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BEAST BIND NEW TESTAMENT
新約・魔獣の絆シナリオ

『人と魔物の境界線』

◆プリセッション――

■シナリオデータ

  本シナリオは『新約・魔獣の絆』を適用して遊ぶことを前提としたシナリオです。プレイ時間は3〜4時間。プレイ人数は3〜5人。

■ストーリー

  池袋のとある裏通り、潰れた劇場にまつわる狂気の都市伝説があった。伝説から生まれし魔物が悲しみにくれた少年にきっかけを与えた。それは人の境界線を越える片道キップだった。
  噂から生まれた冥府の狂芸師釣狐、彼は両親と共に平和に暮らしたいと望む少年・崎守優斗に近づき、その秘められし力を解放する。優斗の母親は半魔であり釣狐はその力を誘発させたのだ。
  優斗の暴走により崎守家とその周辺に住む住人は全て惨殺される。唯一の生き残りはたまたま外出していた優斗の姉である優希だけであった。
  暴走した優斗は事件後一時的に落ち着くが、いまだ不安定な状態である。そんな弟を探そうとする姉の優希、暗躍する魔物釣狐を倒し、崎守姉弟を救えればこのシナリオは終了となる。

■トレーラー

  きつねやきつね、お前の家族を殺したのは私だよ。
  恨みがあるなら出ておいで。私の望みを叶えてくれたら、なんでも一つ願いを聞くよ。
  今は潰れたその劇場には1つの噂があった。

  狂った狐が劇をする。狂った狐が笛を吹く。
  興味本位で除いた者に、音色に釣られて来た者に、
  願いを叶えて破滅を届ける……そんな噂が。

  「なるほど…家族一緒に、ずっと暮らしていきたい……と?」
  「わかりました。あなた様のお望み、叶えましょう」

  恐れよりも希望が勝る。少年は願いを言った。
  狐は言った。こっちに来いと。
  境界線を越えた先に破滅が待つ事を知らずに、少年は足を踏み出した。

  「ビーストバインド NEW TESTAMENT」
  『人と魔物の境界線』  汝、己の獣と向き合わん。

■キャラクタ作成

●シナリオハンドアウト

PC1用ハンドアウト
クイックスタート:宵闇の探偵(新約・魔獣の絆 P36) カヴァー:探偵
エゴ:崎守優斗(さきもり・ゆうと) 関係:救済
  キミは探偵だった。お金を貰えば何でもやるが、何も貰えなくともおせっかいを焼いてしまう事がある。そんなキミだったからか、返り血で真っ赤に染まった小学生の少年を見つけた時、事情も聞かずに事務所まで連れて来てしまった。尋常じゃない事件が起こっている事はわかる。少年は崎守優斗と名乗った。



PC2用ハンドアウト
クイックスタート:法の番犬(新約・魔獣の絆 P42) カヴァー:自衛隊退魔部隊
絆:崎守優太郎(さきもり・ゆうたろう) 関係:尊敬
  自衛隊退魔部隊にキミは所属している。崎守優太郎は部隊の小隊長だった。彼は魔物であるキミに対して常に便宜を図り気遣ってくれた。彼の家族の団欒に呼ばれた事もある。――ある夜、キミは緊急出動を受けた。目的地に向かう途中、キミはどこに向かっているか気が付いてしまう……崎守隊長の家だった。



PC3用ハンドアウト
クイックスタート:月夜の夢魔(新約・魔獣の絆 P38) カヴァー:特になし
エゴ:崎守優希(さきもり・ゆうき) 関係:肉欲
  キミは友人のショーコさん(新約・魔獣の絆 P202)に頼まれて、一人の少女を家路まで帰す説得をするはめになった。少女の名前は崎守優希、今年中学一年生になった女の子で幽霊や妖怪を信じている子である。不思議と共感の持てる少女だった。少しだけ同じ世界の匂いがするのも気に入った理由の一つだ。



PC4用ハンドアウト
クイックスタート:守護天使(新約・魔獣の絆 P40) カヴァー:特になし
エゴ:狂芸師釣狐 関係:救済
  とある廃劇場にまつわる噂話、そんな都市伝説から生まれた魔物・狂芸師釣狐と戦ったのはいまから一ヶ月前の事だ。ギリギリまで追い詰めたが不意を付かれて逃げられてしまった。今だ釣狐の行方はわかっていない。ただ一つ解っているのは、奴は人間が狂う様を見るのが大好きだと言うことだ。



PC5用ハンドアウト
クイックスタート:鋼の戦士(新約・魔獣の絆 P50) カヴァー:正義のヒーロー
エゴ:街に住む者達 関係:守護
  いつものように街を巡回していると、風に乗って嗅ぎなれた匂いが漂ってきた……血の匂い。キミは急いで血の匂いがする方向へと向かった。そこはまさに地獄絵図だった。誰一人として生き残っていない殺人現場、しかも十字路に面した4軒の家全てから漂ってくる。街の平和が脅かされようとしている。キミの出番だ。


●クイックスタート/コンストラクション
  クイックスタートの場合、サンプルキャラクターの指定はハンドアウトを参照すること。コンストラクションにて作成する場合、ブラッドは自由だがカヴァーはハンドアウトに指定してあるカヴァーを優先する事。カヴァーを変更する場合はGMに相談すること。

●PC間の絆
  キャラクター作成が終了したら、各PLに各PCの自己紹介を行わせ、その後PC間の絆を結ばせる事。絆はPC番号順に取得する。PC1→PC2→PC3→PC4→PC5→PC1という順番である。

◆オープニング――

●シーン1:劇場の決闘

シーンプレイヤー:PC4
他PC登場不可
◆解説
  PC4のオープニング。魔物である釣狐との戦いのシーン。だが、偶然入り込んでくる子供に気を取られたスキに釣狐は逃げてしまう。会話が終了して釣狐が退場したら結末へ。

◆描写
  池袋のとある路地裏にその劇場はあった。 すでに潰れてから久しい劇場では、今、高らかに笛が吹き鳴らされ、やっと辿り着いた挑戦者を歓迎していた。
  目の前にはキツネの能面をかぶり古風な着物を着た魔物"釣狐(つりぎつね)"がいる。キミが劇場に入ってきたのに気が付き、釣狐は吹いていた横笛を置いた。
▼セリフ:釣狐
 「これはこれはPC2様」
 「まさか一人でこのわたくしと戦うと? 仲間はどうしたのです?」
 「おやおや、やはり連れて来たのではありませんか? これはまた、小さなお友達だ」
 「歓迎しますよ」
 「やれやれ、その甘さが命取りになりますよ。
   今回はこれぐらいで公演を中断致しましょう。次会う機会をお楽しみに……」
▼セリフ:子供
「え? 何?」
「うわあああああ!?」

◆結末
  劇場に釣狐の声だけが響き、そのまま気配が消えていく。 それから1カ月が経った。 いまだ釣狐は生きている。PC2に【SA:釣狐を倒す】を与えること。

●シーン2:迷子の少年

シーンプレイヤー:PC1
他PC登場不可
◆解説
  PC1のオープニング。血だらけの少年崎守優斗を拾い、彼が魔物の事件に巻き込まれている事を知る。

◆描写
  その日。キミはいつものように夜の散歩をしていた時だった。慣れた血の匂いにつられて行くと、壁に寄りかかるように血だらけの少年がいた。匂いからして大量の殺人だ。魔物がらみの事件だろう。やっかいなものだ……そう思いながらも、キミはその少年を事務所まで連れ帰ってしまった。
▼セリフ:崎守優斗
 「ぼく……崎守優斗って言います」
 「ごめんなさい。覚えてないんだ……どうしてぼくがそこにいたかも」

◆結末
  事件による一時的な記憶障害。朝になれば何か思い出すだろう。そう思って床についた。次の日、キミが目覚めると、テーブルの上には一枚のすべて平仮名で書かれたメモが置いてあった。事件はまだ終わっていない……彼がその中心にいる。PC1に【SA:優斗を助ける】を与えること。

●シーン3:幽霊を信じる少女

シーンプレイヤー:PC3
他PC登場不可
◆解説
  PC3のオープニング。半魔としての友人である学校の怪談幽霊ショーコさんから、勘が鋭くて魔物の世界を知りそうになっている少女を、家へ帰すように頼まれる。少女――崎守優希と会話をさせ、崎守家の現状を伝えたら家に行く途中で自衛隊の封鎖にあい足止めを受ける。

◆描写1
  小中高とエレベーター式の学校の屋上、友人のショーコさんに頼まれたのは、幽霊を信じる少女を家へ帰す事だった。確かにショーコさんには無理な事だが……いったい、どうやって自分が夜(22時である)の学校にいる理由を作ろうか……。振り向けばすでにショーコさんはいなかった。
▼セリフ:ショーコさん
 「どこにでも勘の鋭い子っているのよ……ちょっと私を見て核心に迫りそうなの」
 「もう時間も時間だし、一人で帰すのも心配だから、あなたがあの子を送って行ってあげれないかしら?」

▼セリフ:少女
 「ゆーれーさーん? 出ておいでーー?」
 「誰? 幽霊さん!?……じゃないね。警備員さん? それとも先生?」
 「そうか……そうだね、もうこんな時間だし、帰ろうかな……」

◆描写2
  少女は崎守優希と名乗った。今年中学にあがったばかりだと言う。昔から幽霊などが見える体質だったらしく、あまり友達はいないようであった。さらに最近は父親と母親の間で離婚の話が進んでいるらしい。だが、今日は弟の誕生日であり、いつも仕事で遅い父も、23時ごろにはバースディパーティの為に帰ってくるという。
  優希の言うとおり家へ向かっていると、軍服を来た数人に通行止めと言われた。この先で何かあったらしい。
▼セリフ:崎守優希
 「わたし崎守優希って言うの。ねぇ……幽霊っているよね? そう思わない?」
 (いると同意)「本当!? そうだよね! 絶対いるよね? うれしいなぁ信じてくれる人始めて♪」
 (いないと反対)「みんなそう言うんだもん! お父さんもお母さんも……絶対いるのにさ」
 「家には11時までに帰れれば良いの……今日は弟の誕生日だから、いつもは遅いお父さんも帰ってきて、
   11 時からパーティーなの。でも……お父さんとお母さん、離婚するって言ってギクシャクしてるから
   ……なんで仲直りしてくれないんだろう」

▼セリフ:自衛隊
 「これ以上は通行禁止です。これより先の区画は退去命令が出ました。ここに近づかないで下さい」

◆結末
  結局、その日優希を家へ連れて行くことはできなかった。いったい何が起こっているのか……少なくとも普通の自衛隊ではなかった。自衛隊退魔部隊……魔物の事件があったのかもしれない。それは優希に関係ある事なのだろうか。PC2に【SA:優希を守る】を与えること。

●シーン4:最後の笑顔

シーンプレイヤー:PC2
他PC登場不可
◆解説
  PC2のオープニング。自衛隊退魔部隊の自分のいる小隊の小隊長:崎守優太郎が、子供の誕生日という事で早く帰る。その日の夜、当直だったPC4に緊急出動が入る。仲間達と共に向かった先は崎守優太郎の家だった。

◆描写
  その日の夜。時刻は八時。やっと一つの事件が解決して全てを文字通り闇に葬り去り、その作業も一区切りというところで、直接の上司であり部隊の小隊長である崎守優太郎がやってくる。今日は下の子供の誕生日で早く帰るらしい。夜の当直は代わりにキミがやると申し出ていた。いつも世話になっているお礼だ。
▼セリフ:崎守優太郎
 「早く終わって助かったよ、これなら間に合いそうだ」
 「すまんなPC4、今日の当直を任せてしまって」
 「今度ウチに来い、きっと優希も優斗も喜ぶ」

◆結末
  その夜、キミは緊急出動の警報によって仲間達と車に乗り込んだ。先の事件の後片付け部隊が、帰り際にたまたま別の事件に遭遇したらしい。車を走らせているとどこかで見た風景に変わって行く。この道は一度来たことがあった。崎守隊長の家に呼ばれた道と同じだった。つまり……向かう先は……。PC4に【SA:事件を調べる】を与えること。

●シーン5:事件が俺を呼んでいる

シーンプレイヤー:PC5
他PC登場不可
◆解説
  PC5のオープニング。夜のパトロール中、事件の匂いを嗅ぎつけ向かってみれば、十字路沿いの4軒の家から大量の血の匂いがした。そのすべての家の住人が爪で引き裂かれたかのように肉片と化していた。

◆描写
  その日の夜。時刻は10時。街の平和を守るためのパトロール中だった。十字路にある4軒の家から大量の血の匂いを感じ取ったのだ。現場に急行していみれば、そこは血の海、肉の山だった。おそらくは魔物……爪によって4軒の家人全員が引き裂かれ肉片と化していた。
キミがゆっくり調べようとした矢先、重厚な車や武装した人間がやってくる。自衛隊退魔部隊……どうしてここにいるかはわからないが見つかるわけにはいかないだろう。
▼セリフ:自衛隊退魔部隊
 「これはどういう事だ……魔物の仕業だとしか思えん」
 「本隊に連絡、すぐに出動を要請しろ! ここの現場は俺達が封鎖する。ここへ通じる道をすべて封鎖だ」
 「死霊課には適当に言っておけ! お前達の出番じゃないってな!」

◆結末
  この街に魔物という悪が迫りつつある。街の平和を守るため、キミは活動を開始した。PC5に【SA:事件を調べる】を与えること。

◆ミドルフェイズ――

■展開イベント
  ミドルフェイズの最初に起こるイベントである。

●シーン6:釣狐暗躍

シーンプレイヤー:PC4
登場難易度:6(全員登場が望ましい)
◆解説
  釣狐を倒し損ねたPC4だが、閑静な住宅街を歩いているとき、屋根伝いにどこかへ向かい釣狐を目撃する。釣狐はPC4を事件の十字路へと誘導し、退魔部隊が出張っている事、事件の真相は生き残りの少年が鍵を握っている事を伝える。釣狐はPC4以外が登場していた場合、最後にレジェンドの≪名声≫を使ってから消え去る。

◆描写
  閑静な住宅街だった。そんな通りを一人で歩いている時、ふと気配に振り向けば、屋根伝いに釣狐がどこかへと向かっている。キミは全力で追う事にする。やがて自衛隊が封鎖している場所へと釣狐は入っていった。自衛隊が釣狐に発砲するがすぐに収まる。釣狐にやられたのだろう。キミが行くと自衛隊とは別に、その十字路沿いの4軒の家人全てが全滅している事に気が付いた。
▼セリフ:自衛隊退魔部隊
 「貴様、魔物か! 撃て! 撃て撃てーー!!」
 「うわーーーやられたーーー」

▼セリフ:釣狐
 「この現状……どう思われます? はっはっはっわたくしでは御座いませんとも……本当ですよ」
 「この事件の真相が知りたいのなら、この事件で唯一生き残った少年を探すのですね。
   彼が今回の舞台の主演ですから」
 「ただ、お気を付けた方がいい。今回の事件に当たっているのは自衛隊退魔部隊です。
   魔物の事件は関係者もろともすべてを抹殺、そして隠蔽する組織ですから」
 「あなたと退魔部隊、さて、どちらが先に見つける事になりますかね?
   それでは序幕はここまでと致しましょう。それではまた……」

◆結末
  この事件、少なからず釣狐が関わっているはずだ。キミは釣狐の言う少年を探すことにした。

■情報収集
  シーン6が終了すると事件の調査が可能になる。全ての情報イベントが終了したら収束イベントに移行する。 ●十字路の事件について
<情報:裏社会><情報:魔物><情報:警察>
5  崎守優希と崎守優斗の死体が足りない。生きているか不明だが行方不明だ。
11 全員爪で引き裂かれている。鬼や人狼、悪魔系統の魔物が爪を使ったのだろう。
13 死体の中に1体、魔物の死体が混じっている。その魔物は無抵抗に殺されたらしい。

●崎守家について
<情報:噂話><情報:ネットワーク><情報:魔物>
3  崎守優太郎とその妻は、結婚するとき妻方の親戚に猛反対されたらしい。
7  結婚後、十数年が経った現在、優太郎とその妻は離婚の相談中だった。妻の方が限界を感じているらしい   。離婚の事に子供2人は反対だった。
14 優太郎は隠していたが、妻は悪魔系の鬼族…… つまり半魔だった。だからこその結婚反対、結婚生活の   溝。

●狂芸師釣狐について
<情報:噂話><情報:ネットワーク><情報:魔物>
5  噂ではある電話番号に電話を掛けて――『きつねやきつね、お前の家族を殺したのは私だよ。
    恨みがあるなら出ておいで。私の望みを叶えてくれたら、なんでも一つ願いを聞くよ』と語れば、
    人に化け切れていない狐の魔物が現れて、交換条件で願い事を聞いてくれるらしい。そんな都市伝説。
7  池袋にある、今は潰れたとある劇場で、狂った狐が人を惑わす劇を行うという噂がある。
    どうもその劇の内容が先ほどの電話の噂と同じである。
9  ちなみにその狐、客が舞台に上がる……などの予定外の事が嫌いだという。

●シーン7:こちら側の世界

シーンプレイヤー:PC3
登場難易度:10
◆解説
  崎守優希が釣狐配下の黒子(P222の使い魔5グループ)に襲われる。この事で優希は魔物の存在を知りノウンマンとなる。ちなみに戦闘前に優希を気絶させる暇は無いが、HAを使う場合は許可した方がいいだろう。
  ちなみにシーン7〜9は重要で、かつ繋がっているシーンなので、なるべく一気にやってしまった方がいいだろう。

◆描写
  怪しい気配を感じて振り向けば、そこには幾人もの黒子が居た。こんな場所にいるのはあきらかに不自然だった。そう考えたとき、どこからとも無く釣狐の声が聞こえた。
▼セリフ:釣狐
 「まったく、まさか生き残りがいるとは思いませんでしたよ。
    予定外の配役には早々に舞台を降りてもらいましょうか」
 「黒子さん方、その少女を殺してください」

▼セリフ:崎守優希
 「え? なにこれ? 幽霊……本物?」
 「やっぱり……幽霊とかはいたんだ!」
 「魔物? 半魔? よくわからないけど……でも、PC3が味方なのはわかるよ!」

◆結末
  崎守優希がこちらの世界に足を踏み入れてしまった。これ以上巻き込むわけにはいかない。そう思いつつも、絆が強くなった気がした。

●シーン8:境界線を越えし者

シーンプレイヤー:マスターシーン
登場難易度:優希と共に登場する場合6。または優希がすでに他のPCと共に登場している場合も6。
◆解説
  目覚めた魔物の力に戸惑いつつ暴走している優斗。心は不安定で家族の助けを求めつつ、望みを叶えてくれるという釣狐の言った言葉を最後の希望と信じている。

◆描写
  曇り空の下。池袋の路地裏を一人の小学生ぐらいの少年が歩いていた。
  その足取りはおぼつかなく、ふらふらと糸の切れた人形のような足取りで……。
  そんな少年だったからか、向こうから歩いてきたチーマー風の3人組の1人にぶつかってしまう。

  「イテっ!? おい、がき! 今オレの足を踏んだだろう?」

  そんな大人の声に、少年はまるで聞こえていないようにそのまま歩き出す。

   「おい、人の話はちゃんと聞けって教わってないのかよ?」

  大人の男が少年を振り向かそうと肩に手をかけ、強引にこっちに向かせた。

   「ほれ、ちゃんと謝れたら許してやるよ」

  大人気ない行為に、残りの2人は苦笑を浮かべつつも、別段止める気もないようだった。
  そして少年の口から――

   「おまえら……うるさい……」

  たった一言。
  その瞬間、少年の肌が黒く硬質化し、手からは凶暴な爪が生え、口元からは牙が除いた。

  「ひっ!?」「なんだ!」「お、おい!!」

  それが、3人組が生きていて吐いた最後の言葉だった。路地裏は真っ赤に染まり、辺りには細切れの肉塊だけが散乱した。
  少年は辺りの光景を冷静に見渡すと、その瞳で自らの手を、返り血に染まった爪を見る。

  「この力はなに?
         ぼくはどうなっちゃったの……お父さん……お母さん……ねぇ教えてよ……優希お姉ちゃん……」

◆結末
  PCが登場した場合、優斗は逃げて行く。もし優斗を捕まえようとしたPCが居た場合、釣狐がHAを使ってでも妨害する。その後、最終幕への招待を宣言し、釣狐も消える。PCが登場しなかった場合、そのままシーン9へ。

●シーン9:人は人、バケモノはバケモノ

シーンプレイヤー:優希と一緒にいるPC
登場難易度:6
◆解説
  釣狐を見つけて後をつけると、優斗が人間を殺すシーンに出くわす。そこで優希が優斗が魔物化している事を目撃する。その後優斗は逃げ出し退場。優希とPCを会話させてシーン終了。

◆描写
  釣狐を発見し追跡したキミだが、角を曲がって路地裏に入った時に足を止めた、傍にいた優希が息を呑むのがわかった。目の前では魔物化した優斗が、人間3人をばらした瞬間だった。
▼セリフ:崎守優斗
 「おねえちゃん……? ぼく……変になちゃった……」
 「心配しないで……ずっと一緒に暮らすんだ……お父さんとお母さんと一緒だよ……」
 「また……すぐに会おうね……」

▼セリフ:崎守優希
 「優斗!? え? なにこれ? 優斗が……なんで!?」
 「ねぇ、なんで優斗はあんなになっちゃったの? 優斗は……優斗は人間なのに……」
 「ねえ! なんで!? 人は人でしょ!
    魔物は魔物じゃなかったの!? みんな別々の世界で生きていればよかったのに!!」

◆結末
  さすがに弟が魔物となっている事実は優希にとって重かったらしい、口を閉ざし何もしゃべらない。心なしか、自分たちへ対する視線が痛かった。

■集束イベント
  シーン10以降のイベントを順次発生させ行って行く。

●シーン10:自衛隊退魔部隊

シーンプレイヤー:PC2
登場難易度:6
◆解説
  自衛隊退魔部隊が優希と優斗の情報を得て2人の抹殺に動き出す。優希が人間の組織に匿われていない限り、かなり強硬に優希抹殺を優先させる。
最後に優斗(≪偽りの仮面≫で釣狐が化けている)が優希の手を引っ張り安全圏まで逃がしてくれる。ただ、退魔部隊を振り切ったところで、釣狐は正体をあらわし優希をさらっていく。

◆描写1
  退魔部隊支給の通信機が緊急の呼び出し音を告げる。
▼セリフ:退魔部隊隊員
 「PC2隊員、どこにいるんだ? これより十字路の事件の関係者を消滅させる。崎守優希と崎守優斗の2名だ」
 「2人の親は魔物だった事が判明している。事件の真相もそのどちらかが暴走した結果だと決定した」
 「これ以上の被害を増やさぬため、その2人を抹殺する。ただちに合流されたし」
 「我々が向かうのは○○(現在優希がいる場所)だ。現地に急行せよ」

◆描写2
  次々と襲い掛かってくる退魔部隊の隊員達、こちらから攻撃するわけにも行かず、なんとか逃げているが……その時だった。通りの角から優斗が顔を出し姉に手を伸ばす!
▼セリフ:退魔部隊隊員
 「いたぞ! 逃がすな!」
 「魔物の力が暴走する前になんとしても抹殺するんだ!」

▼セリフ:崎守優斗
 「お姉ちゃんこっち!」
 「早く! 急いで!」
 「脚本は変わったのです。あなたも大事な配役です。では皆さん、最終幕でお待ちしております」

▼セリフ:崎守優斗
 「優斗!?」

◆結末
  優斗の姿がみるみるうちに釣狐に変わって行く。驚きの表情の優希と釣狐の姿が朧に消えて行く。最後に行った釣狐の台詞……どうやら、劇場まで足を運ぶ必要がありそうだ。

PC全員に[SA:優希を救う][SA:優斗を救う][SA:釣狐を倒す]の3つSAの中から、
どれか好きなSAを渡すこと。

◆クライマックスフェイズ――

●シーン11:劇場突破

シーンプレイヤー:PC2
登場難易度:全員登場
◆解説
  シナリオ中に渡したSAを使うことで、釣狐のいる劇場のドミニオンに入る事ができる。劇場に到着すると大量の黒子が待ち構えているが、SAを使った場合は自由な演出で劇場内へと入る事ができる。

◆描写
  そこは池袋の路地裏に佇む廃劇場である、いまや近くに誰も存在せず、ただ劇場内から笛の音だけが響き渡ってくる。近づいてみれば、わらわわと黒子達が現れた。

◆結末
  黒子を蹴散らし劇場内へと入っていく。そろそろ幕引きの時間だ。

●シーン12:最終幕

シーンプレイヤー:PC1
登場難易度:全員登場
◆解説
  釣狐と決着をつけるシーン。
  舞台の上では優斗が優希を殺そうとしており、PCが入ってくると優斗はそれを一時中断し、先に邪魔になるPCを倒そうとする。同じように釣狐も舞台を盛り上げる最後の配役としてPC達に死ぬように攻撃してくる。PCと釣狐達の距離は10mである。
  なお、崎守優斗はFPが0になると[戦闘不能]になり、釣狐はもちろん[魔獣化]する。

◆描写
  劇場内に音楽が響き渡る中、優希を殺そうとしていた優斗の手が止まりキミ達の方へ向けられる。舞台袖から出現した釣狐が最終幕の開幕の宣言をする。戦うしかない。
▼セリフ:崎守優斗
 「お姉ちゃんも一緒に行こう、みんなで一緒に暮らすんだ……邪魔しないでよ。先に殺すよ……」

▼セリフ:釣狐
 「どうやら最後の幕に間に合ったようですね。では始めましょうか最終幕を!」
 「わたくしは優斗くんの願いを叶えて差し上げたのですよ。
   誰にも邪魔されない力を引き出し、誰にも邪魔されず家族で暮らしていける場所を教えてあげた」
 「もっとも、そこの事はあの世と言う人間が大半ですがね」

◆結末
 「さぁ、最後まで楽しませて下さい。
   劇はまだまだ続きますよ……例えこのわたくしという脚本家が居なくなろうとも
   ……あなたたち半魔がいるかぎり、この世界に人間がいる限り……」
 
釣狐は倒れ劇場も消滅していく。一つの都市伝説が幕を閉じた。

●シーン13:人と魔物の境界線

シーンプレイヤー:PC1
登場難易度:全員登場
◆解説
  優斗がどうなるか決定する重要なシーン。描写を読み上げPCにルールを説明して選択させること。絆を固定化してAGPを優斗に渡した場合、優斗はその愛により正気に戻り気絶する。なにもせずに優斗をほうっておいた場合、やがて退魔部隊がやってきて優斗を消滅(抹殺)する。それは優希を放っておいた場合も同じである。

◆描写
  優斗が再び舞台へと上がろうとしている。舞台にはテーブルが置いてあり、かつての団欒風景が再現されてあったのだろう……ただ純粋に……本当に願っただけだったのだろう。
▼セリフ:崎守優斗
 「ずっと……ずっと一緒に暮らしたかったのに……お父さん……お母さん……お姉ちゃん……」
 「ああ……ごめん……ごめんなさい……ぼくは……ぼくは………………」

◆結末
  これで優斗は救われたのだろうか? それを決めるのは他でも無い……自分自身だ。

■狂芸師釣狐
ブラッド:レジェンド/デーモン
能力値:      技能:
【体力】16/5 <耐性>2
【敏捷】8/2  <運動>1
【感情】21/7 <魔力>3
【知性】10/3 <知覚>3
【社会】10/3 <情報:魔物>1 <交渉>3
【FP】47(176)  【行動値】9  【愛】3  【罪】22
アーツ:
≪絶対先制≫2、≪飛行能力≫、≪都市伝説≫、≪クリフハンガー≫、≪コスチューム≫、≪次にお前は○○と言う≫、≪伝説の一撃≫、≪伝説の魔力≫、≪簒奪者≫、≪魔の射手≫、≪魔の力≫、≪不和の芽≫
HA:
≪うつろわぬ伝説≫、≪遠くからの声援≫、≪悪の華≫、≪グレイトフルデッド≫、≪スーパーアクション≫、≪死に至る病≫、≪死神の瞳≫、≪超魔の命≫

■崎守優斗
※基本ルールブックP248 付属シナリオ『終末の夢』NPC天城優也と同じデータを使用。

◆エンディングフェイズ――

  優斗や優希をどうするか……退魔部隊との交渉や、その他の組織との事前交渉をしておけば、その努力のかいがあって、優斗や優希は社会的に助かる事も可能である。具体的には訳有りの学生の面倒を見ている鳴沢学園に編入……という形が良いだろう。

●シーン14:半魔として

シーンプレイヤー:PC1(またはPC3)
登場難易度:他のPC登場不可
◆解説
  優斗と優希は鳴沢学園に編入する事となった。2人の登校シーンで日常が戻ってきた事を実感する。
◆描写
  優斗と優希がキミに挨拶して学校へと向かう。これでよかったのだろうか……不安はあるが迷いはない。少なくとも、2人が笑顔でいられるなら間違ってはいなかったはずだ。
  キミが立ち去ろうとした時、優希(もしくは優斗)がやって来て言った。

▼セリフ:
 「ありがとう、悲しいことがたくさんあったけど……それでも、がんばるから!」

◆結末
  今、新しい絆の物語が始まる。

●シーン:その他のエンディング

◆PC1
  壊れた劇場後を訪れる、新しい何かが建つのか、そこはすでに工事用のシートで覆われていた。一度壊れてしまったモノは決して元には戻らない。その帰り道、友達と談笑しながら下校する優斗を見る。一度壊れてしまったモノは決して元には戻らない。だから、新しい絆を作る努力を忘れてはならないのだろう。

◆PC2
  崎守優太郎隊長の墓の前に来ている。思い出されるのは良くしてくれた隊長の思い出ばかり。が、それは思い出であって過去なのだ。事件の報告と自分の決意を新た墓前に誓う。風の音にまぎれて、隊長の声が聞こえた気がした。それは気のせいか……それとも……。

◆PC3
  ある日、郵便上に一通の手紙が来ている。差出人は崎守優希だった。その手紙には最近の優斗の事、自分のこと、これからどうするか迷っていること、そして近々会えないかという相談が綴ってあった。

◆PC4
  街を歩いているとベンチに座っている若者が何やら噂を話している。また新手の都市伝説のようだ。人間がいる限りそういった噂には事書かない。けれど、人間がいるから今の自分がいるのだろう。

◆PC5
  いつもの夜のパトロール、嗅ぎ慣れた血の匂いを感じて急行する。平和が脅かされようとしている。そう、自分の出番だ!

◆アフタープレイ――

  これでシナリオは終了となる。ルールに従ってアフタープレイを行ってセッションを終了させる。「百年の虚読」にこのシナリオを使ったリプレイ『人と魔物の境界線』が載っている事を説明しても良いだろう。

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