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ダブルクロス2ndシナリオ

『False Flare』

◆シナリオスペック

本シナリオは『ダブルクロス The 2nd Edition』に『アルターライン』を適用して遊ぶことを前提としたシナリオです。プレイ時間は2〜3時間。プレイ人数は3〜5人。ステージは『アルターライン』に掲載されている<魔街(デモンズ・シティ)>です。

◆プリプレイ

●シナリオハンドアウト

PC1用ハンドアウト
ロイス:マサキ 感情:P:執着/N:悔悟
クイックスタート:不確定な切り札(ダブルクロス2 P62)
カヴァー/ワークス:指定無し/指定無し
  ジャーム化し行方を眩ませた親友の天城義久を探してキミは魔街へとやってきた。 そこで出会ったマサキという男。彼はその細かな仕草まで親友そっくりだった。しかし親友は……いやマサキは、過去の記憶を失っていた。
  ※年齢制限あり、シナリオ中に出てくるライオットに入るため、19歳以下であること。



PC2用ハンドアウト
ロイス:高遠ユカ(たかとう ゆか) 感情:P:幸福感/N:不安
クイックスタート:縛られぬ魂(アルターライン P62)
カヴァー/ワークス:なんでも屋/ボディーガード
  キミとその姉であるユカは元々ライオットに所属していた。しかし姉の恋人が死んで以来、彼女は無気力になりチームを去った。その姉が最近は明るくなってきた…それはマサキという男を拾ってきてからだった。
  ※ライオットのOB/OGであるため、27歳以下が推奨される。



PC3用ハンドアウト
ロイス:綾小路月乃(あやのこうじ つきの) 感情:P:同情/N:隔意
クイックスタート:正義の執行者(アルターライン P64)
カヴァー/ワークス:GPO班長/GPO班長
  市街で起きているとある新薬の連続強奪事件。その巧妙さ、強引さからケースRに認定された。GPO隊長の神野雅彦から命令が下る。今回はGPO第10班班長の綾小路月乃と共に任務にあたるらしい。



PC4用ハンドアウト
ロイス:エクリプス 感情:P:好奇心/N:無関心
クイックスタート:侵入者(アルターライン P68)
カヴァー/ワークス:指定なし/UGNエージェントC
  キミはこの魔街にUGNの基盤を作る為に送り込まれたエージェントだ。この度、UGNが技術提携した新薬が強奪されているらしい、UGNからの極秘情報によれば犯人のコードネームはエクリプス。キミの出番だ。



PC5用ハンドアウト
ロイス:マサキ 感情:P:友情/N:脅威
クイックスタート:天使の卵(アルターライン P71)
カヴァー/ワークス:指定無し/天使たちの家A
  最近この魔街へやってきた男がいる。その人はマサキと名乗った。彼は記憶を失っていたが、それでも明るく優しかった。けれどキミは漠然と不安を感じる。底知れぬ何かを……彼から感じるから。

●PCの番号順にロイスと結ばせること。また、全PCに<情報:魔街>を1レベル与えること。

●ストーリー

かつてUGNイリーガルであった天城義久は戦いの最中ジャーム化して暴走、行方を眩ませた。しかし、彼は生き続け魔街で倒れる。それを救ったのが高遠ユカだった。ユカは義久にかつての恋人の面影を見て、市街で出回っているウィルス抑制剤を投与しジャーム化から義久を救う。しかし、抑制剤には副作用があり義久は全ての記憶を失ってしまう。好都合とユカは義久にマサキだと刷り込み、かつての幸せを取り戻す。

一方、市街では外部組織であるUGNが非公式に技術提携したウィルス抑制剤が連続で強奪される事件が起こっていた。犯人はアザーズだと決めつけ捜査に乗り出すGPOの面々。しかし、真の犯人はGPO第10班班長綾小路月乃だった。マサキのジャーム化を押さえる為に抑制剤を必要とした高遠ユカに、綾小路は薬を横流しし、その見返りにスラムの情報を手に入れていた。そして、その最終目的はスラムへ罪をなすりつけ、スラムに住むアザーズ全てを抹殺する口実を得る事だった。

PCたちは綾小路の極論的な計画を暴き、スラム全てを抹殺しようとしている綾小路を止める事ができればシナリオ終了となる。

◆オープニングフェイズ

●魔の巣くう街の片隅で(マスターシーン)

◆描写:
  非登録市民の住まう場所(スラム)の一角。震夜で倒壊したビルが瓦礫と化したその場所で、魔街では当たり前の風景が繰り返されていた。すなわち……オーヴァード同士の戦闘。
  激しく耳打つ轟音、肌をチリつかせる熱波、普通ではあり得ない空間を解した攻撃とプレッシャー。
  登録市民の住む市街ならともかく、GPOの支配も無いここでは日夜こんな戦闘が繰りかえされる。
  そしてその戦闘も、押し寄せる波が引いていくように、終焉を迎えていた。
  1人の女が後ろに控える男をかばいつつ、目の前の敵に殺気のこもった瞳を向ける。しかし、眼前の敵は余裕の笑みさえ浮かべ、言った――
「そこまでしてかばうとは……その男、よほど大切な者なのですね。ではどうでしょう? 一つ、取引を致しませんか?」
  戦況は圧倒的に女に不利だった。後ろの男をかばいながらの戦闘では、どうしても後手に回らざるを得ない。
「これ以上闘いを続ければ……わかりますね?」
  女がギリリと噛み締める。敵の言う事は確かだ……このままでは2人とも殺されるだろう。
「そう悪い話ではありませんよ。あなたにとっても、後ろにいる男にとっても……ね」
◆解説:
  GPO第10班班長綾小路月乃と高遠ユカの攻防。ユカはマサキを庇いながら戦った為不利である。戦いの理由は、市街へ運び込まれるウィルス抑制剤を、ユカが強奪するという情報を得た綾小路が、先手を打って攻撃した場面である。しかし、ユカがジャーム化の危険があるマサキの為に薬を必要としている事を綾小路は見抜き、取引を持ちかける。それは薬を見逃すかわりにアザーズ達の情報を売る事である。
描写を読み上げたら、シナリオタイトルを告げ、シーンを切ること。

●その街の名は(PC1)

◆描写
  あの日、俺が意識を取り戻した後、何があったかを全て知った。俺を助ける為、親友の天城義久がジャーム化しそして行方を眩ませた事を……。親友を探して数ヶ月が経った。これ以上どこを探せと諦めかけていた時、不意に知らない男の声で携帯に電話があった。
――『かつてY市と呼ばれた街へ行きなさい、魔街と呼ばれるその街へ……』――
◆解説
  ジャーム化した親友を探しているPC1は、謎の人物から親友は魔街にいると教えられる。魔街へはストレンジャーズの包囲網を突破する必要があるが、演出で突破した事にしてかまわない。重要なのは、魔街へ到着してから親友である天城義久とそっくりなマサキという人物に出会う事である。マサキが自分は天城義久なんて人物ではないと否定したらシーンを切ること。
  シーン終了後、マサキにロイスを結ばせること。

▼セリフ:高遠ユカ
  「まだ死んじゃいないようだね、こんな所で見つけたのも何かの縁だ。あんた、運が良かったね」
  「気がついたかい? リザレクトさえ効果が無いほどの傷だったからね。私の名前は高遠ユカ、感謝しなよ?」

▼セリフ:マサキ
  「僕の顔に何かついてます?」
  「ほら、ユカさんに言われて作っておいたんだ。確か○○は大好物だろ?」
  「あれ? なんでそんな事知ってるんだろうな? 初めてあった人なのに(笑)」

◆結末
  「ごめんよ。僕はマサキだ。そんな名前じゃない」――
キミの言葉に彼はそう答えた。その声に嘘の響きは混じっていない。本当に知らないようだ……。しかし、キミは確信もあった……親友を見間違えるはずがない――と。

●GPO(PC3)

◆描写1
  GPO本部、隊長室に呼び出しを受けてやってくるとそこには、すでに隊長の神野雅彦と第10班班長の綾小路月乃が待っていた。キミがやってきたのを確認すると神野隊長が任務について話し出す。
◆解説1
  神野隊長から市街で起きている新薬の連続強奪事件に対して綾小路とともに対処に向かえと指令を受ける。これはケースRである。適当に質問に答えたら描写2へ行くこと。
  新薬の強奪事件については、週に1度は輸送が行われるレネゲイド抑制剤の新薬が、3週間に1回のペースで強奪されている。決して大量に盗まれるわけではないが、運転手や付近の街に被害が出るなどの無分別な襲撃が問題である。目撃者は居ないがスラムのアザーズとGPOは見ている。襲撃地付近に通常ではあり得ない地面の陥没(クレーター)ができていることからケースRと認定された。

▼セリフ:神野雅彦
  「これで揃いましたね。さて、今回集ってもらったのは、近頃連続で起きているあの事件についてです。
    すでに被害はシティズンにも及んでいます。これ以上は見過ごせません」
  「これより、この件を『ケースR』と認定し、我々GPOが対応することにします。
     おそらく犯人はアザーズのオーヴァードでしょう」
  「PC3君、綾小路君、キミ達2人の班でこの度の事件に対応して下さい。
    結果を出しさせすればその過程は問題にしません」

◆描写2
  GPOの隊長室からの帰り道、角を曲がり隊長の気配が遠くなった所で綾小路の方から話しかけてきた。
◆解説2
綾小路の極論をお披露目するシーン。きっかけさえあればスラムのアザーズ達は潰した方が平和に暮らせると考えている。
  シーン終了後、綾小路月乃にロイスを結ばせること。

▼セリフ:綾小路月乃
  「今回の事件……犯人はアザーズです。非登録市民が起こしている事件です。
    わざわざ裏を取る必要などないとわたくしは思います。PC3さんはどう思われますか?」
  「結局のところ……事件はアザーズ達がいるから起こるのです。 GPOもそれが解っていながら
    いまだにスラムの掃討は行わない。このままではいつまでもシティズンに平和は訪れない」
  「私には今回の事が良い機会になればと……
    この魔街を消毒する良い機会になれば……と、そう思うのです」
◆結末
「では、私はこれで……お互い頑張りましょう」――そう言うと、綾小路はキミとは別の廊下へと歩いて行った。キミはその後姿に漠然と不安を感じた。

●外部より来し者(PC4)

◆描写
  UGNより指示を受け、裏ルートを使った魔街へと潜入したキミは、シティズンに混じって市街で暮らしていた。そんなある日、キミが外から持ち込んだ携帯電話が着信を告げた。そう……指令だ。
◆解説
  市街へと潜入したUGNであるPC4は、霧谷雄悟の指令を受ける。それは市街で最近起こっている新薬の連続強盗事件を解決せよとの命令だった。UGNが技術提携しGPOにて実験を行っているウィルス抑制剤の新薬……この件を解決すれば、UGNはこの特殊な状況の魔街に、その基盤を作るきっかけになると考えている。
犯人と思わしきエクリプスの名を出し、GPOにも協力は取り付けてあると説明したらシーンを切る。
シーン終了後、エクリプスへのロイスを結ばせる事。

▼セリフ:霧谷雄悟
  「仕事です」
  「仕事というのは簡単です。最近、犯人がGPO内部の薬品を盗みだしているという事件が
    連続しているようです。あなたはGPOと協力してその事件を解決して下さい」
  「あまり大きな声ではいえませんが、その盗まれている薬……UGNより情報を渡して
    作成実験を行ってもらっていたものなのです。すでにGPO隊長の神野さんには話を通してあります」
  「私達は犯人に対して、その手口からエクリプスと名づけました。シンドロームや外見は不明です。
    あとは宜しくお願いします」
◆結末
ピッと言う音と共に携帯が切れる。再び画面には圏外の画像が提示される。まずは情報収集……GPOと合流するのが得策だろう。

●姉(PC2)

◆描写
  姉のユカが毎日を無気力に過ごすようになったのは3年前の事だ。まだ、オレも姉貴もライオットのメンバーで第一線だった頃、GPOとの抗争で姉貴の恋人が死んだ。姉貴はそれを機にライオットを抜け、少し経ってオレも抜けた。姉貴は散歩に出ると何でも拾ってくる癖があった。この3年間は、無為に家で過ごすか、散歩に出て何かを拾ってくるか……そんな生活を姉貴は繰り返していた。だが、その癖が好を奏してか行き倒れのあの男を拾ってきてからは、姉貴も元通りの元気な性格に戻りつつあった。
◆解説
  元気な姉を描写するシーン。また、姉がマサキの事を特別視している事を強調してもいい。まだこのシーンでは気が付くPLはいないと思うが、PCがユカに対して「なぜマサキと名づけたのか?」という質問をしてきた時、ユカは適当にはぐらかす。その理由をPC2は知っているのがだ、思い出す事ができない(※ユカのソラリスシンドロームの力である)。PC1を連れてライオットに行くよう説明したらシーンを切る。
シーン終了後、高遠ユカに対してロイスを結ばせること。

▼セリフ:高遠ユカ
  「ところでPC2、あんた最近ライオットの方は顔だしてるの?」
  「まだまだ深谷くん達だって頼りないところあるんだから、責任もって面倒見ないと駄目でしょうが」
  「あ、そうそう、昨日また拾って来ちゃった……えっと……人間なんだけど?」
  「でもキズだらけで倒れていたんだし放っておけないじゃない? 
    それに年齢的にライオットに入れそうだから、戦力増強って事でさ」
  「良かった。じゃあさっそく連れて行ってあげてくれない? さっき彼気がついた見たいなの」
  「私は別件で用があるから。ごめんね」
◆結末
  強引に流される形でPC1を連れキミは家を出た。

●その男危険につき(PC5)

◆描写
  突如聞こえた苦しそうな声にその角を曲がれば、最近この街へやってきたマサキという男が頭を抑えて苦しんでいた。何事かと近寄っていくと、マサキは懐からビンを取り出しその中身である錠剤を適当な数飲み込む。
◆解説
  マサキは常にジャーム化の危険性がある。それを抑えているのがビンに入った薬である。マサキは心配してくれたPCを良かったらと食事に誘う。もちろん高遠家でマサキ自身が料理を作ると言う意味である。マサキと一緒に行かないと言った場合、もう一度マサキは苦しみ出し再び薬を飲む。これでも一緒に行かない場合は自分でシーンには出てくる事をPLに協力して欲しいと頼む。
  シーン終了後、マサキへのロイスを結ばせること。

▼セリフ:マサキ
  「ああ、もう大丈夫だよ。ありがとう心配してくれて」
  「キミはやさしい子だね。よかったらウチに来るかい? ご飯ぐらいならご馳走するよ」
  「僕の名前はマサキ、実は居候させてもらってるだけでさ、ウチって言うのも他人の家なんだ」
◆結末
マサキと名乗った男は、少なくとも話している限りは優しげで細やかな良い人のようだ。しかし、キミは嫌な予感がしてならない、彼から目を離す事が心配になる。キミはひとまず、彼の言う料理をご馳走になりに行くことにした。

◆ミドルフェイズ

■固定イベント

●出発(PC3)

◆描写
GPO第○班(何班なのかはPCの自由に決めさせる)はこれから出発するところだ。新薬の連続強盗事件……その解決に向かう為に。
◆解説
PC4に登場を促す事。また、途中で綾小路が登場しスラムにある2大犯罪組織ギルドとライオットを調べるべきだと言う。綾小路はギルドに行くので、PC3にはライオットを調べて欲しいと頼む。

▼セリフ:PC3の班員
  「班長、先ほど神野隊長から伝言がありまして……PC4というオーヴァードが協力するとの事です。」

▼セリフ:綾小路
  「スラムの2大犯罪組織……ギルドとライオットをまずは調べるべきでしょう。
    わたくしはギルドの方を行かせて頂きます。ライオットの方はお任せして宜しいでしょうか?」
◆結末
市街の門を抜けスラムへとやって来た。このスラムが無かったら、この街は魔街と呼ばれる事はなかったのだろうか? そんな考えがふと頭によぎった。

●ライオット(PC1)

◆描写
  スラムでも大き目の廃墟が幅を利かせる一角にやってくる。そこに到着すると数人の少年少女たちが現れる。皆、手に武器を……または特殊な能力で作りだした超常の力をためていた。しかし、PC2を見ると一気に波が引くように殺気を落とす。かわりに皆から発せられる笑顔と笑い声。
「PC2さん! お久しぶりッス!」
◆解説
  ライオットの特異性(全員がオーヴァードで戦闘が可能)と、PC2を先輩として敬っている事を印象着けるシーン。また、PC1が魔街の事を知らないなら、ここで誰もが当たり前にエフェクトを使っている事、オーヴァードが当たり前の事を印象つけてもいいだろう。PC5が居る場合、このシーンで合流することが望ましい。

▼セリフ:ライオットメンバー
  「PC2さん! お久しぶりッス! 最近仕事の方はどうっすか?」

▼セリフ:深谷鉱
  「お久しぶりです。ライオットは心配ないですよ。GPOの奴等も毎回追っ払ってますよ」
  「(PC1を見て)誰ですソレ?」
  「その年齢なら大丈夫だ! ああ、一緒にやろう! お前を仲間に迎えるぜ」
◆結末
  ライオットはキミに対して友好的だった。19歳以下は別格らしい。そうこうしていると見張りのメンバーが息を切らせて駆け込んできた。
「深谷さん! 奴等です! GPOの奴等が来ました!!!」

●抗争(PC3)

◆描写
  市街とスラム側に分かれ、GPOとライオットのメンバー達がにらみ合いを続ける。いつものあたりまえな風景だが、今回は目的が違う。奴等から情報を聞き出さなければ。
◆解説
  全員登場が望ましいシーン。GPO側からは「ウィルス抑制剤を盗んでいる犯人を捜している」という情報を。スラム側からは「ユカがマサキにウィルス抑制剤を飲ませていた事」情報を交換する事が目的。スラム側(特にPC1、2)が何も言わない場合。ライオットリーダーの深谷鉱がPC達が隠している事を悪気無く言う。

▼セリフ:深谷鉱
  「てめぇら! 俺達の縄張りに土足で入ってくるとはいい度胸だな!」
  「(薬についてPC1が何も言わない)PC1? どうした、お前何か知ってるのか?」
  「(GPOに)はっ! 例えPC1が何か知ってたとしてもな! 誰がビーストどもに教えるか!」

▼セリフ:GPO班員
  「班長! 奴等は所詮アザーズ! このまま舐められていいのですか!」
◆結末
  抗争が始まる。そのどさくさにまぎれてキミはその場を後にする。今の情報、高遠ユカの元へ向かわねば。

●取引(マスターシーン)

◆描写
  そこには2人の姿があった。
  1人は女性――高遠ユカ。
  彼女はもう一人に近寄ると手を差し出した。
  その手には薬が1ビン渡される。
  ユカはその薬をポケットに突っ込むと、わなわなと震える声を絞り出す――
「いつまで……こんなことを続ければいいのよ……」
  その声にもう一人が諭すように答える。しかしユカには耐えられない事であるらしく――
「そんな!? みんなを犠牲にしろっていうの! そんな事私にできるとでも!?」
  再び諭すように言うもう一人。
「……確かに、私はそれを望んでいるけど……。でも、だからって……」
◆解説
  PC2たちがライオットへ向かう時、ユカは用事があると言って一緒に行かない。その用事が取引である。取引内容は、ウィルス抑制剤を受け取る変わりにスラムの情報を売る事であり、ここでユカが「みんなを犠牲にしろっていうの!」と反応する訳は、エクリプスから「スラムの掃除が終了するまでですわ」と半永久的に従うよう言われた為である。
  ユカがGPOの探している犯人の片棒であるとPLに理解させるシーンである。
◆結末
  静かにうなだれ肩を震わせるユカ。
  やがてもう一人は興味を失ったように、その場を去って行った。

■情報収集

◆マサキ
<情報:噂話、魔街>7
・2ヶ月前にスラムで倒れている所を高遠ユカに拾われ、今もその家に居候をしている。
・オーヴァードだがレネゲイドウィルスが他人より桁違いに活性化している状態であり、今にもジャーム化しそうな所を、何かの薬で抑制している。

<情報:噂話、魔街>12以上
・昔、中華街にあった『天城』という店の一人息子に似ている。その子は天城義久と良い震夜が起こる前に街を出たらしい。

◆高遠ユカ
<情報:GPO、噂話、裏社会>7
・ライオット創立期のメンバーであり"フレア"と呼ばれ恐れられたほどの実力の持ち主。
・シンドロームはサラマンダー/ソラリス。戦闘でも強かったが、仲間へのフォローが姉後肌で人望があった。
・3年前、抗争で恋人を失っておりそれを機にライオットを抜ける。
・恋人の名前は陣内マサキ。陣内は一般的なオーヴァードでありユカ程強くは無かった。(※)
・市街で出回っているはずのウィルス抑制剤をなぜか大量に持っている。

(※)この情報をPC2が得た場合、なぜか今まで陣内マサキの事を忘れていた事に愕然とする。その理由はユカのソラリスの力で、記憶を操作されていたからである。

◆綾小路月乃
<情報:GPO、裏社会、魔街>5
・お嬢様の出であり震夜後も、市政局に大きなパイプがある。
・いまだに震夜以前の平和を求めており、そうならない原因は、犯罪者の溜まり場となっているスラムにあると考えている。

<情報:GPO、裏社会、魔街>12以上の場合
・アザーズ達からは"エクリプス"と呼ばれ恐れられている武力派の班長である。この事はライオット達は恐怖している事は恥ずかしい事なので言わない。逆にライオット以外のスラムの住人は、聞かれたら恐ろしいので言わない。

◆エクリプス
<情報:GPO、裏社会、魔街>12
・アザーズ達からは"エクリプス"と呼ばれ恐れられている武力派のGPO班長である。班長の本名は綾小路月乃。この事はライオット達は恐怖している事は恥ずかしい事なので言わない。逆にライオット以外のスラムの住人は、聞かれたら恐ろしいので言わない。

◆事件の薬
<情報:GPO、裏社会>7
・UGNから極秘でGPOへ技術提供のあった新薬。
・レネゲイド・ウィルスを抑制させることのできる薬であり、いまだ試作段階。完成すればジャーム化の特効薬になると言われている。
・副作用に記憶喪失を筆頭とした脳への悪影響が強すぎてUGNでもその理論を実践できていない。特に被験者として使いたいオーヴァードは、脳障害から暴走する危険性もあるので実験しきれていない。
・UGNは外部に漏れぬようオーヴァードに実験的に与える事を交換条件に、GPOへ提供している。
・魔街ではオーヴァードがあたり前であり、中にはウィルスが起こす衝動に困っている者も多い。この新薬はとても売れ行きが良い。

■トリガーイベント

●高遠ユカを追って(PC2)

◆描写
  高遠ユカが姿を消した。時刻は夜。魔街に伸びる影は多く……そして濃かった。
◆解説
  高遠ユカが犯人の片棒だとPCが疑う、もしくは決め付ける事がこのシーン発動の条件である。
◆結末
  闇を切り裂いて赤い光が魔街を照らす。光の方向……あれは高遠ユカの必殺技……≪極大消滅波≫だ。

●決意(マスターシーン)

◆描写
  魔街に夜が訪れる。漆黒の闇は明かりの少ないスラムに多すぎる影を落とす。
  市街から離れたスラムの一角で、2人の女性が向き合っていた。一人は高遠ユカ、もう一人はGPO第10班班長……綾小路月乃。
「お話があるというから来て見れば……どうなされたのですか? そのように血相を変えて」
「……もういい」
  絞るようなユカの声。
「もういい……とは?」
「もうあんたには従わないって事よ!」
  キッとユカが綾小路を睨みつける。対して綾小路は余裕の笑顔で答える。
「亡くなられた殿方を、今も生きていると信じ続けたいのではなかったのかしら?」
  ユカはその言葉に明らかに動揺を隠せない。再びうつむき加減で言葉を搾り出していく。
「いつまでも隠し通せはしないのよ……どんなに嘘で塗り固めたって、いつかはばれちゃうんだから……もう、私には隠し通す事はできないし、仲間も裏切れない……」
「それで? どうするつもり? 今まであなたがわたくしに流して下さった情報は真実、そしてあなたに渡していた薬も真実です」
「だから……けじめを付けに来た」
  ユカの体が一気に燃え上がる。それはサラマンダーエフェクトの証。
「結局……あなたも犯罪者たる非登録市民であった……そういう事ですわね」
「ここであんたを止めて、そのくだらない野望も、私の嘘で塗り固めた人生も……全て終らせる!――≪極大消――
◆解説:
  ここはマスターシーンである。ユカがPC達に調べられいる事から、自責の念が生まれ、エクリプス――綾小路と手を切る決意をするシーンである。

◆クライマックスフェイズ

●エクリプス(PC4)

◆描写
  赤い輝きのあった場所にたどり着くと巨大なクレーターが出来上がっていた。そのクレーターの中心には高遠ユカが倒れていた。
「あら? なかなかお早いお付きでしたわね」
クレーターの回りにはGPO第10班……綾小路とその班員が立っていた。
◆解説
  綾小路はアザーズは全て敵だと見なして攻撃してくる。GPOのPCもアザーズに協力するそぶりを見せたなら、その者も攻撃対象である。PC達と20m離れた位置に綾小路、その綾小路を護るようにPC達と10m(つまり中間に)展開するのが、第10班の班員である。班員は3人1組となってそれぞれが1トループとして扱う。全部で3トループある事とする。
  班員達はなるべくPCとエンゲージして足止めする。綾小路は遠距離から攻撃を続ける。

▼セリフ:綾小路月乃
  「事件はアザーズがいるから起こる……これをきっかけにGPOはあなた達の掃討戦に入るのです」
  「アザーズ(非登録市民)がいくら集ったところでゴミの群れ……粋がるのはおよしなさい」
  「GPO班長であるあなたまで、アザーズ達に入れ込むのですか?」
  「(GPOの仲間へ)あなたは今まで疑問に思ったことはありませんの? 
    GPOはアザーズとシティズンを呼び方を変えて差別するだけ……。
    実際にGPOがする事と言ったらケースRの鎮圧ばかり……
    これではいつまで経ってもこの街に平和は訪れない」
  「事件は起きる前に潰すべきなのです」
  「(PC4へ)この街へ飛ばされたUGNの落ちこぼれが良く言えたものですね」
  「そう……残念ですわ。あなたまでこの手にかけなければならないなんて」
◆結末
「どうしてそれほどの力がありながら……その力を治安の維持に、平和の為に使おうとしないのです……GPOも……あなた達アザーズも……みな口をそろえて相手の事ばかり……まるで月が太陽を隠した日食のように……隠したモノを見ようとせず、その向こう側ばかり、皆見ようとする……どうして……」
  多くの疑問を口にしたまま、綾小路月乃――エクリプスは倒れた。

■DATA:綾小路月乃
●シンドローム:バロール/オルクス
●コードネーム:エクリプス(日蝕)
●能力値  技能
【肉体】3 <白兵>1
【感覚】4
【精神】9 <RC>6 <意志>2
【社会】5 <交渉>6 <調達>5 <情報:GPO>10 <情報:裏社会>5
【HP】24(84) 【イニシアチブ】21
●侵蝕率:160%(ダイス+6)

●取得エフェクト:
<暗黒の衣>3、<黒の鉄槌>2、<インビジブルハンド>2、<因果歪曲>2、<魔王の理>3、
<魔王の腕>1、<暗黒螺旋>2、<黒星招来>1、<ワームホール>1、<時の棺>1、
<世界の抱擁>1、<フェザーライト>2
<完全なる世界>2、<要の陣形>2、<領域調整>1、<ナーブジャック>1、<戸惑いの一撃>2、
<地獄耳>1、<ヴァイタルアップ>1

●コンボデータ
<黒の鉄槌>+<因果歪曲>+<魔王の理>
射撃、ダメージ+6、範囲、クリティカル−3、

<ヨモツヘグリ>+<ファクトリー>+<要の陣形>
重力を重たくして対象を押し潰す。攻撃後はクレーターができあがる。<RC>で判定し、ダイス15個、クリティカル値7、範囲攻撃で射撃扱い。攻撃力は+6。 <インビジブルハンド>+<魔王の理>+<要の陣形>+

<因果歪曲>+<惑いの一撃>
  重力を軽くし対象を空高く持ち上げ、そこから一気に重力を重たくして地面に叩きつける。<RC>で判定し、ダイス15個、クリティカル値7、攻撃力+10、3範囲まで攻撃可能な射撃攻撃、対象は防御判定のダイスに2個のペナルティを受ける。

■DATA:第10班班員
●シンドローム:ハヌマーン/モルフェウス
●コードネーム:ワルキューレ
●能力値  技能
【肉体】5 <白兵>2
【感覚】7 <射撃>2
【精神】4 <RC>2
【社会】3
【HP】18 【イニシアチブ】18
装甲値:15

●取得エフェクト:
<アクロバット>1、<猿飛び>2
<インフィニティ・ウェポン>2、<レインフォース>2、<練成の掟>

●コンボデータ
<インフィニティ・ウェポン>+<レインフォース>+<練成の掟>
  どこからか槍を取り出し一突き! マイナーで<インフィニティ・ウェポン>後、<白兵>で判定し、ダイス5個、クリティカル値8、攻撃力+8

●親友の為に……(PC1)

◆解説
  ここでPC1に、義久に真実を告げるかどうかを聞く。薬の供給は断たれたので、マサキの記憶は戻っていく可能性が高い。しかし、それは共にジャームの危険性もある賭けだ。もっとも、市街から薬を奪い続けるという事もPCなら可能である。

・薬を止め、マサキに全てを話す。この場合ジャームへ戻る可能性もある。
・PCが薬を強奪し続け、マサキには何も話さず義久の事は胸にしまう。この場合記憶は戻らない。

PC1にどちらの選択支を取るか決断を聞くこと。

◆エンディングフェイズ

●親友との会話(PC1)

◆描写
  「なぁPC1! なにボーっとしてるんだよ?」
  キミの横で天城義久が笑った。
◆解説:
  PC1の選択にもよるが、もし義久の記憶が戻った決断をした場合、義久は魔街の事も心配だが、やはり外に戻ろうと言う。そこが、自分達の居場所だからだ。

●ライオットの仲間達(PC2)

◆描写
「さすがPC2さんですね、聞きましたッスよ」
ライオットのメンバーがどこから聞いたのかすでに噂になっていた。
「ところで……ユカさんは?」
◆解説:
ユカがその後どうしたかPC2に決めてもらうのもいいだろう。過去の幻影を求めず、今を強く生きていくユカを演出するのも良い。

●GPOのその後(PC3)

◆描写
  GPO本部、隊長室で隊長に事件の報告を行っていた。もちろん、綾小路の事もだ。
「なるほど、ご苦労様です。綾小路くんについては残念ですが、仕方の無い事です」
「やはりあなたに任せて正解でした。あなたは結果をちゃんと出せる人ですから」
◆解説
全てが結果オーライと化している。GPO隊長神野雅彦はそういう男だ。もしくは神野から新しい任務について説明を受けるエンディングでも良いだろう。

●自分の居場所(PC4)

◆描写
ビルの屋上から街中を見下ろす。地平線の向こうには"アノ"街がある。
  すでに魔街を出てから数ヶ月が過ぎた。世間では誰もあの街の事は口にしない。誰も知らないから当然の事だ。しかしキミは知っている。誰もが自由な、あの街のことを。
◆解説
事件が終わり、UGNの力で再び外の世界へと帰ってきたPC。世界を見渡せばそこは昨日と変わらない今日だ。しかし、この世界には確かに存在する。今日と違う今日を過ごす街が。

●デモンズ・シティ(PC5)

◆描写
キミが暮らす天使の家は今日も平和が続いている。それはきっと市街でも同じだろう。そして抗争を続けるGPOとアザーズ達も……。結局のところ変わらないのだ。明日は昨日と同じ今日が来る。
◆解説
  魔街は自由である。それぞれが好き勝手に生きている。だが、それも昨日と同じ今日なのである。

◆アフタープレイ

●ダブルクロス 2nd P130を参照する。

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