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ダブル+クロス The 3rd Edition

あの懐かしかった秋のひと時を、俺は忘れない。
今はバラバラになってしまった4人が、音楽をやろうと盛り上がった……。
あの懐かしき日々を。


―― ダブルクロス 3rd リプレイ ――

天道如月の
俺がオーヴァードになった理由


■まえがき■

『ダブルクロスThe 3rd Edition』の発売を記念して開催されたリプレイコンテスト。
そのコンテスト用に書き下ろされたのがこの作品です。

コンテストのテーマは「ときめき」。

1人の男子高校生と3人の女子高生が、普通の生活の中、普通の恋愛をし、普通の青春を送る。
しかし、その中に紛れ込む一滴の違和感……ジャーム。
主人公の少年は3人のヒロインから誰を選ぶのか、そして紛れ込んだ違和感にどう対処するのか。
と、そんなコンセプトでリプレイ録りを開始した本作品。

……だったのですが、実際にプレイを開始して見れば、ときめきはいったいどこへやら。
そこはやっぱり虚読のリプレイって事でお許しを。

さて、先ほど書いたように本作品は普通の高校生達の物語です。
ただし、舞台は普通の学校では無く都会から離れた田舎村――赤羽村。
もちろん、キャラクター作成の結果そうなったにすぎません。

そして……普通で無い物語で無くなったのも、プレイの結果にすぎません。
あしからず。

■赤羽村(あかはねむら)■

都会から電車に乗り2時間、さらに地元バスを乗り継ぎ2時間半、細い山道を抜けるとその村は見えてくる。
周囲を山に囲まれた盆地に位置する山奥の村。
それが俺の暮らすここ――赤羽村だ。

11月も半ばのこの時期、村を囲む山は紅葉によって燃えるような赤に染まる。
風に乗って舞い降りる紅葉の葉は、この村の名の由来通り赤い羽根のようだった。

「それでは転校生を紹介します」
小中高共同の村で唯一の学校、その高等部のクラスで担任の先生が1人の少女を紹介する。
それは時期外れの転校生だった。

■登場人物/場所紹介■

▼天道如月(てんどう・きさらぎ)
  山奥にある赤羽村で育った17歳の男子高校生。運動も勉強もそこそこできる平均点学生であり、
性格は楽天的で大雑把。クラスではそれなりの人気だが、幼馴染2人から好意を寄せられていることに
気がつかない鈍感男でもある。最近、趣味でギターを始めた。
レネゲイド等、世界の真実を知らない一般人。

▼野々宮雪(ののみや・ゆき)
  父親と母親をある事件で失い、その時にオーヴァードに覚醒した17歳の少女。レネゲイドの世界を忌避しており、そこから逃げるためにUGNのツテで赤羽村へと転校してきた。オーヴァードの自分に関わると、両親と同じように周囲を不幸にしてしまうと思っており、赤羽村に来てからは友人を作っていない。

▼立花千歳(たちばな・ちとせ)
  村で唯一の実力者である村長の家の跡取り娘。誰にでも優しく敬語で話し、クラスでの人望も高い。村長である父親の背中が大きすぎて、最近はそれをプレッシャーに感じている。オーヴァードではないが、村で起きたある事件でレネゲイドのことを知る。幼馴染の天道如月のことが実は好きだが告白できないでいる。

▼美波泉水(みなみ・いずみ)
  通称『美波の子』。もともと本家である立花家と仲が悪かったが、5年前の事件で両親を失ってからは『美波の娘が犯人だ』と噂が広まり村全体から村八分にされている。如月と千歳に心配かけまいと常に元気に振る舞っている。実はオーヴァードだが世界の真実を知らないため自分だけがバケモノなのだと秘密にしている。

▼商店街のパン屋『渡さん』
  幼馴染3人がよく下校中に買い食いするパン屋。見た目は渋いおじさんだが性根はとても優しい。

▼UGN支部長『石原先生』
村で唯一の診療所の先生でありUGN支部長。雪も石原先生に関しては教えられている。ちなみに一般人。

▼交番の巡査『ヒロシさん』
30代の男性で幼馴染3人が通う高校の卒業生。ポジションは兄貴分。仕事熱心で熱血漢。

◆隣町の病院
バスで行ける隣町には大きな地方病院があり、赤羽村の住人は基本的にその病院へ行く。

◆隣町のUGN支部
戦闘部隊も駐在する、この地方の中心的なUGN支部。有事の際には石原先生より連絡が行く。

■第一章 幼馴染編 〜友達の輪〜■

◆仲良し3人組

その村にある商店街は、都会の者が見ればとても商店街とは言えないものだった。
シャッターが閉まっている店、普通の一軒家、それらに混じってチラホラと営業している店が並ぶ。
そして少し進めばすぐに田んぼと畑が両脇に見えてくる。
ここは、都会から遠く離れた山間の小さな村だった。
GM:それでは本編を始めたいと思います。
一同:『わ〜〜〜(ぱちぱちぱち)』
GM:最初のオープニングは千歳とイズミが登場です。下校途中にパン屋で買い食いのシーン。
如月:俺は?
GM:出たかったら一緒に出ても構いません。
千歳:なら出て貰った方が良いかなぁ。
イズミ:うん、イズミもその方が助かるな。
如月:じゃあ出る! よし授業終わったし今日もパン屋寄って行こうぜ?
イズミ:行く行く!
千歳:では帰りましょうか?
GM:そういえばついこの前、千歳は音楽コンクールに出場するため都会に行きました。
如月:その時から俺の態度が180度変わってます――いやー、今思い出してもあの白樺高校の伊藤恵美さんは綺麗だったなぁ(笑)
GM:千歳の音楽コンクールに、如月とイズミは応援に行ったと。そこで他校の伊藤恵美さんに惚れたと(笑)
如月:ほわんとしつつ千歳に聞こう――次のコンクールはいつなんだよ?
千歳:え? あれは1年に1度のコンクールですし……次はまた来年ですよ?
如月:そっか、すぐに会えないのは残念だけど、それならその時まで俺も何か楽器やるかな?
イズミ:それならイズミも一緒にやろっかな?
如月:お前がぁ? 楽器なんてやった事あるのかよ?
イズミ:それは無いけど……でもキー君と一緒なら、できそうな気がする。
如月:まぁ、お前は昔っから器用だったからなぁ。
千歳:2人ともちゃんと頑張れば、きっと大会に出られると思いますよ。あと1年もあるのですし。
イズミ:本当!?
如月:ならいっそバンドでも組むか?
千歳:え、えっと……でも、それでは誰かボーカルをやらないといけませんし……。
イズミ:それはちーちゃんがやればいいいと思うよ? 村長さんの娘なんだし♪
千歳:私は最近、そういう見られ方するのに嫌気がさしてるので――う〜ん、そういう見られ方するのが……――
如月:おい、そろそろパン屋につくぜ?――話を勝手に切ろう(笑)
GM:空気読んでるのか読んでないのか(笑) とりあえずパン屋に到着しました。
如月:おっちゃん、いつもの! カレーパンな!
GM:「なんだまた来たのか」――とパン屋のおじさん、昔馴染みの渡さんが迎えてくれます。
千歳:私は……メロンパンを下さい。
イズミ:イズミはコッペパンで。
GM:なんか格差を感じる選択だ(笑)
イズミ:メロンやカレーみたいな豪華なパンは食べれません――コッペパンはおいしいなぁ(笑)
GM:「それにしても、お前達はいつも仲良しだな」
如月:そんなの当たり前だろ?
千歳:私達……いつまでも友達ですよ。
如月:即答する人と一拍間が置かれる人(笑)
イズミ:ずっと友達……ずっと友達……。
如月:心の中で反芻して何も言わない人(笑)
GM:3人の内心の不安とかが解りやすい返答だ。
3人の幼馴染が三者三様にパンを頬張る。
一口食べては喋り続ける者、小さく食べては相槌を打つ者、半分を勢いよく食べ残りを袋に入れる者。
空はいつの間にか真っ赤な夕日に染められ、どこからか夕日鳥が啼く声が聞こえてくる。
少年たちを見守るように、紅葉の葉が風に舞って飛んでいった。

◆孤独な転校生

「11月も半ばのこんな時期ですが、皆さん仲良くして下さいね」
村にある小中高共同の学校、その高等部のクラスで珍しい事件が起こっていた。
都会から来た転校生。
それだけで村の子供は目を輝かせる。しかし、彼らの希望はあっさりと砕かれることとなる……。
GM:次のシーン。すでに暗い雪が転校してきて2週間が経っています。最初は物珍しそうに質問攻めにあうのですが。
雪:普通の受け答えだけして、深く話さないようにします。友達は……作りたくないので。都会の流行とか聞かれても、あたしは知らないから……とか。
GM:そして2週間経った今では「都会者だからって澄ましちゃってさ」と、クラスメイトからも距離を置かれ始めました。
雪:ちょっと寂しいけど……友達を作らないと決めたのはあたしなので……我慢します。
GM:そんな状況ですが、このシーンの目的は如月と2人っきりで出会うシーンです(笑)
雪:じゃあ学校の裏山で一人黄昏てる時がいいかな。
GM:そこは紅葉が多いこの村でも、一番の巨木がある場所だった。雪はその大きな一本紅葉の幹に背を預け、一人夕日に照らされながらさびしげな表情を浮かべていた。
如月:俺が出会うのか……それならその一本紅葉の場所は俺のお気に入りの場所ってことで。そこは村全体が見下ろせられる絶景ポイントなんだ(笑)
GM:じゃあそれで。千歳とイズミはそれぞれ用事があって今日の下校は一緒じゃない。
千歳:私は委員会のお仕事が入ってしまって……。
イズミ:うーん、バイトかなぁ。
如月:千歳もイズミもソレっぽい(笑) 俺はふらふらとギターの練習でもしようとお気に入りの場所へ来た。
雪:あたしは木に背を預けて携帯をいじっている。昔の友達とのメールを読み返したり、写メをずっと見ていたり。本当は電話をかけたいけど、かけられない感じ。少し顔をあげて遥か山向こうの都会に想いを馳せて
――電車で帰れば……また、会えるのに。
イズミ:寂しそうだ(笑)
如月:俺は転校生にどんな接し方してるかな……クラスではちょっととっつきにくい感じなんだよね?
雪:無駄話はしません。友達を自分から作ろうとも、友達になろうともしないので……。
如月:じゃあ変な奴が転校してきたなぁって程度に思っておこう。それじゃあお気に入りの場所にいるなら、声をかけるぞ――おい、あんた、そこで何やってんだ?
雪:突然の声にビクっと驚きます。急いで携帯を閉じる。
如月:携帯を閉じたのに気が付いて――なんか大事な電話でもしてたのか? 悪ぃな、邪魔しちゃって。
雪:携帯をバックにしまって一言。 ううん、電話する相手なんて……いないから。
如月:はぁ?
雪:……ともだち。
如月:何言ってんだ?
雪:こんな田舎にいるあなたには……わからないと思う。
如月:なに言ってんだ? 友達なんてどこにでもいるだろう? あんただって前の学校で友達ぐらいいただろう――そう言っていつもの場所に座って、ギターで伴奏しつつ歌おう。
GM:歌?
如月:そう、この前のコンクールで伊藤さんのいた白樺高校が演奏してた曲。
雪:う……それはちょっと途中まで聞いちゃうかも。
如月:俺は転校生が去らないのを気にせずやってよう。
雪:じゃあ曲が間奏に入ったところで、ボソリと呟きながら去っていく――……下手。
如月:俺はそのまま練習を続けるぜ(笑)
転校してきた村は、まさに絵に描いたような田舎の村だった。
周囲を高い山に囲まれ、隣の街に行くためには1時間に1本あるかないかの路線バスを使うしかない。
こんな村でどうすればいいのかと最初は不安だったが、都会と違って人が少ないのは救いだった。

そして今日は、村を一望できる素敵な場所を見つけたと思っていた。
初めて見た時は声を失った。
紅葉が周囲の山を染め上げ、囲まれた村に赤い羽根のような葉っぱを散らすこの景色に。
これからこの場所を秘密の場所にしようと心に決めた。その矢先……あいつは現れた。
雪:裏山から逃げるように足早に山を降りていく。友達がいた頃を思い出しながら、――もう、友達なんて、作りたくないのに!
GM:あの時のコンクールの場面、親友の恵美ちゃんの言葉がリフレインする――『大丈夫よ雪! ずっと練習してきたじゃない!』
雪:あのコンクール、あたしはピアノで伴奏をしたっけ……。恵美ちゃんとはお互い切磋琢磨しつつコンクールに向けて頑張って来た。でも、もう恵美ちゃんに連絡は取れない。
GM:でも恵美ちゃんの方からは時々メールが来ます。転校してすぐは毎日、1週間経つと2日に1通、そして今は3〜4日に1通。
千歳:減っていくのですか?
雪:減っていくと思う。だってあたし返信しないから。
イズミ:メールはいっぱい来てるんだ……悲しいな。
雪:じゃあ本当にときどき返信。 短く一言――『大丈夫、友達できたよ』とか。
千歳:ああ、それは悲しい……グッとくる。
如月:そして我慢できずにすっごい長い返事のメールを打ったり。そして下書きに保存して送信しない(笑)
雪:保存っていうより削除かな。書いては消して、書いては消して。
GM:恵美ちゃんって親友だし、何か察してそうだなぁ。
雪:だからメールが来る量が、あたしに気を使ってだんだん減っているの。そのまま山を下りて一人暮らしのアパートに帰ります。後ろ手にドアを閉めて暗い部屋の中で――もう、あの頃には戻れないのに……。

◆いつもの風景

――赤羽村(あかはねむら)――
村を囲む山には大量の紅葉が群生し、秋の夕暮れ時ともなると空も大地も全てが赤く染まる。
山々から風によって運ばれてくる紅葉の葉は、まるで赤い羽根のようにふわりと村へ舞い降りる。
赤い羽根が舞い降りる村……それが、この村の由来だった。
GM:では次のシーンは如月が雪と一本紅葉で出会った次の日です。
如月:登校シーンかな? それだと千歳やイズミも出るのか?
千歳:そうですね、私も登場しましょう。
イズミ:おはようキー君♪
如月:おう――と挨拶してくだらない話をしつつ――そうだ。そう言えば昨日こんなの拾っちゃってさ。
イズミ:なになに?
如月:雪が落として行った白樺高校の生徒手帳を取り出します。
雪:え? いつの間に?
如月:きっかけを作るために落としたってことで(笑)
雪:わかった、じゃあ引っ越してくる前の高校の生徒手帳を落としたことにする(笑)
千歳:これは……他校の、生徒手帳?
如月:ああ、中身を見るのはちょっとまずいかなぁって見てないんだけど……。
イズミ:その手帳を手にとってパラパラ見るよ?
如月:おいっ(笑)
イズミ:白樺高校……野々宮雪、だってさ。これってあの転校生のじゃないかな?
千歳:白樺……高校?
如月:お前勝手に見るなよな! じゃああの時落としたのか……。
イズミ:白樺高校! そうだ、ここってこの前のコンクールで優勝した高校じゃなかったっけ?
千歳:そうですね。最近誰かさんが伊藤さん伊藤さんって何度も言うから、覚えてしまいました。
イズミ:本当だよ! あんな都会の子に鼻の下伸ばしちゃってさ!
如月:な、なんだよ。あの時の伊藤恵美さんはすっげー綺麗だったじゃん、さすが都会の子って思ったね!
千歳:ふ〜ん、そうですかぁ。
イズミ:無言でキー君の足を踏みます。
如月:痛って!? 何すんだよお前!
イズミ:キー君が悪いんでしょう! イーっだ!
如月:なっ、おい千歳もなんか言ってくれよ!?
千歳:どうしてですか? さぁイズミちゃん、朴念仁は放っておいてさっさと学校に行きましょう。ツーンと(笑)
如月:なんなんだよ2人とも……おい、悪かったって、ちょっと待ってくれよ!――そう言って2人を追おう。
雪:なにこのベタベタな幼馴染3人(笑)

◆生徒手帳

学校には様々な人間がいる。
元気な奴、声の大きい奴、本が好きな奴、面倒見の良い奴、威張っている奴、変な奴。
だが、どんな奴にも共通する見解というものがこの学校にはあった。
「よっ、如月!」
「おはようちーちゃん♪」
男子学生の友人が如月の肩を叩き、女子学生の友人が千歳に笑いかける。
しかし美波泉水へ挨拶する学生は、この学校には誰もいない。
GM:では学校のシーンです。
如月:おーっす。
GM:「おー」
千歳:おはようございます。
GM:「あ、おはようちーちゃん♪」「おはよー♪」――と取り巻きが(笑)
如月:いるんだ(笑)
イズミ:おっはよー♪
GM:『………………』――クラスメイト総無視で。
イズミ:………………。
如月:転校生はいるのかな?
雪:クラスの空気のように窓際の席で外を眺めています。
如月:なら転校生の前の席に勝手に座って、振り向きつつ手帳を出そう――これ、昨日あんた落としただろう?
雪:返して!――バッと引ったくって抱くように。その手帳にはUGNの連絡先とかが載っていて、巻き込みたくないって気持ちから大声で叫んじゃいます。
如月:それには驚こう(笑)――な、なんだよ、別に盗んだわけじゃねーだろーが。
GM:普段から大人しく何も興味が無いような感じで話す雪が、いきなり大声を出したためにクラス中の視線が2人に集まります。
イズミ:シーンとなるクラス(笑)
如月:安心しろよ、中身は見てねーよ、名前だけは見せてもらったけどさ。じゃーな――さっさと自分の席に戻ろう。
雪:その背を見送ったあと、手帳を胸元に抱いたままぼそりと「なんで……」と呟きます。
GM:しかし、その声はあまりに小さく誰にも聞こえなかった。
雪:うん。

◆美術の時間のペア

美術の時間や体育の時間、それはこのクラスの担任にとってもっとも嫌いな授業だった。
決して自身の芸術的センスが無いわけでも、運動音痴なわけでもない。
ただ、これらの授業には決まってアレがあるのだ。
今日も子供たちに悟られぬよう笑顔の仮面を付けて、その言葉を言い放つ。
「はい、今日の美術の授業はデッサンです。ペアを作ってお互いの顔を模写しましょうね」
GM:では時間を進めて次は美術の時間です。ペアになってお互いの模写の授業。
如月:俺は普通に男の友達とペアで。
千歳:では私は――
GM:千歳は取り巻きの1人とペアですね。
千歳:ああ、そうですね――ええと、よろしくお願いしますね。
GM:「うん、こちらこそ宜しく♪」
イズミ:イズミは……――
GM:うん、誰もキミとペアを組もうとはしないね。蜘蛛の子を散らしたように離れて行きます。
如月:キツイなぁ。
GM:雪は?
雪:自分からは誰にも声をかけません。誰かに声をかけられたら……それも拒否しませんが。
イズミ:じゃあイズミが積極的に声かけに行くよ! しかも下の名前で(笑)――雪ちゃーん♪
雪:え?――と、そっちを見る。
GM:ちなみに転校初日にイズミが村八分なのはクラスメイトから教えられています。
雪:なんでハブにされているのか、理由は聞いていますか?
イズミ:「噂だけど……自分の親を殺して埋めたんだって……だから近寄らない方がいいよ」――って感じでお願いします。
雪:それは……嫌な気分になります。
イズミ:そんな子が笑顔で近寄ってきます(笑)
雪:その噂が本当なら……同情しちゃうかも。
GM:担任の女の先生が――「それじゃあ、いつものように美波さんは先生と一緒に――」
如月:先生の優しさが生徒を傷つける(笑)
イズミ:大丈夫です! 今日は雪ちゃんとペアになりますから!
GM:「え、あの2人が……」「あいつと……」「マジかよ……」ぼそぼそぼそ。
イズミ:雪ちゃん♪ 一緒に描こう?――クラスの空気読まずに楽しげに、でも目は笑わず。
雪:ちょっと嫌だなぁって思うけど……。
イズミ:じゃあその反応を察して諦めた感じで言おう――あ〜……やっぱダメか。雪ちゃんもあの噂は聞いてるもんね。やっぱイズミは先生とかぁ……。
雪:………………いいよ。
イズミ:え?
雪:ペアで……いいよ。
イズミ:ほ、本当!? 本当に!
雪:頷きます。
イズミ:ありがとう雪ちゃん♪
GM:千歳の取り巻き達が――「やばいよちーちゃん、あの転校生、よりにもよってあいつとペアだって」「どうするー? 言ったげよっか?」「でもあの子も生意気だし」
千歳:うーん、私的にはちょっと感動している――イズミちゃん、私達以外の友達ができたのですね――って。
イズミ:目だけ笑わないまま楽しそうに絵を描きます。
千歳:それを時々見ては嬉しいです。
GM:さて、せっかくだから判定して上手に絵が描けたかやってみようか。
如月:【感覚】の<芸術>で振ればいいよな?(コロコロ)……7成功。
雪:(コロコロ)……私も8なので普通よりちょっとだけ良い感じです。
イズミ:あ、クリティカル2回した……達成値24。――雪ちゃんできたよ♪ ほら、すっごいリアルに描けてる!
GM:イズミの親は芸術家っぽい気がする(笑)
イズミ:そうですね、じゃあイズミの両親は芸術家でした(笑)
如月:ところで千歳は振らないのかよ?
千歳:う、うーん、それじゃあ(いっコロ)……1。
GM:ファンブル(一同爆笑)
千歳:だから振るの嫌だったんですよ!
如月:いやいや、そういう欠点がある方がみんなから好かれるから! イズミみたいに下手に上手すぎる奴はやっかまれるけど(笑)
GM:だなぁ、クラスで苛められてるのにこんなに上手いわけだし(笑)
如月:千歳は村長の娘で勉強も出来て、だけど芸術下手くそ。そういう愛すべき弱点が千歳の強みだよ!
GM:千歳の取り巻きの一人が――「うん、完成! ちーちゃんはどう?」
千歳:はい、もうちょっとです、その、話かけないで下さい!
GM:「う、うん、わかった。動かないようにするね」
千歳:ありがとうございます――伸ばした手の先でエンピツを縦に立てながら(笑)
如月:千歳は普通にクラスの男子人気も高そうだ(笑)

◆無意識のナイフ

美術の時間は滞りなく進んでいた。
もっとも、授業以外の点でこの後の問題になりそうな場面はあったが……。
担任の先生である彼女が、その問題となるペアに視線を向ける。
そこには村の嫌われ者の美波泉水が、楽しそうに都会から来た転校生に話かけていた。
GM:美術の時間はもうちょっと続けた方が良い?
イズミ:うん、雪ちゃんともっとお話ししたいし! デッサンは早く終わっちゃったので、早々に描きあげた絵を雪ちゃんに渡します――これ友情の証にあげる♪
雪:リアルに描かれてる絵を見下ろして――ねぇ……どうしてあなたの周りには誰もいないの?
如月:その会話は余所には聞こえないだろうなぁ、2人だけ顔が笑ってない。
イズミ:ん……前にね、お父さんとお母さんが死んじゃってさ。
雪:……。
イズミ:それ以来、みんながイズミを怖がってるみたいなの……イズミ、何もしてないのに……さ。
雪:沈んだ声で――それで良いと思う。仲良くなると……あとが辛くなるだけだから。
イズミ:そう? イズミは友達と一緒だと嬉しいよ♪
雪:……。
イズミ:だって、ちーちゃんとキー君が仲良くしてくれるし、2人といるとすっごい楽しいもん♪
雪:如月君と千歳ちゃんの2人の方を見よう。
如月:友達とバカやって遊んでる(笑)
千歳:すごい熱心にデッサンをしてます(笑)
イズミ:うん、あの2人はとてもいい人だよ? イズミ、大好きなんだ♪
雪:やっぱりこの子は自分とは違う、って思う。
イズミ:……そういえば雪ちゃんはどうしてこの村へ? お父さんの仕事の都合?
雪:持っているエンピツをバキっと折る。あの時の事を思い出しちゃうし……。
GM:衝動が沸き起こりそうになるんだね。
雪:でも感情に任せたらあの時と同じだし、折れたエンピツを置いて立ちあがる――先生、気分がすぐれません。保健室へ行かせて下さい。
イズミ:あ、それならイズミが付き添――
千歳:そこはさっと立ち上がって――それでは私が保健室へ案内します。
イズミ:ちーちゃんが行くなら……任せちゃおう。
村長の娘であり誰からも好かれる学校の人気者「立花千歳」
どこか暗く、誰とも友達にならない転校生「野々宮雪」
普通なら違和感を覚える2人組だが、なぜかクラスメイト達は見惚れていた。
その2人が、不思議と旧知の親友のように見えたからだ。
千歳:保健室へ案内する道すがら、雪さんに話かけますね――大丈夫ですか? 本当に顔色が優れないみたいですが……。
雪:うん、大丈夫だから。
千歳:……。
雪:……。
千歳:もしかして、イズミちゃんに何か言われましたか?
雪:……ねぇ、どうしてあの子のこと、そんなに気にかけるの?
千歳:え?
雪:聞いたよ、事情。……普通、あんな子と仲良くしようなんて誰も思わない……。
千歳:え、う、うーん、ですがイズミちゃんは小さい頃から一緒の友達ですし。
雪:じゃあ、なんであの子が仲間外れにされているのに、助けようとしないの?
千歳:それは、そうですが。 確かにイズミちゃんは、家柄のせいでこの村ではちょっと肩身が狭いかも……でも、本当に良い子だって……。私は、知ってますし。
GM:千歳が村長の娘であることは噂で聞いてていいよ。
雪:了解。
千歳:昔から、イズミちゃんは優しかったから。
雪:信じられない……。
千歳:そう……かも、知れません、ね。
雪:そういえば、あの男子もあの子と仲良かった……。
千歳:男子、ですか?
雪:あたしの生徒手帳……届けに来た。
千歳:あ、キー君ですね! はい♪ キー君も昔はやんちゃだったけど……でも、私とイズミちゃんの仲を取り持ってくれた、私の大切な友達です。うん、だから……野々宮さんも、できたら私たちと仲良く、して欲しいです。
GM:どこまで良い子なんだ(笑)
雪:……ごめん。
千歳:そこは無言、笑顔でうなずいて保健室へ連れて行きます。

◆通り魔事件

いつもの放課後、いつもの下校。
ただし、今日はいつもと違って1人での下校だった。
千歳は何か用があるといなくなり、イズミはバイトがあると速攻で帰って行った。
如月は肩に舞い降りてきた紅葉の葉を手に取る。
その葉を持って、くるくる回しながら歩いてると、自然と足はパン屋の前で止まっていた。
GM:次は如月の下校シーンです。千歳は用があるといなくなって、イズミはバイトでいません。
如月:久々に一人か、まー気にせずいつも通り買い食いしながら帰ろう。
GM:「今日は一人かキー坊」――パン屋の渡さんがカレーパン渡しつつ。
如月:もう俺も高校生だぜ? 毎日毎日一緒ってわけにもいかねーよ――もぐもぐ(笑)
GM:「そうか、もうキー坊も高校生か」……とか話していると、チリンチリンと自転車のベルを鳴らして、村で唯一の駐在さんがやってきます――「渡さーん、コロネ一つくれよ?」
如月:あ、ヒロシさん。
GM:「おう、キー坊、買い食いか?」――と気さくにヒロシさんが言い――「おいヒロシ、お前さん仕事中だろう? お前こそ寄り道してんじゃねーだろーな」――チョココロネを渡しつつ渡さんが言います。
如月:俺とヒロシさんの関係は?
GM:ヒロシは如月の先輩にあたりますね。パン屋での寄り道も同じようにやってました。
如月:ああ、村の中ではヒロシさんは兄貴ポジションなんだ。
GM:「いやー、助かった! 隣町で事件が起こっててさ、今日の昼食べれなかったんだよ」――ヒロシはそう言いコロネをパクつきます。
如月:ヒロシさん、その隣町の事件って……なんか大変なの?
GM:「ああ、ちょっとな……」――と真面目な顔をして――「実は隣町で通り魔が現れてよ、まだ捕まって無いんだと。そんで渡さんところは村の子がよく集まるし、もし隣町に行く奴がいたら注意してほしいと思ってさ」
如月:通り魔が隣町に……。
GM:「ああ、だからお前も、隣町に行く時は注意しろよ」
如月:わかったよ。 まぁ隣街に行くのは……そうだな、イズミが隣町でバイトしてたはずだから注意しておこうかな。
GM:それにはヒロシさんは嫌な顔をします――「イズミ……美波家の奴か……まぁ、それは良いだろう」
イズミ:駐在さんにも嫌われてる……。
GM:駐在のヒロシさんは本家筋の人なので、嫌われ者の分家である美波家は好きじゃないのです。ちなみにタチって字が入ってる家が、本家筋ってことで。
千歳:……。
GM:「おい、ヒロシ」――とそれ以上言わないよう渡さんが怒ります。
イズミ:ああ、パン屋さんすごい良い人だ(笑)
GM:ヒロシさんも渡さんのパンで育った人なので、ばつが悪そうにしたあと帰って行きます――「それじゃあ、俺はこれで……キー坊も気を付けて帰れよ!」
如月:ふーん、しかし通り魔ねぇ……明日イズミに話してみるか。

◆学校へ向かう道

美波泉水の家は村の外れの川を越えた場所にあった。
その家から川を越えて村にいくつかある紅葉並木を通り、田んぼと畑を横切って行く。
やがて見えてくる昭和を思い起こすような一戸建が、天道如月の家だった。

幼馴染の2人は近くの十字路で落ち合うと、次に村の中心にある大きな日本家屋
――立花家へと向かう。
そうして最後に、立花家の庭が隣接する道で、背筋を伸ばし待っている村長の娘と合流するだ。
それが、幼馴染3人の毎日の登校ルートだった。
GM:さて、次のシーンで何かやりたいことはありますか?
如月:イズミに昨日の事件の話をしておこうかな?
GM:わかりました。じゃあ千歳とイズミは登場かな?
イズミ:ならイズミが最初、キー君の家に迎えに行きます。2人で歩きながら途中でちーちゃんと合流で。
GM:ああ、通学路上の都合ね。千歳もそれでいい?
千歳:そうですね。イズミちゃんの家は村外れで、私の家は中心に近いでしょうし、そのルートで問題無いと思います。
GM:ではイズミと如月が登場です。
イズミ:キー君、おっはよー♪
如月:おう。
イズミ:とりとめなく話続けます。幸せな時間です(笑)
如月:そういえばイズミ、お前って隣町でバイトしてんだろ? なんか通り魔が出てるって聞いたからお前も気をつけろよ?
イズミ:通り魔? ぜんぜん大丈夫だって!
如月:そうかぁ? お前だって女なんだから、あんまり軽く考えるなよな。
イズミ:え? えっと……それって……――ちょっと照れてもじもじ(笑)
如月:そういえば5年前にも、村で事件があったなぁ。
イズミ:あったね………………。
如月:あれは俺達のクラスから行方不明になった奴がいて大変だったな。
イズミ:……。
如月:あいつも今頃、何やってんだろうなぁ。
イズミ:……。
如月:ま、お前も気をつけろよ、何があるかわからないからな!
イズミ:う……うん。
千歳:そこで登場します。道の途中で待っています。キー君達を見つけたら駆け寄りますね――おはようございます。
如月:おう! 一応お前にも言っておくか、なんか隣町で通り魔が出たらしいから、あっち行くならお前も気をつけろよ?
千歳:隣街に通り魔……ですか。
如月:ああ、まぁ隣町になんてそうそう行かないから大丈夫だと思うけどな――ヒロシさんから聞いた話をかくかくしかじか。
イズミ:家から出なければ大丈夫だよ!
如月:そりゃそうだけど、そういうわけにもいかないだろうが(笑)
千歳:そうですよ、学校もありますし。
如月:それにしても、こんな田舎で通り魔って。 いったいどんな犯人なんだろうな?
千歳:……そう、ですね。
イズミ:きっと犯人にも、なにか事情があったんだよ。
如月:事情?
イズミ:ほ、ほら、お金がなくてやむにやもえず、とかさ!?
如月:でも聞いた話じゃ、金品も盗られてないって話だしな。きっと頭がおかしいんだよ!
GM:強盗でなく通り魔だしね。
イズミ:じゃ、じゃあ、頭がおかしくなるようなことがあってとか……。
千歳:どうしましたイズミちゃん、さっきから通り魔をかばうようなことを言って?
イズミ:ち、違うよ! みんな平和だったらいいなぁって。
如月:本当本当、勘弁して欲しいぜ(笑)
千歳:……本当に、通り魔なんてこの村に来なければ良いのに。
如月:ま、隣町だろ? 俺達には関係無いさ!
――俺達には関係無いさ!
如月の言葉に千歳とイズミの顔に影が落ちる。
イズミ:でも、いつかこの村に来るかもしれないし、みんな気をつけようよ!
如月:イズミは心配症だなぁ。
千歳:ううん、イズミちゃんの言うとおりですよ! また、誰かいなくなるのは……私、嫌です。
如月:それは……そうだけどな。おっと、もうこんな時間だちょっと走るか! 行くぜ!
イズミ:う、うん。
千歳:……そうですね。急ぎましょう。
そしてこの日の音楽の授業で、ちょっとした事件が起こる。
ピアノに興味がありそうな野々宮を強引にピアノの前に座らせると「昔ちょっと触っただけ」と言いつつ
千歳以上に上手にピアノを弾いてみせたのだ。
これには俺や千歳はもちろん、クラス中が驚いた。

そして気がつけば、野々宮の周りにはクラスメイトが集まり、みんなが笑顔で接するようになった。
野々宮がやっと俺達の仲間入りを果たしたのだ。
そんなわけで、その日の昼休みも話題はずっと野々宮のことだった。

◆ボーイズトーク

昼休みの過ごし方は男子と女子でかなりの差が出てくる。
特にこの学校では年齢層に大きな幅があり、食事のスピードなども必然と違ってくるのだ。
しかし、どんな年齢であっても大概の男の子と言えば早食いである。
彼らは昼食の弁当を急いでかっこむと、誰ともなしにグランドで集まり遊び出す。
GM:次はお昼のシーンに行こうか。千歳は取り巻き連中の友達と机をくっつけて食べてるはず。今回、雪はそのグループに一緒に食べようと誘われてるね。
雪:転校した頃は即答で断っていたけど……さっきの後だし、少しあたふたしつつ合流します。
千歳:雪さんが可愛いです♪
GM:イズミは……。
イズミ:寒空の下、中庭で一人食べてるよ。教室はちーちゃんのグループがいるから、雰囲気壊しちゃいけないしね。
如月:イズミもけっこう気を使ってんだなぁ……。あ、俺はさっさと食い終わって男連中とグランドで遊んでる。
GM:では男友達が――「お前って奴ぁ、あの2人がいて転校生にまで手を出したのかよ! 仲良さそうに話かけやがって!」
如月:あ? 転校生って……別に今までだってそんな話してなかったじゃねーか。
GM:「おいおい如月先生よぅ、昨日のこと、無かったとは言わせねーよ?」
如月:昨日?
雪:(男子生徒)「お前、転校生になんか手帳とか渡してたじゃねーか! あれか! あれがきっかけか!」
如月:ああー、普通に手帳拾って届けただけだぜ?
GM:ちなみに千歳の取り巻きは――「ちーちゃんって人がありながら!」って雪をピアノに誘った如月に対して怒ってると思う(笑)
如月:俺の株がなぜか大暴落だ(笑)
雪:イズミちゃんは候補じゃないの?
GM:たぶん如月は幼馴染だから普通にイズミと接していて、イズミは如月と千歳しか相手にしてくれないから2人と一緒にいるだけ……クラスメイトはそんな認識だと思う。
雪:なるほど、だからイズミちゃんは恋敵にならないと。
イズミ:(男子生徒)「お前、千歳さんがいながら、転校生にまで……お前って奴は!」
如月:別に千歳とは付き合ってるわけじゃなくて、ただの幼馴染だろーが!
イズミ:(男子生徒)「ふ〜ん」
如月:お前らもそんなこと言うなら、自分から告白すればいいじゃねーか!
GM:「うっわ、上から目線ですよ。どうします奥さん!」
イズミ:(男子生徒)「格差社会を感じますわね!」
如月:格差社会って何だよ! お前らの意気地が無いだけだろ(笑)
イズミ:(男子生徒)「いいよなー、子供の時から彼女持ちな奴の台詞は余裕があって」
GM:「よりどりみどりだもんなー」
如月:なんだよ、ひがみかー?(笑)
イズミ:(男子生徒)「ひがみですよ、ひがみですが何か?」
如月:だいたい、昨日まで転校生はスカしてるとかって嫌ってたじゃねーか(笑)
イズミ:(男子生徒)「そ、それは……そうだけど」
GM:「いや、でもさっきの野々宮さんは可愛かったって! きっと今日までは慣れない田舎暮らしに緊張してたんだよ!」(笑)
イズミ:(男子生徒)「ああ、わかるわかる! なんか野々宮さん、ピアノ弾きながら照れてたしな! 昨日までは強がってたんだ、可愛いったらないな!」
如月:お前ら……だったら今から話しに行こうぜ? ほら、行くぞ行くぞ!――強引に男友達を連れて千歳のグループが昼飯食べてる教室に戻ります(笑)
GM:では千歳グループの方にシーンを移そうか。
如月:じゃあこのシーンの最後、俺がナレーションを入れよう……――
――思えばこの時が、俺達が一番楽しかった時だったのかもしれない……。

◆ガールズトーク

村の共同学校であるここは、給食も無ければ食堂も無い。
生徒は昼になると、家から持ってきたお弁当を取り出し仲の良いグループで集まり楽しく昼食を取る。
千歳のグループは特に華やかで、クラスでも大半の女子が一緒になって机をくっつけて島を作る。
たった一人を除いて……。

一方、千歳グループでは雪が歓迎されながら一緒にお昼ご飯を食べています。
雪:え? 千歳ちゃんは如月君と付き合ってないの?――そんな会話をお弁当食べながらしています(笑)
GM:「絶対お似合いなのにねー」「うんうん!」「だから如月には勿体ないって!」
如月:取り巻きっぽい(笑)
千歳:ええと、キー君とは……幼馴染で仲が良いってだけですから……。
GM:「またまたー♪」
千歳:たぶん少し赤くなっています。
雪:それは可愛い……千歳は人気出るだろうなぁ(笑)
如月:それには同意だ。
GM:「でも、ちーちゃんも頑張らないとね! なんせ、強力なライバルが登場なわけだし」――意味深な視線を雪に向ける取り巻きの一人。
千歳:え? 強力なライバル……ですか?
GM:「センスも良くて綺麗だし」「音楽もできてピアノも上手い」『ねー!』――と雪をみんなが見つめる。
雪:あ、あたし!? そんな、ピアノだってそんな上手いわけじゃないし、センスだって向こうじゃもっとすごい子いっぱいいたから……。
如月:でも千歳よりはピアノが上手い(笑)
イズミ:ちーちゃんは絵が下手だからなぁ。
千歳:げ、芸術的センスのことは、言いっこ無しですよ(真っ赤)
GM:じゃあ取り巻きがフォローしよう――「でも、ちーちゃんはお料理が上手だからなぁ♪」「うん、そこは男子のポイント高いよね!」
如月:親に教わった料理は全て作れそうだ。
GM:「私なんて何度やってもお母さんに駄目出しされちゃってさー」「そう言えば、雪ちゃんはお料理とかするの?」
雪:まぁ、少しは……一人暮らしだし。
GM:「え? 一人暮らしなの?」
雪:うん……両親忙しくって。
GM:「それじゃあ毎日お料理も?」
雪:まぁ、でも簡単なのしか作らないから……。
千歳:雪さん、それなら今日うちに来ませんか?
雪:千歳ちゃんの……家へ?
千歳:はい、せっかく仲良くなったのですし、都会の味というか……雪さんの家の味付けとか、できれば教えていただきたいなぁって。
雪:え、でも……あたしのお料理なんて、何も特別なこと無いと思うし……。
千歳:そんなこと無いですよ! 私なんてずっとこの村から出たこと無いですし、お料理の味付けだってお母様から教えてもらったことしか無いですから……ちょっとここ以外の味付けって興味があるんです♪
雪:そこまで言われちゃうと断れないかな――……うん、わかった。
如月:そこで男子何人かと登場しよう――お〜い、千歳〜?
千歳:あれ、キー君。どうしました?
如月:いやー、こいつらがいろいろこれを機に親睦を深めたいって言うからさー。
千歳:そうですね、雪さんもちょうどいることですし、改めて自己紹介からしましょうか♪
雪:え、ええ!?――ちょっとテンパるかも。
如月:他の男子が輪に加わりつつ――やっぱクラスみんなで仲良くならないとな(笑)
千歳:そうですね。これを機会にみんな仲良くしましょう♪
雪:……う、うん、そうだね(笑)
如月:野々宮はクラスにそうやって馴染んで行く(笑)
GM:そう、雪は昔のように仲良しを作ってはいけない、そう思っていたのに……。
雪:この心地良さがやっぱり暖かくて……一人で頑張ろうと思った心が揺れてる――ああ、やっぱり、友達って……良いなぁ。



イズミ:
………………。
GM:みんな仲良くって言いつつ、すごい勢いでスルーされてる子が1人。
如月:シーンに登場してないのに浸食率が上がってそうだ(笑)
GM:村八分なイメージが凄いね。
イズミ:歌を歌いながら一人で食べてる――きょうも♪ 一人で♪ おいしいご〜は〜ん〜♪
GM:しかし中庭から教室の窓側が見えて、そこでは雪が他のクラスメイトに囲まれて照れてる様子が……。
ズサッ……――
中庭の木陰から一歩踏み出し見上げれば、教室の窓側がちょうど見えた。
仲間だと思っていた雪が、楽しそうにクラスに馴染んで一緒に話している。
イズミ:風さん、こんにちは♪ ねぇ聞いて、雪ちゃん、友達ができたみたい……良かった。
GM:びゅうっとイズミの髪を風が乱します。
イズミ:髪を直さず教室を見上げたまま――本当よ? イズミ、雪ちゃんに友達ができたこと、本当に喜んでいるの……ふふ、ふふふふふふ♪

◆第一の被害者

「あれ? どうしようかしら……ちょっとキー君! お醤油貰って来てくれない?」
天道家の台所から、如月の母親が大声を出す。
そう言えば昨日の夜そろそろ醤油が無いと言っていたような……。
如月は仕方なく身体を起こすと、自分の部屋を出て台所に向かう。
姉が大学に通うため東京で一人暮らしをしている今、このような雑事はたいてい自分の役目なのだ。
もっとも、姉がいても雑事は自分の役目になっていたような気もするが……
とりあえずそれは置いておく。
GM:それでは次はイベントシーンです。
如月:怖いなぁ。
GM:登場は如月です。キミの家は一般家庭なので、何か調味料が無くなったりすると頼まれたりします。
如月:ああ、じゃあ買ってくるよ――商店街も閉まってる時間な気がするけど(笑)
GM:村なので閉まっていても多少の無理は効きます。ダメならご近所に言えば分けてもらえますしね。
如月:とりあえずお金貰って自転車で商店街へ買いに行こう。
GM:では夜道を商店街へと向かい、自転車で進んでいる途中です。
如月:キコキコ自転車をこいでます。
GM:商店街の一角からなにかガタゴソと音が聞こえますね。
如月:ん、なんだ?――音がするなら行ってみます。
GM:そこは商店街の裏通り、お店の庭とかがある方ですね。
如月:そっちに行く。
GM:裏に回ると変な臭いがします。庭へ入る勝手口はキーキーと音を立てて半開きだ。
如月:なんの匂いだ?――自転車を降りて庭に入って行こう。村の住人なんて全員親戚みたいなもんだし、この店って誰の家だったの?
GM:ああ、ここはパン屋の庭だね。渡さんの家だ。
如月:はっ!?
千歳:えええ!?
イズミ:ちょ、渡さんは良い人なのに!
GM:でもシナリオに『パン屋で』って書いてあるし……。
如月:嘘だ……ちょっと待ってよ!
GM:待ちません。
如月:くっそぅ――おっちゃーん、どうしたんだよー?
GM:裏口から入って来て、まずは割れた窓ガラスが見えます。そしてそのまま進むと、ピチャっと足が水溜まりを踏みます。
如月:なんだ?
GM:よく見ればそれは赤い水溜まり。血溜まりだ。そこから視線を上げると、上半身と下半身がブチ切れて死んでる渡さんがいる。
如月:悲鳴をあげそうだ、それって渡さんって見て解るの?
GM:死体の顔が、入って来たキミの方を恨みがましそうに見ているから判別はつくね。
如月:うわあああああああ!?
GM:周囲の木々には、とても人間の物とは思えぬ爪痕が付いている。
如月:悲鳴をあげ続けて、その場に座り込みます。
GM:なら夜回り中の駐在ヒロシが駆けつけます――「おい、どうした! なんだキー坊じゃねーか」
如月:あ、あ、あ、あ、あ……――と渡さんの死体を指さします。
GM:「ん? なんだこの匂い……わ、渡さん!?」
それは大変な夜だった。
そして、その夜から全ての歯車が狂いだしたんだ。

◆上書きされる記憶

パン屋である渡さんが死亡し、天道如月はその第一発見者となっていた。
次の日の朝、隣町から来た刑事2人から昨夜の話を教えて欲しいと言われた。
優しくいつもカレーパンをくれた渡さん、村長の娘だろうと、村八分の嫌われ者だろうと、あの人は決して贔屓せず自分たちに接してくれた。
そんな理解者が……死んだのだ。それも、人間がやったとは思えないような、酷い殺され方をして。
GM:ここからはいったん日常に戻ります。如月はお昼からの登校です。午前中は隣街から来た刑事さん2人に第一発見者として事情聴取を受けます。場所は如月の家に来てくれます。
如月:パニックになりつつ、昨日見たことをそのまま伝えよう。
GM:では刑事さん2人はそれをメモりつつ、時間が流れて昼前……3人目の刑事が入ってきます。サングラスを掛けた女性ですね。
如月:え、もう一度始めから説明?
GM:女性が入ってくると共に、刑事2人の目がトロンと夢うつつになる。そして――「大変だったみたいね……忘れると良いわ」
如月:は、はぁ。
GM:サングラスの女刑事は男の刑事2人にテキパキと指示を出すと(刑事たちはなぜかその女性の言われるがままだった)、キミを帰してくれます。
如月:あ、もう学校行って良いんですか?
GM:「ええ、構わないわ。それにしても、こんな山奥じゃ熊も多いから……きっと冬眠前の熊が降りてきたのね……」――ボソリと耳元で囁きます。
如月:熊か……まぁ、ショックだったしそう言われたらそうだったのかなぁって思うかな。
GM:では<意思>で判定して下さい。目標値は20です。
如月:はぁ!? (コロコロ)……無理無理、8で失敗。
GM:なら如月は昨日渡さんを襲ったのが熊だったんじゃないかって思いました。
千歳:記憶を操作するエフェクトですか!?
如月:PCにも関わらず一般人扱い(笑)
GM:女性の刑事は鈴木と名乗っていました。
如月:じゃあ俺はちょっとふわふわした感じで学校に行こう――おい〜ッス。
GM:場所はお昼休みの教室ですね。
雪:登場します――昼まで遅刻……どうかしたの?
如月:ああ、ちょっと事情聴取ってやつに付き合ってただけさ。
GM:ちなみに今、教室に千歳は登場できません。担任の先生に呼び出しを受けています。
如月:そういえば千歳とイズミはどうしたんだ?
雪:千歳ちゃんはさっき先生に呼ばれて職員室に。イズミちゃんは……朝から学校来てないみたい。
如月:そうか、何かあったのかな。……っかし、朝から来て無いって? 風邪で休みかあいつ?
千歳:私は風邪でも無ければ、朝からちゃんと学校にも来ていますけど?――職員室から戻ってきました。
如月:ああ、違う違う、イズミだイズミ。なんか昨日のアレ見ちゃったせいか記憶が混乱してるのかな?(笑)
雪:大丈夫?
如月:駄目かもしれない……。あんなの二度と見たくねーよって心の中で思ってる。
千歳:キー君、辛かったら早退して帰るのも良いと思いますよ。
如月:いや、1人でいるのもちょっとな……。
千歳:そういえば雪さん、ごめんなさい。パン屋さんに連れて行くなんて、せっかく昨日の夜、約束したのに。
雪:え?
如月:渡さん……あんなことになるなんて……。
雪:何か……あったの?
千歳:……昨日、渡さんが亡くなられたの。それも酷い死に方をして……。
雪:……。
如月:千歳には連絡が回ったのか。
千歳:お父様のところに……ね。
如月:はぁ……まるでバケモノに襲われたような死に方してて、あれは動物には絶対やれない……俺、実はそれを昨日の夜、たまたま見ちゃってさ……。
雪:村人が死んだっていう事実に驚きます。そしてバケモノという単語に心がズキリと。
如月:まぁ、冬眠前の熊がたまたま降りてきてやったんだと思うけど……。はぁ……。
イズミ:なんか言ってる台詞が矛盾してる(笑)
千歳:動物にはやれない殺し方なのに、熊がやったことに。
如月:そうやって記憶を上書きされたので、俺的には本心です(笑)
雪:へぇ……そう、なんだ……。
如月:渡さんはすげー良い人だったんだ、恨まれて殺されるわけねーよ! きっと熊さ!
雪:そう……ね、人間以外……よね。
千歳:ほら2人とも暗い顔しないで下さい♪ クラスのみんなも暗くなっちゃいます。
如月:でも仕方ねぇよ、あんな良い人が死んじゃったんだぜ、こういう時ぐらい暗い顔でも良いんじゃないか?
千歳:それは、そうですが……。
如月:ああ、まったく。熊でも何でも、早く解決して欲しいぜ。
千歳:……。
雪:……。
GM:さて、では学校でどの程度その噂が広まっているか<情報:噂話>で振って下さい。
如月:(コロコロ)……9だな。
GM:如月は「渡さんが熊に殺されたこと」「如月が第一発見者だということ」の2つが広まっているのを耳にします。
その日の放課後、俺はなぜか野々宮に呼び出されていくつか質問を受けた。
主に内容は千歳のことだ。
どうも昨晩、野々宮は千歳の家に泊ったらしく、そこで都会では考えられないようなことを聞いたらしい。

「夜中に村人数名と千歳ちゃん、それに村長さんで……『事件が起こった。この事件は美波家のせいだ、だから美波家を、イズミちゃんを追い出すべきだ』って……」

深刻そうな顔をしているから何かと思ったが、そんなこと。
俺は軽い口調でそんなことは当たり前だと言ってやった。
イズミの家は村人から嫌われている、古い慣習と言うやつだろうか、都会から来た野々宮にはとても違和感があったのかもしれないが、村で育った俺としては慣れた空気と、流れだった。

しかし、どう説明してもイズミを心配して食い下がってくるため、最終的に学校を休んでいるイズミの見舞いに行くことを提案した。本当に風邪で休んでいるならなおさらだ。
そして、このまま学校帰りに寄ることになり千歳も誘おうと口にした瞬間――

「ううん、千歳ちゃんに言うのは……やめた方が良いと思う」

妙に迫力のある言い方だった。 結局、その日の帰り道にイズミの家に寄ると、俺と野々宮は元気そうなイズミと会った。
元気そう……というのは語弊があるかもしれない。
今日の午前中、イズミはずっと駐在所の取調室で軟禁されていたらしい。

昨夜、忘れ物をしてバイトに行かなかった為、渡さんが死亡した時間のアリバイがなかったというのだ。
それだけで犯人扱いされるのかと野々宮は驚いていたが、俺としては良くあることとしか思えない。
村人たちのイズミへの扱いはそういったものなのだ。

とりあえず渡さんを殺した熊が村にまた降りてくる可能性はある、イズミに夜は外出しないよう注意しておき、俺と野々宮はイズミの家を去った。
2人っきりの帰り道……なぜか野々宮がぶるぶると小刻みに震えているような気がした。

◆死

それは懐かしい記憶だった。
まだ小さい俺がいて、千歳がいて、イズミがいた。
3人とも村の確執や習慣を知ってはいたが、理解はしていなかった。
ただただ遊び、友達と一緒にいるのが楽しかった。
俺は、ずっとそれが続くと思っていた。
いや……今でも俺はそう思っている。 本当に、そう思っていたんだ……。
GM:では次のシーン、如月です。時刻は夜ですね。キミには昨日買えなかった醤油を買いに行って欲しいのだが(笑)
如月:じゃあ父親が買いに行こうとするのを俺が見つけて――いいよ、俺が行ってくるから。
GM:「だが、外には熊が出るらしいじゃないか。危ないだろう」
如月:親父が行くより俺の方が安全だって、いざとなったら自転車で逃げれば良いしさ(笑)
GM:お母さんも心配しますよ――「本当に大丈夫? お母さんが朝のうちに買っておけばよかったんだけど……別に今日一日ぐらい無くてもなんとかなるわよ?」
如月:いいっていいって、俺もちょっと用があるし――と自転車で醤油を買いに行こう。
GM:では両親は心配しつつ見送ります。
イズミ:でも別の用って何かあるの?
如月:ああ、イズミの家をちょっと確認して帰ろうかなって。
イズミ:え?
如月:こういう事件が起こると、イズミの家に石を投げこんだり、ボヤ騒ぎを起こしたりって連中が必ず出るから、その見回りにさ(笑)
イズミ:キー君!(うるうる)
雪:というか石とかボヤ騒ぎとかあるんだ(笑)
GM:あるらしい(笑)
時々ベルを鳴らしなら走る如月の自転車。
渡さんを襲ったのが熊ならば、こうやって音を立てていれば出てこないはず。
そう思ってベルを鳴らして自転車をこぐ。
そう、その考えは決して間違ってはいなかった。
ただ一つ……渡さんを殺したのが、熊ではなかったことをのぞけば……。
GM:自転車で走っていると、村にいくつかある紅葉並木のある場所で、横からでかい何かに体当たりされます。
如月:いきなり!? それは自転車ごと紅葉林に突っ込もう……――痛ててて。
GM:そうやって起き上ったキミは、胸倉を掴まれて道の真ん中へと引きずり出される。
如月:う……――と目を開けよう。
GM:目の前には巨大なバケモノがいます。熊でも虎でもなく……その姿は地球上のどの生物とも似ていなかった。
如月:バ、バケモノ……。
GM:「見ラレタ、カラニは、殺ス」
如月:しゃべった!?――って思った瞬間、ドス、ブシャー、って音がして視界が回転し、地面から見上げる視点になるんです。そして視界には俺の首がなくなった身体を持つバケモノが映る。
GM:じゃあそれで(笑)
千歳:ここは走馬灯ですよ!
イズミ:幼馴染3人の出会い、その回想シーンを入れたいな(笑)
如月:みんなして勝手なことを! だが、そのアイディア採用で! 俺は想い出す、あれは俺がまだ小さかったころ――


それは懐かしい記憶だった。
まだ小さい俺がいて、千歳がいて、イズミがいた。
3人とも村の確執や習慣を知ってはいたが、理解はしていなかった。
ただただ遊び、友達と一緒にいるのが楽しかった。
如月:千歳! 実は面白い奴と友達になったんだ! お前にも紹介してやるよ!
千歳:面白い子?
如月:ああ、そいつさー、俺より足も速くて、こんなでっかい木にもするするって登れるんだぜ!――両手使ってめいっぱい背伸びしつつ説明する子供の俺(笑)
千歳:へぇ〜、千歳も会ってみたいな♪
如月:じゃあ今から行こうぜ! ほら、こっちこっち!
千歳:待ってよ〜――とキー君について行くんだけど、向かってる途中でそっちは行っちゃいけない場所だって思い出す。
GM:言われているんだ(笑)
千歳:そう、村外れの川向こう、そこには関わっちゃいけない美波家って人達がいるから、そっちに行っちゃいけないってキツク言われたの。
如月:それを気にせず川を越えて行く俺(笑)
千歳:川を渡りきるギリギリの橋の上で――だ、駄目だよキー君、そっちは行っちゃいけないんだよ!
如月:そんなの気にするなよ! 別にこっちに来たって大丈夫だって、ほらほら――ジャンプジャンプ(笑)
千歳:ええ、でも……お父様が……。
如月:ほら、早く早く――と千歳の手を引っ張って行こう。
千歳:だ、駄目だって……キー君――と、川を渡っちゃっておろおろしてる所でイズミちゃんが登場でしょうか?(笑)
イズミ:あ、キー君だ!――ってざざざって山の斜面を降りてこよう。ちょっと汚れた服を来た女の子。
如月:お、イズミ! 前に言ってた俺の友達連れてきたぜ! 千歳って言うんだ!
千歳:もじもじしてます(笑)
イズミ:チトテちゃんって言うんだ、イズミはイズミって言うんだよ♪ よろしくね!
千歳:近寄らない……――駄目だよ、だって、お父様もお母様も、川向うの子と遊んじゃいけないって言うし……。
イズミ:なんでー?――と小首をかしげながら。
千歳:え?
イズミ:なんで遊んだら駄目なの?
千歳:えっと、それは……。
イズミ:イズミはキー君ともチトテちゃんとも遊びたいよ?
如月:お〜い、千歳〜! 何やってるんだよ! この林の奥に川があるんだ、そこ行くぞー!――と子供特有の無邪気さで先に行こうとする俺(笑)
千歳:え、ええ、えと……――キー君と一緒にいたいけど、親に言われてるし……。
イズミ:チトテちゃんは一緒に遊びたく無いの?――笑顔で。
千歳:……それは……遊びたいけど。
イズミ:じゃあ一緒に遊ぼう♪――ちーちゃんに手を出します。
千歳:少しだけ迷ったあと、イズミちゃんの手を握り返します――うん、一緒に遊びたい!
イズミ:うん♪って笑顔でうなずいてキー君のところへ連れて行きます――待ってよキー君、チトテちゃんは初めてなんだから、早く行っちゃダメー!
如月:えー、わかったよー。あ、イズミ〜千歳は千歳って言うんだぜ? チトテってなんだよ(笑)
イズミ:違うのー?
千歳:う、うん、私は立花千歳って言うの……。
イズミ:う、うーん、それじゃあ今度からちーちゃんって呼ぶね! それならまちがえないもん!
千歳:それじゃあ私もイズミちゃんって呼ぶね。
イズミ:いいよ♪
如月:さぁ、それじゃあ一緒に行こうぜ!
森の中を走り回り、木に登り、花畑で冠を作り、川で水を掛け合った。
楽しかった。
俺は、ずっとそれが続くと思っていた。
如月:その森からの帰り際、千歳がいなくなってるんですよ(笑)
イズミ:ねぇキー君、ちーちゃんがいないよー?
千歳:そして私は森の中で迷子になって、大きな紅葉の木の下で泣きながら座っています(笑)
GM:陽が暮れだして、一人ぼっちの森の中。
千歳:えーん、えーん、と泣き続ける私。
イズミ:イズミが発見した方がらしいかな?――ちーちゃん見〜っけ♪
如月:なにー、そっちにいたのかー?――と合流。千歳の手を取って立ち上がらせよう。
千歳:私は泣きながら2人と一緒に森から帰ります。
イズミ:その帰り道、夕日に染まった森の中、ちーちゃんを真ん中に手を繋いで――ちーちゃん、もう泣かないで。
如月:まったく、お前は本当ドジだなぁ。しょうがない、また迷ったら俺達が探してやるよ。
千歳:うう……本当?
イズミ:うん、約束! イズミ達3人はずっと友達だもん!
千歳:ずっと友達?
如月:ああ、ずっと友達さ(笑)
俺は、ずっとそれが続くと思っていた。
いや……今でも俺はそう思っている。
本当に、そう思っていたんだ……。
如月:これが走馬灯だなんて悲しいなぁ……――ああ、そんな事もあったなぁ。
GM:ずっと友達、ずっと友達、2人が言ってる中、もう友達ではいられなくなる自分。
如月:最後に薄れゆく意識の中呟きましょう……――
――千歳……イズミ……ごめん、俺はもう……。
第一章 幼馴染編 〜友達の輪〜

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