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サイキックハーツRPGリプレイ

第0話 従属と反逆の選択


GM・シナリオ作成

相原あきと

登場キャラクター

陸奥・陽大(むつ・はると) 高校2年 男



※このリプレイはTRPGのルールブックから知りうる範囲のみで収録しており、
  その範囲であるかぎりに置いては、トミーウォーカーより許可を得ています。

◆ Preplay ◆

GM:それでは第0話、リプレイのプロローグとなるセッションを開始します。最初はPC1人、GM1人の1対1セッションです。
ハルト:それにしては俺とGM以外にもう1人いるが?
涼香:はい、サイキックハーツがわからない枠で呼ばれました。
GM:第0話は初心者用チュートリアルセッションとして、涼香に説明しながら行う予定です。涼香はちゃんとキャラクターも作って貰いましたが、今回は半NPC的な感じでセッションに登場予定です。
ハルト:そうか……まぁ、宜しく。
涼香:お願いします。
GM:さて、このサイキックハーツの世界観は把握していますね?
ハルト:PBW(プレイ・バイ・ウェブ)の設定もルールブックのも把握しているから大丈夫だ。
涼香:私はTRPGのルールブックの設定だけは読みました。
▼サイキックハーツの世界観
 この世界は私達が住む地球とほぼ同じ世界だ。唯一違うのはこの世界はダークネスという存在に影ながら支配されている事 (一般人のほとんどはその事実を知らない)だ。  しかし1990年に彼らダークネスの活動エネルギーであるサイキックエナジーを吸収する機械『サイキックアブソーバー』が作成、稼働するにあたりダークネス達はその動きを著しく封じられる事となった。
 世界が密かに混乱する中、ダークネスを倒す者――灼滅者(スレイヤー)――が大量に生まれ始めたのもこの時期である。
そして時は流れ、ゲーム内の時間背景は2012年となっている。
▼ダークネス
  ヒトの精神に宿る邪悪な別人格をダークネスと呼ぶ。彼らは生殖による繁殖ができない代わりに、宿主の精神が大きく揺らぐと、宿主の精神を破壊し肉体を乗っ取り実体を得る。これを闇堕ちと呼ぶ。ダークネスはサイキック(いわゆる超能力の事)という能力を駆使し、世界中の人類を歴史の裏側から支配している。
▼灼滅者(スレイヤー)
  自らの内部にいるダークネスを抑え込み、自我を保ったままダークネスの力であるサイキックを使いこなす事ができる人間。つまりプレイヤーキャラクターは全員灼滅者である。
GM:ルールブックを読んで来てくれたのなら十分です。それではまずは今回予告を読みあげます。

ダークネスの貴族とも称される種族、ヴァンパイア。
彼らは闇堕ちの際に元人格の血族や愛する者をも闇堕ちさせるという性質を持つ。

ここに、ある一般的な家庭があった。
父がいて、母がいて、姉がいて、そして……弟がいた。
しかし弟がある事実を知った時、己の中の闇へとのまれる。
大好きな、姉をも巻き込んで……。

わずかに意識を残した姉は、己の内なる闇にあらがう事ができるのか。
今、エクスブレインの未来予測を受け、1人の灼滅者が救出へと向かう。

サイキックハーツRPGリプレイ
『従属と反逆の選択』
――されど恐れるな、灼滅者の力を。
一同:『おお〜』
ハルト:しかし最初からヴァンパイアか……。
涼香:なんかカッコイイ感じだね。
GM:まぁどう転ぶかは皆さん次第ですが……それでは自己紹介をお願いします。と言っても今回は1人だけですが。
ハルト:ああ、俺の名前は陸奥・陽大(むつ・はると)、男、高校2年生だ。称号は無色の大罪。ルーツはシャドウハンターで、ポテンシャルはサウンドソルジャー。
GM:シャドウハンターは人間の精神世界『ソウルボード』に潜むダークネス[シャドウ]を狩る宿命を背負いし灼滅者ですね。サウンドソルジャーは音楽で戦う灼滅者です。
ハルト:髪の毛と瞳が銀色な厨二属性。『取り戻させてもらう』が決め台詞だ。
涼香:決め台詞?
GM:決め台詞はスレイヤーカードを解放する際に使う合言葉だね。スレイヤーカードは灼滅者の武器や防具を封じておけるカードの事で、あらかじめ決めておいた言葉を言う事で、一瞬でその武具を装備可能なんだ。
ハルト:生まれは[大切な人のソウルボードを壊してしまった]ので、姉の精神世界を壊してしまった……って事で。その姉は生きてはいるが精神が壊れてしまったので……押して知るべし、だ。
GM:武器――殲術道具(キリングツール)は?
ハルト:影業だ。名は『残照の影』、残照とは陽が落ちた後も少しだけ残っている陽光の事で、そんな僅かな光であっても影は必ず生まれる……そういう意味で名付けた。攻撃時の形状は『牙』、荒々しい牙となって敵を噛み砕く。
GM:わかりました。それでは今回ゲストキャラとして登場の涼香も、一応自己紹介お願いします。
涼香:はい、名前は朱鷺川・涼香(ときがわ・すずか)です。中学3年生の女の子です。髪はこげ茶のロング、噂話が好きな普通の女子中学生です。家族は両親と弟がいます。
GM:弟の名前はリョウです。中学1年生ですね。
涼香:弟との仲は良いです。
ハルト:灼滅者では無いのか?
GM:はい、涼香はただの一般人です。そんなわけで彼女は今回正式なPCでは無い……そう思って下さい。
ハルト:了解した。

GM:それでは唯一のPCであるハルトのハンドアウトを読みあげましょう。

▼陸奥陽大用ハンドアウト

コネクション:朱鷺川・涼香(ときがわ・すずか)   感情:憧憬
  エクスブレインからの情報で闇堕ちした一般人の救出を依頼される。
  その一般人の名は朱鷺川・涼香と言うらしい。
  普通なら闇堕ちしたダークネスはすぐに人間としての意識はかき消えるのだが、
  彼女は元の人間としての意識を残しており、ダークネスになりきっていない状況だ。
  もし彼女が灼滅者の素質を持つのであればKOし、闇堕ちから救い出して欲しい。
  もちろん完全なダークネスになってしまうようなら灼滅するしかないのだが……。

ハルト:そうか……涼香にPLがいつつも、今回はゲストなのに納得した。つまり今回のセッションで涼香を助ければ良いわけか。
涼香:そして私は今回灼滅者に覚醒すれば良いのだね。
GM:ぶっちゃけそういう事です。もちろん、ただソレだけで終わらせはしませんが……。
ハルト:うーん油断はできないようだな。  
※なおハルトのキャラクターデータは最後に載せてあります。
GM:それでは今回はPC1名ですが、ハルトと涼香でPC間コネクションを取って置きましょう。まだ出会って無い2人ですが、会った時の第一印象という事で。
ハルト:それは構わないが、俺はハンドアウトで涼香に対してすでにコネクションの感情は取得しているぞ。ハンドアウトそのまま[憧憬]で良いしな。
GM:そう言えばそうですね……じゃあ涼香からハルトにだけ取って置きましょう。一覧表から好きな感情を選んでも良いし、ダイスを振っても構いません。
涼香:それじゃあ振ります……57番。
GM:『ひとめぼれ』です。
涼香:おお!?
ハルト:………………。

■ OPENING PHASE ■

◆Opening01◆クリスマス1週間前

街は赤と緑のクリスマスカラーに染まり、ここ吉祥寺駅周辺も街路スピーカーからクリスマスソングがエンドレスで流れていた。
吉祥寺のオシャレな店が並ぶ通りを、サラリとしたこげ茶の髪をウィンドウに映らせて、中学三年生の朱鷺川涼香はプレゼント選びに余念がない。
涼香の誕生日がクリスマス・イブであり、今までずっとクリスマスと誕生日がごっちゃにお祝いされていた。だが今から数年前、弟のリョウがクリスマスにプレゼント交換しようと提案してくれて、それ以来2人のクリスマス行事になっていた。
GM:それでは最初はマスターシーンです。と言っても涼香の描写なので涼香は普通にロールプレイして下さいね。
涼香:わかりました。
GM:時期はクリスマス一週間前、場所は吉祥寺で涼香はクリスマスに弟に渡すプレゼントを買いに来ています。
涼香:弟って何歳なんですか?
GM:弟は『リョウ』と言います。涼香の2つ下で中学1年生ですね。仲は良いっていう設定です。
涼香:それなら私は誕生日がクリスマス・イブなので、いつも両親から誕生日とクリスマスを一緒にお祝いされてたんです。それで弟が「クリスマスは僕が祝うよ」って数年前からクリスマスプレゼントをくれるようになった……とかどうでしょう?
GM:良いね! それじゃあ弟とクリスマスにプレゼント交換するのが涼香の恒例行事になっている、という事で今日はそのプレゼントを買いに吉祥寺に来ています。
涼香:オシャレなお店を見て周りますよ? 今年は手袋にしようかな、セーターが良いかな?
GM:では良さそうなセーターを見つけて、涼香は手を伸ばすのですが……ここで難易度20の【術式】判定をして下さい。
涼香:えっと、私の【術式】は21なので――
▼能力値【気魄(きはく)】【術式(じゅつしき)】【神秘(しんぴ)】
  能力値とはPCの持つ身体・技術・精神を数値で表したものである。【気魄】は闘志や覚悟、肉体の強さを。【術式】は詠唱の速さや頭の良さ、テクニックを。【神秘】は霊力やオーラ、意志の強さを表している。
▼判定
  判定は以下の計算式で出た数値を[成功率表]に当てはめてダイスロールを行う。
計算式は[判定値(GMが指定したPCの能力値)−難易度]で求められる。
表のどこを見ればを把握したらD100を振り、出目が成功率以下なら成功となり、またより低い出目で成功すればより良い結果となる。

例:PCの術式が21、GMの宣言した難易度が20の場合、その差は+1である。
  D100を振った結果が出目「37」ならば、アサルト成功となる。

▼成功率表(一部)
 
判定値-現在値の差が
+4〜6
+3
+2
+1
±0
-1
通常成功
90以下
85以下
80以下
75以下
70以下
65以下
アサルト成功
45以下
42以下
40以下
37以下
35以下
32以下
ジャスト成功
18以下
17以下
16以下
15以下
14以下
13以下
クリティカル成功
9以下
8以下
8以下
7以下
7以下
6以下
※判定値−難易度の表は、プラス方向に「7〜12」「13〜20」「21〜30」……と上限無く続き、またマイナス方向にも同じように下限無く続く。
涼香:D100を振りますね……出目が12です。これだとジャスト成功だよね?
GM:その通り! では描写を続けましょう。実は涼香が目を付けたセーターですが、涼香が手を伸ばすと同時に別の人が手を伸ばしていました。それを涼香は凄い速さでセーターを手に入れました(笑)
涼香:あ、ごめんなさい(笑)
GM:ふむ、キミが思わず悪いなぁって思って謝ると、その人は高校生の女の人だね。ふんわりした栗色のロングヘアーで黒いセーラー服を着ていて、大人っぽい落ちついた雰囲気の美人さんだ――「あ、いいえ、気にしないで? あなたの方が先だったしね」
涼香:あああ、なんか私、嫌な子になってない? 大丈夫?(笑)
GM:まぁ大丈夫でしょう(笑) それより女子高生のお姉さんは――「それより男モノのセーター……もしかしてあなたも彼氏さんに?」と微笑んで聞いてきます。
涼香:あ、これは弟へのクリスマスプレゼントにって思って。お姉さんは彼氏さんにですか?
GM:「か、彼氏っていうほどの関係ではないのだけど……でも、うん、クリスマス、だし、ね?」
涼香:おお、照れてる……可愛い人だ(笑)
GM:「そ、それじゃあね、お互い良いのが見つかると良いわね」
涼香:あ、はい! そうですね――と、せっかく譲って貰ったのでセーターをキープしつつ他のも見て回ります。
GM:キープするのか(笑) じゃあ次は【神秘】の難易度20で振ってくれ。
涼香:【神秘】は10しか無いからなぁ……難易度との差がマイナス10なんだけど……。
GM:成功率が[通常成功35/A(アサルト)成功17/J(ジャスト)成功7/C(クリティカル)成功3]だね。
涼香:えい……ダメだぁ、出目90だから普通に失敗。
GM:ではピンと来て良さげなマフラーに手を伸ばしますが、別の人に取られちゃいます。それはさっきのお姉さんです。おろおろします――「あ、あなた、ご、ごめんね!?」
涼香:い、いえいえ、彼氏さんにどーぞです!(笑)
GM:「そんな、弟さんに……」
涼香:あの、もしかして趣味が合うのかもしれませんね。お姉さんと私(笑)
GM:「そ……うん、そうかもね」――とお姉さんが笑って――「そう言えば、あっちに良い感じのお店があるんだけど一緒に行ってみない?」
涼香:あ、それは是非!
GM:最終的にそのお姉さんは白いマフラーを買って「ありがとう」と言って帰って行きます。
涼香:はい! 今度また一緒に買い物しましょう。
GM:「ええ、喜んで!」
涼香:じゃあ手を振ってお姉さんを見送って……あ、GM、お姉さんの名前聞き忘れた(笑)
GM:む、そう言えば名乗って無かったな……聞いていた事にする?
涼香:うーん……それはいいや、あのお姉さんとはどっかで会える気がするし。
2012年12月16日日曜日。
その日の買い物はとてもほのぼのする時間を感じる一時だった。
そしてそれが、一般人朱鷺川涼香の最後の日常となるのだった……。

◆Opening02◆未来予測

東京都は武蔵野市に存在する武蔵坂学園、地下深くにサイキックアブソーバーを持つその学園は年若い灼滅者達の相互組織として機能している。学園は普通の学校ぐらいの大きさの幾つかのキャンパスに分かれ、一つのキャンパスは小・中・高校に分かれ将来的には大学も建設予定である。
キャンパスの一つ、その高校へと陸奥陽大は入って行き目的の教室の扉を開ける。
GM:では次はハルトのオープニングです。場面は高校の教室、知り合いのエクスブレイン五十嵐姫子から連絡がありやってきた所です。
ハルト:五十嵐か……ルールブックのパーソナリティにもいるエクスブレインだな。
涼香:エクスブレイン?
GM:ああ、ダークネスはバベルの鎖があって自身に降りかかる厄災は事前に察知して回避できるんだけど、エクスブレインの未来予測だけは、そのバベルの鎖による効果を無効化する手段を予測し、灼滅者に提示できるんだ。
▼バベルの鎖
 ダークネスや灼滅者は[バベルの鎖]と言う結界でその体表を覆われており、この結界はサイキック以外のあらゆる攻撃をかすり傷に留めます(見た目は負傷している感じになります)。また、バベルの鎖を纏った者が起こした事象はその情報を過剰に伝搬しなくなります。そしてさらに、バベルの鎖を纏った者は自身に降りかかる災厄を僅かな前兆として察してしまいます。最後の効果がある為、ダークネスに対して不意打ちをしようとしても事前に察知され回避されてしまうのです。
▼エクスブレイン
 武蔵坂学園に在学する学生はそのほとんどが灼滅者である。だが、中には特別な存在であるエクスブレインも在学している。彼らはサイキックアブソーバーを介して未来予測と呼ばれる予知を受け取る者達である。彼らの見る未来予測はダークネスの持つ[バベルの鎖]をかいくぐる唯一の手段なのだ。
GM:――というわけです。
涼香:わかりました。説明ありがとうございます。
GM:さて、それではシーンプレイヤーはハルトなので、進めましょうか。
ハルト:ガラっと教室の扉を開けて入ろう。五十嵐姫子は高校1年生で俺より後輩だったな……なら――五十嵐、何を予測した。
GM:「一般人が闇堕ちしかかっています……どうやら親しい家族がヴァンパイアのダークネスとなり、それに巻き込まれるように闇堕ちしつつあるようなのですが……」
ハルト:まだ救える可能性があるんだな。
GM:「はい、まだ元人格は残っているようで、説得できればかなりの弱体化ができると思われますし、素質を持っていれば灼滅者へと覚醒できるはずです。ただ……もしすでにダークネスと化していた場合は……」
ハルト:灼滅せざるをえない……ああ、解っている。
GM:「説得のポイントは『ダークネスになれば大切な家族を救えない』という事です」
ハルト:救う……か。モノは言いよう、だな。
GM:「そうかも、しれません」
ハルト:すまない、キミを責めるつもりじゃなかった……。それで周囲の状況はどうだ。他の家族や一般人は救えるのか?
GM:姫子は首を横に振ります――「近所等の一般人に被害は無いと思います。ただ、対象の家族……残念ながら両親は共に死亡します。その前に突入したら……バベルの鎖によって察知されてしまいます」
ハルト:……わかった。それで、対象の情報は?」
GM:「はい、闇堕ちしかかっているのは中学3年生、朱鷺川涼香という女の子です。そしてダークネスと化したのは……彼女の弟です」

■ MIDDLE PHASE ■

◆Middle01◆甘い従属

弟へのプレゼントを抱え、朱鷺川涼香は軽快に家のドアに手をかける。
プレゼントは夜に交換するのだから、それまでは弟には見せず机の一番下の引き出しにしまっておこう。
GM:それではミドルフェイズに入ります。最初は涼香ですね、弟へのプレゼントを買って家の前まで帰って来ました。
涼香:あ、プレゼントはセーターに決めました。喜ぶかなぁって思いながら家のドアに手をかけます。
GM:その時だ。キミの心臓がドクンと跳ねて、一瞬だけ世界が写真のネガのように反転します。
それは本当なら一瞬の事だ。

だが、朱鷺川涼香にとってソレは、時の止まった世界で少しずつ何かに変わって行く……
いや、自分の世界が塗り替えられて行くような感覚だった。
ネガフィルムのように反転した世界で、ぴくりとも動かぬ身体の先端、指の先、毛細血管の隅々から、
温く暖かい何かに置き換わって行く。

それは始め無意識に気持ち悪いモノだと感じて拒絶したが、血が巡るように身体を侵蝕していくソレは、段々と拒絶し難い心地良さと共にまどろみの中へと涼香を誘惑する。
GM:そして涼香は、ある一つの思考が最優先事項のように感じられるようになります。
涼香:最優先?
GM:今、あなたが一番大切に思っているものは?
涼香:弟のリョウ?
GM:ではリョウの為に何かしたい、そういう気持ちがキミの心を占めます。
涼香:おお……これは、え?
GM:一応、説明するとここであなたは敵になります。今回、半NPCとして参加……と言ったのはこういう意味です。
涼香:敵に!?……わかりました。面白いから敵をやります(笑)――リョウくん……――と、なぜか弟を君付けで呼びつつ家のドアを開けて入ります。
GM:すると玄関ではキミの母親が何かで袈裟掛けに斬られて絶命しています。
涼香:それはスルーします。今の私にはリョウくんが最優先だし……で、いいですよね?(笑)
GM:素晴らしいです!
涼香:お母さんが死んでいるのは認識できるのですよね? なら、リョウくんは大丈夫かな!?って心配になります。
GM:では【術式】の難易度20で判定して下さい。ただし、今のキミはルール的には[闇堕ち]している状態なので、【能力値】を全て3倍にして計算して下さい。
▼闇堕ち
 TRPGのルールにおいて、闇堕ちとは自分の中のダークネスに肉体を明け渡す行為である。これは絶体絶命のピンチでのみ選択できる事であり、闇堕ちした場合はシーン終了までレベルと能力値を3倍にし、サイキックと武器攻撃力を10倍とする。ただしシーンが終了すれば闇堕ちは完全に完成し、以降のPCはNPCとなってしまう。

※リプレイ本編の涼香は、シナリオの都合で闇堕ちしており、これはTRPGの
  ゴールデンルールを適応していると思って欲しい。
涼香:私の【術式】は21だったので3倍で63? 難易度との差が43だから……。
GM:[通常成功115/A成功57/J成功23/C成功11]だね。基本的に何を振っても成功だ(笑)
涼香:どれだけ高い成功を出せるか、それだけですね……えっと72、成功!
GM:居間にリョウがいるのが解ります。
涼香:急いで居間に行きます――リョウくん大丈夫!?
GM:居間では弟のリョウと、そして父親がいます。そしてちょうど涼香がドアを開けた時、父親がリョウの持つ日本刀に貫かれて絶命します。
涼香:そ、それは……。
GM:リョウがゆっくり振り向いて言います――「ああ、帰って来たんだ」――ドサッとお父さんが落ちます。
涼香:お父さんが死んだんですよね、それも……リョウに殺されて……。
GM:はい、違和感はすごいあります。ただし最優先事項は――。
涼香:リョウくん、無事……だったんだね。
GM:「うん、僕は大丈夫。ええっと……そうだ、『お姉ちゃん』は、もうちょっとみたいだね」
涼香:え?
GM:「ううん、なんでも無い。それより僕はここに居たくないんだ……『お姉ちゃん』、一緒に来てくれる?」
涼香:どこかに行くの?――あ、GM、リョウは家にいたので薄着という事で良いでしょうか?
GM:ああ、それは構いません。
涼香:じゃあ、外は寒いから……はい、これ――プレゼントに買ったセーターを渡します。
GM:「ありがとう。そうだ『お姉ちゃん』、出掛ける前にちょっと早いけどクリスマスプレゼント、僕のもあげる。僕の机の一番下の引き出しに入ってるから……取って来て欲しいな」
涼香:私が?
GM:「うん、僕が取って来たら……『お姉ちゃん』、驚かないでしょう?」
涼香:ふふ、わかった。ちょっと待っててね、リョウくん――と、2階にあるリョウの部屋に入って机の引き出しを開けます。
GM:そこにはプレゼント用の包装紙に包まれたマフラーがあります。
涼香:リョウくん……――マフラーを首に巻きましょう。
GM:と、そこで能力値が3倍になっている涼香は気が付きます。2階の窓から見えるのですが家の周りで武器を持った学生達が何か大きなコウモリ数匹と戦っています。
涼香:それは……弟が心配なのでリョウくんのいる居間へ!
朱鷺川家前――
「ちっ、ブラッドバッドか……エクスブレインの予測通りか!」
「でも、この先に助けられるかもしれない人がいるんでしょ? 時間かけてらんないよ!」
「ああ、そうだな……ハルト! ここは任せて先に行け!!」

◆Middle02◆救いの言葉

仲間達に後ろを任せ、ハルトは朱鷺川へと突入する。

玄関口で女性が斬られて死んでいるのを発見するが、これは五十嵐の予測通り母親だろう。
さらに血の匂いがする居間へと駆け込むと、そこには男性――たぶん父親だ――の死体があった。
だが、それ以外に人影は無い……。

「あなた……誰?」
ハルトに気配を気取られる事なく背後より声をかけられる。
そこには中学生ぐらいの少女が虚ろな瞳で立っていた。
ハルト:朱鷺川……涼香、だな。
涼香:なんとなく嫌な感じがして身構えます。
ハルト:俺はキミを救いに来た。
涼香:救いに?
ハルト:今、キミは大変危険な状態にある……ゆっくり確認して、落ちついて、話を聞いてくれ。まず……この男性、キミの父親だな。殺したのはキミか?
涼香:そこは冷静になって良いの?
GM:良いですよ。弟の姿も見えないので混乱はありますが、混乱しているからこそハルトの質問に冷静に応えて構いません。
涼香:お父さんは……リョウくん、が、日本刀で……。あ、あれ? なんで、リョウは、お父さんを?
ハルト:家族構成は把握済みだしな――そうか、やはり弟がダークネスとなった時に行った凶行か……。
涼香:ダークネス?
ハルト:ああ、それは……――と、簡単にダークネスの説明をしたって事でいいかな?
GM:まぁそこは省略しましょうか。では説明したって事で。
涼香:それじゃあ……ダークネスになったリョウは、もう……。リョウは、リョウはどこに行ったの!?
ハルト:それを知る事ができるのは、キミだけだ。
涼香:私、だけ?
ハルト:ああ、ダークネスとなった彼を追い、見つける事ができるのはキミしかいない。キミがそのまま闇へと堕ちれば、彼はダークネスとしてさらなる凶行を続けることになるだろう。それを止める事ができるのも、キミだけだ。
涼香:私が……リョウを、止める?
ハルト:俺達と一緒に学園に来い。そうすれば、キミの手で彼を見つける事ができるだろう。
涼香:本当に?
ハルト:ああ、キミが彼を……救うんだ。
涼香:………………なら、私は――
――『ふざけるな!』
それは涼香の口から吠えるように吐き出された言葉だった。

その言の葉に涼香としての抑揚は無く、粗野で乱暴で荒々しい雑音だった。
「ダークネス……現れたか」

虚ろだった瞳に凶暴な炎が灯り、朱鷺川涼香は……一時的にダークネスに乗っ取られたのだった。

■ CLIMAX PHASE ■

◆Climax01◆たった1人の戦い

ダークネスに乗っ取られた朱鷺川涼香は右手をピンと下に伸ばすと、見る見るうちに手の平が十字に
裂け、真っ赤な血がドプリと溢れる。
手の平から湧きこぼれた血はそのままねっとりと重力に引かれるように下に伸び、やがて鍔の無い1本の日本刀と化した。

ダークネス涼香は己の血で形作られた血刀を手にし、ゆっくりと相対する灼滅者へと刺すような視線を向けるのだった。

●第1ラウンド

GM:それでは戦闘に入りましょう。涼香の判定はそのままPLさんが行って構いません。暇だしね。
涼香:はーい(笑)
GM:ただし、エクスブレインの言った通りに説得したので涼香はハルトに説得されたことになります。すなわちデータ的には弱体化します。
涼香:どれくらい?
GM:まぁ、元通りの能力値になったと思って下さい。さらにFジェムが使えません。
ハルト:なるほどな、同じ能力値で戦ったら五分五分だと思っていたが……Fジェムの分、こちらが有利という事か。
GM:はい、そういうバランスで行きます。もっとも、ダイス目次第じゃ十分ハルトが負ける可能性もありますが、その場合は諦めて下さい(笑)
ハルト:諦める気はさらさら無い。
GM:さて、まず初期配置を決めましょう。戦闘ではエンゲージというルールで距離を管理します。敵とエンゲージしているか(近距離攻撃が当たる位置にいるか)、エンゲージしていないか(近距離は当たらず、遠距離攻撃のみが当たる位置にいるか)、ただそれだけです。
涼香:何メートル以内がエンゲージになるの?
GM:はい、何メートル離れていても近距離の攻撃が当たらない位置にいるならエンゲージしていない、となります。
涼香:ああ、大雑把なんですね。解りやすいです(笑)
GM:まぁ、何百メートルも離れた位置にいるのに戦闘になるっていう状況は無いでしょうから、基本的には10〜20メートル前後がエンゲージしていない場合の位置だと認識していて構いません。
ハルト:わかった。今回は説得していたし、お互いエンゲージしているとするのが良いか?
涼香:はい、私もそれで良いと思います。
▼エンゲージと射程
 攻撃には[射程:近]と[射程:遠]がある。
敵とエンゲージしている場合はどちらの攻撃も射程が届くが、エンゲージしていない敵には[射程:近]は届かず、[射程:遠]のみが届くとする。
GM:では次にポジションの宣言をして貰います。
涼香:ポジション?
▼戦闘時のポジション
 ポジションとは戦闘時における各PCの役割の事だ。ポジションは以下の6種類があり、戦闘参加時に宣言する事となる。ただし、戦闘中にポジションを変更する場合は、セットアップにFジェムを1つ使う事で変更する事が可能。このポジションは敵や味方でいくらでもかぶって構わない。尚、PBWにおける前衛・中衛・後衛などの隊列データはTRPGにおいて導入されていない。

▼クラッシャー(行動値修正マイナス10)
  ダメージ決定時にFジェムを使用すると、ダメージが2倍となる。
▼ディフェンダー(行動値修正マイナス5)
  ダメージ適用時にFジェムを使用すると、手番を消費せずにカバーアップを行える。
▼ジャマー(行動値修正+10)
  ダメージ適用時に、あなたが使用するサイキックはエフェクトを自動的に与える。
▼キャスター(行動値修正±0)
  ダメージ決定時にFジェムを使用すると、ダメージとヒールが1.5倍となる。
▼スナイパー(行動値修正+5)
  命中判定時にFジェムを使用すると、命中判定にRアップ10を得る。
▼メディック(行動値修正±0)
  ダメージ決定時にFジェムを使用すると、ヒールが2倍となり、
  さらに対象にキュアを与える。
涼香:私はとりあえずクラッシャーで。
GM:ちなみにFジェムが使えないので、意味無いですよ?
涼香:まぁ、それでもイメージ的にクラッシャーで!(笑)
GM:わかりました。ハルトは?
ハルト:ジャマーで行こう。
GM:わかりました、それぞれポジション効果に付随する行動値修正を入れた自分の行動値を教えて下さい。

▼行動順番
29:ハルト(ジャマー)
9:涼香(クラッシャー)

GM:それではイニシアチブプロセスとして行動値を比べ、早いキャラクターから行動していきます。今回はハルトから行動ですね。
涼香:ポジションの修正が大きすぎるよー。
GM:戦闘時の行動は[ムーブアクション][マイナーアクション][メジャーアクション]の行動を1つずつ行えます。もちろん、やる事が無い場合はしなくて構いません。
ハルト:わかった。なら、ダークネスに宣言しよう――彼女を取り戻させてもらうぞ!――≪影縛り≫を使う。こちらの【術式】は24だ。
GM:対決判定は対象の【能力値】が難易度になります。涼香の【術式】は?
涼香:21です。あのGM、防具の所に[回避属性:術式]ってあるけど……。
GM:ああ、それは防御判定時、その【能力値】を使う場合に限り+2の修正が入ります。
涼香:なら21+2で23です!
GM:では差が1なので成功率が[通常成功75/A成功37/J成功15/C成功7]ですね。
ハルト:ここは確実性を取る。【術式】のFジェムを1つ使用、Rアップ5を得る。
▼F(フォース)ジェムとその使用方法
 サイキックエナジーが結晶化した物。TRPGにて追加されたルールである。灼滅者は【気魄】【術式】【神秘】の各能力値につき3つのFジェムを持っており、さらに任意の能力値にはボーナスで1つのFジェムが割り当てられている(つまり合計で10個のFジェムを持つ)。

・判定に使用する【能力値】のFジェムを使用する事で、判定値にRアップ5を得る。また、この効果は複数Fジェムを消費する事で重複する。
・ダメージを受けるPCは、任意のFジェム(どの能力値に対応するFジェムでも良い)を1つ消費する事で、相手の成功率を引き下げる事が可能。この時、複数のFジェムを消費しこの効果を複数使っても構わない。ただし、この効果で通常の成功が失敗になる事は無い。
・任意のFジェムを3つ消費する事で、その判定を振り直す事が可能となる。
ダメージ適応のタイミングで任意のFジェムを消費する事で、エフェクトの効果を得る。
・戦闘不能になる代わりに、任意のFジェムを1つ消費する事で『魂が肉体を凌駕する』を宣言できる。
▼RアップnとRダウンn
 nには整数が入る。成功率表をn段階良いものを適応する。例えば元々の能力値と難易度の差が1の判定で、Rアップ1の修正を受けると、成功率表は、差が1の列ではなく、差が2の列を見て判定が可能となる。
GM:Rアップ5で成功率表の5つ上の列を使うので……[通常成功100/A成功50/J成功20/C成功10]が適応されます。
ハルト:……75で通常成功だ。
涼香:当たったー。
GM:命中したので次はダメージの算出です。武器には武器の威力、威力の種類は<破壊力><斬撃力><魔法力>と3つの攻撃力が設定されていますが、このタイミングでどの<威力>を使うか宣言します。
ハルト:なら<斬撃力>で行こう。
涼香:いいの? 私の防具は[ダメージ耐性:斬撃]なんだけど?
ハルト:まぁこっちはソレを知らないからな、斬撃で攻撃する。
GM:耐性を持っている場合、武器の<威力>を0として計算します。ダメージは[サイキックの威力+武器の威力]で算出されますので……。
ハルト:武器の威力が耐性のせいで0となると、≪影縛り≫の威力のみか……29点だ。
涼香:HPが29点減りました。
ハルト:さらにジャマーの効果で自動的にBS(バッドステータス)【捕縛】が発動、俺の影が牙を剥いて涼香に襲いかかり、そのまま喰らいつく演出だ。今後、涼香が行う命中判定はRダウン2を得て、俺が涼香に攻撃する際はRアップ2を得る。
涼香:えええ! そんなに!?
GM:はい、サイキックハーツには大量のエフェクトがありますが、それらの効果はかなり高いです(笑)
ハルト:ジャマーは純粋な攻撃力等は上がらないが、エフェクト効果を一番引き出せるポジションだからな。
涼香:ぐぬぬ……よくも!――とダークネスが(笑)
GM:そうですね(笑) では涼香の番です。
涼香:影の牙が身を裂くのも気にせず、手に持った血の刀で切りつける! ≪紅蓮斬≫を使用、【気魄】26!
ハルト:【気魄】は苦手で12しか無い……だが、回避ボーナスが気魄なので+2、合計14だ。
涼香:それでも差分値14なので、成功率100%です!
ハルト:ただし【捕縛】の効果でRダウン2だ。俺の影が締め付ける。
涼香:ああ、それじゃあ成功率が2段階下がる……でも出目18! ジャスト成功! <斬撃力>で攻撃します!
ハルト:[ダメージ耐性:破壊力]だから、<斬撃力>は無理。
GM:それではジャスト成功だったので武器の<威力>が3倍になってダメージを計算します。
▼命中判定時の成功度
 命中判定に普通に成功した場合は本編で解説した通りだが、アサルト、ジャスト、クリティカル成功した場合はそれぞれ武器の威力が倍加する。
アサルト成功の場合は武器攻撃力が2倍に、ジャスト成功の場合は3倍に、クリティカル成功の場合は4倍となる。
涼香:えっと、それじゃあ私の日本刀の<斬撃力>が12点なので、それがジャスト成功だから3倍で36、それに≪紅蓮斬≫の威力が18だから合計で……54点?
ハルト:それはFジェムを2つ使って成功度を引き下げ(ジャスト→アサルト→通常)るぞ。俺のHPは48点しか無いからその一撃で終わるしな。涼香の身を縛る影が強引に日本刀の軌道をずらして致命傷を避ける。
涼香:通常成功になったから3倍にならないので……えっと、30点ダメージ?
GM:そうですね、一撃でハルトのHPの半分以上を持って行きますが、まだ倒れません。
ハルト:さすがになりかけとはいえダークネス……こちらが油断したら、一気に持って行かれる、か。

●第2ラウンド

GM:それでは次のラウンドです。ハルトから。
ハルト:こちらも本気を出そう……≪ブラックフォーム≫を使用。シャドウハンターの十八番技、自らの魂を闇堕ちぎりぎりに引き下げダークネスの力を活性化させ、さらに身体も回復させる。
GM:ヒール系のサイキックの場合、ヒール対象の【能力値】が難易度となります。
ハルト:今回は自身の能力値か、つまり差は±0か……03、クリティカル成功だ。威力は<斬撃力>で算出するがこれがクリティカルで4倍になって、さらにサイキックの威力を足し……というか全快だな。
GM:ハルトが魂を強引に闇堕ち付近まで引き下げ、ダークネスの力をぎりぎりまで解放させる。
ハルト:さらにジャマー効果で自動的にEN(エンチャント)【壊アップ】を得る。以降の俺の武器攻撃力は全て+10される。
涼香:明らかに雰囲気が変わったと思って、半歩後ずさりします。だけど、ダークネスはそれが屈辱だと思い、怒りも露わにハルトを攻撃しましょう!
GM:「出来そこないのくせに! よくも!」――と、ダークネスは涼香の口を借り叫びます。
涼香:こちらも全力の≪紅蓮斬≫行きます。
ハルト:いや、させないさ――ここで≪ブロッキング≫を使う。涼香の次の命中判定にRダウン2を与える。俺の足元から牙持つ影が生まれて進路を妨害する。
GM:「こざかしい!」
涼香:ムーブアクションで≪パワーインパクト≫、マイナーで≪バーストブラッド≫を使用、だけど【捕縛】と≪ブロッキング≫の効果で合計Rダウン4、【気魄】でそっちとの差が14だから成功80%まで下がった……でも出目18でアサルト成功!
ハルト:Fジェム使用して成功度を引き下げる!
涼香:じゃあ普通成功になって<斬撃力>で12、≪紅蓮斬≫で18、≪パワーインパクト≫で10、≪バーストブラッド≫で10、合計50点!
ハルト:全快してたのに……通常命中でその威力なのか。
GM:HP48と言ってたから一撃死ですね。ダークネスの涼香が血刀でハルトを斬り裂く!
ハルト:いや、ここで≪空蝉≫を使用。赤い日本刀が俺を真っ二つに斬り裂くが、それは俺の影が作った残像だ。
GM:「残像……だとっ!?」
ハルト:≪空蝉≫の効果でダメージをマイナス10する。残りHP8で立っている。
涼香:おおー!
ハルト:残像で致命傷は避けたが、身体はぼろぼろだ……肩で息をしながら涼香を見据えて言おう――本当に、強いな。
GM:「それは皮肉か? 貴様の説得のせいでどれだけ力を制限されたと思っている……もしこの状態で強いと言うなら……ふん、この人間の持つ強さだろうよ」
ハルト:そうか……弟を思う姉の想いの強さが……いや、それは俺も同じか……。
GM:「ふん、そろそろ止めておけ。これ以上やってもお前が死ぬという結果は変わらん」
ハルト:死……か、俺は大事な人の大切な物を奪ってしまった。それらを取り戻すまで……俺は死ぬわけにはいかない!――拳を握ると同時、俺の拳に牙持つ影が重なり、そのまま俺は身を低くして超接近戦を挑む。
GM:「いいだろう、死に急ぎたいなら殺してやる!」
ハルト:≪トラウナックル≫を使用、【神秘】で20だ。
涼香:私は10です。
ハルト:さらに涼香に【捕縛】が入っているので俺の命中にRアップ2、涼香にまとわりつく影が一瞬だけキツクなりその動きを止める。成功率は105以下……22でアサルト成功。≪魔法力≫の9に【壊アップ】の効果でプラス10され19、それがアサルトの2倍で38、そこに≪トラウナックル≫の威力25が足され合計63点のダメージ。
涼香:それは……ダメ、HP73もあったけど、最初の一撃を貰ってるから倒れます。
影を操る力も限界に達し、己の拳を強化するしかなくなったハルトが、危険を顧みずダークネス涼香の懐へと飛び込む。
獲物が飛び込んで来た事にニヤリと笑みを浮かべ、紅の血刀を哀れな犠牲者へ振り下ろさんとした瞬間、ビキリと涼香を捕縛していた影の一部が最後の力とばかりにその腕をしめ上げる。

一瞬の隙、そしてそれが……――
ハルト:低い姿勢から懐に飛び込んでボディブロー一発、だな。
GM:それで戦闘は終了ですね。

■ ENDING PHASE ■

◆Ending01◆彼女が選ぶは反逆の道

ぐったりと倒れ込む涼香を、しっかり抱きとめたのはハルトだった。
涼香の身体からは先ほどまでの悪質なオーラが消え、元の華奢な女子中学生となっている。
少女の中のダークネスは、一時的とはいえその影を潜めたのだ。
ハルト:そのままぐったりと気絶した涼香を抱きとめよう――目を覚ませ、弟の為にも今ここで負けるな。
涼香:話して良いですか?
GM:いいです。KOされたのでキミの中のダークネスは引っ込みます。それと共にハルトが言っていたダークネスの説明がすとんと理解できるようになる。
涼香:え、それじゃあ……リョウは……――ぼろぼろと涙が自然に溢れて来て、それを必死に我慢します。
涼香の中で何かが欠けていたパズルのピースがハマったように頭がクリアになる。
リョウが母親を殺すだろうか? 父親を殺すだろうか?
あの時のリョウは……少なくとも、自分が知るリョウじゃなかった。
なら、あのリョウは……。
涼香:あの時、すでにリョウは……ダ、ダークネス、だったん、ですね……。
ハルト:ああ、そうだ。
涼香:涙を堪えます――リョウを……リョウを乗っ取ったダークネスを、私は、見つけられますか?
ハルト:ああ、見つけられる。俺達ならその手助けができる。だから、俺と一緒に来い。
涼香:私は……――と言った所で、今までの家族との想い出や、リョウと過ごすはずだったクリスマスが頭をよぎって泣きそうになります。
ハルト:今は、泣いてもいいんだぞ?
涼香:そこは首を振って泣きません――ありがとうございます。でも、私は、泣きません。
ハルト:………………。
涼香:泣いたら、ダークネスに負けた気がするから――と無理に笑顔を。
ハルト:ふ……強いな、キミは。
そう言ってハルトは涼香を立ち上がらせる。
そして目の前に立って言うのだった。
ハルト:俺の名はハルト、陸奥陽大だ――手を出そう。
涼香:それじゃあ、一瞬ビクとなるけど、ぎゅっとその手を握ります――宜しくお願いします。ハルトさん。
そう、そして朱鷺川涼香は……灼滅者(スレイヤー)となった。
サイキックハーツRPGリプレイ
第0話『従属と反逆の選択』
FIN

◆登場キャラクターデータ◆

名前:“無色の大罪”陸奥・陽大(むつ・はると) ⇒サイキックハーツ
ルーツ:シャドーハンター
ポテンシャル:サウンドソルジャー
誕生日:5月26日  星座:ふたご座  年齢:17  性別:男  学年:高校2年
瞳:銀  髪:銀  特徴:自然を愛する
所属:古本屋“百年の孤独”
【能力値】フォースジェム 【気魄】12 □□□ 【術式】24 □□□ 【神秘】20 □□□□
生まれ:大切な人のソウルボードを壊してしまった
入学理由:自ら学園の存在を探り当てた

最大HP:48 行動値:19 基本攻撃力:21
影業(残照の影): 破壊力8 斬撃力10 魔法力9
サイキック: ≪ブラックフォーム≫≪トラウナックル≫≪ディーヴァズメロディ≫≪影縛り≫≪斬影刃≫
ESP: ≪ソウルアクセス≫≪闇纏い≫
フォース: ≪情報:灼滅者≫≪社会:武蔵坂学園≫≪ブロッキング≫≪エンパシー≫≪空蝉≫
殲術道具: 影業、高校生冬服、写真、学生鞄、手袋

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