サイキックハーツRPGリプレイ 第1話 闇堕ちの果てに GM・シナリオ作成 相原あきと 登場キャラクター 朱鷺川・涼香(ときがわ・すずか) 中学3年 女 陸奥・陽大(むつ・はると) 高校2年 男 正・義(しょう・ただし) 高校2年 男 神条・ゆい(しんじょう・ゆい) 中学3年 女 ※このリプレイはTRPGのルールブックから知りうる範囲のみで収録しており、 その範囲であるかぎりに置いては、トミーウォーカーより許可を得ています。 ◆ Preplay ◆ GM:それでは第1話、本編を開始したいと思います。今回からプレイヤーは4人です。ゆい:うん、宜しく! 正:ところで第0話のリプレイを読んだんだが、家の外でブラッドバッドと戦っていたのが俺達だったのか? GM:それはご自由にどうぞ(笑) ハルト:とりあえず、多少は戦闘が楽になりそうで助かる。 正:それはどうだろーな? このGMのことだ。戦闘バランスぎりぎりで調整して来ていると思うぜ? GM:………………。 ハルト:ありうるな。 涼香:と、とにかく、今回から私も普通にプレイヤーなので、皆さん宜しくお願いします! 一同:『宜しくお願いします』 GM:では、軽く挨拶も終わった所で今回予告を読みあげますね。
闇を恐れよ、されど恐れるな、その力。
誰もが灼滅者に覚醒した時、先人から説かれる言葉だ。 サイキックは諸刃の剣、使えば使うだけ闇に近づき、 やがて内なる声に屈した時、灼滅者は闇堕ちする。 ある事件に向かった灼滅者チームがやられ、 残った情報は「紅い武器を持つダークネス」の一言だけ。 ブレイズゲートに未来予測を阻まれながらもエクスブレインはキミに言う。 「仲間と思い救うか、敵として討ち滅ぼすか、選ぶのは……あなた達です」 サイキックハーツRPGリプレイ 『闇堕ちの果てに』 ――されど恐れるな、灼滅者の力を。 涼香:え、リョウ……かな? ハルト:さぁな、あまり決めつけで動くのは良くない。 涼香:あ、はい。 正:だが、闇堕ちが相手になりそうだな。前回のリプレイと同じパターンとは思えないが……。 ゆい:救うか倒すかなら、結局第0話と同じじゃないかな? ハルト:いや救うという言葉は、使い方次第だからな……。 GM:さて、それではPC@からハンドアウトを読みあげます。その後、そのキャラの自己紹介と成長をお願いします。 ▼朱鷺川涼香用ハンドアウト コネクション:盾科・殉子(たてしな・じゅんこ) 感情:良い人
武蔵坂学園初登校時、キミが大きなキャンパスのどこに行けばいいかと迷っていると。
涼香:おお! あのお姉さんと再会! そして前回聞き忘れたお姉さんの名前が!(笑)「あら、あなたはこの前の……」 それは前にクリスマスプレゼントを一緒に買ったお姉さんだった。 GM:はい、盾科殉子と言うらしいです。 涼香:あれ? 武蔵坂学園って灼滅者が通う学校ですよね? じゃあお姉さん――盾科先輩も灼滅者? GM:その辺は実際に出会った時に聞いて下さい。 涼香:わかりました! GM:さて、それではキャラクターの自己紹介をお願いします。 涼香:はい、名前は朱鷺川・涼香(ときがわ・すずか)、つい最近弟のリョウがヴァンパイアに闇堕ちして私も巻き込まれました。そこをハルト先輩に助けられて灼滅者として覚醒しました。 GM:第0話の話ですね。 涼香:そうです。リョウにもう一度出会うためこの学園にやって来ました。ルーツはそんな事情でダンピール、ポテンシャルはファイアブラッドです。 GM:ダンピールはヴァンパイアの感染に巻き込まれながらも闇堕ちしなかった灼滅者、ファイアブラッドは自身の燃える血を灼滅の炎に変えて戦う灼滅者ですね。 涼香:はい。リョウを助けたいと思う決意が、私の感染したヴァンパイアの血を『灼滅の炎』に変えました。 正:良い設定じゃねーか。 涼香:ありがとうございます。それと武器は日本刀です。前回は自分の血から刀を生んだ演出でしたが、あれはヴァンパイアっぽいので使いません。普通の日本刀を使います。 ゆい:使えるんだ? 涼香:習ってたとかはないけど、なんとなく使えるようになった、とかで(笑) GM:構いませんよ? その辺りは自由に決めて下さい。それと活性化サイキックも宣言お願いします。 涼香:あ、はい。活性化したサイキックは≪レーヴァテイン≫≪フェニックスドライブ≫≪居合斬り≫≪月光衝≫≪雲煌剣≫です。 ハルト:ダンピールのサイキックは使わないのか? 涼香:はい、ヴァンパイアに二度と屈したく無いのでダンピール用サイキック以外で戦う予定です。 ゆい:おおー、かっこいいじゃん(笑) GM:ちなみに前回経験値が入ったハルトに合わせて、初期作成+15点の経験値を渡してあるけど、何に使ったのか教えて下さい。 涼香:15点のうち10点使用して、新しいフォース≪ウェポンバッシュ≫を取りました。 GM:ポジションがクラッシャーの場合に威力を+3するフォースですね。涼香はとことん攻撃力が上がるフォースのみを取りますね。 ハルト:前回、異様な攻撃力の高さだったからな。 涼香:はい、難しい事は解らないので取るサイキックやフォースは攻撃力が上がるのだけにしています。その代わり防御は考えていません(笑) 正:まぁ、初心者はその方が良いと思うぜ?(笑) ゆい:その分、こっちの負担が増えるけど……。 ハルト:まぁ、良いさ。好きにしろ。 涼香:はい! GM:それはではPCA、ハルトのハンドアウトに行きましょう。 ▼陸奥陽大用ハンドアウト コネクション:五十嵐・姫子(いがらし・ひめこ) 感情:お得意さん
キミが祖父から任されている古書店に、五十嵐は時々掘り出し物を探しにやって来る。
そんな彼女が店番をしていたキミに言った。 「あの、今度お友達と一緒に来てくれませんか……ちょっと、気になる事がありまして……」 ハルト:五十嵐か、そう言えばキャラクター作成時のコネクションが五十嵐だったのを前回言い忘れていた。 GM:ええ、それを見てエクスブレインを姫子にしたのですが……。感情は何でしたか? ハルト:いや、普通に[後輩]だから、前回のロールプレイもあながち間違いでは無いぞ。 GM:では感情はお得意さんではなく、後輩のままで構いません。 ハルト:ああ、そうさせてもらおう。 GM:前回から成長した点はありますか? ハルト:アクセサリを追加した。気魄と神秘が上がる霊帯を取得。これで基本攻撃力も底上げだ。 GM:活性化サイキックは? ハルト:≪トラウナックル≫≪ブラックフォーム≫≪ディーヴァズメロディ≫≪斬影刃≫≪影縛り≫、以上だ。 ▼正義用ハンドアウト コネクション:紅い武器のダークネス 感情:憎悪
エクスブレインである五十嵐姫子に呼び止められ、キミは忠告を受ける。
「紅い武器を持ったダークネスに、気を付けて下さい」 漠然とし過ぎてよくわからなかったが……敵、なのだろうか? 正:忠告を受ける……か。謎の敵とは悪くねぇ!(笑) GM:ええ、ただしエクスブレインの見た予測なので、何かダークネスに事件に関わる事だけは確実です。さて、それでは自己紹介をお願いします。 正:俺は正・義と書いて『しょう・ただし』だ! 称号は『ジャス・ティス』、高校2年の男。身長も高い肉体派。髪も瞳も黒で、肌も少し焼けてる感じ。ルーツは魔法使い、ポテンシャルはエクソシスト。 GM:魔法使いは連綿と受け継がれてきた魔法の正統な継承者。エクソシストは退魔と浄化の光を操り邪悪を打ち滅ぼすことを定められた霊能力者ですね。 正:そして武器はバスターライフルだ。決め台詞は『俺の正義、貫かせてもらう!』 GM:おお、いいですね。灼滅者としてのモチベーションはどんな感じですか? 正:ああ、解りやすいぜ? ダークネスは敵だ! そして奴らは皆を苦しめる存在だ! だから俺達のような能力を得た者が退治する必要がある!……って常に思ってる。 GM:確かに解りやすい正義ですね。 正:ああ。俺は魔法の力を継承してからずっと正義の味方として戦ってきたからな、両親も健在だし不幸な過去も持っていない。学園に来たのもスカウトされたからだ。影のあるキャラが多いと思って全く影の無いキャラを作ってみたぜ! GM:それも1つの選択ですね。 正:性格はお人よしでおせっかい、正義感が強く困っている奴がいれば放っておけないようなテンプレ主人公のような性格だ! ハルト:本当にわかりやすいな(笑) GM:今回から参加の2人にも追加で15点の経験値を渡しておきましたが、何に使いましたか? 正:アクセサリを追加したぜ! すでにサイキックやフォースはコンボが組めるように取ってあるしな! ゆい:コンボ? 正:ああ、戦闘では≪予言者の瞳≫を使って【狙アップ】をエンチャントし、≪マジックミサイル≫で攻撃して【追撃】の効果でクリティカルを狙う予定。フォースも威力アップ系と判定値アップ系を取ってるしな! ハルト:【狙アップ】でアサルト成功をジャスト成功に、【追撃】でジャスト成功をクリティカル成功に変えるコンボか。だが、命中率が悪かったら意味が無いぞ? 正:大丈夫だ。その為だけに能力値を【術式】特化にした! GM:【術式】はいくつですか? 正:35(笑) 涼香:ええ!? 私が一番得意な【気魄】でも26なのに! ハルト:思い切った事をするな(笑) 正:活性化サイキックは≪マジックミサイル≫≪予言者の瞳≫≪セイクリッドクロス≫≪バスタービーム≫≪リップルバスター≫の5つ。 GM:わかりました。それではPCCのハンドアウトに行きます。 ▼神条ゆい用ハンドアウト コネクション:明松・庸介(かがり・ようすけ) 感情:敵愾心
キミのクラスメイトの庸介は、何かとキミに突っかかって来るうざい奴だ。
特に灼滅者としてこの学園に入ったのが同じ時期だった事もあり、 ダークネス事件に関してはよくよく対抗意識を持たれる事が多い。 ゆい:うざいのが増えた。キャラ作段階のダイス振って決めたコネクションが高野・八十八(たかの・やそはち)で、もう十分うざいっていうのに(笑) GM:感情が敵愾心と指定していますが、ライバル的な意味で受け取ってくれればどの感情でも構いません。 ゆい:じゃあ[うざい]って書いておこう。 ハルト:自由だな(笑) GM:まぁいいです。それでは自己紹介をお願いします。 ゆい:はい、名前は神条・ゆい(しんじょう・ゆい)、中学3年生の女の子、一人称はボク! 正:ボクッ娘か! ゆい:ボーイッシュな感じで活発な子がやりたくって! 背は低目、髪は金髪のショートだからクォーターだね。 涼香:へぇ、クォーターってお爺さんかお婆さんが外国人ですよね? 珍しいですね。 ゆい:でもこの学園だとそこまで珍しくないと思うよ(笑) 正:だな、ハーフやクォーターが結構多い(笑) 涼香:そ、そうなんですか。 ゆい:ルーツはストリートファイター、ポテンシャルは神薙使い、武器はガンナイフを使うよ。 GM:ストリートファイターは己の技を磨きサイキックへ昇華させた灼滅者、神薙使いは身に降ろした『カミ』の力で清浄な風を操る術師だね。ちなみにガンナイフは銃身にナイフが取りつけられた格闘戦も想定して作られた拳銃の事です。 ゆい:ちなみに格闘技は幼馴染が空手を習っていて、それをいつも見ているだけで自分は習っていませんでした。灼滅者に覚醒した時に格闘技の才能も開花した……そういう設定。 涼香:突然開花したんだ。 ゆい:うん、実は幼馴染の空手の試合を応援に行ったんだけど、ある日の帰り道にアンブレイカブルに遭遇して幼馴染は殺されたんだ。ボクはそこで灼滅者に覚醒して一矢報いようと戦いを挑むけど惨敗、逆にアンブレイカブルから見込みがありそうだと見逃された……その後、重傷だったボクは駆けつけた親戚に助けられて武蔵坂学園に入学したんだ。 GM:アンブレイカブルはストリートファイターの宿敵だね。
▼宿敵
ゆい:それと駆けつけてくれた親戚をハルトにしたんだけど、いいかな?灼滅者が闇堕ちした場合、例外なくルーツに合わせたダークネスとなる。これを宿敵と言う。 それぞれのルーツに対するダークネスは以下の通り。 ダンピール:宿敵はヴァンパイア。ダークネスの貴族と称される種族。 ストリートファイター:宿敵はアンブレイカブル。最強の武を求める狂える武人達。 ファイアブラッド:宿敵はイフリート。神話の存在である巨大生物「幻獣種」。 殺人鬼:宿敵は六六六人衆。常に666人を保つ殺人集団。 魔法使い:宿敵はソロモンの悪魔。人間を闇の道へ誘う伝説の悪魔達。 シャドウハンター:宿敵はシャドウ。4種のトランプいずれかを象徴とするダークネス。 神薙使い:宿敵は羅刹。黒曜石の角を生やした人間に似た外見を持つ「鬼」の種族。 エクソシスト:宿敵はノーライフキング。屍王とも呼ばれるダークネス。 サウンドソルジャー:宿敵は淫魔。人間の快楽と淫欲を刺激し堕落させる悪魔。 ご当地ヒーロー:宿敵はご当地怪人。ご当地パワーの暗黒面を操る怪人達。 ハルト:親戚か……まぁ従妹ぐらいなら良いぞ。 ゆい:じゃあ従妹で! ハルト:だが、その設定が必要か? ゆい:うん、普段はボクみたいな人を出さない為に戦ってるんだけど、アンブレイカブルを見ると冷静さを失って性格が豹変、復讐の鬼となる。だから事情を知ってる人が欲しくってさ。 ハルト:そういう事か、わかった。 ゆい:よろしく! ハル兄ぃ! GM:追加経験値の使い道を教えて下さい。 ゆい:ボクもアクセサリを追加、サイキックは≪抗雷撃≫≪神薙刃≫≪清めの風≫≪鬼神変≫≪零距離格闘≫を活性化、攻撃も回復も両方こなす予定。 GM:了解しました。
※なおPC達のキャラクターデータは最後に載せてあります。
GM:それでは次にPC間コネクションを取ってもらいます。まずは涼香からハルトへ。ハルト:またダイスを振るのか? 涼香:あ、選んでも良いんですよね? なら57番の『ひとめぼれ』にします。 正:へぇ(笑) 涼香:絶望の中、救いの手を伸ばしてくれたのはハルト先輩でした。前回は迷ってたけど、やっぱりこれはドキっと来ちゃうかなぁって。 ハルト:言っておくが俺は恋愛事には疎いから、それっぽい反応はできないぞ。 涼香:大丈夫です! ハルト:断言するぞ。 涼香:頑張ります! ハルト:………………。 正:涼香は良いキャラだな(笑) ゆい:ボクは涼ちゃんを応援したいな(笑) GM:では涼香からハルトへの感情は『ひとめぼれ』で行きましょう。次はハルトから正に取って下さい。 ハルト:振るか……27、『頼もしい』。 GM:一緒に灼滅者として依頼に何度も行っているなら、それも有りですね。 ハルト:ああ、そうしよう。 正:なら俺はハルトの事を相棒って呼ぶぜ! ハルト:なんだソレは、うっとおしいな(笑) 正:そう言うなって相棒!(笑) GM:次は正からゆいへ。 正:……65、『恩人』? ゆい:ボクは正先輩を助けたのかな? 正:俺がハルト、いや相棒と一緒に戦っているなら、ゆいとも一緒に戦っているだろう。助けられた事もあるだろうし問題は無い。 GM:では最後はゆいから涼香へ。 ゆい:応援したいんだよなぁ……よし、33の『ほっとけない』で! GM:4人とも決まりましたね。それではオープニングへ入りましょう。 ■ OPENING PHASE ■ ◆Opening01◆再会
12月22日土曜日、武蔵坂学園に転入する書類を書き終わった朱鷺川・涼香(ときがわ・すずか)は、その書類を学園に提出するためにやって来ていた。
GM:それでは最初は涼香のシーンです。武蔵坂学園へ転入するための書類を書き終えて、今日は学園に提出しに来たと思って下さい。今日は12月の22日、前回の事件から約一週間が過ぎました。弟の事件から約1週間後の事だ。 学園に足を踏み入れると学園の生徒達が忙しそうに校庭の樹に飾り付けをしたり、校舎を電飾で飾ったりしている。 土曜日なのに頑張るなぁ……それが涼香の素直な感想だった。 涼香:あ、過ぎると思ってた誕生日が過ぎてなかった(笑) ゆい:誕生日? 涼香:うん、私の誕生日って24日のクリスマス・イブなんだけど、弟と一緒に過ごせなかったなぁ……とか言おうと思って台詞を用意してたんだけど(笑) GM:はい、残念ながらまだ22日です。そして涼香、ここで【神秘】の難易度15で判定してみて下さい。 涼香:えっと、私の【神秘】が10だから、差がマイナス5……成功率は[通常成功45/A(アサルト)成功22/J(ジャスト)成功9/C(クリティカル)成功4]ですね。 GM:その通り、判定は覚えましたね。 涼香:前回戦闘したので覚えました。では……う、出目が51です。失敗しました。 GM:それでは涼香は迷子になります。 涼香:ああ!? 正:仕方が無いさ、いくつもキャンパスがあってしかもそれぞれ小学校から高校まである、敷地だけでも相当なものだしな。 涼香:とりあえず、学校の敷地案内の地図を探します。キャンパスっぽい建物まで行けば、その付近に地図があるはず! ゆい:頑張るなぁ(笑) GM:では建物まで到着して付近に地図は無いか探していると――「あら、あなたはこの前の……」と声を掛けられます。
その声に涼香が振り向くと、そこにいたのは栗色のふんわりしたロングヘアーに、セーラー服を
涼香:あ、でも今見るとお姉さんのセーラー服がここの制服だって気が付きますね。着た高校生のお姉さんだった。 そして涼香もまた、そのお姉さんを見て思わず声に出していた。 「あ、吉祥寺で会ったお姉さん!」 GM:そうだね、今の涼香も制服を着ている? 涼香:じゃあせっかくなんで制服を着てる事にします。 GM:ではお姉さんは――「また会えるなんて偶然ね……あら、あなたその制服?」 涼香:はい、この学園に転入する事になったんです。……いろいろあって、力も使えるようになって……助けてくれた人がここに来くれば目的を果たせるだろう、って。 GM:涼香の口調にお姉さんは何かを察します。この学園に来る者は辛い経験をした人が多いですしね。 涼香:リョウの事を言わないでも察してくれるのは……嬉しいな。 GM:「その書類? もしかして提出する場所が解らなかったり?」 涼香:あ、はい、この学園大きくって……。 GM:「じゃあ一緒に行きましょう。私が案内してあげるわ」 涼香:本当ですか! あ、その……。 GM:「どうしたの?」 涼香:あの、私の名前は朱鷺川涼香って言います。この前、お姉さんの名前聞きそびれちゃって……。 GM:「ああ! ごめんね。私も後で聞いておくんだったって凄い後悔したのよ? 私は盾科・殉子(たてしな・じゅんこ)、この学校の高校2年生。これから宜しくね、涼香ちゃん」 涼香:こちらこそ、宜しくお願いします盾科先輩! GM:それでは盾科が案内してくれたおかげで、涼香は無事に書類を提出できました。 涼香:じゃあ外に出た所でお礼を言います――ありがとうございました。 GM:「ううん、どう致しまして」――そこでふと何か思いついたような顔をして盾科が涼香を誘います――「そうだ、ちょっとだけ時間いいかな?」 涼香:え、はい、大丈夫ですけど……。 GM:「それじゃあ少し歩きましょうか?」 涼香:なんだろう、とりあえず一緒に歩くけど。 GM:「さっきさ、いろいろあって、って言ってたじゃない?」 涼香:う、それには……はい、とだけしか答えられないかな。 GM:「心配しないで、その話を聞きたいってわけじゃないの……ただ、あんまり思いつめないで欲しいなって」 涼香:でも……。 GM:涼香の事を心配そうに見つめると、歩きながら盾科は話します――「この学校ではね。クリスマスに皆でいろんなイベントをやるの」 涼香:イベント、ですか? GM:「そう。土曜日なのにやけに人がいるなぁって思わなかった? 皆その為に頑張ってるのよ?」
ふと周りに目をやれば、電飾チューブで何か動物を形作っている生徒達や、ダンスでも有るのか
涼香:本当だ……凄いですね。ドレスを運んでいる生徒、パーティー用なのか大量の調理道具や材料を台車に乗せて押している 生徒達、人工降雪機のような機械を運んでいる大人の姿も見える。 誰もが忙しそうだが、その顔からは笑顔がうかがえた。 GM:「ええ、この学校の生徒はそのほとんどが灼滅者だし、いつ自分の身に何かが起こるともわからない……だから、みんな一生懸命『今』を楽しんで生きようとしているの」 涼香:そう、なんですか。 GM:「たぶん、ね。ふふ……ごめんなさい、今のは私が思う個人的な感想よ?」 涼香:でも、わかる気がします。灼滅者とダークネスの関係や、戦わないといけないって話は聞きましたから。 GM:「そうね。私達はダークネスと戦う宿命がある。だからって夢や幸せをあきらめちゃダメよ? それを手にする権利は誰にだってあるんだから」 涼香:うう、盾科先輩良い人だよ。なんか、この学園でやっていけそうな気がしてきました。 GM:盾科はそこで何かを思い出したように言います――「そうだ。涼香ちゃん彼氏はいないみたいだけど、好きな人はいるんじゃない?」 涼香:え! い、いきなり何を……べ、別にそんな人は――と、困ったなぁ、盾科先輩の前だとハルト先輩の顔がちらついて挙動不審になるかも(笑) GM:「ふふふ、そうなんだぁ♪」 涼香:い、いえ、別に好きとかじゃなくって……助けて貰ったから……。 GM:「伝説のナノナノ、クリスマス当日、武蔵坂の地へ降り立つべし。出会えし2人の絆を強め、その愛を永遠のものにできるだろう……」――盾科は人差し指を立てて雰囲気たっぷり、カッコ良く言います。 涼香:ぽかーんとしてます(笑) GM:盾科はその反応に、ポーズそのままに目を閉じ顔を赤くします。 涼香:可愛いなぁ(笑)――「えっと、つまり盾科先輩は彼氏さんとそのナノナノを見つけたいって事ですか?」 GM:「そ、それは……まぁ、伝説だから本当にいるかもわからないけど……そ、それに、まだ彼氏じゃないんだけど……一応は、ね」 涼香:「見つけられたら良いですね。私も……頑張ってみようかな」 GM:盾科は涼香の様子を見て微笑みます。少しだけでも前向きになってくれて安心したみたいですね。 涼香:あの、盾科先輩。1つ聞いても良いですか?――と意を決したように――ハルト先輩を、あ、いえ、陸奥陽大さんを知っていますか? GM:おお、ここで聞くのか……ハルトは有名人かな? ハルト:さぁ。自主的に目立とうとするタイプでは無いぞ。だが盾科が同学年ならクラスメイトだったり、とかは問題無いな。 ゆい:はーい! ついでにハル兄ぃは『よくよく見れば実は美形』とかで!(笑) GM:じゃあ両方採用で――「ああ、あの人ね」――と盾科先輩は思い当たりがあるようです。 涼香:その、ハルト先輩に助けられたので、お礼を言いたくって……。 GM:「そっか、涼香ちゃんが好きな人は陸奥君だったんだぁ♪」 涼香:ちがっ……その、だからお礼が言いたいだけなんです! GM:「はいはい♪ それで陸奥君の何が知りたいのかな?」――その後、盾科は涼香を少しからかいながらハルトの事を教えてくれます。 ◆Opening02◆決闘の約束
武蔵坂学園には伝説の樹と呼ばれる大樹が存在する。
GM:それでは次はゆいのシーンです。場所は伝説の樹の前、キミはクラスメイトであり灼滅者として何かとキミにライバル意識を燃やしてくる明松・庸介(かがり・ようすけ)に呼び出されました。その日、神条・ゆい(しんじょう・ゆい)はクラスメイトにその樹の前へと呼び出されていた。 周囲には伝説の樹をクリスマスツリーへと飾り付ける生徒達でいっぱいだ。 いったいこんな所に呼び出してどんな話があると言うのか……。 「うざいなぁ……帰ろうかなぁ……」 ゆいは全く乗り気じゃなかった。 ゆい:帰っちゃダメ? GM:前に呼び出しを無視した時は――「お前俺と戦うのが怖いからって逃げるんじゃねーよ!」――と散々言われ続けました。 ゆい:む、それはそれで嫌だな。っていうか本当ウザいな庸介。 正:俺は好きだけどな(笑) GM:きっと庸介も正のことは「正の兄貴!」って慕ってくれてますよ(笑) 正:おお、頼れ頼れ(笑) ゆい:はぁ……仕方が無い、今回はちゃんと行く事にするよ。 GM:では樹の下で待ってる庸介がゆいに気が付いて――「お、今度は逃げずに来たみたいだな!」 ゆい:まぁ〜ねぇ〜。 GM:「やる気ねーな! それより明後日のクリスマス、ここで何が行われるか知ってるよな!」 ゆい:え、明後日? ここで何かあるの? 伝説の樹でも切り倒すの?(笑) GM:「違っげーよ!(笑) 明後日はこの伝説の樹のてっぺんに輝く星を誰が手に入れるかの競争があるんだよ!」 ゆい:ああ、手に入れた人が幸せになるって奴? GM:「そうだ! つまり、そういう事だ。何で呼び出したかわかったな!」 ゆい:幸せになりたいから星を取るのに協力しろって? GM:「なんでだよ!(笑) 競争だよ競争! どっちが星をゲットできるか俺とお前で勝負するんだよ!」 ゆい:ええ〜、ボクは別に興味無いんだけど。やりたいなら1人でやりなよ。 GM:「なんだと……お前、そう言って逃げるつもりか?」 ゆい:逃げるっていうか……もう何度も勝負はついてるじゃん。ボクに何敗すれば庸介は気が済むのさ。 GM:庸介全敗かい(笑) ゆい:そういう事で(笑) GM:ではそれでいこう――「うるせぇ! この勝負はまだやってないだろうが!」 ゆい:はぁ……わかったよ。じゃあこの勝負にボクが勝ったら今後ずっとボクにこういう勝負を挑むのは止めてよね。 GM:「はっ、そういう事は俺に勝ってから言うんだな!」 ゆい:いっつもボクが勝ってるのに……。 GM:と、そこでトゥルルルと庸介の携帯が鳴って――「はい、俺です。え、解りました! すぐ行きます!」 ゆい:なんか急用? GM:「ああ、エクスブレインからの呼び出しがあったって先輩からな」――と庸介は携帯をしまうと駆けて行きます――「それじゃあな、ゆい! 明後日逃げんじゃねーぞ!」 ゆい:はいはい……と見送ってから溜息――ああ、めんどくさいなぁ。 GM:庸介はあんな感じですが、賑やかですが悪い奴では無いです。 ゆい:うん、それはわかった。たぶんピンチの時とかは助けに来てくれたりしたんだろうなって思う(笑) GM:確かに庸介はやりそうですね(笑)
走り去った戦友の義理堅い所を思い出し、ゆいは溜息と共に微笑みも浮かべる。
うるさくってうざいが、憎めない奴でもあるのだ。 「ま、いっか、クリスマスの予定とか別に無かったし」 ◆Opening03◆虫の知らせ
クリスマスのイベント当日まであと2日、食材の下ごしらえやイルミネーションの準備、伝説の樹付近のメイン会場のセッティングや、はてはウェイターやウェイトレスの練習をしている者達までいる。
GM:それでは正の番です。今日は22日で場所は校舎内とします。何かしてる事がありますか?クリスマスの準備で慌ただしいそんな武蔵坂学園の校舎内を、正・義(しょう・ただし)は大荷物を 抱えて歩いて行く。 「この小麦粉を届けた後は、あっちのキャンパスに電飾ケーブルを持って行って……本当、忙しいったらないな!」 正:もちろんクリスマスイベントの準備に走り回ってるぜ! 人出が足りないって聞けば自主的に手伝ってる! 金曜までは授業あったからこの土日がまさに正念場だと思うしな(笑) GM:ではそうやって忙しく駆けまわっている正に、すれ違った女子生徒から声を掛けられます――「あ、正さん、ちょっと良いですか?」 正:ん? 顔見知りの誰かか? GM:エクスブレインとして何度か依頼の説明を受けた五十嵐・姫子(いがらし・ひめこ)ですね。 正:ああ、なんだ。お前も何か俺に用か? 手が足りないならどんな手伝いでもやってやるぜ? GM:「あ、いえ、そうでは無くてですね……実は、正さんに関連した未来予測があるんです」 正:ダークネス関連、というわけか――真面目な顔つきになって話を聞こう。 GM:「はい、そうです。ただ、予測が断片的で……」 正:一応、聞かせてくれ。 GM:「わかりました。断片的で言葉でしか伝えられないのですが……紅い武器を持ったダークネスに気を付けて下さい」 正:紅い武器、か。 GM:「はい、ブレイズゲートの影響かそれ以上の詳細がわからなくって……申し訳ありません」
▼ブレイズゲート
正:なーに、気にするな。今までだって生き残ってきたんだ。ダークネスの1人や2人、仲間と一緒になんとかするさ!それはエクスブレインの視界を湧きあがる白い炎がさえぎり、未来予測を断片的にしてしまう謎の現象である。この現象は灼滅者やダークネスには感知できない。ブレイズゲートが関わる事件の場合、エクスブレインの未来予測は著しく精度が落ち、灼滅者自身の判断や調査も必要となってくる。 また、ブレイズゲートの発生している事件では、サイキックの力が制限され灼滅者や殲術道具のレベルに制限がかかる。もしブレイズゲートの制限以上のレベルであった場合、それらのレベルは制限レベルまで現象する。これはTRPGにおいて参加しているキャラクターのレベルの違いによって活躍の度合いが変わらないようにとの考えから設定されているルールである。 GM:「すいません。もう少し詳しくわかったら、その時はまた連絡します」 正:ああ、そうしてくれると助かる。俺の方でも何か気になる事があったら伝えるさ。それが元に何か解るかもしれねーしな! GM:「はい、宜しくお願いします」――姫子は去って行きます。 正:じゃあ手伝いを続けながら姫子の言葉が引っかかって――うーん、相棒には相談しておくか。 ◆Opening04◆ちょっとした頼み
そこは武蔵野市にある古本屋だった。
GM:ではオープニング最後はハルトです。確か祖父の店が学園の近くにあって、ハルトはそこに住みつつ学園に通っているって設定でしたね。もっとも、店がにぎわった記憶は無く、ただ祖父が店番をしている姿を見るだけであった。 店の奥には歓談の場として用意された部屋がある。開店当時には近所の人や子供達、本好きが集まって楽しく会合を開いていたが、時の流れとともに寂れていった。 今では祖父の友人がひと月に一度訪れては、将棋を指して帰って行くだけ。 部屋の一角にはもう一つの将棋盤が中途の試合で止まっており、また来る事が途絶えた誰かの棋譜も、そばにある棚に山となって積まれていた。 時の流れが止まった一室。祖父の歴史が刻まれた店。 その店の名は――古本屋【百年の孤独】 ハルト:ああ、その代わりに祖父に変わって暇な時は店番をしている。客の姿はほぼ見た事無い店だがな。 GM:それでは、そんな古本屋で店番しているハルトに、エクスブレインの五十嵐姫子から携帯が掛かって来ます。 ハルト:今日は22日か? GM:はい、他の皆と同じ日とします。 ハルト:コネクションだし番号は交換していて構わないしな。出よう――『なんだ?』 GM:『実は、ちょっと気になる事があるんです……できれば、あとで仲間の方々と一緒に来て頂けますか?』 ハルト:『それはダークネスの依頼か?』 GM:『はい。ダークネスが起こす事件の未来予測です。ただ、一人でどうこうできるものでもないので……』 ハルト:『わかった、後で仲間に連絡して行こう』 GM:『宜しくお願いします』――姫子の電話は切れます。 ハルト:一応、仲間にメールは入れておくか。
ハルト達の仲間は、いつの頃からは勝手にこの古本屋に集まるようになっていた。
ハルト:そう言えばさっきメールをすると言ったが、仲間は正とゆいの2人ぐらいなのか?「お前ら……勝手にここを集合場所にするな」 そう、ハルトが仲間達に言っていたのも最初だけで、結局はここが溜まり場となっていた。 依頼の話があればかつて賑わっていた歓談部屋を使って相談する事になり、依頼が無い時も店への出入りは自由に行っている。 気が付けば誰かがクラブとしてこの店を申請し、学園からの許可も下りていたのだった。 GM:まぁ他にも数名いるかもしれないし、いないかもしれません。まぁいたとしてもそれぞれ用事があったりするので全員が集まる事も無いでしょう。個人で依頼に行っていたり、別のクラブの仲間とダークネス事件に向かっている場合もありますからね。 ハルト:それはそうだな。 ゆい:じゃあボクは呼ばれたし登場するよ! GM:では登場判定をお願いします。
▼登場判定
ゆい:【気魄】で判定するから……余裕で成功――ハル兄ぃ! ちょっと聞いてよ! またあの庸介が勝負吹っかけて来たんだ!キャラクターがシーンに登場するために必要な判定のことである。1シーンにつき1度だけ行える。能力値は任意、難易度は基本的に10とする。またシーンにコネクションを持つキャラクターがすでに登場している場合、登場判定の判定値に+1の修正が入る。ただし、登場判定に失敗しては困るキャラクターがいる場合、GMの判断として自動登場させて構わない。 ハルト:ん? 庸介? ああ、あのクラスメイトか。いいじゃないか仲が良いんだろう? ゆい:はぁ? 仲が良いってやめてよね! 心の広いボクだから許してやってるけど、ハル兄ぃがボクだったら何度も庸介を殺してるね。本当本当。 ハルト:俺はそんなに殺伐とはしてないんだがな……と思いつつ好きに話させよう。 ゆい:じゃあ愚痴ってる(笑) 正:そこに俺も登場するか、登場判定は……普通に成功――よっ相棒! ハルト:正か……いい加減、その暑苦しい呼び方はやめないか? 正:そうか? ならダチ公って言うのはどうだ? ハルト:………………はぁ。 正:はっはっはっ! そう嫌そうな顔すんなって(笑) ゆい:あ、正先輩も聞いてよ! あの庸介がクリスマス当日のイベントで勝負しようって言って来てさ! 本当迷惑なんだよ! 正:庸介? ああ、ゆいの事が好きなあの坊主か(笑) 涼香:そうなんだ!? GM:面白いからそういう事にしましょう(笑) ゆい:ボクはウザイなーって思ってるからそうは思わないけどね――そんな事あるわけないじゃん、あいつは負けず嫌いなだけだって! 正:いつかゆいにもその男心の機微が解るさ(笑) ゆい:男心なんてわからないでいいよ。それにボクが好きな人はずっと1人だけだし――と殺された幼馴染を思って少ししんみりするかな。 正:察して話を変えるか――それより相棒、メールを見たが何かあったのか? ゆい:あ、ボクも聞きたい。 ハルト:そうだな……エクスブレインの五十嵐姫子が何かダークネスに関する事件を予測したらしい。事件の詳細を話したいから後で教室に来て欲しいとの事だ。 正:姫子からか……。 ハルト:どうした? 正:いや、実は今日、姫子から少し気を付けるようにと言われた事があったんだ……――と紅い武器を持ったダークネスが俺の前に現れるかも、との情報を伝えよう。 ゆい:それが今回の依頼の敵かな? ハルト:どうかな。もし同一なら是が非でも俺に依頼を受ける時に正を連れて来てくれとか頼むと思うんだが……。 正:ま、関係有るかどうかはわからねーが、行ってみればわかるだろう。 ■ MIDDLE PHASE ■ ◆Middle01◆古本屋【百年の孤独】
学園を出て少し歩いた所にある古本屋に、陸奥陽大がいると盾科から教わった涼香はどきどきしながら1人歩いていた。
GM:ではミドル最初のシーンは涼香だ。盾科から教えられてハルトがいつも店番をしているという古本屋【百年の孤独】にやって来ました。個人経営の古いお店で、店の奥の方は少し薄暗くなっています。リフレインするのは盾科の言葉。 「伝説のナノナノに出会えし2人は、その愛を永遠のものにできる」 少し省略されているが、思わずクリスマスに2人で見る伝説のナノナノ様を想像してしまう。 やがて古本屋然としたお店が見えてきた。 ここかな? と思って店先から中の様子をうかがっていると、後ろから声をかけられた。 涼香:ここに先輩がいるのかな……覗きこんでから、入ろうかな。 正:そこで登場!……判定は成功! ハルト:なんで俺達と一緒に教室に行ったお前がそこに出るんだ!(笑) 正:ちらっと見えたから相棒とゆいだけ先に行かせて引き返して来たって事で! ゆい:まぁ正先輩はおせっかいだし良いんじゃない? ハルト:やれやれ、俺達は先に行っているか。 GM:では正だけ登場ですね。涼香はどうしてますか? 涼香:お店に一歩入った所で――すいませーん、陸奥ハルトさんはいらっしゃいますかー? GM:ハルトの祖父さんがジロっと睨む。 涼香:す、すいません! 正:じゃあそこで声をかけよう――ん? 相棒になんか用か? 涼香:え、相棒?――制服姿なんですよね? それなら先輩だってわかるかな。 正:ああ、悪ぃ悪ぃ、さっきハルトがいないかって聞いてたからさ。あいつは俺の相棒だからな、何か聞きたい事があるなら伝えておくぜ? 涼香:あ、ありがとうございます。でも、ここにハルト先輩がいるって聞いたのですけど。 正:あー、今はちょっと出ててさ。直接会って話したい事だったのか? 涼香:はい……でも、いないなら仕方無いですし、出直して来ます。 正:会えなくて見た目落ち込んだ感じかな? 涼香:そうですね、そんな風に悟られないようにしたいですが……まぁ見透かされても構いません(笑) 正:じゃあ待てよ!って腕を――なんか事情がありそうじゃねーか、俺で良いなら聞いてやるし、内容によっちゃ事件に出ていようとあいつに会わせてやるぜ? 涼香:本当ですか!? 正:ああ、俺は正・義(しょう・ただし)! 正義の灼滅者だ! 嘘はつかねーよ! 涼香:私は、朱鷺川です。朱鷺川涼香って言います。実は一週間前、ハルト先輩に闇堕ちしそうになった所を助けて頂いて……そのお礼がしたかったんです。 正:一週間前? あの吉祥寺の事件か。 涼香:知ってるんですか!? 正:ああ、まぁな――と言いつつ、俺は家の外で戦っててその後は事後処理で涼香を見て無かった事にしよう(笑) 涼香:それじゃあ弟がダークネスになった事、一緒に闇堕ちしそうになった所をハルト先輩に助けられた事、弟を見つける為には学園に来いと言われた事なんかを話します。 正:学園に向かって歩きながら話を聞こう――ああ、そういう事があったのか。辛い、な。 涼香:はい、今でもリョウの事を思うとどうして良いか解らなくなります……。 正:そういう時は、遠慮せず泣いても良いんだぜ? 灼滅者だからっていつでも無理をしなきゃならないって事は無いんだ。
無理をしている、それが正にはわかった。
涼香:泣きません。今は……泣く時じゃないと思うから。
家族と別れて一週間しか経っていないのだ、この少女が強がっていないわけがない。 自分はこういう悲しみを失くすためにダークネスと戦っている、だが悲しみは一向に減らず、時にその無力感に正自身が打ちのめされる事もある。 だから、この少女から次の台詞を聞いた時、正は少女の顔をまじまじと見てしまったのだ。
横を歩く正を見上げるように笑顔で少女は言った。
正:参ったぜ……。それは強い……とても強い笑顔だった。 涼香:え? 正:GM、俺は困ってる奴を放っておけないタチだ。だけど、涼香みたいなタイプは……なんていうか、良いな! ゆい:まー、正先輩は助けるのが好きだけど、涼香ちゃんは弱いけど最後は助けないでも自力で乗り越えるタイプだしねぇ。 ハルト:そうか、正の周りにあまりいないタイプなのか。 正:そういう事だ。なんかすげー眩しく見える。 涼香:あ、すいません、いきなり会った人にこんな話……。 正:なーに、聞かせてくれって言ったのは俺の方だ、気にするな! それより、お前の気持ちはわかった。だから、俺に付いてきな! 涼香:え? 正:相棒はお前を連れて行ったら「灼滅者として日が浅いから」とか「まだ早い」とか言うかもしれねーが、俺が面倒みてやる。 涼香:それじゃあ、ハルト先輩の所に連れて行ってくれるんですか!? 正:ああ、そう言ってるだろう? 来いよ、相棒以外にお前と同じぐらいの仲間も紹介してやる。 涼香:はい! ありがとうございます。正先輩!
そうして2人は武蔵坂学園へと続く道を共に歩いて行く。
正:なんか思わず聞いちゃったけど、聞かなきゃ良かったぜ!(笑)「と、ところで涼香、お前は相棒の事、どう思ってるんだ?」 「え、それはその……かっこいい先輩だなぁって、思います……」 俯き加減に顔を赤くする涼香を見て、なぜか胸が痛い正であった。 涼香:………………。 ハルト:………………。 ◆Middle02◆クラブ『優しき盾』
ハルトとゆいが五十嵐姫子に呼ばれた教室へ入ると、そこにはすでに先客がいた。
GM:それではハルトとゆいのシーンをやりましょう。姫子に呼び出された教室に到着するのですが、教室内にはすでに8名の先客がいます。そしてその先客をハルトとゆいは知っています。クラブ『優しき盾』のメンバーですね。先客の数は8人、しかもハルトもゆいも知った顔。 クラブ『優しき盾』、ダークネス退治をメインの活動とする中規模クラブの面々だった。 ハルト:『優しき盾』か。 GM:ちなみにクラブのリーダーは盾科殉子です。 ハルト:ああ、なるほどな。 GM:ついでに庸介も『優しき盾』のメンバーなので、そこにいます。ゆいを見て「あっ」って言います。 ゆい:ボクは「げっ」って嫌そうな顔します(笑) ハルト:俺は別に盾科とは付き合いが深いわけじゃないしな、普通に五十嵐に――遅くなったようだな。こっちは2人しか連れて来れなかったが……。 GM:「申し訳ありません陸奥さん、何人かに声をかけていたのですが盾科さんの所だけでいっぱいになってしまって……」 ハルト:まぁ、それは仕方が無いな。 GM:盾科の方が言いますね――「ちょうどクラブのメンバーが揃っていたからまとめて来てしまって……どうかしら? 良ければ10人で一緒に行きましょう」 ハルト:可能なのか? GM:いえ、それには姫子が――「今回の依頼は8人以内でないと導き出された未来予測から外れてしまうので……」――と断りを入れます。 ゆい:ああ、8人以下じゃないとダークネスの裏をかけないのか……それは諦めるしかないね。 GM:「でもせっかく来てくれたのに……それに姫子ちゃんがわざわざ声かけていたのでしょう? それなら私達の中から2人を……」――と盾科が妥協案を言おうとしたところで――「ダメだぜ部長!」 ゆい:庸介だね(笑) GM:庸介です(笑)――「先に集まったのは俺達なんだから、後から来た奴を優先的に入れる必要なんてないって!」――と盾科も姫子も困り顔。 ハルト:いや、庸介の言う事が正しい。それに俺達が混じるより同じクラブで連携が取れた8人で行った方が成功確率も上がるだろう。俺達に遠慮する必要はない。 GM:「ほら! やっぱり陸奥さんは解ってるぜ!」――とハルトにお礼を言いつつゆいの方を指差し――「ってわけだ! ゆいの出番はねーぜ!!」 ゆい:ハル兄ぃ、帰ろうか? GM:「無視すんなよ!」(笑) ゆい:そっぽ向いてスルー。 ハルト:それじゃあ俺達は帰ろう。五十嵐、また何かあったら教えてくれ。 ゆい:姫子さん、じゃーねー? GM:では出て行こうとするハルトに盾科が――「そうだ陸奥君、あなたの所に涼香ちゃん行かなかった?」 ハルト:涼香? 誰だそれは。 涼香:ガーン……名前すら覚えられて無かった……。 GM:「そっか、行き違いになっちゃったかな? 中学3年生の女の子よ、一週間ぐらい前にあなたに助けられたって言っててお礼を言いに行きたいからって古本屋さんの事を教えたんだけど……」 ハルト:ああ、あの子か――と思いだそう。さすがに覚えてるが名前まではすぐに出て来なかったという事で。 GM:「じゃあ後で会ったらこの学園ぐらい案内してあげたら? この学園に誘ったのも陸奥君なんでしょう? それぐらい責任取らないと」――と笑顔で。 ハルト:それもそうだな……わかった。彼女と会ったら案内をしよう。しかし、盾科は彼女と知り合いだったのか? GM:「ええ、仲の良いお友達なの」
ハルト達が教室を出ると、室内から姫子の説明が聞こえてくる。
「はい、敵は普通に戦ったら倒せません。ですが深追いしなければ向こうから逃げだして……――」 ◆Middle03◆クリスマスの予定
ハルトとゆいが教室を後にし、【百年の孤独】に戻ろうかと歩いていると廊下の途中で正がやってきた。
GM:それではハルトとゆいが教室から出て帰って行く途中、正に連れられて涼香がやってくるシーンをやります。全員登場して欲しいので登場判定はいりません。見ればそばに中学生の制服を来た少女を連れている。 「すまねぇ遅れた!」 正が手を上げる横で、その少女――朱鷺川涼香の視線はハルトに釘付けとなっていた。 正:すまねぇ! 遅れた!――手を上げて謝ろう。 ハルト:いや、気にするな。それに話ならもう終わったしな。 正:そ、そうか。 涼香:あ、あの!――前に出ます。 ハルト:ん? 涼香:先日は、助けて頂いてありがとうございました!――90度のお辞儀をします! ハルト:キミは……ああ、この前の。 涼香:朱鷺川・涼香です。 正:相棒にお礼が言いたくってここまで訪ねてきたんだとさ? なんか言う事無いのかよ?――肩を組んで相棒に絡む。 ハルト:普通に言うぞ――良く来てくれた。歓迎する。 正:おいおい、それだけかよ? ハルト:ん? ああ……そう言えば学園の案内をしてくれと頼まれたのだった。 正:誰にだよ? ハルト:同じクラスの盾科だ。 涼香:え、盾科って……盾科殉子さんですか? ハルト:ああ、友達だと聞いた。その盾科で間違いない――と涼香に言ってから正に向いて――依頼の方は『優しき盾』のメンバーが受ける事になった。俺が行った時には8人揃っていてな。 正:ああ、庸介がいる所か。いいんじゃないか、8人揃っていたなら任せといたほうが良い。 涼香:あ、あの! ハルト:ん? 涼香:ハルト先輩は、盾科先輩と知り合いなんですか? ハルト:ただのクラスメイトだ。 涼香:思わず安心します。盾科先輩が相手だったら私ちょっと勝てそうに無いし……。 ゆい:そこでボクはすかさずキュピーン! っと(笑) GM:まぁその方が面白そうなので気付いて良いでしょう(笑) ゆい:ねぇハル兄ぃ! 朱鷺川さんの学園案内、ボクにやらせてよ! 同じ中3だし丁度良いと思うんだ! ハルト:まぁ、別にそれは構わないが……。 ゆい:よし! 行こう朱鷺川さん!――と強引に手を引いて連れて行くね(笑) 涼香:え、え? その――と言いつつ連れて行かれます。 ハルト:なんだったんだ今のゆいは……。 正:置いて行かれたな? GM:うーん、では、ここはシーンプレイヤーがゆいだったとして、ハルトと正は退場したことで、学園案内のシーンを少しだけ続けましょう。 ゆい:それならハル兄ぃ達がいなくなった所でニヤリと笑おう――ねぇ朱鷺川さん、もしかしてハル兄ぃのこと……。 涼香:ち、違います! 私はただ、助けてくれたのがハルト先輩だったから、それでお礼を。 ゆい:助けられたらそりゃ王子様にも見えるよねぇ〜(笑) 涼香:だ、だから! 私は別に! ゆい:いいっていいって! ボクは応援するから大丈夫!――って手を握ろう――ボクはゆい、神条ゆい。よろしくね! 涼香:あ、その……宜しくお願いします。 ゆい:そんな堅くならないでよ? ボクも同じ中学3年だしさ? 涼香:でも……神条さんはずっと灼滅者だったのでしょう? 最近覚醒した私からしたら先輩なわけですし。 ゆい:先輩って言ってもそれは灼滅者としての話でしょ? この学園はボク達灼滅者にとって『帰るべき日常』であって欲しいって方針もあるみたいでさ、先輩後輩はあくまで普通の学校と同じだし、灼滅者だからって上下の関係は無いよ。 涼香:そうなんですか。 ゆい:うん、だからボクのことは『ゆい』って呼んで欲しいな。ボクも朱鷺川さんのことを名前で呼びたいし! 涼香:えっと、では……ゆいちゃん、で。 ゆい:じゃあボクは涼ちゃんって呼ぶよ。 涼香:思わず笑っちゃいます。こんなに簡単に友達ができるなんて(笑) ゆい:それじゃあ何から案内しようか? キャンパス巡り? クラブ棟? そう言えば旧校舎なんて言うのもあったなぁ。 涼香:その中なら―― ゆい:やっぱりハル兄ぃについての情報が知りたいって?(笑) 涼香:ゆいちゃん! ゆい:あはは、まーそれは置いておいて、そういえば涼ちゃんは実家? 涼香:実家は帰れないと思うし……寮とかあるのかな? GM:ありますね。 涼香:寮住まいです。 ゆい:あ、ボクと同じだ。寮の方はあとで案内してあげるよ。
そうやって仲良くなった涼香とゆいは学園内をいろいろ見て回り、最後にハルトと正が所属するクラブ、古本屋【百年の孤独】へとやって来たのだった。
◆Middle03◆敗北 ――マスターシーン―― そこは都内某所の廃ビルだった。すでに数人の灼滅者が倒れ、対するダークネスに傷は無い。 「しょせんは出来損ないか……もっと楽しめるかと思ったが……残念だ」 そのダークネスは筋骨隆々の体躯であり、鋼のような肉体を包むは破れたジーンズと皮ジャンのみ。 後ろに手を回すと腰に差しておいた酒瓶を手にすると一気にあおる。 ――ピクリ。 ダークネスの酒を飲む手が止まり、口の端からこぼれた酒を乱暴に手でぬぐう。 「おうおう、いいねぇ! そうこなくっちゃ!」 ダークネスはその気配に振り向くと、立ち上がった灼滅者に対して歓喜と共に大笑し、酒瓶を握り潰した。 「てめぇら全員放っておこうかと思ったが……掛かってくるなら是非もねぇ、最後までぶち殺してやるよ!」 ◆Middle04◆緊急の連絡
「陸奥さん、急ぎ調べて欲しい事が……依頼に向かった『優しき盾』の方々との連絡が取れなくなってしまい……」
GM:姫子から「『優しき盾』と連絡が取れなくなった」と連絡が来ます。彼女達が向かった先はメールにて地図が送られてきますね。エクスブレインの五十嵐姫子のからハルトへと掛かってきた電話は、想像以上に最悪の連絡だった。 『優しき盾』のメンバーが向かった場所はメールにて転送するので、現場へと急ぎ向って欲しいとの事だった。 戦う事のできないエクスブレインに代わり、ハルト達は仲間と共に向うのだった……。 ハルト:わかった。3人に説明してすぐに向かおう。 正:どうする相棒、涼香も連れて行くのか? 涼香:私も行きたいです。私はまだ知らない事が多過ぎます、経験できる事があるなら経験したいです。 ゆい:いいの? ダークネスがその辺にいる可能性だってあるよ? 正:それは……心の中で涼香を心配しよう。そう言って置いて行った場合、もしかして1人でついてくるんじゃねーか?って。 ハルト:その視線で察する――わかった。涼香、どうしても来たいなら来い。ただし、正のそばから離れるなよ。 正:え? いや、わかった。任せろ!(笑) 涼香:はい、お願いします!
そこは工事途中のビルだった。
GM:では現場に、工事途中のビルへと到着しました。そこは血の匂いだけが充満し、人の気配はありません。入口から中に入るも人気は無く、ただただ血の匂いだけが充満していた。 見ればビルの壁や天井、床に戦闘で破壊されたであろう痕がいくつも残っていた。 ハルト達4人は、まだ見ぬダークネスを警戒しつつ探索を開始する。 ゆい:奥へ奥へと進んで行くよ? ハルト:ダークネスの不意打ちがあったら致命的だ、できるだけ警戒しつつ進むぞ。 正:涼香は俺のそばを離れるな。 涼香:はい、大丈夫です! GM:では先頭で進んで行くゆいは、1階で一番広いフロアに出た所で見ます……死屍累々だ。 ゆい:え? ハルト:なに……死体なのか? GM:はい、引き千切られたり、潰されたり、酷いものです。 ハルト:それは……知り合いの顔があるな? 『優しき盾』のメンバーだろう? 涼香:その話、聞いてた事にして良いですか? それだと盾科先輩を私は探します。 GM:【術式】の難易度15で判定して下さい。これは全員です。特別に庸介にコネクションのあるゆいと、盾科にコネクションがある涼香は、判定に+1の修正をあげます。 涼香:ええ!?
判定の結果、ハルトが失敗、ゆいが普通成功、涼香と正がアサルト成功だった。
GM:ハルトはこんなに引きちぎられたりしていたら、誰が誰だかわからないな……と。ハルト:むごい殺し方をする……。 GM:ゆいはここで死んでいるのが『優しき盾』のメンバーだと気が付きます。 ゆい:予想通りだけど……。あいつを探します。 GM:ではアサルト成功の涼香と正は解ります。まず『優しき盾』のリーダーである盾科殉子の遺体が見つかりません。 涼香:盾科先輩は……無事? ハルト:………………。 GM:そしてもう1つ、庸介の首が転がっているのを発見します。 正:は? 涼香:え、あんなに描写が濃かったのに? GM:はい、死にました。庸介は死んでいます。 正:その前に立って……拳を握りながら叫ぼう――ゆい! ゆい:正先輩の所へ。 GM:では正が教えたも同然なのでゆいも気が付きます。庸介が死んでいます。 ゆい:庸……介……? 正:いつも元気で義理堅くって、前に俺達がピンチの時に来てくれた事もあったな……。 ゆい:………………。 正:俺の事も「兄貴兄貴」と慕ってくれたっけ……。 ゆい:………………。 正:きっと、こいつは、最後まで戦ったんだと思う……。仲間想いの、根は優しい奴だったから。 ゆい:でも……だからってバカだよ。死んじゃうなんて、さ。ボクより弱いくせに! 出しゃばって危ない依頼に行って! だから、だから命まで落すことになって! 正:ゆい……。 ゆい:俯いたまま、ぐぐぐぐっと手を拳に握り締めつつ――でも、これで最後の決着が付けられそうだね。なんてったって庸介が負けたダークネスを、ボクが
倒せば、もう庸介よりボクの方が強いってあいつも認めざるをえないだろうし。
正:ゆいを置いて相棒達の方へ行こう――相棒、今回ばかりは俺も我慢がならねぇ。さっき涼香のことを守ると言ったが……悪いな、それはお前に任せて良いか?そう呟いて俯いたままその場を動こうとしないゆい。 気が付いてか正は、ゆいの頭をわしわしと撫でるとそのままゆいを1人にして置いて行く。 ハルト:そっちで誰か見つかったのか? 正:庸介の奴がな……殺されていたんだ。 ハルト:………………そうか。 正:この山が終わるまでは、ゆいのフォローをしてやらねーとな。 ハルト:ああ、任せる。すまないな。 正:なに、仲間だからな。 ハルト:こっちの遺体は依頼に行ったメンバーばかりだ、ダークネスに返り討ちにあったんだろう……一度戻って五十嵐からもともとの依頼の詳細を聞こう。これ以上ここに残るのは危険だ。 正:そうだな、いつダークネスが戻ってくるとも限らねぇ。悔しいが、エクスブレインの予知無しじゃ、俺達は奴らに……くそ! 涼香:あ、あの……盾科先輩が……盾科先輩の姿が見つからないんです。 正:それは……――相棒と顔を見合わせよう。 ハルト:頷いて――詳しいことは帰ってからだ。学園に戻るぞ。
ハルト達4人は現場をそのままに武蔵坂学園へと急ぎ帰って行く。
ダークネスの脅威、灼滅者としての死、それぞれが後ろ髪を引かれるまま、4人は現場をあとにしたのだった……。 ◆Middle05◆アンブレイカブル事件
学園に戻り五十嵐姫子から『優しき盾』が向かった事件の詳細を聞く事にする4人。
GM:姫子は皆からの報告を聞いて――「そんなことが……皆さん……」――責任を感じます。エクスブレインは予知や予測はできても実際に戦えません。その分、誰かが犠牲になったりすると凄く歯痒く……。それは1人のアンブレイカブルを討伐する依頼だった。 ハルト:五十嵐、その悲しみは俺達が背負う。お前はこの先俺達がどうすればいいかを話してくれ。 GM:「……はい。まず、今回の依頼について説明します。目的はアンブレイカブルの討伐依頼、名前は喧嘩屋イガミ、ジーンズと皮ジャンの筋骨隆々の男です。工事中のビルに潜んでいる所を8人で奇襲する事でダークネスは撤退するという予知でした」 ハルト:それが『優しき盾』に伝えた未来予測か。 GM:「はい、イガミはアンブレイカブルらしく、強さを認めればトドメを刺さずに向こうがいなくなると予測されていました。深追いさえしなければ皆が無事に帰れると……」 正:だが、実際には何かがあった、そういう事だな。 GM:「たぶん、ですが……」――と言った所で姫子はハッとした表情で目を見開きます。 涼香:どうかしたんですか? GM:姫子の視線は涼香で止まります――「今、新しい未来予測が……」 ゆい:それはイガミに関係することなの!? GM:「はい……涼香さんが、喧嘩屋イガミと戦っている、その未来が見えました」 涼香:え、それは……どういう事ですか? GM:首を振ってから――「ブレイズゲートのせいでそれ以上は……でも、もっと情報があればその未来にどうすれば繋げられるのかわかるかもしれません」 正:わかった、それは俺達が調べるさ。 ハルト:ああ、もちろんだ。 ゆい:でも、こうなっちゃうと涼ちゃんをこの件から外すわけにはいかなくなっちゃったね。 ハルト:そうだな……だが、相手はアンブレイカブルだ。守りきれないことになるかもしれない。 涼香:………………。 ハルト:だから、自分1人で立つこと、戦う事を、覚悟して欲しい。 涼香:はい。
真剣なハルトが涼香を射抜くように見つめて言った。
コクリと首を縦にふり、一言だけ返す涼香だが。 その一言が思っていた以上に重い言葉であると知るのを……彼女はまだ知らなかった。 ◆Middle06◆真相解明に走れ
アンブレイカブル喧嘩屋イガミによって『優しき盾』のメンバーは敗北した。
GM:さて、このシーンは情報収集を行うシーンです。1人につき1つの情報項目を調査可能です。死傷者は推定7名、その中にはゆいの友人である明松庸介の姿もあった。 唯一、生存の可能性があるのは現場から死体を発見できなかった『優しき盾』のリーダー盾科殉子。 ハルト達4人は事件解決の糸口をつかむためそれぞれ奔走するのだった。 ハルト:同じ項目を2人で調べるとかは良いのか? GM:問題ありません。ただし1人1回の情報判定しかこのシーン内では行えません。情報項目を未調査で終わったり、逆に調査しても成功しなかった場合はクライマックスに何らかの影響が出ると思って下さい。 正:なぁに、失敗しなけりゃ良いだけの話だ! ゆい:情報項目って開示されるの? GM:まぁ開示せずにやるのも良いですが、今回は第1話ですし解り易く項目を開示します。まず調査可能な項目は3つ、[盾科殉子について][明松庸介について][喧嘩屋イガミについて]です。盾科については【神秘】の難易度18、庸介については【術式】の難易度18、イガミについては【気魄】の難易度18です。 正:それぞれ得意な奴が担当して、1人は保険って所か? ハルト:GM、4項目目はあったりするのか? GM:ほほう、まぁ何かを調べた結果、調査項目が増える可能性はありますね。 ゆい:これは……4つ目の項目があるね。 ハルト:ああ、その言い方はそう考えて動いた方が良いな。 正:どっちにしろ情報収集はこのシーン中に終わらせる必要があるってことか? GM:はい、追加項目があったとしてもこのシーン中に調査成功しないとクライマックスに影響があります。 涼香:えっと……どうしますか? 正:まず俺が庸介について調べよう。得意なのが【術式】しかないしな……初期コネクションのグレイ・ロズウェルの所に行って調査を頼むって事でいいか? ハルト:グレイ・ロズウェル? GM:ああ、TRPGのルールブックに乗っているパーソナリティーだね。お金さえ払えば何でも仕入れる商売人の少年なんだけど……そうだな、専門の鑑識とかを手配してくれたって事にしよう。 正:よし、判定は【術式】35の難易度18だから差が+7だ! GM:成功率が[通常成功95/A成功47/J成功19/C成功9]ですね。 正:少しでも確率を上げる。【術式】のFジェムを1つ消費してRアップ5を得る。 GM:それだと成功率が[通常成功120/A成功60/J成功24/C成功12]になるね。 正:よし、それなら……出目15、ジャスト成功だ! GM:それでは庸介の情報が手に入ります。ルーツはファイアブラッド、ポテンシャルは神薙使い、武器は解体ナイフです。そして遺体の検証結果ですが、拳での打撲傷はあるのですが死亡した直接の傷は……イガミの拳にしては傷が小さいように思うとのことです。 正:イガミが殺ったわけじゃない? GM:それは解りません。ただし、追加情報項目として今後は[死亡理由]が調査可能になります。 ゆい:おおー。 GM:[死亡理由]は【神秘】の難易度25で調査可能です。 ハルト:【神秘】特化は誰もいないんだよな……厳しい所をついてくる。 ゆい:ハル兄ぃの【神秘】は? ハルト:24だ。 ゆい:ボクと同じかぁ。 ハルト:涼香、まずはイガミについて調べてくれ。 涼香:はい。じゃあ私もコネクションの守屋盛さんを頼って情報を集めてきます。 GM:守屋盛もTRPGのパーソナリティーの1人だね。学園近くの喫茶店でアルバイトしている事情通の大学生。一般人なのでダークネスについての情報はバベルの鎖のせいで知らないけど……いいでしょう。とりあえず振ってみて下さい。 涼香:はい……出目が22でアサルト成功です。 GM:「やぁ、久々だねぇ……へぇ、そういうストリートファイト的な話なら……」――と、ある学生を紹介してくれますが、実はその学生はストリートファイターな灼滅者です。もちろん守屋盛は灼滅者である事を知らないまま紹介してくれたって感じです。 ゆい:その紹介された人に喧嘩屋イガミの話をしますね。 GM:では、その灼滅者はジーパンに皮ジャンの怪しい大男を見たという情報を教えてくれます。どうやらイガミは、工事中のビルより徒歩5分ぐらいの工場跡地にいるらしいですね。以後、工場跡地に行けばクライマックスへと移ります。 涼香:わかりました。ストリートファイターさんにお礼を言って別れます。 GM:次はどうしますか? ゆい:ボクが盾科先輩について調べるよ。初期フォースの≪情報:灼滅者≫は使えるかな? GM:可能ですね。判定値に+1の修正をどうぞ。 ゆい:おっけー! それで95%以下で成功だから……よし! ジャスト成功! GM:盾科殉子についての情報ですね。ルーツはストリートファイター、ポテンシャルがダンピール、武器は鋼糸です。そして恋人がいたのが解ります。もっとも、片想いだったのかもしれませんが盾科が好きだったのは確かな情報です。 ゆい:その人って誰かわかる? GM:はい、『優しき盾』の副部長だった人ですね。名前は鶴木・剣之介(つるぎ・けんのすけ)。先のイガミ戦で死亡しているのが確認できます。 ゆい:耐えきれなかったのかな……それとも、運悪くその人がイガミに殺されて、かな? でも、これが関係してるとしたら……。 ハルト:それが本当かどうか、それはこれから調べる事の結果でわかるだろう。俺が[死亡理由]について調べる。≪エンパシー≫を持っているので情報収集に+1、さらに【神秘】のFジェムを使用してRアップ5……出目88でぎりぎり成功だ。 正:ひゅ〜、やるねぇ相棒! ハルト:Fジェム使っておいて良かった。それで、庸介の死因は……細い糸によるものか? GM:その通りです。心臓を鋼の糸のような細いもので貫かれています。また、庸介以外のメンバーからもイガミと戦った後、別の誰かと戦った痕跡が見受けられます。ただし―― ハルト:鶴木剣之介からは出ない……だな。 GM:はい、剣之介は当たり所が悪かったのか、イガミの致命的な一撃によって殺されていますね。 ハルト:だいたい読めてきたな……。 GM:そんな所で姫子から電話がかかって来ます。 ◆Middle07◆さらなる予知
姫子に呼び出されて教室へと集まる4人。
GM:「新しい予測が出ました……」調査して来た情報を共有し合った所で、姫子からも新しい未来予測があったと伝えられるのだった。 ゆい:どんな予測? GM:「明松君や他のメンバーも……トドメを刺したのは、盾科さんです」 涼香:え? GM:「彼女は完全に闇堕ちしています。アンブレイカブルとの戦いの最中に何かがあったのでしょう。他の仲間が止めようとするも、ダークネスと化した盾科さんによって逆に……」 涼香:そんな……あんなに、あんなに優しい人だったのに。 GM:「明日の朝までに工場跡地へ行けば喧嘩屋イガミと戦う事ができるでしょう。また、今すぐ向かえば盾科さんもその工場跡地にいます。ただし、夜中を過ぎてから向かえば……彼女と会う事はできません」
そう説明すると、姫子は意を決したように灼滅者達を見つめて言うのだ。
GM:毅然と皆を見つめながら言います。「仲間と思い救うか、敵として討ち滅ぼすか、選ぶのは……あなた達です」 涼香:………………。 正:姫子に言おう――ありがとうな。言い辛いことだったろうに。 GM:「いえ、それがエクスブレインである私の役目ですから」 ゆい:じゃあ、それを達成するのがボク達灼滅者の役目だね。 ハルト:ああ、あとは俺達が決める。 GM:「もう1つ……これは正さんに対してですが、紅い武器のダークネスについて解りました」 正:ああ、アレか。ま、言わねーでもなんとなく想像はつくがな。 GM:「……はい、未来予測で正さんが戦っていたのは、盾科さんです」 正:――だろうな。 GM:「喧嘩屋イガミも、闇堕ちした盾科さんも、明日の夜明けまでに戦う事が出来れば双方ともに深手を負ってる状態で戦えます。いかに強敵と言えど皆さんなら勝機はあると思います……私に言えることは、ここまでです」――そう言って姫子は一礼して教室を出て行きます。あとの決断は4人次第です。
沈黙が支配する教室で、最初に口を開いたのはハルトだった。
ハルト:盾科は灼滅するしかないな。涼香:え!? ゆい:そうだね。それがこれ以上犠牲者を増やさない最善の手だし……。 涼香:え、どういう、どういうことですか!? ハルト:涼香、キミと盾科は違う。キミはダークネスの誘惑に抗い自己を保つことができた。だが、盾科は違う……完全な闇堕ちをした彼女は、もう灼滅するしかない。 涼香:なら、少しだけ私に話す時間を下さい。 ハルト:時間か……。 ゆい:それに夜明けになっちゃったら、盾科先輩はその工場跡地からいなくなっちゃうんだよね? ならそれまでに決着を付けないといけない。 ハルト:そうだ。盾科だけじゃない、喧嘩屋イガミもいる。 正:涼香、もし辛いなら来なくて良いんだぜ? 涼香:私は……。 正:まぁ、どうしても話がしたいってなら、俺とゆいがイガミと戦ってる間に、涼香だけ盾科と1対1って事もできるが……。 ゆい:まぁねぇ。ハル兄ぃが涼ちゃんのフォローに回ればやれない事は無いけど……。 ハルト:いや、ダメだ。それだとエクスブレインの未来予測から外れてしまう。 正:どういう事だ? ハルト:五十嵐がイガミと涼香が戦っている姿を予知していたのは覚えているな? それはつまり、イガミと戦う際は涼香が必須という事だ。 涼香:あ。 正:つまり……盾科と戦う場合には俺が必要だってことか。紅い武器のダークネスが盾科ならそれもまた条件だしな。 涼香:なら、どっちにしろ私は――。 正:手で遮ろう――もしこのまま戦場に行くとしたら、そこで起こるのは殺し合いだ。涼香――。 ハルト:止めろ! 正:………………。 ハルト:それ以上言うな。彼女にはまだ早い。 正:だがな! ゆい:ねぇ、少し条件を整理しない? 正:……そうだな。悪い、相棒。 ハルト:気にするな。……まず盾科と戦う時には正が必要で、イガミと戦う時には涼香が必要。これを満たさない場合、バベルの鎖の効果でダークネスに裏をかかれて下手をすれば俺達は全滅する。 正:さらに今日の深夜までに行けば盾科と会えるが、それ以降に行った場合は会う事はできない。イガミとは明日の朝までに工場跡地に向かえば出会えるが、それを逃すと会う事はできない、だったな。 涼香:なら、取れる選択肢は1つじゃないですか。皆で行ってアンブレイカブルを深夜までに倒して、それから盾科先輩に会う。それしか無いです。 ゆい:涼ちゃん、いいんだねそれで? 涼香:うん。 ゆい:ボクは、涼ちゃんがそれで納得しているならそれでいいと思うよ? 正:………………わかった。俺も納得するさ。あとは相棒――とハルトを見よう、本当に連れて行くかどうか。 ハルト:涼香の真正面に立って肩に手を置き――覚悟しておけ、何があっても目を背けるな。その心の弱みにダークネスはつけこむんだ。 涼香:……はい!
そうして、朱鷺川涼香は知る事となる。
「仲間と思い救うか、敵として討ち滅ぼすか、選ぶのは……あなた達です」 エクスブレインの言った『選ぶ』という意味の重さを……。 ■ CLIMAX PHASE ■ ◆Climax01◆喧嘩屋イガミ
都内某所の工場跡地に4人はやって来ていた。
GM:それではクライマックスフェイズへ入ります。まず聞いておきますが、イガミと盾科、どちらに会いますか? 【神秘】の難易度25で判定して下さい。1人でも成功すればどちらに会うかの主導権をあげます。時刻は深夜までまだ2時間以上もある。 帳の降りた空には煌々と月が輝いていた。 老朽化しところどころ天井の剥がれた廃工場に、その鋭くとがった月の光が差し込み陰影を付ける。 それは冷たく、とても静かな夜だった。 涼香:……失敗です。 正:ファンブルはしなかったが失敗だ。 ゆい:ボクも。 ハルト:出目が7で成功だ。 GM:やるなぁ、では成功したのでイガミと盾科、どっちから会うか決めて下さい。 ハルト:ならイガミからだ。 GM:わかりました。
ハルトが警戒しつつ工場内を進むと、工場の真ん中に巨漢の男が座り込んでいるのを発見する。
ハルト:盾科と戦っていたんだろうな。腕や足、体に大小様々な傷を持ち、それらはつい先ほど付けられたかのように血を流していた。 さらに何か襲撃者に備えているように周囲を警戒しているようだ。 ゆい:飛び出す? ハルト:俺が行こう――ザッとイガミの前に出る。 GM:「ああん? なんだ手前ぇ等は」 ハルト:喧嘩屋イガミ、だな。『優しき盾』のメンバーを殺した罪、償ってもらうぞ。 GM:「何が償ってもらうぞ、だ。この前の奴らなら勝手に仲間が暴走して殺し合ってただけじゃねーか、俺は今楽しんでるんだ。邪魔するな!」 ゆい:そこでハル兄ぃより前に出るよ――じゃあその楽しみをここで終わらせてあげるわ。アンブレイカブル、何が壊されざる者よ、私が全部ぶっ壊してあげる。 GM:「なんだ小娘、俺達になんか恨みでもあるようだな」 ゆい:もちろんよ! あんた達だけは絶対にぶっ殺してやる! 消し炭さえ残さずにね! GM:「いいだろう。その覚悟だけは買ってやる。手前ぇら最初に相手にしてやるよ!」――イガミが立ちあがりゴウッと闘気が吹きあがります。それでは戦闘開始です。ポジションを宣言して下さい。 涼香:私はクラッシャーです。 ゆい:同じく! 正:俺はジャマーにしよう。 ハルト:俺も前と変わらずジャマーだ。 ●第1ラウンド ▼行動順番31:ハルト(ジャマー) 31:正(ジャマー) 26:喧嘩屋イガミ 11:ゆい(クラッシャー) 9:涼香(クラッシャー) GM:ではハルトからです。距離は10mとします。エンゲージするにはムーブアクションを費やして下さい。 ハルト:お前によって奪われた仲間達の想い……取り戻させてもらう!――スレイヤーカードを解放しつつムーブアクションで接敵、イガミにエンゲージ――その後≪影縛り≫を発動。イガミの足元から牙持つ影が襲いかかる。俺の【術式】は24! そっちは! GM:31だ。 一同:『高っけ!?』 ハルト:いや、それでもやるしかない。差がマイナス7か、Fジェム使ってRアップ5……出目9でジャスト成功! 同時にBS【捕縛】を付与! 俺の影がイガミを捕らえる! GM:「なんだぁ? こんな貧弱な影……ふんっ!」――イガミは筋肉を膨張させて強引に影を千切って逃れます。≪バッドステータス解除≫を使用。HP5点を代償に1つBSを解除します。 ハルト:オートアクションのフォースか! GM:そうです。ただしダメージは普通に来ますので、武器の威力を選んで下さい。 ハルト:<斬撃力>にしよう。≪耐性≫とかは? GM:ありません。 ハルト:わかった。ジャストだから<斬撃力>10点が3倍で30点、サイキックの威力が29なので合計59点だ。 GM:結構なダメージだな……イガミは少し驚きます――「たった4人でずいぶんと粋がると思ってたが……なかなかどうして、強いじゃねーか? はっ! 楽しくできそうじゃねーか!」 正:そいつぁ違うな? GM:「あん?」 正:俺達は4人じゃない、11人だ! GM:「何言ってやがる」 正:俺達にはあいつらがついてる。あいつらも俺達と共に闘ってくれてるんだよ!――マイナーで≪マジックワード≫を発動、これで【術式】の判定値+3、メジャーは≪マジックミサイル≫を使用、さらに【術式】のFジェムを消費してRアップ5……これで表の51〜60ラインまで引き上げる。 GM:成功率[通常成功120/A成功60/J成功24/C成功12]か。 正:これだけすれば期待値でアサルトになる……出目67、くそっ、普通の成功か。ダメージは<斬撃力>の35点だ――貫け! GM:ではそれをイガミは片手で受け止めます。 正:なに!? GM:さらにジリジリと手が焼けるのも構わず、そのまま正に向かって撃ち返します。フォース≪リポスト≫を使用。対象は即座に57点のダメージを受けます。 ハルト:正! 正:ぐ、ふ……だ、大丈夫だ――まだHP6点残ってる。 GM:「あん? 次はどいつだ……俺だぁ!」――近距離にいるのがハルトのみ、遠距離にいるのが3人ね……では――「まずは調子の乗ってる奴から倒すか」――≪喧嘩殺法イガミ流893蹴り≫をゆいに向かって放ちます。蹴ると同時にかまいたちが襲いかかって来ます。こちらの【気魄】は28です。 ゆい:こっちは26! GM:やるなぁ、差が2しかないとは……75以下で普通成功。出目20でアサルト成功、威力は<破壊力>で65点。 ゆい:おお! 残り1点で耐えた!(笑) GM:おう、やりおるわ。ちなみにBS【プレッシャー】もあげます。 ゆい:命中判定がRダウン3されるやつか……きついな。 GM:「ほう、俺の蹴りで死なねーとはな!」――イガミは≪追加攻撃≫を宣言して終了。 正:≪追加攻撃≫? GM:行動値マイナス20(最低でも1)で再び行動するエネミー専用のフォースです。 ハルト:このラウンドでもう1度攻撃してくるってことか。 GM:その通りです。 ゆい:ふん、あんた程度の蹴りなんかじゃ……あいつの足元にだって届かないわよ! GM:「ああん?」 ゆい:ムーブアクションで接敵、≪零距離格闘≫で攻撃します。こっちの【気魄】は22! GM:イガミは28だ。 ゆい:マイナス6差か。さらに【プレッシャー】でRダウン3か……【気魄】のFジェムを一気に2つ消費してRアップ5×2!……出目45で普通に成功! ダメージは<斬撃力>の39点! GM:「おいおい、大口叩いた割りにしょぼくねーか?」 ゆい:まだ本気じゃないのからね!――ムーブで≪インファイト≫を使わないとやっぱり威力が低いか。 GM:「そういつは残念だ……じゃあ、これくらいじゃ死ぬんじゃねーぜ?」――≪リポスト≫使用。気が付くとカウンターでイガミの拳がゆいの腹にめり込んでいます。ダメージ57点。 ゆい:それは無理だ(笑) そのサイキックは1ラウンド何度でも使えるの? GM:いや、1ラウンド2回までだ。 ゆい:無理だ……HPマイナスでKOされる。 涼香:え、これで終わり? ハルト:いや、灼滅者はまだもう一度だけチャンスがある。 ゆい:ええ、奥の手が残ってる……私の魂が肉体を凌駕する!
▼魂が肉体を凌駕する
戦闘不能になる代わりに任意のFジェムを1つ消費する事で、「魂が肉体を凌駕する」を宣言して良い。これが発生するとKOを無効化し、同時にHPは[気魄+術式+神秘]まで回復する。この状態でさらにKOされた場合、自動的に重傷となる。
▼重傷
ゆい:私は倒れない。悲しみの連鎖を断ち切るまで! あんた達アンブレイカブル達を全員殺すまでは!重傷になると戦闘行為は不可能となり、また全てのエフェクトは打ち消され、ヒールの効果も受け付けなくなる。重傷は心霊手術を受けるまでは回復しない。 GM:「おお、そうこなくっちゃなぁ!」――そして涼香です。 涼香:い、行きます! やああああ!――日本刀で斬りかかります。ムーブアクションで接敵して、メジャーアクションで≪雲耀剣≫【気魄】24! そっちが28だから差がマイナス4で……出目96、失敗です。 GM:ファンブルだね。
▼ファンブル
GM:「ああん?」――と涼香の方を振り向いたイガミから、圧倒的な闘気がぶつけられて涼香は気圧されます。ダイスロールの結果が96以上の場合をファンブルと呼び。判定は自動的に失敗となる。 涼香:あ、あう……。
涼香にとって初めてのダークネスとの戦い。
ハルト:気をしっかり持て!それは化け物との正真正銘の戦いだった。 涼香の前には、見た目以上に巨大になったアンブレイカブルが壁のように見えた。 これが戦い、これがダークネス。人が逆らえない、絶対の……恐怖。 涼香:ハ、ハルト先輩。 ハルト:お前はここに来る覚悟をして来たんだろう。だからそれを信じろ、それでも怖ければ俺を見ろ! 俺がお前を助けてやる! 涼香:あぅ……。 GM:ではイガミの≪追加攻撃≫分の行動をします。<喧嘩殺法イガミ流水平手刀>、【術式】30で近接列攻撃! 対象はハルト、涼香、ゆいの3人! ハルト:≪ブロッキング≫使用、イガミの命中判定にRダウン2。 GM:くっ、そんなフォースを持ってたのか……まずはハルトから。 ハルト:こっちの【術式】は24だ。 GM:差が+6か……出目65で普通成功。威力は<破壊力>で行く。 ハルト:破壊力はダメージ耐性があるから武器威力は0にしてくれ。さらに≪空蝉≫を使用。お前が攻撃したのは俺の影だ。 GM:なん……だと……? じゃあ武器威力が0のままサイキックの威力だけが27点だ。さらにBS【服破り】を与えます。次は涼香。 涼香:【術式】は21です。 GM:差が9ですがRダウン2で差が3のラインで……80で普通命中。ダメージは<破壊力>で46点。 涼香:まだまだ大丈夫。 ゆい:【術式】12! GM:それは余裕だな……出目69で普通命中、<破壊力>の合計46点。 ゆい:残り17点でまだ立ってる。 ●第2ラウンド GM:それでは次のラウンドです。ハルト:GM、俺はFジェムを1つ消費してポジションをディフェンダーに変更する。BSが効かないなら俺はジャマーの意味が無い。 GM:わかりました。正は? 正:俺はBSよりENやSEの為のジャマーだからこのままで。 ▼行動順版 31:正(ジャマー) 26:喧嘩屋イガミ 16:ハルト(ディフェンダー) 11:ゆい(クラッシャー) 9:涼香(クラッシャー) 正:最初は俺だな。マイナーで≪マジックワード≫、メジャーで≪予言者の瞳≫……判定成功、HPは全快、EN【狙アップ】を得る。 GM:ではイガミですね。遠慮なくもう一度近接列攻撃をします。 ハルト:≪ブロッキング≫使用。 GM:まずはハルトに対して<喧嘩殺法イガミ流水平手刀>! 判定値は先ほどと同じ……出目55で普通成功、武器の威力は<斬撃力>で行きます。ダメージは44点だ。 涼香:ハルト先輩! ハルト:再び≪空蝉≫を使用……残りHP1点で倒れない――心配するな涼香、お前を助けると言っただろう……だから、こんな所で倒れたりはしないさ。 GM:「余所見たぁ余裕だなぁ?」――涼香に行きます。涼香とは差が3のラインなので成功率85……出目13でジャスト。84点ダメージ。 涼香:それは無理!――イガミの拳で吹っ飛びます。
宙を飛ぶ涼香、しかし……目が紅く見開かれると空中で一回転。
涼香:[魂が肉体を凌駕する]を宣言します。体勢を整えるとそのままストンと地面へと着地する。 GM:「しぶてぇなぁ! でも、楽しめるってもんだ!」――最後はゆい、差が16でRダウン2で通常成功が90%以下だね……出目8、クリティカル成功。 ゆい:それは厳しい!? ハルト:【気魄】のFジェムを使用、カバーアップを宣言!
▼カバーアップ
GM:ちなみにダメージは95点だ。ディフェンダーのポジションのキャラクターは、任意のFジェムを1つ消費する事で、同じエンゲージにいるキャラクターをかばい、代わりに攻撃を受ける事ができる。これをカバーアップと呼ぶ。 ハルト:さすがに[魂が肉体を凌駕する]ぞ。 GM:「くくく……こういう戦いさ! 俺が求めていた戦いって奴は!」 ハルト:やっと俺の行動か……≪トラウナックル≫で【神秘】で攻撃する。こっちは21だ。 GM:【神秘】は低いのですよ……20です。 ハルト:十分高いだろう。だが差が+1からスタートだな、【神秘】のFジェムを消費、Rアップ5をして……出目51で普通に成功。武器の威力は<斬撃力>で39点――影が拳に巻きついてイガミの顔を殴り飛ばす。 GM:ではイガミはそのまま顔でその拳を受けますが、微動だにしません。 ハルト:こいつ……――と腕でガード! そんな演出だ(笑) GM:御明察、≪リポスト≫を使用して57点ダメージ――「お返しだ」とばかりに殴り返されます。 ハルト:ズザザーと滑るが倒れはしない。残りHP5点だ。 ゆい:本気で行く! ムーブで≪インファイト≫使ってダメージ+10、メジャーで≪鬼神変≫でぶん殴る! 【気魄】のFジェムを2つ使ってRアップ5×2!……出目16のジャスト成功! さらにクラッシャーの効果をFジェム1つ消費で発動、ダメージ2倍!
触れそうなほど近距離へと潜りこんだゆいがくるりと後ろを向き、その拳を死角へと隠す。
ゆい:受けなさいアンブレイカブル! 鬼の一撃! ダメージ合計148点!イガミが何かを感じ取り一足飛びに距離を置こうとするが、ゆいの死角から飛び出た腕は、今までの細腕とはうって変わって異形に変貌した腕となっていた。 「これが私の本気よ! 受けなさいアンブレイカブル!」 GM:避けられないと悟ったイガミは、ゆいの拳に己の拳を突き出し相殺を狙う――「な、め、る、な、クソガキがー!」――≪リポスト≫発動、ダメージ57点! ゆい:それはダメだ……[重傷]になる。 GM:だがイガミもそれが最後だ。ゆいに拳を突き出したポーズのまま、ドギャッと全身の血管から血を噴き出してドウっと倒れる。灼滅されます。 ゆい:ふんっ、どうよ? 私はただでは倒れないわ……あんたも、道づれよ――私も倒れます。 正:ゆい、大丈夫か!――と駆け寄ろうとするが……GM、来るんだろう? GM:良く解ってますね。それでは区切りはしますがそのままシーンは続けます。 ◆Climax02◆盾科殉子
アンブレイカブル喧嘩屋イガミとの激戦を終えたのもつかの間。
涼香:盾科先輩!再び静寂が廃工場に戻った途端、その静謐な空気を纏うように彼女は現れた。 盾科殉子……かつて灼滅者だった、ダークネスが。 GM:静かに彼女は現れます。その姿はイガミと戦い続けていたせいでしょう、あなた達から見てもボロボロです――「あなた達が倒してしまったのね……困ったわね?」 涼香:え、え、何が……? GM:「だってそうでしょう? 弱いのはダメなの。私より強い者がいたら全員殺しておかないと」――そう言うと首に巻いた紅いマフラーがほろほろと解き解けて周囲に浮かび始めます。 正:あれは紅い武器、か。 涼香:盾科先輩、そのマフラー……――って吉祥寺で彼氏にプレゼントするって買った奴だよね? 色が違うから間違いかもしれないけど。 GM:涼香の推測は正しいです――「これ? この子が誰かにあげたいって言ってたの。でも、せっかく私が首に巻いてあげたのにその人は全然受け取ってくれないから、仕方が無いから私が使う事にしたの」 ハルト:あの紅は……血の赤か。 涼香:元は真っ白だったのに。 GM:「とりあえず、あれを倒したのはあなた達ね……なら、あなた達を倒さないと、ね?」 涼香:盾科先輩! もうそんなことしないで良いんです! やめて下さい! GM:「どうして? 私はこれでもけっこう優しいのよ? この子の代わりにこの子の願いを叶えてあげているの。この子が最後に何を願ったか教えてあげましょうか? 自分がもっと強ければ、自分より強い者が誰もいなければ……自分が守りたい人達は誰も傷つかなかったのに……って」 涼香:違う! 盾科先輩は……盾科先輩は……絶対、そんな風に思ったりなんかしない!――日本刀を構えます。 GM:「あら? 私がその盾科よ? 私の言う事が信じられないなんて……涼香ちゃん、頭でもおかしくなった?」 ハルト:涼香……あれはもう……。 涼香:うわああああ!――日本刀を構えて突っ込みます!――盾科先輩を、盾科先輩を返せ!!! ハルト:待て! 不用意に突っ込むな! ちっ、正! ゆいを頼む! 正:ああ、わかった! ●第3ラウンド GM:それでは戦闘は続いているので第3ラウンドとします。ハルト:その前に、皆のHPを確認させてくれ。俺は凌駕中のHP残り5点だ。 正:俺はさっき回復したから63点残ってる。 涼香:私は凌駕中で残り57点です。 正:相棒が一番やばいじゃねーか。 ハルト:わかった……俺はFジェムを1つ消費してスナイパーに変更する。 ▼行動順版 31:正(ジャマー) 26:ハルト(スナイパー) 18:ダークネス盾科 9:涼香(クラッシャー) GM:距離は10m離れています。ムーブアクション使えばエンゲージできます。まずは正です。 正:ムーブアクションで接近してエンゲージに入る。そしてマイナーで≪マジックワード≫、メジャーで≪バスタービーム≫を至近距離からぶっ放す! こっちの【術式】は35だ! GM:こちらは16です。 正:それは十分……普通に成功した。ダメージは<斬撃力>の45点、さらにBS【プレッシャー】を与える――もうあんたの中に盾科はいない。だから、俺のエゴを貫かせてもらう。 GM:脇腹をビームが掠って血が飛びますが、盾科は立ったままです。 ハルト:メジャーで≪ディーヴァズメロディ≫――盾科殉子の身体を、取り戻させてもらう!――俺の【神秘】は24。 GM:こっちは20です。 ハルト:差が4で……出目20のアサルト成功! <斬撃力>で……通るか? GM:はい、弱点でも耐性でもありません。 ハルト:なら合計48点。 GM:次はこっちですね。周囲に舞う紅い糸が一気に動き出します。≪結界の毛糸縛り≫、遠距離列攻撃でハルトと涼香を攻撃。【神秘】は16だが、BSが付いてて……ハルトには77で失敗。涼香には12でジャスト成功。 涼香:Fジェムを2つ使って相手の成功率を2段階下げます! GM:では普通成功になります。ダメージは<魔法力>の31点、さらに涼香にはBS【プレッシャー】を与えます。あと≪追加攻撃≫も宣言しつつ――「涼香ちゃん、一つ教えて?」 涼香:キッとダークネスを睨みます。 GM:「あなたは、この盾科殉子を殺したいのかしら?」 涼香:どういう……こと? GM:「涼香ちゃんの攻撃が当たったら、この女は私と一緒に死ぬでしょう」――具体的には残りHPは47点です。 ハルト:確かにあと1撃だな。 GM:「もう一度言うわ、私はあと1撃貰ったら死んでしまう。涼香ちゃん、もしこの人を助けたいのなら、私達を見逃してちょうだい?」 涼香:え? GM:「そうしたら万全の態勢でもう一度あなた達の前に現れてあげる。あのアンブレイカブルと遊んでいたせいで、せっかくの戦いが無粋な結果になるのは忍びないでしょう?」 涼香:私が、盾科先輩を……殺す? ハルト:涼香とダークネスの間に立とう。そして涼香の方を向く。 涼香:ハルト……先輩。 ハルト:頑張ったな涼香――と少しだけ微笑んで右手で涼香の目を閉じさせる。そのまま左手で肩を押さえて膝をつかせる――ここからは覚悟を決めた者だけの戦いだ。無理に覚悟を決める必要は無い。ゆっくり時間をかけて……自分で結論を出せば良い。 涼香:でも、私が、やらないと。 ハルト:下手に決断する事は無い。俺は急ぎ、焦り、決断し、そして全てを失った……。俺は大罪を背負う者、お前1人分ぐらい増えてもなんてことは無いさ。 涼香:う、うう……ごめん、なさい。私は……盾科先輩を……――すいません、行動放棄します。殺せません。 GM:それではダークネス盾科の2回目の行動です。近距離の正に向かって≪鋼鉄の毛糸縛り≫、こちらは【気魄】19! 正:俺は14だ。 GM:差が5、だけどRダウンが入って……13、ジャスト成功だ。<斬撃力>で合計58点。 正:残り5点で立ってる。 GM:これで第3ラウンドは終了です。 ●第4ラウンド GM:まずセットアップです。正:Fジェム使ってポジションをスナイパーに変える。 ▼行動順版 26:正(スナイパー) 26:ハルト(スナイパー) 18:ダークネス盾科 9:涼香(クラッシャー) 正:先にやらせてもらう。バスターライフルの銃口を近距離で突き付けて――盾科、今まで庸介達をありがとう。 GM:どうぞ。 正:マイナーで≪マジックワード≫、メジャーで≪バスタービーム≫、さらにスナイパーの効果をFジェムで使う! GM:成功率が[通常成功185/A成功92/J成功37/C成功18]だ。なんという命中率(笑) 正:行くぜ!……あ、96。 ハルト:ファンブルだな。 正:Fジェムを3つ一気に使用して振り直す!……81でアサルト成功! <斬撃力>で56点! GM:それは無理だ……撃ち貫かれてダークネス盾科は倒れます。 正:これからはあんた達の分まで、俺達が紡いで行く。
倒れる間際、正の言葉に返すように盾科に元の優しげな微笑みが戻った気がした。
正:こくりと頷こう。
『宜しくね……ありがとう』 ■ ENDING PHASE ■ ◆Ending01◆ダークネスの末路
喧嘩屋イガミはぶすぶすと塵と消え、倒れた盾科も紅い糸がほぐれていくかのようにその身体が空気へと消えていく。
ハルト:安心しろ、これで盾科殉子は取り戻した。涼香:どうして、盾科先輩は殺されなきゃいけなかったのですか…… ハルト:奪われたからだ。 涼香:奪われた? ハルト:そうだ。だから俺達灼滅者はダークネスと戦い続ける。 涼香:わかりません。私は……。 正:俺はゆいを連れて先に帰ろう。涼香は……ちょっともやっとするが相棒に任せるさ――ゆい、大丈夫か? ゆい:うう……ボ、ボク、またやっちゃったの? 正:無理すんな。話さないで良いぜ?――ゆいを背負おう。 ゆい:黙って背負われます。指一本動かせない……正先輩と一緒に退場します。 GM:では2人は退場します。
きらきらと朝露を輝かせて、日の光が冷たく工場跡地に差しこんでくる。
涼香:私は……灼滅者に向いてないんでしょうか。ハルト:灼滅者は、ダークネスとの戦いは、向き不向きで決まるものじゃない。覚悟があるか無いかだ。 涼香:なら私は……覚悟が無かったって事になるんですね。 ハルト:………………。 涼香:でも……それでも……私は盾科先輩を……! ハルト:俺は目的があってダークネスと戦っている。正も自らの信念が、ゆいも倒すべき宿敵がいる。涼香、お前には何がある。 涼香:………………。 ハルト:無理強いはしない……――涼香を置いて去る。 GM:1人放置するんだね。 ハルト:ああ、これは灼滅者としての選択だ。手を差し伸べるわけにはいかない。 GM:それではハルトも退場します。涼香1人になりますが、どうしますか? 涼香:私は――
少しずつ明るくなっていく世界で涼香は一人空を見上げる。
冬晴れの空は、薄く伸びた雲があるだけで、どこまでもどこまでも青かった。 ◆Ending02◆戦う理由
12月24日クリスマスイブ、武蔵坂学園ではクリスマスイベントの真っ最中だった。
涼香:ぼうっと皆を見ています。クリスマスツリーに装飾された伝説の樹の前ではダンスパーティーが繰り広げられ。 イベント後に行われる雪合戦大会用の降雪機もシートをかぶせられて脇に鎮座している。 学園内では伝説のナノナノを見つけようと奔走するカップルや、そのカップルを追う者達が騒ぎ。 各所のイルミネーションは学生がやったと思えぬほど豪華で気合が入っていた。 そんな楽しげな雰囲気の中、朱鷺川涼香は1人で学園のベンチに座っていた。 GM:学園の生徒達は楽しそうにはしゃいでまる人がほとんどですね。 涼香:思わず盾科先輩の言葉を想い出します。
「この学校の生徒はそのほとんどが灼滅者だし、いつ自分の身に何かが起こるともわからない……」
涼香:想い出すと思わず涙が目に溜まっていきます。
「……だから、みんな一生懸命『今』を楽しんで生きようとしているの」
涼香:でも、だからって……死んで良いわけない、無いですよ……――両手で肩を抱くように嗚咽を我慢します。正:登場しよう――まぁな、死んだら何も残らない。残された方は辛いよな――涼香に上着をかけてやる。はたから見れば寒がっているようにも見えるしな。 涼香:正、先輩……。 正:おとといのこと、まだ引きずってるのか? 涼香:私は……弟を助ける為に灼滅者になる道を選びました……だけど、いざそういう時になってみたら、そんな覚悟は全くなかった。私は……盾科先輩を、斬れなかった。 正:おいそれと割り切れるものでも無いさ。俺だって納得してやってるわけじゃねぇ。 涼香:なら、正先輩はどうして。 正:俺は幸せ者だからな。 涼香:え? 正:この学園は多かれ少なかれ、心に傷を持つ者ばっかりだ。だが俺は幸せに育って悲しい事もなく今まで生きてこれた。だから、その分他の誰かが悲しい思いを背負うことになるなら、俺が代わりに背負ってやりたいって思ってる。それが俺の……信条って奴だな。 涼香:………………。 正:誰だって幸せになる権利はある。俺はその手助けがしてやりたいだけさ。
「私達はダークネスと戦う宿命がある――」
正:かっこ付け過ぎたかな?――と(笑)正の言葉を聞いた涼香の頭に、あの日盾科から聞いた言葉がリフレインする。 「――だからって夢や幸せをあきらめちゃダメよ? それを手にする権利は誰にだってあるんだから」 涼香:いいえ、かっこいいですよ、先輩。 正:お、おおう。 涼香:立ちあがってお礼をします――ちょっと、散歩して来ます。 正:見送ろう、ちょっと気の利いた事を今の俺は言えそうにない(笑)
「ナノナノ〜♪」
歩く涼香の横にクリスマスだからとたくさん現れているナノナノがふわりと飛んで来た。 伝説のナノナノ様では無いようだが、その愛くるしい無邪気な姿を見ると少しだけ心が安らいだ。 「盾科先輩……私……私は――」 ◆Ending03◆そして少女は
今頃、学園では伝説の樹で行われた一番星競争やダンスパーティも終わり、雪合戦でも行っている頃合いだろうか。
正:相棒、もうちょっと話を聞いてあげても良かったんじゃないか?学園からほど近い古本屋【百年の孤独】の奥にある歓談室には、ハルトと正とゆいがたむろっていた。 2人ともゆいが一番星競争に出場しなかった事に対しては何も言わず、少なくとも3人ともクリスマスイベントに参加する気になれなかった事を掘り返す事もなかった。 ハルト:何の話だ? 正:あの子の事だよ。一昨日からここに顔出す事も無いしな、もしかしたらもう……。 ハルト:………………。 ゆい:でも、これも一つの選択肢だし、良かったんじゃない? 正:だが、ダークネスを灼滅しなければ、あいつはいつか闇堕ちするぞ。俺達はダークネスを狩る事で一定の心の安定を得ている事も事実なんだ。 ゆい:だからって、辛いと思うことを強制はできないじゃん! 正:それはそうだが……。 ハルト:立ちあがってお茶でも淹れよう。 正:おい相棒! あの子が闇堕ちしたらお前にも俺達にも責任があるんだ。彼女を救ったのはお前だ、彼女を戦いに連れ出したのは俺達だ、だから最後まで責任見てあげたって良かったんじゃねーのか? ゆい:それを言われるとボクも迷っちゃうなぁ……。 ハルト:正、ゆい、お前達は少し勘違いしてないか? 正:ああ? ゆい:何が? ハルト:涼香は……――と言った所で来るのかな? 涼香:そうですね。すいません!って言って本屋に入って来ます。 正:涼香!? ゆい:涼ちゃん! 涼香:つかつかとハルト先輩の前に行きます。 ハルト:結論は出たのか。 涼香:出ていません。 ハルト:なら覚悟はできたか? 涼香:まだです。 ゆい:涼……ちゃん? 正:お、おい……。 涼香:灼滅者だからダークネスを倒すって理屈や、もう元に戻らないから殺すしかないって事実も、理解はしました。だけど、だからってそれを理由にはしたくないんです。 ハルト:そうか。 涼香:だから、私は……悩みながら戦おうと思います。いつか自分が納得できる答えが出るまで。 ハルト:いいんじゃないか。まだ時間はある、たっぷり悩めば良い――涼香の手を取って歓談室に招こう。 涼香:え、手を!? ハルト:ずいぶんと外で悩んだようだな。
涼香の冷え切った手を、ハルトが握る。
店の奥の歓談室には正とゆいが笑顔で歓迎してくれている。 「さぁ入れ、ちょうどお茶が入ったところだ」 12月24日、朱鷺川涼香は自身の誕生日に、本当の意味で灼滅者(スレイヤー)として歩きだした。
サイキックハーツRPGリプレイ
第1話『闇堕ちの果てに』 FIN ◆登場キャラクターデータ◆ 名前:“中学生ダンピール”朱鷺川・涼香(ときがわ・すずか) ⇒サイキックハーツルーツ:ダンピール ポテンシャル:ファイアブラッド 誕生日:12月24日 星座:やぎ座 年齢:14 性別:女 学年:中学3年 瞳:黒 髪:こげ茶 特徴:情報通 所属:古本屋“百年の孤独”
入学理由:闇堕ちから救われて入学した
サイキック: ≪雲耀剣≫≪フェニックスドライブ≫≪居合斬り≫≪レーヴァンテイン≫≪月光衝≫ ESP: ≪吸血捕食≫≪旅人の外套≫ フォース: ≪情報:灼滅者≫≪社会:武蔵坂学園≫≪宵闇の牙≫≪バーストブラッド≫ ≪パワーインパクト≫≪ウェポンバッシュ≫ 殲術道具: 日本刀、中学生女子冬服、マフラー、帽子、パーカー 名前:“無色の大罪”陸奥・陽大(むつ・はると) ⇒サイキックハーツ ルーツ:シャドーハンター ポテンシャル:サウンドソルジャー 誕生日:5月26日 星座:ふたご座 年齢:17 性別:男 学年:高校2年 瞳:銀 髪:銀 特徴:自然を愛する 所属:古本屋“百年の孤独”
入学理由:自ら学園の存在を探り当てた
サイキック: ≪ブラックフォーム≫≪トラウナックル≫≪ディーヴァズメロディ≫≪影縛り≫≪斬影刃≫ ESP: ≪ソウルアクセス≫≪闇纏い≫ フォース: ≪情報:灼滅者≫≪社会:武蔵坂学園≫≪ブロッキング≫≪エンパシー≫≪空蝉≫ 殲術道具: 影業、高校生冬服、写真、学生鞄、手袋、霊帯 名前:“ジャスティス”正・義(しょう・ただし) ⇒サイキックハーツ ルーツ:魔法使い ポテンシャル:エクソシスト 誕生日:10月31日 星座:さそり座 年齢:17 性別:男 学年:高校2年 瞳:黒 髪:黒 特徴:グルメ 所属:古本屋“百年の孤独”
入学理由:学園からスカウトされて入学した
サイキック:≪マジックミサイル≫≪予言者の瞳≫≪リップルバスター≫≪バスタービーム≫ ≪セイクリッドクロス≫ ESP: ≪空飛ぶ箒≫≪闇纏い≫ フォース: ≪情報:灼滅者≫≪社会:武蔵坂学園≫≪ハイスペル≫≪攻撃訓練≫≪マジックワード≫ 殲術道具:バスターライフル、高校男子冬服、シグナルボタン、ソウルフード、ソウルドリンク、ノート 名前:“穿ち切り裂く者(ブレイカー)”神条・ゆい(しんじょう・ゆい) ⇒サイキックハーツ ルーツ:ストリートファイター ポテンシャル:神薙使い 誕生日:3月30日 星座:お羊座 年齢:14 性別:女 学年:中学3年 瞳:黒 髪:金 特徴:お金持ちだった 所属:古本屋“百年の孤独”
入学理由:宿敵を灼滅するために入学した
サイキック:≪零距離格闘≫≪抗雷撃≫≪鬼神変≫≪神薙刃≫≪清めの風≫ ESP: ≪バトルリミッター≫≪旅人の外套≫ フォース: ≪情報:灼滅者≫≪社会:武蔵坂学園≫≪ウェポンマスタリー≫≪インファイト≫ ≪ハングリースピリット≫ 殲術道具:ガンナイフ、中学女子冬服、小物入れ、髪飾り、靴、タトゥーシール |