ダブルクロス2ndシナリオ
『Double+Crystal』 ◆シナリオスペック 本シナリオは『ダブルクロス The 2nd Edition』に『ブレイクアップ』を適用して遊ぶことを前提としたシナリオです。プレイ時間は2〜3時間。プレイ人数は3〜5人。ステージは東京都近郊K市。◆プリプレイ ●シナリオハンドアウト PC1用ハンドアウトロイス:桐生月彦(きりゅう つきひこ) 感情:P:友情/N:嫉妬 Dロイス:賢者の石 クイックスタート:疾風の一撃(ダブルクロス2 P62) カヴァー/ワークス:高校生/UGNイリーガル 桐生月彦は君と同じUGNイリーガルとして一緒に任務をこなした事もある心許せる友人の一人だ。だが、突然彼は失踪してしまう。UGNからの情報に寄ればジャーム化して逃亡中とか。馬鹿な、そんなはずが無い! PC2用ハンドアウト ロイス:ゴッドアブソリュート 感情:P:執着/N:不信感 Dロイス:特権階級 クイックスタート:完全なる使徒(ダブルクロス2 P66) カヴァー/ワークス:指定なし/UGN支部長 キミはUGN中枢評議会のメンバーだ。なにやら同じ中枢評議会メンバーが不穏な動きをしているらしい。一般のエージェントでは手に余る事態だ。しかたがない、直接自分が出向こうか。 PC3用ハンドアウト ロイス:アース・クエイク 感情:P:有為/N:脅威 Dロイス:生還者 クイックスタート:紫紺の華(ダブルクロス2 P68) カヴァー/ワークス:研究者/指定なし UGNの研究施設――中枢評議会からやってきた男の命令で始まった研究は、日々着々と成果を上げていた。特に被験者である"アース・クエイク"は凄い。ついにあの『賢者の石』の力を引き出したのだから。 PC4用ハンドアウト ロイス:カミーラ=ワイズマン 感情:P:同情/N:恐怖 Dロイス:変異種(or複製体) クイックスタート:不確定な切り札(ダブルクロス2 P58) カヴァー/ワークス:高校生/UGNイリーガル キミはUGNの研究所で目を覚ました。何か不思議な感じがする……目の前の男――UGNのお偉いさんだったか――が言う……「どうやら目覚めたようだな」。その男はキミを"物"を見る時の目で見つめていた。 PC5用ハンドアウト ロイス:賢者の石 感情:P:好奇心/N:無関係 Dロイス:賢者の石以外で自由 クイックスタート:錆びついた刃(ダブルクロス2 P74) カヴァー/ワークス:探偵/指定なし キミの目の前には日下部仁という男が座っていた。彼からの依頼は――「賢者の石について調べて欲しい」――とのことだった。金払いは良い。それに探偵のカンが告げていた。こいつは裏がありそうだ……と。 ●PCの番号順にロイスと結ばせること。また、全PCに<情報:K市>を1レベル与えること。 ●ストーリー UGNの研究施設に、UGN中枢評議会より1人の男がやってくる。男の名はカミーラ・ワイズマン。別名ゴッドアブソリュート(絶対なる神)と呼ばれる男だ。彼は自らの権限で賢者の石について研究を始める。賢者の石の力に耐えられず死亡していく被験者達。しかし、ついに賢者の石の力を引き出した被験者がいた。桐生月彦…コードネーム<アース・クエイク>は、見事に力を引き出し一人のオーヴァードのレネゲイド・ウィルスを変異させる。だが、直後に桐生月彦は暴走状態に陥り、自らの手で自らに埋まった賢者の石を叩き割り逃走。 カミーラは割れた賢者の石を新たな被験者に試す事にする。しかし、新たな被験者は賢者の石の力を引き出せないでいた。カミーラは桐生が賢者の石の力を引き出した事がその後の暴走にも関係があると推測し、新たな被験者を暴走(レネゲイド・ウィルスを暴走)させようと実験を開始する。 そして新たな賢者の石の被験者が、桐生月彦の友人である事を知ると、カミーラは桐生月彦がジャーム化したと吹き込み、友人を自分の手で殺させようと画策する。それが一番レネゲイド・ウィルスを活性化させ、暴走への近道だと信じて。 PCたちはカミーラの固執した欲望を暴き、暴走した桐生月彦を止める事ができればシナリオ終了となる。 ◆オープニングフェイズ ◆神が望む石(マスターシーン) ◆描写:UGNの研究施設、強化ガラスの向こうでは碧色のクリスタルを埋め込まれた実験体が、ちょうど動かなくなった所だった。 「やはり、賢者の石から力を引き出せずに死亡か……」 スーツを着込んだ金髪の男が言う。美男子といって差し支えないが、その瞳はどこか無機質で人の感情を感じさせなかった。その男の後ろには高校生ぐらいの少年が立っていた。少年はガラスの向こうで起こった事を一部始終見つめていた。 「さて、私の言いたい事はわかるね。次はキミの番だ」 男は振り返りもせず、そう告げた。 「約束は守ってもらう。例え俺が死んでも行方不明になった姉さんは探してもらう」 「ああもちろんだ。神の御名に誓ってね」 ◆解説: 行方不明になった姉の捜索を引き換えに、自ら実験体へ志願する桐生月彦。その決意にカミーラは薄笑いを浮べる。なぜなら、カミーラのコードネームはゴッドアブソリュート(絶対なる神)――自らの名に何を誓うというのだ。 描写を読み上げたら、シナリオタイトルを告げ、シーンを切ること。 ●唯一無二の任務(PC2) ◆描写UGN中枢評議会。今、Uの字型に曲がったスクリーン上には、何人かの中枢評議会メンバーが写っている。もちろん、キミもその中の一人だ。 「レネゲイド・ウィルスの除去の為とは言え、ゴッドアブソリュートの研究は、少々強引過ぎる」 ◆解説 中枢評議会で持ち上がるゴッドアブソリュートの強引な研究。その研究の内容は「レネゲイド・ウィルスの除去」だが、仲間のオーヴァードを実験体にする等暴挙が目立つ。もっとも、それ以上の成果を上げている事も事実である。評議会のメンバーは日本におらず、PC2だけが現在日本に存在すると言う事を説明する。 シーン終了後、ゴッドアブソリュートへのロイスを結ばせること。 ▼セリフ:中枢評議会メンバー 「奴は今K市のUGN研究所にいるようだな」 「日本か……PC2、奴は我々と同じ評議会メンバーだ。並みの支部長レベルではどうにもなるまい」 「奴も我等と同じ志を持ってUGNに尽くしてきた男……疑うわけではない…が、何かあってからでは困る」 ◆結末 「キミがK市の支部長に収まるよう手回しはこちらでしておこう。緊急時はキミの方が権限は上だ。もっとも、奴は研究所のトップに収まっている。それを理由に横槍を入れてくるかもしれんが……上手く立ち回ってくれたまえ」 キミは通信を切り、K市へと向かった。 ●片割れ(PC1) ◆描写1クラスメイト達がたわいの無い話で雑談し、始業のベルが鳴るまでの大事な時間を無意味で大切なコミュニケーションで潰していた。 「おはよう! PC1! 昨日は本当大変だったな」 キミの机に寄って来て友達の桐生月彦が言う。彼の言う"大変だった"とは、昨日あったイリーガルとしての仕事の事だ。彼は日常の絆であり、非日常での相棒(イリーガル・オーヴァードとして)なのだ。 「ま、この光景を守るために、頑張んないといけないしな」 ◆解説1 友人であり相棒でもある桐生月彦との回想シーン。学校生活での日常と、それを守っている自分達の仕事について印象をつける。月彦との会話が終わったら描写2へ行くこと。 ▼セリフ;桐生月彦 「ったく、お前もそろそろ、俺がいなくても一人で戦えるようになれよな(からかいながら)」 「そう言えば、もう姉さんと同じ高校生なんだよな…俺」 「姉さんは4年前から行方不明なんだ。言ってなかったっけ? ごめん。あんま話たくない内容だったからさ」 ◆描写2 UGNのK市研究所。そこで今、キミは友人の桐生月彦が暴走する瞬間を録画映像で見ていた。 月彦が胸に輝く碧色のクリスタルを自らの手で叩くと、そのクリスタルは半分に割れ、その片割れが床に落ちた。 月彦が壁を壊して逃げていったところで、ちょうど映像が切れる。 「彼はキミの友人らしいな。どうだね、助けたいと思わないか?」 キミを呼びつけ、こんな映像を見せた張本人……カミーラ・ワイズマンがキミに向き直る。 ◆解説2 桐生月彦は自分でクリスタルを割るが、その半分はそのまま月彦の胸に残り、残り半分が床に落ちたということを説明する。カミーラはPC1へ、残ったクリスタルの片割れを体に埋め込めばクリスタルの共鳴反応で桐生月彦の居場所がわかると説明する。 シーン終了後、桐生月彦へのロイスを結ばせる事。 ▼セリフ:カミーラ 「これは賢者の石と言ってね。桐生君の胸に埋まっていたものだ。もっとも、さっきの映像のように桐生君が自らの手で割ってしまったので、ここにあるのはその片割れだが……」 「この石はお互い共鳴することがわかっている。しかし、その力を感じる為には人間の体に埋め込む必要があるのだ……私の言いたい事はわかるね」 「彼――桐生月彦君はレネゲイド・ウィルスの暴走で大変危険な状態だ。即刻見つけ出す必要がある。見つけるのが遅くなり、手遅れになれば……わかっているね。私達に選択肢が無い事は」 「そう、キミならそう答えてくれると思っていたよ」 ◆結末 その後、キミは賢者の石とやらを埋め込まれた。正八角形を真っ二つにしたような碧色のクリスタルが胸に半分同化していた。 「急ぐことをお奨めしよう。時間が経てば立つほど彼が助かる可能性が低くなる」 ●ウィルス変異(PC4) ◆描写 ●逸材者(PC3) ◆描写キミの目の前で奇跡が起ころうとしていた。誰も使いこなせなかった賢者の石を、この被験者は今まさに使いこなそうとしているのだ。 賢者の石を埋め込まれた被験者――桐生月彦がその手を一人のオーヴァードに向けると、そのオーヴァードの体がビクンとはねる。 「PC3さん! 実験体であるPC4のレネゲイド・ウィルスに反応有り! ジャネシフト……違う! 今までに見た事のないウィルスの変異です!!」 キミの横で、この計画の立案者である中枢評議会のメンバー――カミーラ・ワイズマンが笑った。 「桐生月彦……いや、コードネーム"アース・クエイク"。これは掘り出し物だ」 ◆解説 賢者の石を埋め込まれた桐生月彦が、事件体として連れてこられたPC4に対して、その石の力を使用する瞬間である。レネゲイド・ウィルスを変異させることができるなら、ジャーム化したオーヴァードを元に戻す事も、究極的に言ってウィルスを除去する事も可能かもしれないことを説明する。 しかし、賢者の石を使って少し経つと、桐生月彦は暴れ出し逃走してしまう。 シーン終了後、アース・クエイクへのロイスを結ばせること。 ▼セリフ:カミーラ 「素晴らしい。これを適合者(レセプター)と呼ぶのだろうな」 「なに? ウィルスの暴走だと? いや、ウィルスが侵蝕するからこそ使いこなせたのか……」 「PC3、ジャームの可能性はあるとは言え、彼の重要性は解っているな?」 ▼セリフ:一般研究員 「大変です! 賢者の石被験者・桐生月彦のレネゲイド・ウィルスの侵蝕率上昇が止まりません! このままでは!!」 ◆結末 一撃で研究所の壁が壊され、キミ達の見ている前でアース・クエイクは街の方へと逃走していった。 ●FHからの依頼(PC5) ◆描写探偵事務所の朝の一時、キミはインスタントコーヒーを片手に、いつものように新聞に目を通していた。 「キミが○○(コードネーム)と呼ばれるオーヴァードの探偵か」 突然声が聞こえ、そこに一人の男が立っていた。良く見れば男の後ろには何人もの黒服が控えている。キミに感ずかれずに入ってくるなど、その男のレベルは桁外れだった。 「そう警戒しなくていい。私の名はマスターレイス。探偵のキミに依頼をしたいだけだ」 男はそう言うと、返事も待たずに事務所のソファーに腰をおろす。 「賢者の石というものを知っているか?」 ◆解説 HFのエージェント。マスターレイスこと日下部仁から賢者の石について調べるよう依頼を受けるシーン。日下部は、K市にあるUGN研究施設で賢者の石の研究がなされ、その石を体に埋め込んだ適合者<レセプター>が生まれたとの情報を与える。 シーン終了後、賢者の石へのロイスを結ばせること。 ちなみにPC5がファルスハーツと敵対して依頼を受けないようでも、賢者の石についての情報だけは日下部の口から話しておくこと。 ▼セリフ:"マスターレイス"日下部仁 「最近、K市にあるUGN研究施設で、レネゲイド・ウィルスの除去実験が行われてな。どうやらそれに、賢者の石が使われているらしい」 「最新の情報では、その賢者の石を埋め込んだ適合者も生まれたとの話だ」 「探偵としてのお前の腕に期待している。 ◆結末 マスターレイスは用件だけ言って帰ってしまった。 キミは飲みかけのコーヒーを飲み干し、事務所を後にした。FHが動くほどのもの――賢者の石……調べてみるのも悪くない。 ◆ミドルフェイズ ■固定イベント ●対立(PC2) ◆描写キミはK市にあるUGN研究所に来ていた。K市支部の方へはすでに顔を出しており、一応、顔見せとして研究所にも行く旨は、支部を経由して伝えておいた。しかし、実際に研究所に言ってみるとUGNの研究員達は慌てふためいていた。 「おや、○○(PC2のコードネーム)じゃないか? こんな所で何をしている?」 ◆解説 PC2と"ゴッドアブソリュート"カミーラ・ワイズマンの邂逅シーンである。カミーラは研究に関することなので、自分達で対処するから支部は動かないで良いという。PC2がしつこく迫ってきた場合は、コンボ"そは従順なる愚者なり"を使って言う事を効かせる。ただし、ジャームが街へ逃げ出したという情報だけは伝える事。 ▼セリフ:一般研究員 「そ、それが、実験室から被験者が脱走してしまいまして……しかも、なにやら暴走しているようなんです。もしかしてジャームかも……」 ▼セリフ:カミーラ 「久しぶりだな。こんな極東の端っこであうとは思わなかったよ、こうやって直接会うのは初めてかな?」 「ああ、気にしないでくれたまえ、実験中のちょっとしたイレギュラーだ。こっちで勝手に処理できる。キミや支部の出る幕ではないさ」 「ちょっと被験者が一時的に混乱状態に陥ってね、そのまま壁を壊して街へ行ってしまっただけだ。すぐに正気を取り戻すだろうし、いざとなったら研究所の部下が追っている。何も心配は要らないさ」 ◆結末 カミーラの言葉に頷きながら、キミはいったん研究所を後にした。だが、一歩外に出てみれば、カミーラの言っていた事に矛盾を感じ出す。 ジャームが街へ逃げだしたのに、何も心配は要らない? 奴は何を言っているのだ!? ●共鳴反応(PC1) ◆描写キミが胸にある碧色のクリスタルに触れると、どこか別の存在を感じ取れる。共鳴現象……クリスタル同士が引き合っているのか? ◆解説 具体的な判定として、<RC>判定で10以上出れば、だいたいの方角がわかる。失敗すると、「近くにいる/いない」がわかるだけである。 ◆結末 キミはクリスタルの誘導するまま、街中を走り出した。 ●街中の戦闘(PC5orPC2) ◆描写1K市の繁華街。大通りをたくさんの人が歩いている風景が、一瞬にしてモノトーンに変わる。 ワーディングだ! そう思ったのも束の間、通りの向こうで巨大な何かを叩きつけたような音と、人とは思えない叫び声があがった。 ◆解説1 モノトーンの大通りを進むと、先の方で戦っている人物を見る。<知覚>7に成功すれば、それが桐生月彦であり、月彦と戦っているのは数十体のジャーム(ダブルクロス2nd P222のトループジャームの能力値に全て+5したもの(エフェクトは鬼の一撃Lv2))だとわかる。その場に追いつく前に、月彦は一言だけ叫んで逃げて行く。その後、数匹のジャームが月彦を追うが、残った数十体がPC達へ襲い掛かる。PC全員に出るよう進めること。また、この時の戦闘で、ジャームの攻撃を避けた場合、モノトーン状態とは言え、一般市民に危害が加わると説明して、PC達を不利に陥らせましょう。ジャームを全員倒したら描写2へ進むこと。 ▼セリフ:桐生月彦 「俺を追ってくるな! これは俺の問題だ! 誰にも頼らず一人で解決する! PC1……すまない、わかってくれ!」 ▼セリフ:キュマイラジャーム 「オマエラ・ジャマ・シネ」 ◆描写2 ジャームを倒すとワーディングが消え。大通りにいつもの活気が戻った。 「遅かったか……」 振り向けば、そこにはカミーラが立っている。 ◆解説2 カミーラはすでにFHとも契約しています。桐生月彦の賢者の石はHF(正確には日下部仁)が、PC1の賢者の石はカミーラが頂く条件です。カミーラは誰か怪我をした人がいたら治そうと宣言します。特にPC1が怪我をしている場合は、何も言わずに怪我を治します。使うエフェクトはコンボ"そは神の尖兵なり"です。つまり3点しか回復しません。が、PLが同意するなら全快しても構いません。 最後に、PC1に<RC>7以上の判定をさせ共鳴が感じられるかだけやります。失敗しても以降のシーンで不都合はありません。 カミーラはいったん、この繁華街の処理をすると言ってこの場に残ります。 ▼セリフ:カミーラ 「どうやら逃げられてしまったようですね。PC1、共鳴は感じますか?」 「誰か怪我をした人はいませんか? 私が治療してあげましょう」 (PC1が怪我をした場合、無言でダイスを振って)「いえ、あなたに死なれては困りますから」 ◆結末 やはり"ゴッドアブソリュート"には裏がありそうだ。なんとか暴いてやりたいが、今はジャームの方が危険な状態だった。 ●橋上の邪魔(PC3) ◆描写K市にあるK橋の上で、ついに"アース・クエイク"桐生月彦を見つける。今は落ち着いているのか、橋の上からじっと川を見つめていた。 ◆解説 PC達と会話をさせる事。自分の姉が行方不明である事を説明したら、突然月彦は苦しみだし、エフェクトを使って橋の柱の一つをぶっ壊し、暴走が始まりPCに攻撃を仕掛ける。PC1が動きそうになったら、カミーラのコンボ"そは従順なる愚者なり"を使って、PC1を押さえつけるようにPC全員に命令する(PLが5人の場合は、PC以外の4人にかける)。または月彦が攻撃された場合も同じコンボを使って、未行動状態のPCにカヴァーリングさせます。 PCの誰かがPC1を押さえつけたら、その隙に暴走した月彦は橋の床をぶっこわして川へと落ちていく。 ※PC4のDロイスが複製体の場合、桐生月彦とPC4は初めて顔を合わせる事になります。月彦はPC4の顔を見ると一瞬逡巡しますが、すぐに我に返ります。 ▼セリフ:桐生月彦 「俺……姉さんと2人家族なんだ……でも、ずっと姉さん帰ってこなくて……UGNで調べて欲しいって言っても、それどころじゃないって断られて……」 「うう……ぐああああああ!!!」 「(橋から落ちながら)――ごめんPC1……俺、もう……」 (PC4が複製体の場合)「姉さ…いや違う。あんたは誰だ?……まぁいいさどうせ他人の空似なんだ……」 ▼セリフ:カミーラ 「待ちたまえ!!!」 「すまない、PC1君が桐生君を殺しかねない勢いだったのでな」 「私としても、できるだけ殺さずに彼を回収したいのだよ……」 ◆結末 "アース・クエイク"桐生月彦は川へと落ちた。一度、情報を整理した方がいいかもしれない。この一連の事件どうも妖しすぎる。 ■情報収集 ◆"アース・クエイク"桐生月彦<情報:UGN、噂話、K市>6 ・UGNのイリーガルでシンドロームはキュマイラピュアブリード。 ・一瞬で大地を割るほどの攻撃力からこのコードネームがついた。 ・両親はおらず4歳年上の姉と2人家族。姉の名前は桐生菜月。 ・4年前から姉が行方不明らしい。姉を探しだすことが月彦の目的である。 ・賢者の石の被験体には、姉の捜査を引き換え条件にして承諾した。 ・賢者の石の力はすでに解放しており、その時、PC4のレネゲイド・ウィルスを変異させた。 ◆"ゴッドアブソリュート"カミーラ・ワイズマン <情報:UGN、裏社会>7 ・賢者の石……しいてはレネゲイド・ウィルスの撲滅の為には手段を選ばない。 ・その言葉は神の如く、一切の反論を許さない。そこでついたコードネームが"ゴッドアブソリュート" ・UGN中枢評議会まで上り詰めたが、その絶対的な能力と、手段を選ばぬやり方に、どうやら避けられている。本人も評議会から煙たがられている事を薄々勘付いている。 ・PC1に賢者の石の本当の力を引き出させたいらしい。 ・研究を続けるために、転職を考えているらしい。どこに行くつもりだろうか??? ◆桐生菜月 <情報:警察、裏社会、K市>5 ・4年前前から行方不明である。 ・家事全般をこなし、4歳離れた姉であり月彦の母親役までこなしていたらしい。 ・UGNのどこかからか警察には圧力がかかっており、警察は彼女の行方不明事件を無かった事にしている。 ◆桐生菜月の行方不明事件 <情報:裏社会、UGN>8 ・実はオーヴァードの素質を持っており、賢者の石の適合者<レセプター>である。 ・警察に圧力をかけているのはカミーラ・ワイズマンである。 ・事件の真相は行方不明では無く、FHによる殺人事件である。 ・菜月はすでに殺されており、その目的はどうやら賢者の石に関係していたようだ。 ◆賢者の石 <情報:UGN、裏社会>7 ・碧色の光を放つクリスタル。 ・レネゲイド・ウィルスを変質させる特徴をもっており、その本当の力を引き出す事ができれば、死者を生き返らせる事(リザレクトの強化版のように)さえ、できるようになるといわれている。 ・その力を引き出すためには適合者<レセプター>と呼ばれる選ばれた存在が、体に埋め込む必要がある。 ・賢者の石の力を引き出す為には、レネゲイド・ウィルスとの結合性が必須であり、体を侵蝕されている比率が大きいほど、その力を引き出せる。具体的な使用方法はゴッドアブソリュートが独占しているので、直接聞き出す必要がある。 ◆FHの狙い <情報:UGN、裏社会>6 ・"マスターレイス"日下部仁の命令で、賢者の石を探している。 ・桐生月彦の賢者の石を狙っているらしい。 ・UGNの誰かとつながっているのか、今回に限って情報が異様に早く伝わっている。 ■トリガーイベント ●裏取引(マスターシーン) ◆描写薄暗いバーの片隅で、スーツ姿の男が2人、声を潜めて話していた。 「――と、いうわけで、こちらはもう目的は果たせた」 シュボッ! 男は煙草に火をつける。ライターの光で右手の甲が照らされる。そこには半分に割られた碧色のクリスタルが埋め込まれていた。 「アース・クエイクのものを奪ったのか」 「桐生菜月のモノは私と相性が悪くてな。こっちは意外と馴染んでいる。少々小さいのが気にはなるが……まぁ、ゆっくり成長させればいい」 煙草をくゆらせ、男が余裕の笑みで言い放った。 「マスターレイス、お前が何を目的としているかは知らん。だが協力は最後までしてもらうぞ」 「ああ、かまわんさ」 「では部下を20名ほど、それとアース・クエイクを都合してくれ。クリスタルを奪ったという事は、奴も捕まえたのだろう? それとももう、死んだか?」 「いやまだ生きている、研究材料に回そうかと考えていたが……まあいい。これさえあれば問題はない。だが、私がこれを奪ったせいで、奴はそろそろ限界が来る」 「そうだな。だが、彼にはまだ神の尖兵としてやってもらわなければならない役目がある。……ではまた会おう。次はお互いFHという組織の中でな」 ◆解説: ここはマスターシーンである。マスターレイス日下部仁は、桐生月彦の賢者の石を奪っており、そのせいで月彦にタイムリミットが迫っている事を示すシーン。また、日下部の話し相手はカミーラである。UGNの内通者であるカミーラは、これを機にFHへと寝返ろうとしているのだ。 ●K市支部壊滅(PC2) ◆描写今、UGNK市支部はFHによって突然に攻め込まれていた。 入り口に付いている監視カメラの映像によると、どうやら入り口を警備していた部下達が、敵を招き入れたらしい。 「PC2さん! 応援の要請はすでに終了しました、ただ……持ち堪えられるかどうか……」 ◆解説 PC2のいる部屋に、ジャームが10体ほどなだれ込んで来る(データはダブルクロス P222のジャームのデータに、全ての能力値に+10、鬼の一撃Lv1、竜燐1Lvを持たせたもの)。他のPCに登場をうながすこと。UGNのK市支部詰めのオーヴァード達によって、10名ほどは倒されている、襲ってきたのは合計で20名ほどのジャームだったらしい。 また、この時PC1には直接カミーラから電話があり、支部の支援に行くように連絡が入ったとの旨を伝える。 戦闘後、重症状態のUGN支部員から研究所のゴッドアブソリュートが、戦闘中なのに悠々と屋上への階段を上っていったという話を聞く。 時間が無い場合、ジャームは街で暴れている事にして戦闘を行わなくても構わない。 ▼セリフ:UGN部下 「私見たんです。皆が戦っている横を、研究所のゴッドアブソリュートが屋上へと上がって行くのを」 ◆結末 嫌な予感がする。ゴッドアブソリュート……何を企んでいる。 ◆クライマックスフェイズ ●覚醒への導き(PC1) ◆描写1K市UGN支部屋上。そこからは夜の街並みが見下ろせた。 「綺麗な輝きを放っているな。人の営みが輝いている……そう思わないか?」 「私はその輝きを守りたい。レネゲイド・ウィルスという闇から……ね」 ゴッドアブソリュートはいつにもなく真摯に言葉を紡いだ。だがそれが、逆に底知れぬ何かを感じさせた。 ◆解説1 屋上で何かを待っているカミーラ。PC達がくると自分の目的について語る。その後、PC1に、世界のために自分の命を研究に差し出すつもりは無いか? と聞き、その答えがNoだった場合、描写2へ。Yesだった場合、PC1はカミーラに連れられて死亡、バッドエンドである。GMは好きにエンディングを演出する事。 ▼セリフ:カミーラ・ワイズマン 「レベゲイド撲滅のため、PC1…キミの命を研究に差し出して欲しい」 「キミの尊い犠牲があれば、この人々の営み…その輝きを消さないですむんだ」 「そうか……どうやらキミは愚か者のようだな……」 ◆描写2 バラバラバラバラ――ヘリコプターが屋上上空にやってきて、大きな何かを落として行く。木箱は落ちた衝撃で砕け、"中に入っていた"ものが投げ出された。それは虚ろで意識を失っていたが……確かに、桐生月彦だった。 「起きたまえアース・クエイク……姉を助けたいのだろう?」 ゆらりと立ち上がる月彦。その目はあきらかに常軌を逸していた。 「(PC1に)今私が手を施せば、まだ彼は助かるだろう……さて、私の言いたい事はわかるね?」 ◆解説2 桐生月彦を助けたければ、PC1の命を研究に捧げよ――と交換条件を突きつけるカミーラ。PC1が断ったら、"目覚めよ神の名の元に"を使用してから、戦闘に突入する。 戦闘に突入する前に、月彦が雄叫びを上げ衝動判定をする。その後シーンを変えて戦闘に入る。 "ゴッドアブソリュート"カミーラ・ワイズマンは、"そは神の尖兵なり"を使って、毎ターンPC全員の侵蝕率を上昇させる。あまりに怒った時だけ"神の名において愚者に裁きを"を使い攻撃する。 "アース・クエイク"桐生月彦は何の説得も通じずフルパワーで常に攻撃を繰り返す。その攻撃目標はランダムである。 カミーラが倒されれば結末にうつる。 ▼セリフ:カミーラ・ワイズマン 「神に歯向かうか……知っているか、レネゲイド・ウィルスはお互いがお互いに反応し、それぞれの侵蝕率を高めあうのだ(オーヴァードのいるシーンに登場すると侵蝕率があがるという例を出してもいい)」 「PC1の侵蝕率を上げるために、PC3たち、お前達にも協力して貰おう。――"目覚めよ神の名の元に"」 「さぁ始めよう。PC1…どこまで自我を保てるかな?」 ▼セリフ:"アース・クエイク"桐生月彦 「ガァアアアアアア!!!」 ◆結末 「なぜ理解しない……レネゲイド・ウィルスは撲滅させねばならない……何に変えても……どうして……」 カミーラ・ワイズマンは信じられないという顔で倒れ伏した。 ■DATA:カミーラ=ワイズマン ●シンドローム:ソラリス/オルクス●コードネーム:ゴッドアブソリュート ●能力値 技能 【肉体】13 <回避>2 【感覚】6 <知覚>2 【精神】7 <RC>10 <意志>10 <知識:レネゲイド・ウィルス>10 【社会】3 <交渉>10 <情報:UGN>5 【HP】40(90) 【イニシアチブ】19 ●侵蝕率:150%(ダイス+6) ●取得エフェクト: <完全なる世界>2、<要の陣形>2、<領域調整>1、 <ファクトリー>2、<抗いがたき言葉>3、<声無き声>2、<錯覚の香り>2、<ヨモツヘグリ>2、<絶対の恐怖>2、<忘却の彼方>1 <ナーブジャック>1、<戸惑いの一撃>2、<オーヴァードーズ>1、<ヴァイタルアップ>1 ●コンボデータ ★コンボ名:"そは神の尖兵なり" <ヨモツヘグリ>+<ファクトリー>+<要の陣形> ラッパの音がする春の野原の幻影を見せる回復攻撃、<RC>で判定し、ダイス13個、クリティカル7値、 4人まで攻撃可能、判定結果が15を越えれば発動する。対象のHPを3点回復。[昏倒]や[気絶]も回復する。対象の侵蝕率が2D10増加する。 ★コンボ名"神の名において愚者に裁きを" <絶対の恐怖>+<領域調整>+<要の陣形> 心の奥深くに言葉が突き刺さる攻撃、<交渉>で判定し、ダイス13個、クリティカル値8、攻撃力+3、4人まで攻撃可能、対象は<意志>で対決、装甲値無視。 ★コンボ名:"目覚めよ神の名の元に" <ナーブジャック>+<戸惑いの一撃>+<完全なる世界>+<ファクトリー>+<要の陣形>+<オーバードーズ> 周囲が白い世界へと変わり、神と思しき声が響き渡る洗脳攻撃、<RC>で判定し、ダイス20個、クリティカル値7、6体まで攻撃可能、対象は<意志>で対決、対象は抵抗判定に−5個のダイスペナルティ、対象は抵抗判定のクリティカル値+1。本来の効果ではシーン終了か対象が昏倒するまで持続するが、本シナリオでは1度使用して"やりたい事"をした後は、自動的に効果が切れるものとする。 ★コンボ名:"そは従順なる愚者なり" <抗いがたき言葉>+<声無き声>+<錯覚の香り>+<領域調整>+<完全なる世界> モノクロの世界で次に自分がやるべき事を指示される洗脳攻撃、<交渉>で判定し、ダイス基本20個、クリティカル値8、4体まで攻撃可能、対象は<意志>で対決、対象は抵抗判定に−3個のダイスペナルティ、対象は抵抗判定のクリティカル値+1、対象はあなたの言葉を真実だと思い込む。1シーン持続。 ■DATA:桐生月彦 ●シンドローム:キュマイラ/キュマイラ●コードネーム:アース・クエイク ●能力値 技能 【肉体】6 <白兵>4 <回避>2 【感覚】2 <知覚>2 【精神】4 <意志>2 【社会】2 <情報:UGN>2 【HP】20(70) 【イニシアチブ】8 ●侵蝕率:150%(ダイス+6) ●取得エフェクト: <鬼の一撃>1、<完全獣化>3、<獣の力>3、<銘無き刃>3、<フルパワーアタック>3、<神獣撃>3 <魔獣の証>3、<復讐の刃>1、<竜鱗>3、<ヴァイタルアップ>1 ●コンボデータ <鬼の一撃>+<獣の力>+<銘無き刃>+<フルパワーアタック>+<神獣撃>(+<完全獣化>) 何の変哲も無い右腕でのパンチ攻撃、マイナーで<完全獣化>後、<白兵>で判定し、ダイス20個、クリティカル値8、攻撃力+59、相手の防御行動に−3のダイスペナルティ。イニシアチブは0になる。 ●変異せし力の片鱗(PC1) ◆描写「うう……PC1……」 月彦の体が脈打つ、レネゲイド・ウィルスがその限界を超えてリザレクトを繰り返している。だが、その力もレネゲイド・ウィルスの消滅と共に収まっていく。それはつまり、月彦の命が尽きるということ。 その瞬間、PC1の胸に埋め込まれた賢者の石が光り出した。 ◆解説 月彦は一瞬だけその意志を取り戻す、だが、その命が尽きるのは時間の問題だ。その時、PC1の賢者の石が碧色の光を放ち、その本当の力…その片鱗を解放する。 (200%−現在のPC1の侵蝕率%)を目標値としたD100判定を成功させる必要がある事をPC1のPLに告げること。またジェネシフトを今の段階で起す事も可能なことを告げる。 成功すれば、数人単位ならどんなことを起こしても構わないことを伝える(例として「月彦を生き返らせる」「PC全員の侵蝕率を50%分だけ消滅させる」など)。 この判定に失敗した場合、「タイタスを使用して達成値を上げることが可能」と説明する。 例: PC1の侵蝕率が150%だった場合。200%−150%なので50%が目標値となる。D100判定でPC1が振った値が49だったとすると、判定は失敗である。だが、ここでタイタスを消費し1D10振り足す…結果、タイタスの振り足しは7だったとすると、達成値は49+7なので56となる。これで賢者の石の本当の力は解放される。 賢者の石の本当の力を使おうとした場合、力の解放判定に成功しても失敗しても、PC1の賢者の石が消滅する。 ▼セリフ:賢者の石 「………………」 ◆結末 碧色の光が収まると共に、胸にあった碧色の石は光となって消えていった。すべてが元に戻ったのだろうか。 ◆エンディングフェイズ ●親友との会話(PC1) ◆描写「おいPC1! なにボーっとしてんだ?」 キミの横で桐生月彦が笑った。 ◆解説: オープニングのように月彦とのシーン。任務に向かうシーンでも、学校での日常会話でも構わない。 ただ、月彦の生死によって、それが回想シーンなのか現実のシーンなのかが変わってくるだろう。 ●アクシズ(PC2) ◆描写「さすがPC2ですね」 UGN中枢評議会へと無事、キミは帰還を果たした。 「実は"アースクエイク"から奪われたと思われる賢者の石の行方が見つかりました。FH幹部…マスターレイス日下部仁……どうやら、それに関わる事件が日本のK市で起ころうとしているようです」 ◆解説: UGN中枢評議会へと帰還するも、賢者の石の片割れをFHのマスターレイスに奪われた事を説明される。PC2がそれを事後処理として解決しに行くかどうかはPL次第である。 ●序章(PC3) ◆描写K市UGN研究所……今ここは再び繰り返される日常へと戻って来た。 「おい、知ってるか? 海外から天才と呼ばれる研究員がここにやってくるんだってさ、まだ20歳の女性らしいよ?」 やれやれ…神の次は天才か……せめて、非日常は一緒に来ないで欲しいものだ。 ◆解説 全てが元通りになるUGN研究所。しかし、次は天才がやってくるとの情報がある。やってくるのは国東いずみ(ブレイクアップ P33)である。PC3の心配とは関係無く、K市は再び事件に巻き込まれる。が、それは後日談であり「ブレイクアップ」のキャンペーンシナリオを参照とする。 ●日常の輝き(PC4) ◆描写ビルの屋上から街中を見下ろす。 レネゲイド・ウィルスは確かに世界に闇を落としているかもしれない。この輝きも、いくつもの犠牲の上に成り立っているのなら、カミーラの言った事もあながち間違いではないのかもしれない。 だが、――もう一度街を見回すと、キミは屋上を後にした。 ◆解説 事件が終わり、カミーラが目的としていた事を思い出すシーン。戦争や食物連鎖、犠牲は現在の命がある上で常に必要となってきた。だが、それは結果であり、その決断が最良であったかどうかは誰にもわからない。 ●悪は静かに(PC5) ◆描写あのあと、キミのもとへ依頼料が振り込まれていた。最初に提示された額より大きかったのは気にしないでおく。何も音沙汰が無いと言う事は、FHの計画は頓挫したのだろうか? いや違う。キミのカンが告げていた……終わったのではない。これから始まるのだ……と。 やれやれ、また忙しくなりそうだ。 ◆解説 FHが動くとなれば、UGNからの依頼は否応が無しに増えるだろう。 ◆アフタープレイ ●ダブルクロス 2nd p130を参照する。 |