか。 チャチャ:………………。 御剣:好きなものを食べても良いよ。 チャチャ:じゃあ行く。 GM:妖精で無いから、別に食べ物で釣られないでも……。 チャチャ:いや、イタズラを思いついて……と、お店に入ったら全メニューを注文する。 御剣:目が点になる。 チャチャ:好きなのだけ食べる。あとは食べない。一通りやってから――それで、刑事さん、何? 御剣:あの学校であった爆発、それに似た4月初めの事故、もしかしたら五月女マユはその両方に関係している可能性が出てきてね。 チャチャ:………………。 御剣:ま、キミを呼び止めたのはそこじゃ無い……キミはあの事故現場で、何かを理解したね。 チャチャ:………………。 御剣:あの爆発の威力、あれは人間には不可能な痕跡だ……。そしてキミはあの時、確かに『魔物』と呟いた……合っているね? チャチャ:ビクッ(笑) 御剣:<心理学>(コロコロ)……成功。 チャチャ:バレてますね――な、なんの事か、わかんないなぁ〜。 御剣:まぁ隠していてもしょうがない事だ……安心してくれ、俺もキミと同じだ。 チャチャ:え? どういうこと? 御剣:そのままの意味だ。俺もキミと同じ……それ以上でもそれ以下でも無い。 チャチャ:じゃあ……――すっごい警戒態勢に入る! 御剣:そう構えないでくれ。別にキミと敵対しようとしているわけじゃない、ただ、事件を解決させたいだけだ。 チャチャ:………………。 御剣:俺の携帯電話の番号を教えよう。直通になってる。 チャチャ:マユちゃんの事しっかり調べてくれる? 御剣:ああ、大丈夫だ。 チャチャ:これ、私の連絡先、共同電話だから不死川京介って人に繋げてね。保護者だから。 御剣:わかった。 GM:と、そこで御剣の携帯に連絡が入ります。 御剣:はい。 GM:「御剣巡査、また爆破事件です」 御剣:三件目か……。直ちに急行する。
………………………………………………………………………………………………
御剣:被害者の身元は?そこは繁華街の裏通りだった。 目撃者は無く、ただ3体の死体が焼け焦げていた。 死因は焼死。 爆心地は前と同じく融解しており、3体の死体はどれも爆心地から離れようとしたのか、そこから遠ざかる途中で余波を食らって死亡したようだった。 GM:余波だった為いくらか所持品も残っており、それらの証拠品から、被害者は新都中学校の女生徒3人との事です。PLへの情報で言うと、この3人はイジメっ子グループの3人です。 御剣:目撃情報は? GM:「今回の件に関してはありません。ただ第一発見者で警察への通報を行ったのが、この3人と仲の良かった女生徒であり、ただいま署の方で話を聞いている所です」 御剣:なるほど、では署へ―― GM:「――あ、そういえば、現場ではありませんが、同じ制服を着た少女を付近で見たとの情報もあります」 御剣:今の時間は? GM:まだ高校は授業中です。 御剣:……可能性は高いな。 GM:ついでに<プロファイリング>をどうぞ。成功すればこの現場について少し情報をあげます。 御剣:(コロコロ)……成功。 GM:裏道のこの場所は、大通りからも見えないですし、弱者を一般人に見られずにいたぶるのに丁度良い物影ですね。 御剣:誰かをターゲットにカツ上げか、何かをしようとしていたのか? これは……決定打かもしれないな。 ■第十章■
「ウチの娘なら昨日から帰ってませんが? どうせどこかを遊び歩いているんでしょ」
五月女:4人とも帰ってこない?マユを苛めていた生徒達の親は、どこも同じような反応だった。 共通するのは、すでに親から諦められているという事だ。 GM:<情報>でどうぞ。 五月女:(コロコロ)……成功。 GM:3人が事件に巻き込まれたようです。4人目は第一発見者として警察で調書を取られているようですね。 五月女:なら4人目は夜には帰ってくるか……――警察無線の傍受を解除して、家の前で張り込む。 GM:では夜になってパトカーに送られて4人目の子が帰って来ます。 五月女:警察が居なくなってから尋ねよう。 GM:最初は母親が出ますが、すぐに引っ込んで4人目の女子中学生が出てきます。 五月女:何が言いたいか解るね? 私に全てを教えて。 GM:「あの子のお姉さんがなんの用よ!」――ビビッてますね。五月女はこの辺りで有名だろうし。 五月女:話してもらうよ、あなたがやった事はだいたい解ってる……でも、その事じゃない。 GM:「じゃ、じゃあ、何よ!」 五月女:隠さないで全て話して。そうすれば貴方は今まで通りの人生を過ごせる。 GM:「別に、私の知っている事は全て警察に話したわよ! 警察に聞けばいいじゃない!」 五月女:警察はいつから動いていたと思う? 3ヶ月前よ、だけどあなたのお友達を警察は助けてくれた? このまま警察に頼っていても同じ結末よ。 GM:「そんな、私は……」 五月女:………………。 GM:「最初は4人で行動していたのよ……でも、私はお金がなくなってきたから下ろしに行って……そしたら、リーダーから連絡があって『あいつを見つけた。この前の事。話つけてくる。来たければきな』って……、それで行ってみたら3人が路地裏で……」 五月女:貴方の言う"アイツ"って言うのは、マユの事ね。 GM:「だって……、話かけても無視するし、イジメやすかったから……」 五月女:そんな理由で? GM:「しょうが無いじゃない! リーダーがそう決めたんだ! マスコミに騒がれて調子に乗ってるって! きっと金も一杯貰ってるって!」 五月女:………………。 GM:「でもどうして! なんで私達が死なないといけないのよ! 理不尽じゃない!!」
私は、私の心が冷たく凍て付いていくのが解った。
GM:「もう帰って! 私は関係無い! もう3人も死んだんだ! 十分でしょ! 私は良いじゃない!」
目の前の人間は何を喚いているのだろう? 自分達で追い詰めておいて、逆襲されたら自分達のやった事は知らない? やったのは自分では無く群れのリーダーのせいで、自分は従っただけだから無実だ……と?
身勝手で自己中心的で傲慢で利己的で憎悪な、この目の前の生物は何?
GM:「物理的行動を行いたい」でエゴ判定をして下さい。細い首は少し力を加えればボキリと折れるだろう。 その腹部に手を差し込めばバターのように背中まで貫けるだろう。 汚く醜いその舌を掴み、これ以上の醜悪な言葉が吐かれるのを止めてやろうか? 五月女:まずいね、マユのことを想うと、このままエゴに流されたいよ(コロコロ)……うん、成功した。Azaに変身して殺すか? GM:構いませんよ? Azaが本気を出せば死体すら残さず始末する事も可能です。 五月女:じゃあ―― チャチャ:駄目だよ! それじゃあマユちゃんがイジメられてた事を隠していた意味が無いじゃん! 五月女:どこからかチャチャの声が……。でも、確かにその通りかもしれない。マユの絆で止まるなら辞めよう(コロコロ)……成功。エゴを押さえた。 GM:「私が、私が何をしたって言うんだ!!」――半分泣きながら喚いています。 五月女:……別に。あなたは何もして無いさ――去ろう。 GM:「う、うう、うう……」――泣き崩れています。
何もしていない……。
それは……誰に言った言葉だったか……。 ■第十一章■
その夜、新宿にある高層ビルの屋上に、御剣戒は1人で来ていた。
チャチャ:刑事さんに電話して、夜、とあるビルの屋上に1人で来て欲しいと連絡する。時間は21時で。あの少女からの呼び出し。 約束の時間はすでに過ぎ、1時間と59分が経っていた。 GM:解りました。その場面をやりましょう。ビルの屋上に先に来ているのは? 御剣:俺だ。10分前からすでに来ている。 チャチャ:じゃあ(コロコロ)……1時間59分ほど遅れてやって来る(笑) 御剣:俺も気が長いな(笑) チャチャ:登場は魔物変身して、さらに<ジャック・オー・ランタン召還>(コロコロ)……6体召還。 御剣:給水タンクの上あたりに現れるのか? チャチャ:うん、フワリと降り立つよ。周囲のジャック達がケタケタ笑いながらね♪ 御剣:そちらから呼び出しておいて、2時間の遅刻は無いんじゃないか? チャチャ:ゴメンゴメン☆ でも、この姿を見ても驚かないんだね? 御剣:当たり前だ。俺も同じだと言っただろう。 チャチャ:じゃあマユちゃんに対しても同じ意見? 御剣:ああ……正直、国家公務員というのは大変でな。表での動きは楽だが、こういう動きはしづらい。 チャチャ:それで、何が知りたいの? 御剣:結論から言うと、彼女がなぜ殺しをしているかが知りたい。特に……3度目の事件だ。 チャチャ:3度目の事件?――本当に不思議そうに聞き返すね、私は知らないし。 御剣:それは説明しよう――……そして、3人は爆心地から逃げようとして黒焦げだ。 チャチャ:……マユちゃんはさ、飛行機事故で1人だけ助かったせいで奇跡の少女と言われているけど、きっとお母さんが助けてくれたんだと思う。マユちゃんはそれをお母さんと言うけど……たぶん、本当は私達と同じ存在なのかもしれない。 御剣:なるほど。彼女が殺しているのではなく、彼女に憑いている"何か"が殺している……か。 チャチャ:それならマユちゃんが逃げ回っているのも納得できる。 御剣:……ああ。 チャチャ:ねぇ、一つ約束して。あなたは最初の事件で友達をマユちゃんに殺されたのかもしれない……。でも、だからってマユちゃんやさつきお姉ちゃんは関係無い。危害を加えないで欲しい。 御剣:約束しかねるな。五月女マユとその魔物が同一の可能性もある。 チャチャ:それでも……それでも約束して欲しい。私の友達を殺さないで。 御剣:だが、このまま放っておけば、事件は続くかもしれんぞ。 チャチャ:大丈夫だよ。 御剣:何を根拠に? チャチャ:だって、私はマユちゃんを信じているもん。 御剣:すでに2度、3度の事件は起こっている。 チャチャ:それはこれから説得する。 御剣:解ってないな。これはすでに人間の法では裁けない領域だ。次があればその時は俺たちのやり方で決着を着ける。それが五月女マユ、本人に悪意があろうと無かろうとな。 チャチャ:ただの暴走だったら? 御剣:説得に応じたのなら、殺さないと約束しよう。 チャチャ:でも、マユちゃんの意思で殺しているなら……刑事さんは殺すんだね。 御剣:コクリ――頷きます。 チャチャ:………………寂しそうな顔をして――この世界にはさ、人間も魔物も私達みたいな半端者もいっぱいいるよ。確かにその中には救えない人もいる。でも、きっと誰かとみんな繋がっているんだ。ずっと笑顔でいたいと思っている……。私は、刑事さんを信じるよ☆ 御剣:ふ……約束は守るさ。チャチャと言ったな……もし、説得が無理で俺が彼女を殺そうとした時、キミはどうする? チャチャ:それは退場しつつ言おう――戦うよ。私の友達を守る為に……。 ■第十二章■
次の日の朝。共働きの両親が仕事に出かけた後、結局私はマユを探しに行く事にした。
五月女:チャチャ……学校は?私は自分が何がしたいのか解らない……ただ、マユに会えば何か解る気がした。 マユの事を救いたいのか……それとも……―― そんな事を考えながら準備をしている時だった。玄関からここ数日で聞き慣れた声がしてくる。 「さつきお姉ちゃ〜〜ん? マユちゃんを探しに行くんでしょー? 私も行く〜〜!!」 チャチャ……。マユの友達で、マユの事を本気で心配してくれる子。 チャチャ:潰れた。 五月女:(笑) く、くだらない事を。 チャチャ:えへへ――と笑ってから――探しに行くんでしょ? 私も行くよ☆ 五月女:………………。いや、駄目だ。 チャチャ:え、なんで!? 五月女:あなたは学校に行きなさい。探すのはそれから。 チャチャ:なんで―― GM:と、チャチャが騒ぎ出すのを断ち切るように、五月女家の電話が鳴ります。 五月女:出よう――「はい?」 GM:『さつきお姉ちゃん?』 五月女:!?――「マユ!? 今、どこに居るの」 GM:『ごめんね……私が……私がいるとみんな……』――と話すマユの後ろでは電車の出発の音楽と――新宿発箱根行き急行列車……という駅ホームの放送が僅かに聞こえます。 五月女:「マユ!!」 GM:『ごめんねお姉ちゃん……さよなら』――プツ、ツーツーツー。 チャチャ:どうしたのさつきお姉ちゃん? 五月女:電話を切って――マユが……。 チャチャ:マユちゃんが!? どこ、今の音は新宿駅? 五月女:たぶん……でも今からじゃ間に合わない……。 チャチャ:間に合うよ! 早くバイクで行こう!! 五月女:いいえ、バイクじゃ間に合わない。 チャチャ:じゃあどうするの!? 五月女:ダッと走って家を出ます! チャチャ:徒歩!? 無茶だよ!!
チャチャが静止する声を後ろに、私は内なる自分に語りかける。
『……良いのだな?』 闇から響く声は限りなく甘美で、底知れず冷たかった。 私はその甘い囁きに返答し、そして心を凍らせる。 そして―― 私の体が黒い闇に覆われ、すぐさま別の存在へと変貌を遂げる。 悪魔……そうとしか見えない姿に。 『では行こうか? 我と汝の欲望のままに』 私を追ってきたチャチャが角を曲がれば、すでにそこに私の姿は無い。 背中からコウモリのような翼が生え、私は空へ舞い上がっていた。 その私にAzaが囁いた―― 『孤独の闇、我等が世界へ……』 ■第十三章■
一方、新宿駅西口交番からの情報で、御剣の探していた人物――五月女マユ――と思わしき人物を見たとの情報が来る。
御剣:五月女マユさんだね――声をかける。御剣は急ぎ駅へと向かい、そして発見する。ホームの公衆電話で話をしている少女を。 GM:電話を切ったマユは涙を拭いてから――「誰?」 御剣:キミの友人から頼まれてね。チャチャ=ホーリーと言ったかな。 GM:「チャチャちゃんが?」 御剣:それにキミのお姉さんも探している。一緒に来てくれないか? GM:「いえ……私が一緒にいると、きっと迷惑をかけるから……だから、すぐにココを離れないと……」 御剣:それなら、話をしてからでもいいんじゃないかな? 今のままキミが旅立ってしまったら、キミのお姉さんと友人は、きっと追ってくると思うよ? GM:「………………ごめんなさい。やっぱり、今は会えません」 御剣:なら、せめて行く場所を俺に教えておいてくれないか? 会いたくなったら俺に連絡してくれ、そうしたらキミのお姉さんも友人も連れて行こう。 GM:「あなた……何なんですか?」 御剣:失礼、御剣と言う、警察の者だ。 GM:「警察……やっぱ駄目! ごめんなさい、私といると皆が危ないの!」――さっと身を翻して、出発寸前の電車へ走りこんで行きます。 御剣:追って回り込む。 GM:では<運動>で難易度2ね。 御剣:(コロコロ)……成功、マユが乗り込む前に、目の前に立ち塞がります――待つんだ。そうやって自分1人で決めつけるのはいけない。その悩みも含めて、キミを心配している人達はキミと話をしたがっているんだ。 GM:「だって……でも……あ、駄目……ああ……」――彼女は膝を付き、両肩を両手で抱きしめます。 御剣:どうした? GM:少しの間震えているのですが、やがて彼女の震えが消え、身体から赤いオーラが揺らめく。ズブズブとマユを中心に地面が泡立ち始めます。 御剣:これは……。 GM:そしてどこからか声が聞こえます――『マユを苦しませる者を……マユを悲しませる者を……私は許さない』 御剣:お前か……お前が事件を起こしていた魔物か――後ずさり。 GM:ゆらりと立ち上がると、マユの焦点は合っていません。赤いオーラが殺気を孕み始めます――『私のマユに害なす者を、私は許さない……』 御剣:チャチャ……来るなら早く来るんだな。でなければ……――ニヤリ(コロコロ)……「戦いたい」成功、チャチャとの絆(コロコロ)……成功、まだ抑えている。
御剣が欲望のままに口の端を上げたと同時だった。
GM:周囲の人々が悲鳴を上げ、駅のホームは地獄絵図ですね。マユから吹き上がった赤いオーラが四肢持つ獣の姿へと実体化する。 それは炎の化け物と呼ぶに相応しい魔物だった。 周囲に熱風と火の玉が飛来し、運悪く直撃したものを溶解させる。 御剣:冷静に線路に飛び降りて、熱風を回避する――血の匂い……か。 GM:では周囲にいた一般人が焼滅します。マユ自体はまったく無傷です。 御剣:どうやら、無意識に発動しているようだな――折れた大太刀を片手に持って、炎の中から現れる。魔物変身だ。 GM:マユは焦点の合ってない目のままです。炎を無差別に撒き散らしています。 御剣:だから意識を取り戻した時、自分がやった事に愕然とする……、だから身近な者達から離れようとしていたのか。 GM:その通りです。マユは周囲に炎を撒き散らしています。 御剣:まずい、このままでは(コロコロ)……成功。チャチャ、俺が我慢するにも限界はあるぞ。早く来るのだな。 GM:ここから戦闘です。
◆1ラウンド◆
御剣:さてさて、困ったものだ……約束を破るわけにはいかないが、このまま衝動を抑え続けるのにも限界がある。[1]御剣(7) [2]マユの赤い魔獣(0) GM:そうですね。3ラウンド何もしなかった場合は、こちらからエゴ判定を求めます。 御剣:なら3ラウンドは持ちこたえるか……――まだ殺りはしない。胡坐をかいて座ろう。 GM:こちらはランダムで攻撃。偶数なら御剣を狙おう(コロコロ)……奇数、周囲に向かって火炎のブレスを吐いています。 五月女:次のラウンドから登場します。
◆2ラウンド◆
[1]五月女(9) [2]御剣(8) [3]マユの赤い魔獣(6)
新宿小田急線のホームは火の海と化し、その元凶たる赤い魔獣は、さらなる犠牲者を求め、次々に火を吐き続けていた。
五月女:ここで登場! ホームの上空から急降下、気が付けばマユの前に立っている。――見えた。 駅周辺にパトカーが集りだし、赤いライトが点滅を繰り返している。 それより紅色の炎が、新宿駅のホームから次々と立ち昇っていた。 ――マユ……。 1人の少女が見えた。崩壊したホームの中で、赤い魔獣に守られるように立つマユが! 刹那、私は一直線に降下しマユの前へと降り立った。 GM:炎の獣は現れた悪魔を見て――『オマエもマユを苦しめるのか!!』 五月女:普通に話しかける。<交渉>したい。 GM:強引に人間技を使うのなら、"暴走チェック"を覚悟して下さい。それでもしますか? 五月女:する<交渉>(コロコロ)……成功。ちなみに暴走は(コロコロ)……した(笑) GM:暴走表ですね。 五月女:……48。エゴ判定で流されると暴走、エゴは(コロコロ)……流されない。暴走はしない!――黙れAza! 今の主人は私だ!! 御剣:突然の来訪者に警戒し、刀の柄に手を置こう。 五月女:私はマユしか見て無いから気にせず話かける――お前が、事件を起こしていた魔物だな。 GM:『マユのことは私が守る。今も、昔も、そしてこれからも!』――炎の獣が言います。 五月女:お前は……いや、あなたは!? 御剣:たぶん母親だ――低く通る声で。 五月女:その時始めて御剣を見よう――魔物!? 御剣:殺り合うつもりは無い――じっと動かず、魔物の方を見ながら――その炎の魔物はさっきも五月女マユの事を"私のマユ"と呼んでいた。子を思う妄執が母親を死して魔物にさせたか、それとも元々母親が魔物だったのか……。 GM:炎の魔獣は続けます――『マユは私の娘、娘を守るのが私の使命』 五月女:そうか……そうだったのか……――俯きながら呟いて、クッと魔獣を見上げて言う――あなたの気持ちは理解できる。でも、それでもあなたの行動はマユを傷つけているだけだ! マユの事なら心配しないで良い、あの子の傍には私がついている。あなたの想いは私が引き継ぐ! GM:『お前が……だと?』
不思議と自然に出た台詞は、赤い魔獣だけでなく、自分させも驚かされた。
五月女:マユは……私の妹だ。マユの事は私が守ってみせる!――毅然と言い返す。その言葉に迷いは無い!でも、それは私の素直な気持ち。 心を絞めていた矛盾という曇り空が、スウっと消えていく。 GM:赤い魔獣は一瞬たじろぎます。 五月女:射抜くように魔獣を見つめる。 御剣:では今のうちに話しかけておくか――五月女マユの姉……さつきと言ったか、お前が魔物だとは知らなかったぞ。 五月女:なぜ私の名前を……お前は誰だ。 御剣:ただの刑事さ。 五月女:眉を一瞬顰めてから――あの刑事か? 御剣:ふっ――と笑って肯定しよう。 五月女:お前はマユの殺すのか? 御剣:……妙な約束をしてしまってな。本当なら仇を討たねばならないのだが……今の俺は見(けん)に入っている状態なんだ。安心しろ、今はまだ手を出さんよ。 五月女:……ふん。 GM:では赤い魔獣が立ち直り、怒りにオーラを噴上げます――『お前がマユを守る!? 畏貌なる悪魔が!! お前がマユを守る事など出来るわけがない!!!』 五月女:そう思うなら来るが良い。あなたがマユの為にどれだけの代償を払ったかは知らない……。だが、私にも同じ覚悟はある!!――手を広げて無防備に。 GM:『ふざけるな!!』――遠慮なく右フック鉤爪が襲い掛かります。ダメージは(コロコロ)……15点の火ダメージ。 五月女:≪増殖装甲≫が自動的に私へのダメージを軽減する! GM:それは使うごとに人間性が減る業ですね。 五月女:そう。魔獣の攻撃に耐え切る(コロコロ)……〔血と肉〕が4点減った。
◆3ラウンド◆
五月女:何もしない、猛攻を耐え切る。行動終了。[1]五月女(6) [2]御剣(3) [3]マユの赤い魔獣(0) 御剣:俺も今は見だ。 GM:では赤い魔獣は、炎を竜巻のようにし周囲を火7の海に変えます<炎のドレス>(コロコロ)……10。回避不能の業です。ダメージは(コロコロ)……8点――『私はマユの為にならなんだってする! この命すら投げ出す! それがお前にできるか!!』 五月女:言ったはずだ、それぐらいの覚悟はあると!――≪増殖装甲≫(コロコロ)……3点減った。傷を受けつつ立ち続ける――あなたはマユの為に命を投げ出したのかもしれない……だからって、人としての絆まで捨てるべきじゃなかった。 GM:『ヒトとしての……絆……だと?』
◆4ラウンド◆
五月女:今のあなたに絆は無い。あなたはマユを守っているつもりかもしれないけれど、本当は自分のエゴを満たしたいだけだ。[1]マユの赤い魔獣(8) [2]御剣(6) [3]五月女(5) GM:『ふざけるな! あの事故から……マユがどれだけ辛い思いをしたかも知らないくせに! 私は知っている! 孤独だった辛さも、人間達から受けた暴力も何もかも!!』 五月女:ぐ……。 GM:『マユは……じっと耐えるしかなかった……だから、だから私がやった! マユの為に!!』――五月女を鉤爪で引っ掻く(コロコロ)……命中は5だ。 五月女:<防御形態>(コロコロ)……7で受け流した。少し悲しく呟こう――まだ解らないの? それはマユが望んだ事じゃない。マユは優しい子だ……だからマユは苛められても耐えていたんだ。決して、誰かを傷つけたかったわけじゃない。 GM:では赤い獣が少しずつ人間らしいフォルムに変化して行きます――『違う! マユは黙っているしかなかったのよ! この子は何も力がなかったから、逆らえばもっと辛い目に遭うのが怖かったから!』 五月女:なぜ……どうしてもっとマユの気持ちをわかってあげられないんだ……。マユはさらなる仕返しを怖いと思ったんじゃない、マユが本当に怖いと想っていたのは……。 ――私の中に、数日前の朝の光景が蘇る。 『マユ、お前、学校を休んだんだってな? 学校をサボって何をしていたんだ?』 ――朝食を取りながら、学校を休んだ事を父親から追求されていた時 『………………』 ――マユは震えるように身体を強張らせ、じっと俯いてしまった。 『マユ、聞いているのか? そんな頃から学校をサボってどうする。まだ中学生………………』 ――父親のお説教が続いている時、マユは何を思っていたのか。 五月女:人間フォルムになりつつある魔獣に向かい――マユは寂しかったんだ。あなた達を事故で失い1人になってしまったから……だからマユは絆を求めていた。 ――あの日の夜、父さんに面と向かって聞いた話が頭を過ぎる。 『……マユからは口止めされていたんだがな……マユはな……学校でイジメにあっているんだ』 ――私にだけ相談されなかった事実。 『お前には言わないでくれと、マユが泣いて頼むんだ。言えるわけが無いだろう……』 ――あの時、私は言うべき言葉がなかった。知らされなかった事実より、気が付かなかった現実に。 『マユはお前に心配をかけたくなかったんだろ……。言えばお前にも迷惑がかかると思ってな』 五月女:何よりも人との絆を大切にしかったんだ! マユは……怖かったから! また1人ぼっちになるのが何よりも怖かったから! GM:魔獣は黙りましょう。 五月女:マユは仕返しをしたかったんじゃない! 例え自分をイジメていた相手でも、その子達が失われる怖さをあの子は知っていた。だからここから去ろうとしたんだ。もう誰も、寂しい思いはさせたくないから! これ以上孤独になるのが怖かったから! これ以上、マユに辛い想いをさせるのはやめてくれ!! GM:赤い魔獣が完全に人間状態になり――『……何を言っているのよ……マユは新しい家族からも距離を置かれ、友達もできず孤独だったのよ? いまさら……いまさら孤独を怖がるだなんて――』 五月女:マユは孤独なんかじゃない。 GM:『あなたは知らないから言えるのよ……マスコミで騒がれ、クラスでは浮き、マユが誰かと一緒にいる事はなかった。皆、皆離れていった……』 五月女:もう一度言う。マユは孤独なんかじゃない。どんなに騒がれようと、クラスで浮かれようと、本当にマユの事を想ってくれる人はいる――と、ここで愛を使ってチャチャを呼び出す。
崩壊しつつある駅のホームに、金髪の少女が息を切らせて立っていた。
チャチャ:登場しました。この場面には出られないと思ってたよ。その少女は肩で息をしつつ、心配とも安堵とも取れる瞳を向け友達の名を呼ぶ―― ――「マユちゃん!!」 GM:魔獣はチャチャを見て、動きを止めます――『マユは……』 五月女:人間は弱い……見ず知らずのものや自分と違う存在と距離を置く。だけど、本当にその人の事を大切に思うなら、そんな事は関係無いんだ。 GM:魔獣は完全に黙ります。 チャチャ:マユちゃんの方に歩いて行く。 御剣:ではチャチャが俺の脇を通り過ぎる時に――やっと来たようだな。約束通りまだ手は出していないぞ。 チャチャ:それが刑事さんの本当の姿だったんだ……ありがと、約束守ってくれて。 御剣:死なない程度に頑張れよ。身体の元主は意識が戻った時、周囲の惨状を見て心を痛めていたようだ。だから身近な者達から逃げ出していた……本当の説得は、これからだぞ――俺は人間状態に戻ろう。ついでに今の台詞でチャチャの絆を刺激だ。行動終了。 チャチャ:(コロコロ)……成功――うん、ありがとう刑事さん♪ 御剣:お前達が死んだら本人はさらに悲しみ、次は本当に暴走するだろう。そうなったら、俺は容赦しない。 チャチャ:"刑事さんはそんな事しないよ"……と解っている風の微笑みで通り過ぎ、マユちゃんの前へ――マユちゃん……。 GM:赤い魔獣は黙っていますが、周囲に吹き荒れる炎の風は収まりません。マユは意識を取り戻さないまま呟きます――「駄目……私に近づくと……皆……皆……死なないで……」――無意識に呟いている感じです。 チャチャ:そうか、下手なことを言って目覚めさせちゃうと、この現状を見て同じ事の繰り返しなんだ……どうしよう。 五月女:チャチャの肩に手を置いて――ありがと、来てくれて。 チャチャ:え?――と見上げよう。見ず知らずの魔物だけど……マユちゃんの味方っぽいから今はスルー。 五月女:あとは私がやる。周囲の炎に手を焼かれながらマユの肩に手を置いて――マユ、あなたはあの時から一歩も歩き出していない……。あなたは、あの時から何も見ていない……何も聞いていない、ずっと止まったまま……。あなたは周りを傷つけたくない……それしか考えていない。あなたの力で周りが傷つく、それが怖いのは解る。でも、その先を考えて見て? このまま先に進まず逃げ出したら、あなたはまた1人になってしまう。 GM:「いや……怖い……1人は……いや……」 五月女:周りをよく見て? あなたの事を大切に思っている人達が、ここにはいる――マユの母親とチャチャに視線を促しつつ。 チャチャ:心配そうに頷こう。 五月女:もう1人で、抱え込まないで良いんだよ。マユ。私はあなたの傍にいる、今までは本当の意味で姉妹じゃなかったかもしれない……でもこれからは違う。姉として家族として、私はあなたを受け止める――その台詞と共に魔物状態を解除! 人間に戻る! チャチャ:さつきお姉ちゃん!?
そう、私は受け止める。
GM:ではそこで魔獣は消えマユは目を覚まします。実はマユ、魔獣が暴走している時の記憶が無いので、周囲に魔物がいたら正気度判定なのですが……。距離を置く事が間違っていたとは思いたく無い。 巻き込まないよう、傷つけないよう思いやった気持ちは本当だ。 でも、本当に大切な人達には……。 自分の事を大切に思ってくれる人達になら……私も一歩踏み出そう。 時間は、かかるかもしれないけれど……。 チャチャ:私はずっと人間のままだし。刑事さんもさつきお姉ちゃんも元に戻っているから大丈夫だよね? GM:ですね(笑) マユはゆっくりと目の焦点が定まっていきます。 五月女:マユ、気が付いた? 私が見える? GM:マユは姉を見て安心すると共に、周囲の惨状を見――「私は……また……私はやっぱり……」 チャチャ:駄目だよ! だからってマユちゃん、居なくならないで!! GM:「でも……」 チャチャ:マユちゃんがいなくなったら私ヤダよ! もう1人ぼっちは嫌だ! 例えさつきお姉ちゃんがいても、他の友達が居ても、マユちゃんみたいに誰か友達が欠けるのは、笑顔が欠けるのはイヤなの! もう誰も居なくなって欲しく無い!! GM:「チャチャちゃん……」 御剣:ここで逃げれば何も変わらんぞ。やった事に怖くなり逃げる、お前が不幸を感じて"何か"が暴走する。解らないのか? 堂々巡りの連鎖さ、底なし沼に嵌まっているんだよ。全てはお前の心が弱い一身で……だ。強くなれとは言わん。だが、少なくとも前を向け。自分のやった事から目を背けるな。 五月女:あなたが前を向いて歩く限り、そこには私もチャチャも、あなたの事を大切に思う人達が絶対にいる。大丈夫……あなたは1人じゃない――マユを抱きしめましょう。 GM:「う、うう……お姉ちゃん……うん、頑張る。私、もう……」――と泣きながらマユは意識を失います。 ■第十四章■
ホームのあちこちでは炎がゴウゴウと舌を出していたが、これ以上炎が増える事は無いだろう。
チャチャ:うう……良かったよ〜――私も泣いてる。安心して泣いてる!その原因だった少女は、今、大切な姉の手の中で泣き疲れた子供のように眠っているのだから。 御剣:ふっ……――チャチャの近くまで寄ってきて――結果は出たようだな。 チャチャ:涙を拭きながら何回か頷く。 御剣:なら、俺の結果はこうだ……仇は討った。 チャチャ:え?……という顔で見上げる。 御剣:弱かった少女は、自分で自分を殺した。前を見据える覚悟を持ってな。なら……それで良い。 チャチャ:……うん!――笑顔になろう。 御剣:俺はもう十分だ……まして、あんな子供を切るなど、我が剣の恥じとなる。 チャチャ:刑事さんを見ていよう。 御剣:約束は守ったぞ――去って行きます。 チャチャ:私もいなくなろうかな? たぶん死霊課の人達が来てるだろうし、野白さんとかに事情を説明しないと……。あ、そうだ。思い出したように振り返って刑事さんを呼び止める!――刑事さん!! 御剣:立ち止まって――なんだ? チャチャ:名前、教えて欲しいな♪ 御剣:かりそめの名は御剣、御剣戒――そして魔物化!――魔の名は……朱塗刀の赫映(しゅぬりとうのかぐや)――<空間斬り>で消えます。 ■第十五章■
魔物だった刑事が去り、ホームが崩れる前にここを出ようとチャチャが急かす。
五月女:ぐったりしたマユを抱き上げ、私が入って来た天井を見よう。≪変形:飛行形態≫を使えばこのまま逃げれるよね?私はマユを抱えたまま後から行くと言い、チャチャの背中を見送った。 そして―― GM:可能です。ですが気が付くとあなたの目の前に1人の女性が立っています。赤い姿ですが、それはマユの母親です――『わ、私は……マユを……』 五月女:ええ、あなたは悪い人じゃない、マユのことを本当に想っていた。 GM:『そうよ! 私はずっとマユを見てきた! マユの事だけを考えてきた! それの……それの何が悪いのよ!!』 五月女:首を振って――何も悪く無い。ただ、あなたはずっとマユの事だけしか見ていなかったから、見つめ過ぎていたから、マユの見ているモノを一緒になって見てあげることができなかった。マユが本当は、何を望んでいたのかを。 GM:『……でも、私がいなくなったら、マユを守る人がいなくなっちゃうじゃない。誰がマユを守ると言うの!?』 五月女:マユへの絆を判定する……成功!――おばさん、マユの周りにはたくさんの暖かい気持ちが溢れている。そして、あなたがマユへの想いを私にぶつけてきた時、私は言った。あなたの想いは私が引き継ぐ……と。 GM:『あなたが、全てのことからマユを守ると言うの?』 五月女:約束する。 GM:『そう……私じゃなくても、マユを守ってくれる人がいたのね……』 五月女:たった2人の……姉妹だから。 GM:『約束よ。マユを……守ってね……』 五月女:演出ですが、そこで≪融合≫を使います。右手を差し出し母親を取り込む。そして【知性】のエゴに追加「マユを守る(使命)」。さらに愛を使って元々ある【知性】のエゴを消滅させる――あなたの想いは……受け継ぎます。 ■第十六章■
そこは段畑のようになった集合埋葬墓地だった。
御剣:久しぶりだな、あれから三ヶ月……いや、四ヶ月ちょっと……仇は取ったよ。もっとも、俺のやり方じゃないがな……。階段を上がり、右に曲がってから数歩。 その男は1つの墓石の前で足を止める。 その墓には"飯山"と家名が彫ってあった。 GM:気の早い蝉がジージーと鳴いていた。太陽は高く、他に人のいない平日。 御剣:『前を向け。自分のやった事から目を背けるな』……そう言ったのはどこの誰だったか――俺の中で、俺しか知らない大介との回想シーンが展開されます――
その男は投げ捨てるように花束を置いた。
御剣:今回は少々、多弁になりすぎた。最後だから語ってやるよ。4月にお前が聞いてきたよな。俺が尊敬しているのは誰か……と。それはまるで、相手がしっかり受け取ってくれる事を前提にしたかのような投げ方だった。 GM:風がすぐ近くに生えた木の葉を揺らし、ザザザ…と音を立てる。 御剣:俺はな、強靭な精神、そして崇高な意思を持つ者を、敵味方問わず尊敬するんだ……知っているか? お前もその1人だったんだぜ? お前が例え……ただの人だったとしても。
風が吹く。本格的な夏へと向かって、重たく湿気を含んだ風が……。
御剣:それだけだ。事件の報告と、別れを告げに来た。もう俺がここに来る事は無いだろう。生きている世界が違う……だが、仮初めの生活は楽しかった。また、興が乗った時、尋ねて来るかもな……――去ります。そして愛を使ってエゴ「飯山大介の仇を取る(使命)」を消滅させる――じゃあな、大介。
■最終章■
結局、あの新宿駅の事件は様々な憶測を呼びつつ、爆弾魔の事件として収拾していった。
GM:では最後の場面です。警察やマスコミ、そしてこの国の上の方は、どうも魔物の事を世間に隠しておきたいらしい。 あの事件から数週間後、私は愛車と共に海へ来ていた。 海へ落ちる夕日が良く見える坂道、ガードレールに寄りかかって赤く染まりだした海を見つめる。 1人……孤独に。 五月女:海に夕日が落ちるのを見に来ている。良く見える坂道で、そこのガードレールに寄りかかりながら。音声は無しの方向で(笑) GM:解りました(笑)――車通りは少ない坂道なのでしょう。ここまで波音が聞こえてくるかのような静かな坂道、太陽だけが止まった時の中を少しずつ動き、海はその色合いを朱に染めていきます。 五月女:私はマユの母親から受け継いだ右手を夕日に掲げます。何か物思いに耽っているのですが、誰かに声をかけられた気がして振りかえります。 GM:すると誰かが、坂の下から手を振っている。 五月女:私は当たり前の現実が、当たり前にやってくる……その幸せをかみ締めながら、声の主の元へと歩いて行きます。背後には、2つのヘルメットがハンドルにかけられたバイクだけが残る。
そう、私は受け止める。
距離を置く事が間違っていたとは思いたく無い。 巻き込まないよう、傷つけないよう思いやった気持ちは本当だ。 でも、本当に大切な人達には……。 自分の事を大切に思ってくれる人達になら……私も一歩踏み出そう。 マユと2人。時間は、かかるかもしれないけれど……。
BEAST BIND 魔獣の絆R.P.G
第6話『魔女の抱擁』 FIN
◆登場キャラクターデータ◆
★ビバ雑記 その6★ リプレイにも難産ってあります。これはまさに典型でした。なんせセッション開始が夜中の1時、終了が昼の11時、と徹夜でしかも長時間。録音したテープを聞いていると矛盾点や繰り返しの台詞、無意味な行動などなど……しかもシナリオはシリアス! リプレイ上で微妙な点が多々あるかもしれませんが、スルーお願いします(笑)今回のメインキャラは五月女さつき。立場的には"人間"側の存在です。この五月女の特別な所は、葛藤が通常の半魔とは違う点です。半魔は魔物としてのエゴと人間としての絆で葛藤します。しかし五月女は"普通の人間"である周囲と、"普通では無くなってしまった"自分、との差で葛藤しています。五月女はAzaのエゴと折り合いをつけており、セッション中もエゴ判定で迷う事はありませんでした(不自然にならないよう抑えたりはあります)。人間としての自分も、悪魔であるAzaも、結局は同じ存在だとするなら、Azaのエゴは自分の欲望であり、自らの絆はAzaの存在理由でもある。人は誰しもそういう両面を持っている事を考えると、五月女こそ人間らしい人間なのかもしれません。ま、何が言いたいかと言うと―― 「五月女さつき、カッコイイよ!!(笑)」 |