ダブル+クロス The 3rd Edition あの懐かしかった秋のひと時を、俺は忘れない。 今はバラバラになってしまった4人が、音楽をやろうと盛り上がった……。 あの懐かしき日々を。 ―― ダブルクロス 3rd リプレイ ―― 天道如月の ■第四章 美波泉水編 〜復讐者〜■ ◆5年前の事件 あの5年前の交通事故の日から自分は変わってしまった。
GM:イズミのシーンです。初日、イズミは1人で何やってるの?両親とともに車ごと谷から転落した時、村人の誰もが死んだと思った。 しかし、イズミと両親は生きて帰って来た。 今なら解る。イズミはバケモノだったから生き残り、父親と母親はイズミが不思議な力を使って一時的に生き返らせたのだと。 その時の事件は忘れない、帰って来たイズミたちを村人は気味悪がるようになった。 そしてあの連続行方不明事件が起こる。 最後に行方不明になったのはイズミの両親だった。 生き残ってしまったイズミは……村人達の絶好の的となった。 自己紹介をしよう。 自分の名前は美波泉水、この赤羽村では知らない人はいない嫌われ者だ。 古くからある田舎の村には、そういう確執や慣習が少なからずあるものだ、そう言っていたのはTVのニュースキャスターだったか。 とにかく、イズミはどこに行っても嫌われ者だった。両親が残したお金だけじゃ生活が辛いためバイトをする必要があったが、その為には隣町にまで行ってバイトをする必要があった。それだけこの村ではイズミの居場所が無い。 しかし、こんなイズミにも幼馴染のキー君とちーちゃんは優しくしてくれる。イズミがこの村で頑張っていけるのも、この2人のおかげと言っても過言ではなかった。 それは11月も半ばのこと。都会から野々宮雪という女の子が転校してきたのだ。 彼女は誰とも友達になろうとせず、2週間も経つころには孤立していた。 イズミは最初、あの子も他の村人と同じだろうと思っていた。イズミの噂を聞けば口さえ聞いてくれない冷たい顔無し連中と同じだと。 だから、美術の時間に勇気を出して一緒にペアになろうと誘った時―― 「………………いいよ。あたしとペアになろう」 そう言ってくれた時、イズミは心底嬉しかった。 だからイズミは、キー君とちーちゃんと同じように、雪ちゃんのことは絶対に守りたいと思ったのだ。 その日、隣街でのバイトを終わらせると、すっかり暗くなった村外れの家にイズミは帰って来た。 村外れのボロ屋。 ところどころがトタンで補強されており、隙間風は当たり前。 そこが村の嫌われ者――イズミの家だった。 ガララと横滑りの玄関のガラス戸を開ければ、中は疲れきった畳み敷きの部屋が続く。 「ただいまー♪」 いつもの儀式。誰もいない家にイズミの元気な声が空しく響いた。 イズミ:夕方は時々バイトしてます。 如月:村で? イズミ:村では無理なので、バスで隣町まで行ってバイトして夜に帰ってきます。 GM:では夜です。家に戻ってきました。 イズミ:ただいまー♪ GM:玄関を開け、真っ暗な家に電気を付けて入って行くイズミ、もちろん、お帰りと言ってくれる両親はおらず、自分の声だけがさみしく響く。 イズミ:床の間の鏡の前にいます。そこで手を出し……ジャキンと骨が飛び出して剣を作ります。そして……悲しくなって泣きます。 GM:床の間には仏壇があり、そこには両親の写真が……。 イズミ:う、うう……ガンバレ、がんばれイズミ……な、泣いちゃ……駄目、だよ。 如月:イズミはその力がレネゲイドって知らないんだよね? イズミ:そう、自分はバケモノなんだって思ってる。だから時々、その恐怖と不安と悲しみで心が押し潰されそうになるの……。 雪:そうやって自分の力を確かめるのと、鏡の自分を励ますのは毎日の儀式なのかな? イズミ:うん、そうやらないと……そうやって確かめないと、負けそうだから。 千歳:本当に精神狂いそうですね……。 雪:ちょっと辛すぎるよね。 GM:そこで回想シーンを挟もう。それは――
――5年前――
GM:「そう言えば知ってるか? この前の安達さんと井上さんに続いて、今度は宇野さんがいなくなったんだってさ」千歳:ああ、イズミちゃんの両親がいなくなった5年前の事件ですね。 GM:「もしかして、次はまた誰かが……」 如月:きっと次は五十音順的に江口とかです(笑) GM:いや、その順番は適当に関係ないNPCを出しているだけだから(笑) 雪:(村人になって)「ちょっと待てよ、今までいなくなったのって……全部あの家の近くの……」 如月:(村人になって)「あの家って、ほ、本当だ。全部の家が、美波家からけっこう近い……」 GM:クラスでもなんとなくそういう噂が。 イズミ:いや、その頃は大変だったのできっと学校に行ってません。苦しんでいるお父さんとお母さんを毎日心配して看病してます。 GM:そうだね、ここ数日はお父さんとお母さんの様子がおかしい。寝室で寝てるはずだがどうも深夜に抜け出しているらしい……。 イズミ:一度、夜中に両親の部屋を見に行って確かめました――あれ? お父さん、お母さん? GM:窓が開けっぱなしの部屋に両親の姿は見えなかった。 イズミ:最近、行方不明者が多いって言うのに……どうして。と不安になります。そして数日前の自動車事故を思い出し、何か関係あるのかなと思いながらも無意識にそれを否定します。 GM:ああ、あの事故で両親を≪抱擁≫のエフェクトで生き返らせたのをはっきり覚えてないのか。 イズミ:そう、あの時は無我夢中だったので、両親にエフェクトを使って生き返らせたのがぼやっとしか覚えていません。死んだと思ったけど生きててよかった……ぐらい。 GM:そして今夜、夕食後に両親は寝室へ向かい。 イズミ:今回は心配して両親の部屋に行きます――お父さんお母さん、入って良い? GM:「ダメだ。入るな」 イズミ:ビクっとして……――でも、心配で……。 GM:「ダメだと言ってる。襖を開けちゃいけない」――くぐもった声で父親と母親が部屋に入ってくるのを拒否します。 イズミ:意を決して襖を開けます――「どうしてそんな事言うの! イズミは……」――とパクパクと後半は声になりません。 GM:そう、その部屋の中には腕が伸び、硬質化した鋭い爪を持つバケモノと、牙が生え剛毛をまとったバケモノがいる。その2匹が「来るな、ダメだ」「襖を開けるなと言っただろう」――と両親の声でうめく。
そして、両親……だったモノが……くるりっとイズミの方を見る。
イズミ:どうした……の?――って言おうとして、村の噂を思い出して別の言葉を言う――お父さん、あの、ね。安達さんと井上さんだけじゃなくって、宇野さんもいなくなったんだって……。GM:「ああ、可哀そうな事をしたな、母さん」 如月:確信犯か。 GM:「でも、仕方ないのよ。この餓えを満たすには、そうするしかなかったのですもの」 イズミ:一生懸命、正気を保とうと話を続けます!――だ、だからね、夜とかに外に出るのはやめた方が良いよ? ね? GM:「だがなイズミ、お父さんは今日もお腹が減って仕方がないんだ」 イズミ:お、お母さんも、お父さんに家から出ないように言って、よ? GM:「でもねイズミちゃん、お母さんも、喉が渇いて仕方ないのよ」 イズミ:な、なんで、どうして二人とも、そんな目でイズミを見るの? GM:「どうしてって? お前のことが愛おしいからさ」「ええ、イズミちゃん、あなたのこと、大好きよ」――狂気に染まった両親の瞳、それが一気にイズミに急接近する! イズミ:い、いやああああああああ!!!
その瞬間、イズミの視界が暗転する。
GM:ではゆっくり画面が戻って行くと、両親の寝室、その壁や襖には爪の痕や血痕が大量についており、イズミの足元には物言わぬ死体となった両親が倒れています。やがて……意識の覚醒と共に、ゆっくり部屋の景色が戻って行く。 イズミ:イズミは返り血を浴びて真っ赤に染まりながら、ポタポタと血が滴る骨の剣を手にぶら下げている。目には涙がとめどなく流れ続けます――うう、あああ……うぐ……ううう……うああああああああっ!
――そして現在――
イズミ:もう、二度と、あんなことは起こさない。だから、あの2人……ううん、雪ちゃんも含めて3人に、もしものことは絶対に起こさない。GM:この過去の事件、両親が起こした事件とその両親を殺した自分の力。それらを友達の3人に見つかったらと思うと……。 イズミ:すっごい怖い! 友達にこのことは絶対に秘密にしないといけない。バレたらいけない。 GM:きっと過去のそのシーンでジャーム化しなかったのは、如月と千歳のロイスがあったからだろうね。 イズミ:うん、きっとそうだと思う。だから……だからこそ、あの2人にだけは絶対にバレるわけにはいかない……隠し通さないといけない。その為には、何をしても……。
泣きやんだイズミは目の前の鏡を見た。
そこに映った自分の顔は、そう、笑顔だった。 ◆冷たい汗
次の日の朝、キー君から「隣町に通り魔が出たから気をつけろ」と言われた。
GM:次はイズミのイベントシーンだ。夕方になって……今日もバイトかな?キー君は「隣町だろ? 俺達には関係無いさ!」と笑顔で言っていたが、それでも心配してイズミに言ってくれたのが嬉しかった。 その日は、音楽の授業でちょっとした事件が起こった。 ピアノに興味がありそうな野々宮さんをキー君がピアノの前に座らせると「昔ちょっと触っただけ」と言いつつ、ちーちゃん以上に上手にピアノを弾いてみせたのだ。 これにはクラス中が驚いた。 そして気がつけば、野々宮さんの周りにはクラスメイトが集まるようになり、みんな笑顔で接するようになった。 イズミはその輪に入れないが、雪ちゃんがイズミと同じような扱いを受けないで済んだことを、素直に喜ぶことにした。なぜなら雪ちゃんはもうイズミの大切な友達なのだから。 イズミ:うん、夕方に隣町へ出るバスに乗るためバス停に向かうよ。 GM:ならその途中で声をかけられます。 イズミ:誰に? GM:商店街を通過する時にパン屋の渡さんからですね。 如月:良い人だ(笑) GM:「イズミの嬢ちゃん、今日もバイトかい」 イズミ:うん! GM:「だがなぁ、最近は隣町で通り魔が出るって話だ、そいつが捕まるまでバイトは休んだらどうだ?」 イズミ:でも、ほら、イズミって一人暮らしだし、この村じゃバイトもできないし……。 GM:「そうだなぁ、本当はうちで雇ってやりたいところなんだが……」 イズミ:え?――と驚きながらも理解してます。いくら渡さんでも町内会の人とのつながりとか、村の世間体とかあるのできっと美波家であるイズミを雇えないってことは……。 GM:その通りだね。 イズミ:だからこう言います――ごめんなさい、あっちの店長さんも良くしてくれるし、向こうで友達もいるから。 如月:イズミも優しい子だ(笑) GM:「ちょっと待ってな」――渡さんは店のコッペパンをいくつか袋に詰めて持ってきてくれます――「持って行きな」 イズミ:ありが……とう。 GM:「いつか、お前のことを解ってくれる奴が出てくるさ。今は、キー坊と千歳ちゃんしかいなくてもな」 イズミ:ううん、最近新しく転校してきた雪ちゃんって子もいるよ♪ GM:「ほう、そいつぁ良かったじゃないか」 イズミ:うん! イズミ、その3人がいてくれたら、他の誰に嫌われても大丈夫♪ GM:それには渡さんは複雑な表情を浮かべつつ――「早く、お父さんとお母さんが帰ってくると良いな」 イズミ:………………うん。あ、ごめんなさい、そろそろバスが来る時間だから行かなきゃ! GM:「気を付けるんだぞ」 イズミ:はーい♪
優しいパン屋に見送られつつ、走ってバス停へ向かう。
GM:バスにはぎりぎり乗れました。イズミが乗ると先に乗っていた数人が、さっと離れるように別の椅子に座り直す。胸に抱えたパンの袋をぐっと胸に抱き寄せる。 辛いことは多い、多すぎる。だけれど、イズミはこの村に絶望してはいなかった。 このパンのようにたった数人でも、自分の心を温かくしてくれる人がいるから……。 隣村へのバスは1〜2時間に1本しか通っていない。 夕方の時間で言うならば、日の沈む頃の1本を逃すと次は夕食時までやってこない。 長い風雨でペンキがはがれ、端々に錆の浮き出たバス停には『あかはね村』と書いてあった。 イズミ:気にせず一番後ろに座ってます。 GM:では隣町に向かってバスが出発するのですが、村を出て山道に入ろうかって辺りで……イズミは<知覚>で判定して下さい。 イズミ:(コロコロ)……うん、達成値8! GM:ならその瞬間、イズミはぞくりと寒気を感じます。嫌な予感というか、ざわつくというか。 イズミ:何か過去の記憶が蘇ります。バケモノと化したお父さんとお母さんに見つめられた時のような……。 GM:それは一瞬、雰囲気としてはバケモノとすれ違ったかのような……。 イズミ:バスの降車ボタンを連打して……あ、今降りたいから、バスの運転手に詰め寄って――今すぐ降りたいの、どうしても! GM:詰め寄るのか……なら緊急なのを感じてバスが止まります。そしてイズミを降ろすとバスは隣町へと向かって行きます。 イズミ:さっき嫌な感覚を感じた場所に戻ります。 GM:すでにその元となった『何か』はそこにいません。去ったあとのようです。 イズミ:夕日が沈んで紫色に染まる村を眺めながら……なぜか嫌な冷や汗が――。 ◆取り調べ
怪しい雰囲気を感じ取ったイズミは、その日のバイトを無断で休みその気配を捜し歩いた。
しかし陽が完全に落ちて夜が来ても、その気配を残した対象を見つけることはできなかった。 そろそろバイトも終わる時間……その日は諦め、イズミはとりあえず眠ることにするのだった。 その結果……―― GM:次の日の朝。イズミは昨日の夜、どうしてた?
蘇ってくる記憶、自然と……イズミは両肩を抱いて震える身体を押さえていた。
◆謎の女性
朝方に呼び出しをうけ、すでに数時間が経過していた。
GM:次はイズミのシーンです。駐在所で拘留されています。時間はもう昼ですね。駐在所の取調室、その窓から差す光によってできる影も、すでにその長さを短くしている。 村の平凡さを示すように、外からは鳥の声が聞こえてくる。 イズミ:窓の外から聞こえる鳥の声、イズミは籠の中……。 GM:やがて外から音がして取調室に一人の女性が入ってきます。スーツを着たサングラスの女性ですね。 イズミ:あの……あなたは? GM:女性は笑顔で――「もう良いわ。ごめんなさいね、こちらの勘違いであなたを拘束してしまって」――取調室の扉を開けます。 イズミ:いったい、何があったの? GM:<情報:噂話>で振って下さい。駐在所の取調室は別に防音ってほど設備が整っていないので、壁の向こうの声も聞けたってことで。 イズミ:(コロコロ)……7です。 GM:最低限の情報かな「渡さんが死んだ」というのは知っていて良いです。サングラスの女性は――「こういう田舎では仕方ないのかしらね。不思議な事件が起こった時、誰かを犯人にして心の安定を図ろうとする……」 イズミ:えっと、イズミが疑われるのはいつものことだし……。 GM:イズミの頭に手を置いて――「同じ日本とは思いたくないわね」 イズミ:あの、あなたは誰? GM:「自己紹介が遅れたわね、私は東京で刑事をやっている鈴木よ」――名詞をくれます。 イズミ:それは受け取りつつ――じゃあ、イズミへの容疑は晴れたの? GM:「ええ、あなたのような善良な一般市民が、こんな事件に関わりがあるわけないから」 イズミ:良かった……。 GM:「でも、この村には古い慣習でもあるのかしら? どうも村人達のあなたへの疑いが晴れて無いみたい……事件が収まるまでは、おとなしくしてる方が良いかもね」 イズミ:それは素直に――はい、ありがとうございます。……そういえば渡さん、本当に殺されちゃったんですか? えと、その……遺体は……? GM:「この後、隣町の警察署の方に遺体は運ばせてもらうわ」 イズミ:……それなら、最後にご挨拶をしたいです。渡さん、こんなイズミにも優しくしてくれたから……。 GM:「駄目よ」
それは冷酷に突き放す言い方だった。
イズミ:ど、どうして……。今までの鈴木さんは、物腰柔らかく大人の対応をしてくれる優しい人物、そんな印象だったが……。 しかし、彼女はまるで最初から感情が無かったかのように、冷たく無機質に言い放ったのだ。 GM:「どうしても。一般人はこれ以上事件に関わってはいけない」 イズミ:………………。 GM:「返事」 イズミ:……はい。 GM:すると最初と同じ優しい雰囲気に戻ります――「それじゃあ今日は気を付けて帰りなさい」 イズミ:は、はい。 GM:キミが駐在所を離れる時、後ろで鈴木さんが携帯に出るのが見える――「……さん? お久しぶりね……」
家に帰ると帰宅途中のキー君と雪ちゃんが心配で見に来てくれた。
やはり雪ちゃんは優しい、ちょっと両親を殺した部屋を見られた気がしたが、きっと大丈夫だろう。 なんせ雪ちゃんはトモダチなのだから……。 ◆燃える家
次の日の学校。
GM:雪のお見舞いのあと家に帰ると、イズミの家が燃えています。そんな雪ちゃんが先生に連絡も無く無断で学校を休んだ。 昨夜、村の顔役の1人である立木さんが殺されたらしく雪ちゃんまでという不安が頭をよぎる。 ちーちゃんが先生に言われて様子を見に行くとのことだったので、イズミもついて行くことにする。 キー君は調子が悪いとかで寝坊してたらしくお昼頃に学校に来た。雪ちゃんのことを話すと一緒に行くと言うので3人で雪ちゃんの家に行くことになった。 キー君とちーちゃんとイズミ……3人で歩くのはこれで最後かもしれない。 なぜなら、今度からは雪ちゃんも加わって4人になるんじゃないか、そんな予感がするのだ。 その日、雪ちゃんのお見舞いを終わらせたイズミ達は、太陽が赤く染まり始める中をそれぞれ帰路についた。 キー君が2人とも送っていくよと言ってくれたが、ちーちゃんは用があると1人先に帰ってしまった。その為、キー君はイズミだけを送ってくれた。 イズミはキー君のことが大好きだった。だから家に入った途端、覆面をかぶった村人に襲われた時、 キー君が戻ってくるじゃないかと悲鳴を上げることだけは我慢した。 キー君には、こんな姿……見られたくなかったから……。 如月:本当にボヤ騒ぎだ! GM:ううん、ボヤ騒ぎじゃなくって普通に放火、緊張の糸がピークに来た村人の数名が、顔に覆面とかしてイズミの家に火を放った。 千歳:それは……しないとは否定できませんね。 如月:村人視点で考えると、もともと怪しいのはイズミだしな(笑) 千歳:村人にとっては渡さんが殺されて怪しいなって思っていたら、謎の都会人の刑事がやって来てイズミちゃんを釈放……その日の夜、立木さんが殺される。 如月:ああ、こりゃイズミが犯人だわ(笑) GM:千歳は途中で診療所に向かったから、登場するのは如月とイズミの2人かな。 如月:普通にイズミを家まで送ると思うしな。 GM:ではイズミを送った帰り道、如月がふと後ろを振り返ると夕日で赤く染まる空に、黒い煙が上がっているのを見ます。あれはイズミの家の方だね。 如月:なんだ! 火事か!?――急いで向かいます! GM:イズミの家はゴウゴウと燃えています。家の周りには覆面の村人が並んで見てるのかな? イズミ:いえ、慌てて逃げ出したイズミを、クワや鎌を持った村人数人がリンチにしてます(笑) 雪:うわぁ。 イズミ:いや、痛いっ、やめてよぅ――丸くなって我慢してるんだけど、無意識的に≪赤河の支配者≫を発動、ダメージを受けません。 千歳:エフェクトを使って耐えているのですね。 イズミ:しかもこのエフェクト、血の流れをコントロールして血を流さないようにするエフェクトなの……だから、村人の鎌で腿を切り裂かれたりするんだけど、まったく血が流れないという(笑) GM:村人も恐慌状態でリンチしてたけど、さすがに鎌が刺さったりすると「やばい」と思って動きが止まる……しかし―― 千歳:(村人)「おい、なんでこいつ……血が出ねーんだよ!?」「本当にこいつ……バ、バケモノ!?」 GM:ぐったりするイズミから2、3歩離れる村人達。 イズミ:村人の攻撃が止んだので消火しないとって当初の目的を思い出します。 GM:でもすでに火の回りは止めれないところまで来ています。 イズミ:……じゃあ、お父さんとお母さんと3人で映っていた写真、開かずの間に置いてあった写真を取りにふらふら家へと戻ります――お父さん……お母さん……。 GM:では炎は熱いですが、≪リザレクト≫も可能なイズミが大怪我負うほどじゃありません。 イズミ:開かずの間で写真を胸に抱えて座り込みます――良かった……お父さんとお母さんの写真、燃えて無かった……。 如月:イズミ!!――そこで登場! ガラっと開かずの間に入り、その部屋の惨状をみて絶句します――なっ!? こ、この部屋……。 イズミ:良い感じで炎が回ってて、血も焼けて匂いも……。そして部屋の中央でペタンと座ってるイズミが、そのままキー君に振り返って――キー君、来てくれたんだ。 如月:お前……この部屋は? イズミ:うん……えへへ、うぐ、えへへへ……お父さんと、あはは、お母さんの、へっぐ、想い出……燃えちゃうよ……ふふふふふ♪――写真を抱きしめたまま、笑いながら泣きます。 如月:馬鹿、いいから家から出るぞ! お前まで燃えるぞ! イズミ:大、丈夫だよ? ふふふ……お父さんも、お母さんも、ふぐ……えへへ、ここに、いるもん♪ 如月:何言ってるんだ! お前の親父とお袋は……お前の両親は行方不明だったはず。どういう、ことだよ? イズミ:鎌で切り裂かれて、だけど血の出ていない傷跡、燃えている部屋、黒い血の痕と壁にある引っ掻き傷、ゆっくりと立ち上がります――キー君、キー君は……イズミの友達、だよね? 如月:そ、それは……あたり、前だろう? 良いから、今は早く逃げるぞ! イズミ:……でも、家の周りには……イズミを傷つける悪い人達がいっぱいいるんだよ? 如月:それは……。 イズミ:もう、どこにも逃げ場は無いんだ。だってココには、イズミを傷つける、悪い人しかいないんだもん。 如月:イズミの手を握ります! 雪:おお! 如月:イズミ、裏から逃げれば大丈夫だ! 行くぞ!――強引に手を引っ張って、裏口から逃げます。 GM:では家の外に出れます。覆面の村人はすでに逃げ去って、ここにはいませんね。 イズミ:そして後ろで燃える家が崩れさる……ガラララララッ! キー君の手を握ったまま、その場で座り込むかな。炎を眺めつつ。 GM:ゴウゴウと燃える家、すでにどこが居間でどこが開かずの間だったかわからない、けれど、黒い煙とともに何か人間が焼けるような嫌な臭いがいつまでも漂ってくる。 如月:少し眺めたあとイズミに聞こう――イズミ、あの家で何があったんだ? それにあの部屋……。 イズミ:お父さんとお母さんがバケモノに……――で言うのを止める。 如月:バケモノ、そんな……何言って…………。……おい、バケモノって……じゃあ、渡さんを殺したのは。 イズミ:……信じられる? この世には……バケモノって、いるんだよ? 如月:でも……。そんな馬鹿な。イズミ、お前もしかして……――と、イズミの手を振り払います――お前が、渡さんを、やったのか? イズミ:違うよ! 渡さんはずっとイズミに優しかったもん。信じてくれないかもしれないけど、きっと、別に犯人がいるんだと思う。 如月:なら、立木さんは……。 イズミ:立木さんもイズミじゃない! キー君、信じて……。 如月:………………。 イズミ:それに、もう……イズミは、あの感触は二度と味わいたくない。 如月:……誰か、殺したこと、あるのか? イズミ:すっと家の方を見ます。手に持った両親の写真に力がこもってクシャっとなる。 如月:あの5年前の行方不明事件、……お前が? イズミ:………………しかた無かったの。 雪:え、認めるの!? 千歳:犯人はお父様とお母様では? イズミ:うん、だからそのことは絶対に誰にも言えない。墓まで持っていく秘密だもん。 如月:……お前、これからどうするんだ? イズミ:………………。 如月:……イズミ? イズミ:………………キー君、イズミ達……いつまでも、友達だよね? 如月:ああ、友達だ。 イズミ:……何があっても、トモダチ、だよね? 如月:何を……するつもりなんだ。 イズミ:すっと立ち上がって家の後ろの林に駆け込んでいきます。 如月:走って行こうとするイズミの手を取ろうとします――ま、待てよっ!
後ろでキー君がイズミの手を握ろうとしてくれたのが解った。
イズミ:そのまま林の暗がりに消えて行きます。退場です。だけどキー君の手はイズミの手にあと一歩届かない。 燃える家から脱出した時、キー君がずっとイズミの手を握っていてくれたままだったなら……。 けれどこれで良い。これで良いのだ。 キー君にバケモノになってる姿を見られるわけにはいかない、キー君たちには全てを終わらせた後に報告すればいい。そうすれば、きっとキー君達なら今まで通り……――。 GM:夕日は沈み、黄昏時が来る。如月は茫然と、その場で立ち尽くしていた。 ◆悪い人
この世界は悪い人で溢れている。
GM:さて、林に消えて行ったイズミですが、そのシーンを先にやろうか。このままでは自分の友達が危険だ、そう危険なのだ。 だから排除する必要がある。 自分にはその力がある。だから…… ――……悪イ人は排除スル必要がアルのダ。 イズミ:うん、その方が良いかな。クライマックスっぽいし(笑) GM:イズミがやりたいシーンを演出して良いよ? イズミ:それじゃあティーゲルを殺す。 GM:まぁ、そうだよねぇ。でも、ティーゲルの居場所をどうやって付き止める? イズミ:うん、考えたんだけどキー君の実家を見張るのが良いかなって。キー君が一度襲われたっぽいのは、雪ちゃんのお見舞いに行く途中に、壊された自転車を見てなんとなく察したので。 雪:でもティーゲルの習性とかイズミちゃんは知らないよね? 千歳:それにキー君は今、実家にいないのに実家の方に行くの? イズミ:うーん、それを言われると決め手に欠けるんだけど……イズミなら、次はキー君の家族殺して、獲物の帰る場所をなくすかなぁって。それに、渡さんも家にいて殺されてるから、あながち間違った推理じゃないかなって。 GM:ふむ……じゃあイズミは林や森を駆け抜けて、如月の住む天道家の家の庭にやって来たことにしよう。庭とは言え田舎なのでけっこう大きな木もあり、隠れる場所には事欠かない。 イズミ:そこでティーゲルを探します。 GM:では<知覚>で判定して下さい。 イズミ:え、いるの!?(コロコロ)……達成値は8! GM:誰かがこの家を監視してたのですが、その監視者がキミに気が付いて家から離れて近くの林の方へ逃げたのに気が付きます。 イズミ:もちろん追うよ! GM:では夕日も落ちた暗い林の中、イズミはそのバケモノに追いつきます。 如月:ティーゲルいたーー!!(笑) 雪:え、ご都合? GM:いや、俺の用意していた次のイベントが『PC@の家が襲撃される。次の日の朝、PC@の家族を殺したのは熊だという話になっている』って書いてあるんだ(笑) 千歳:すごい! 如月:ってか、俺の家族死ぬ予定だったのかよ! 危ねぇ(笑) イズミ:それじゃあ遠慮なくバケモノに向かって言おう――あなたが誰か知らないけど、イズミの友達が困っているの。だからあなた……死んでちょうだい。 GM:バケモノ――ティーゲルは言います――「俺ヲ殺ス?……貴様、何者ダ」 イズミ:イズミが誰だって? そんなの決まってるじゃん……――とそこで笑顔になります。
それは壮絶な、ジャームであるティーゲルですら一歩後ずさるような笑みだった。
イズミ:……あなたと同じ、バケモノ、だよ。
◆第一ラウンド GM:それでは戦闘です。[衝動判定]をして下さい。その結果イズミは浸食率いくつ?イズミ:71%です。ちなみに判定は成功しました。 GM:わかった。じゃあイニシアを教えて欲しい、こっちのイニシアは11。 イズミ:私は7です。 GM:じゃあ第1ラウンド。ティーゲルはマイナーで≪完全獣化≫≪破壊の爪≫≪剛身獣化≫≪ハンティングスタイル≫を使用、メジャーで≪コンセントレイト:キュマイラ≫≪獣の力≫を使ってイズミに攻撃します。 イズミ:耐えれるかなぁ。オートアクションで≪赤河の支配者≫でガードします。 GM:(コロコロ)……39命中。ダメージが42点。 イズミ:(コロコロ)……1か、13点防ぐから29点、残りHP6点で残った。 GM:残るのか。 イズミ:マイナーで≪骨の剣≫、メジャーで≪コンセントレイト:ブラム=ストーカー≫≪渇きの主≫を使って攻撃(コロコロ)……命中27! GM:それは当たる。 イズミ:装甲無視で(コロコロ)……23点。そして私は4点回復。うーん、分が悪いなぁ。 ◆第二ラウンド GM:同じコンボで命中(コロコロ)……31!イズミ:ガード。 GM:(コロコロ)……ダメージは53点。 イズミ:それは無理、≪リザレクト≫します。 GM:まだまだ余裕か。 イズミ:今回は≪コンセントレイト≫を使わず≪渇きの主≫オンリーで攻撃、これで浸食率は99%で止まる(コロコロ)……ああ、悪だくみしたせいか、達成値が低い……16命中。 GM:それはドッジしよう(コロコロ)……19で回避した。 ◆第三ラウンド GM:次はこっちね(コロコロ)……達成値44。ダメージは(コロコロ)……38点。イズミ:≪リザレクト≫(コロコロ)……9点、これで100%を超えた、これからが本当の勝負! GM:だね。 イズミ:≪コンセントレイト:ブラム=ストーカー≫≪渇きの主≫のコンボで攻撃(コロコロ)……達成値46! GM:ドッジ(コロコロ)……失敗。 イズミ:ダメージは35点の装甲無視! GM:痛いなぁ。 ◆第四ラウンド GM:再びコンボで(コロコロ)……達成値49、ダメージは(コロコロ)……低い!? 34点だ。イズミ:≪赤河の支配者≫でガード(コロコロ)……17点は止めた。ダメだ、ちょうどHPが0になる。村のヒロシさんのロイスを昇華する。そして蘇生! そのまま攻撃(コロコロ)……命中は30ピッタリ! GM:ドッジ(コロコロ)……17、失敗。 イズミ:ダメージは(コロコロ)……28点! ◆第五ラウンド GM:攻撃(コロコロ)……命中34、ダメージは38点。イズミ:それは(コロコロ)……よし、3点残った。≪赤河の支配者≫の出目が良かった。 GM:倒せないとは!? イズミ:次はこっちの番!(コロコロ)……同じコンボで命中30、ダメージは23点装甲値無視! GM:ドッジを(コロコロ)……ダメか、まだ死なない。 ◆第六ラウンド GM:攻撃(コロコロ)……命中37、ダメージは38点。イズミ:≪赤河の支配者≫で減らして(コロコロ)……って、無理でした。今度は目の前のティーゲルにロイスを取得して、タイタス昇華、蘇生します。 GM:そっちの攻撃どうぞ? イズミ:同じくコンボで(コロコロ)……命中20! GM:それはよけれるはず! ドッジを(コロコロ)……無理でした。 イズミ:ダメージは25点。 GM:まだ大丈夫。 ◆第七ラウンド GM:そろそろ蘇生もできなくなってるはず(コロコロ)……同じコンボの達成値が47、ダメージが41点。イズミ:それは……24防いで1点残った! GM:なんと!? イズミ:終わりはそっちの方だ!(コロコロ)……16命中!? GM:残念だったね。ドッジで(コロコロ)……回避した。 ◆第八ラウンド イズミ:まさかはずすなんて……。GM:終わりだ(コロコロ)……命中59、ダメージ45点! イズミ:それはドッジしないと(コロコロ)……くぅ、またHP0です。自分の一族のロイスを昇華します。そして蘇生。 GM:そろそろ残ってるロイスは大事な奴ばかりじゃないかな? イズミ:確かにこれ以上はキツイです……でも、だからこそ、ここで終わらせる(コロコロ)……いつものコンボで達成値39! 惜しい!? GM:回避は(コロコロ)……無理でした。 イズミ:ダメージは27点! GM:そこでティーゲルのお腹に風穴が開きます。 イズミ:おお!? GM:しかし、そこでNPC専用エフェクト≪不死不滅≫を使用、復活します。 イズミ:くっ!? ◆第九ラウンド GM:なんとしても、お前だけは(コロコロ)……38命中。イズミ:≪赤河の支配者≫使って(コロコロ)……25点防ぐ! GM:51点ダメージ。 イズミ:それはまた死ぬ……渡さんのタイタスを昇華します。そして復活。 GM:あと残ってるロイスは如月、千歳、雪のPC3人分だけだな。 イズミ:本気でこれ以上は無理になってきました(コロコロ)……攻撃が56で命中! ダメージは41点の装甲無視! GM:それは(コロコロ)……無理だぁ。キミの剣が身体を貫く、ティーゲルの身体がぐらりと傾き、どうっと地面に倒れ伏す。ティーゲルの首が地面に転がります。 イズミ:ふふふ……これで……これでキー君もちーちゃんも雪ちゃんも傷つかない。なぁ〜んだ、悪い人って……けっこう簡単に排除できるんだぁ♪ ◆始まりの被害者
林の中にイズミの笑い声が静かに響いていた。
イズミ:それじゃあ友達を困らすバケモノは退治したので、キー君たちを安心させに戻らなきゃ♪簡単だった。こんなにも簡単に不安とは解消されるものだっただろうか。 楽しくて嬉しくて、それでいてついつい口から笑いが漏れる。 だから、彼女は気がつかなかった……すでに黒い戦闘服の数十人の部隊に、囲まれていることに。 GM:と、イズミはそこで気が付きます。複数の気配に囲まれていることに。 雪:新展開? GM:ここからはちょっとGMのアドリブが入ります。 如月:おお、なんか気になる(笑) イズミ:だ〜れ〜? そこにいるんでしょ〜?――ぐるりと周りを見ます。 GM:すると暗がりにパパパっとライトが灯って、イズミは照らされます。 イズミ:ティーゲルの返り血で紅く染まったイズミが笑顔で立ってます(笑) 如月:怖いって(笑) GM:そしていくつもの赤い光がイズミの顔や左胸にポイントされます。 千歳:ライフル? GM:木々の間から現れるのは黒い戦闘服を来た部隊。イズミはそれが誰か解りませんが、ここに千歳がいれば解ったでしょう。 千歳:え? じゃあいるのは……UGN戦闘部隊? GM:その通り。そしてその戦闘部隊の中から、1人の若い女性が進み出てきます。それはサングラスをかけたスーツの女性、イズミも知ってるね。ヒロシの駐在所で取り調べを受けた時、そこから釈放してくれた鈴木っていう女の人だ。 千歳:えっと……鈴木さん、だったっけ? 何かイズミにご用ですか? 雪:ティーゲルと勘違いしてイズミ死亡ルート?(笑) GM:鈴木さんは言います――「やっと尻尾を出したわね、バケモノ」 イズミ:笑顔のまま黙ります。 GM:「あなたがなかなか尻尾を出さないから、本当苦労したわ。でも、これでやっと大義名分を持ってあなたを殺せる」 イズミ:お姉さんの言ってる意味よく解らないなぁ。なんでイズミが殺されるの? GM:「意味がよく解らない? よくもそんな白々しい嘘が言えたものね……美波泉水、いえ連続行方不明事件の真犯人」 如月:おお!? そっちか! 雪:その事件の犯人だと……そっか、さっき自分で自白してたね(笑) GM:「5年前に起こった連続行方不明事件、あれは行方不明なんかじゃない……そう、連続殺人事件だった」 イズミ:どうしてそんなこと言うの? だって死体とか何も出てこなかったから行方不明なんでしょう? GM:じゃあ鈴木さんはサングラスを投げ捨てて――「悪いけど、私は見たのよ。 私の家族が、バケモノに襲われ……そのまま、食われるのを。この目でね!」 イズミ:え? GM:「私の名前は鈴木なんかじゃない……本当の名前は安達、安達明美。あの事件の時、最初にバケモノに殺され行方不明になった、安達家の娘よ!」 如月:あった! 安達家あった!(笑) 雪:でも生き残りなんていたの? GM:「あの日の夕方、私はたまたま実家に帰省していた。そして夜、あのバケモノが父と母を襲うのを目撃した。私は押入れの中で両親がバケモノに食われる様を見ながら、ずっと膝を抱えて震えていたわ。そして、朝になって急いでこの村を出た。小さい頃聞いたこの村の伝承が本当だったんだって、すごく怖かった」 イズミ:黙って聞いてますよ。 GM:「でも、本当に怖かったのはその後よ、街に戻ってから両親が行方不明になったと連絡が来た。私は村に戻るのが怖くてその連絡を無視することにした。そして数ヵ月後、あの事件はただの行方不明事件としてお蔵入りした。バケモノが、お前が殺したのをこの村の奴らは村ぐるみで隠したのよ!」 千歳:これは私が立てた仮説……。 GM:鈴木……いえ、安達さんは続けます――「その後、私はバケモノを調べるうちに世界の真実に気が付いた。そしてそこで数年働きある程度の地位も得た。やっと復讐の準備が整ったの……」 イズミ:それが……この人たちなんだ? GM:「ええ、もっともUGNとしてはあなたがジャームである確証が無ければ、戦闘部隊を動かすことはできない……だから、2つほどエサを巻いた」 如月:なんかすごい鈴木さんが黒くなった。黒幕だ(笑) 千歳:普通の凡庸なUGNエージェントだと思ってたのに。 GM:「一つは……」――とイズミの足元に転がってるティーゲルの首を指さし――「FHから逃げたジャーム。そいつをこの村に誘導したら、予想通り事件を起こしてくれたわ」 イズミ:ふ〜ん、そっか、あなたが……、それで、もう一つは? GM:「もう一つは、すぐに暴走してジャーム化しそうなオーヴァードよ。せっかくその子をこの村に送りこんだんだけど……ジャーム化して、あなたを炙り出す役は果たせなかったみたいね。もう、どうでもいいけど」 雪:ティーゲル以外にいたっけ? 如月:いや、だから野々宮のことだろ? 雪:あたし? GM:うん、途中でなんでこんな村に送り込んだんですか?って雪が聞いてたじゃない、鈴木さんのこういう目論見があったからだと、すごい辻褄があうでしょ? 雪:そっか……うわぁ、あたしって利用されてたんだ……。 千歳:もともと暴走して父親を殺して、母親は精神が壊れてる。こんなロイスがタイタスになってるような状態で、この村の謎に巻き込まれたら、確かにストレスでジャーム化しそうですよね。 イズミ:とりあえず話はそれぐらいかな? イズミは興味が無さそうに言います――話、長いよ。飽きちゃった。 GM:「……そう、ごめんなさい。長い間ずっとこの瞬間を考えていたものだから……ついつい話が長くなっちゃったわね。それじゃあ」――と手を上げると、ガシャシャっと戦闘部隊が一斉にライフルを構え直します。戦闘部隊員達は誰もが目の焦点が合っておらず、言われるがままですね。 如月:操られてるのか。 イズミ:イズミは足元のティーゲルの首を左手に持ち、右手には≪骨の剣≫を出します――イズミは、キー君とちーちゃんと雪ちゃんに報告に行かないといけないの……。もうバケモノはやっつけたよって。だから、みんな、邪魔、しないで。 GM:「撃ちなさいっ!!!」
暗い林の中、周囲で激しい音とともに火が瞬く。
イズミのことを苛める悪い奴、イズミにわけのわからないことを言う悪い奴。 いつもそうだ、何かあるとすぐにイズミのせいにして、しっかり調べもしないで決めつける。 でも、そんな時にいつも庇ってくれたのはちーちゃんだった。 真犯人を見つけてくれたのはキー君だった。 だから、2人に知らせなくてはいけない。 ――もう、バケモノは倒したから、安心して良いよ―― そう、伝えなくては……。 再び火が瞬く、すでに自分の身体にはいくつもの穴が開いていた。 でもきっと大丈夫、これぐらいでイズミは死なない。 そうだとも、イズミはバケモノだ。 バケモノは、こんなコトでは、死ナナイのダ。 ダカラ、早ク、2人が待ツ、トコロニ……――。
第四章 美波泉水編 〜復讐者〜
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