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アラビアン・ダーク・ファンタジーRPG
ゲヘナ シナリオ

『妖霊街と背徳の決闘』

◆1.シナリオの適正

 このシナリオは享受者になったばかりのキャラクター4〜5人を想定して作られています。
プレイ時間は4〜5時間程度ですが、時間が無い時は3時間以内で終了できるよう、後半はカットできます。
ただし、このシナリオには妖霊使いはお奨めできません(完全に無理というわけではありません。"不利になる"程度です)。特にルールに慣れていないプレイヤーが妖霊使いでプレイしたいと言った場合には、その事を先に伝えておきましょう。

◆2.シナリオの概要

  舞台となるのは『賭博都市カリュオン』です。その街でPCは依頼を受けます。それは「ライバルとどちらが優秀な妖霊を見つけて来れるか賭けをした。それを手伝って欲しい」との事です。依頼主は「妖霊使いは自分の所の召使のうち、素質のありそうな奴を連れて行け」といいます。依頼主からの情報で、街の南に妖霊が複数住み着く不思議な遺跡がある事を教えられます。その遺跡へ行き、依頼主のライバルが雇った享受者からの妨害をかわし、無事に妖霊を連れてくる事が第一の目的です。シナリオはここで終わっても構いませんが、その後、依頼主とそのライバルとの賭け試合に協力する所まで行ってもいいでしょう。
  依頼主の召使であり妖霊使いとしての道を強制された幼い子供が、このシナリオのキーパーソンです。

◆3.シナリオの舞台

  舞台となるのはジャハンナム東部に位置する「賭博都市カリュオン」と、その南に位置するとある遺跡です。カリュオンでは賭博は公然と行われており、ジャハンナムにある都市の中でも治安の悪さなら天下一品でしょう(強盗・詐欺は当たり前、殺人事件でも街の人は「ああ、またか」程度の認識だと思って下さい)。

◆4.シナリオの背景

  賭博都市カリュオンは"邪霊が支配しているのでは?"と噂される程の街です。賭博だけで成り上がった2人「アギード=トード」と「ハサン=スネイル」は、お互い些細な事で賭けをする事になります。それは『どちらが優秀な妖霊を見つけられるか』という内容です。その結果、数日後に街の闘技場(賭博用です)で、その見つけた妖霊を使役した"素人妖霊使い"同士を戦わせる事になりました。それも、お互いの全財産を賭けて……。PC達は「アギード」の方から妖霊探しを手伝って欲しいと依頼を受けます。PC達は「ハサン」の雇った享受者の妨害を受けながら、目的を達成しなければなりません。

◆5.シナリオ本編

▼5−1.導入

  賭博都市カリュオンは公然と賭け事を行えるジャハンナムでも希有な街です。カリュオンにある紫雲杯の支部は、基本的に他からのはみ出し者が集まっています。
  この街の紫雲杯からPCの1人は依頼を受けます。基本的にフリーランスがいいでしょう。
  依頼内容はとある豪商からの頼まれ事です。普通、享受者が依頼主に直接会う事はありませんが、今回の依頼では直接会いに行くよう指示を受けます。

▼5−2.仲間探し

  紫雲杯から言伝られるのはPC1人です。残りのPCがそれぞれ何をしているか(普通に生活・修行・別の依頼中・暗殺終了の瞬間・賭け事中・街中でいざこざに巻き込まれ中でもなんでも)を聞いて、仲間になる事を演出します。最初から全員が仲間の場合は省略しても構いません。
また、この街では他の街と違って、奴隷が最低ランクな扱いをされています。その事を演出してもいいでしょう。

※普通、ジャハンナムでは奴隷は奴隷民と呼ばれ、法的にも保護さています。永続的に所有する事は不可であり、また専門の技術を持つ者などは一般の市民よりも良い生活ができたりします。しかし、賭博都市カリュオンではその"普通"が通じない奴隷民もいるという事です。

▼5−3.依頼人

  依頼主はアギード・トード(男45歳人間)といい、賭け事によって財をなした人物です。彼の話によると「賭け事の好敵手であるハサン・スネイル(男39歳人間)と、それぞれ妖霊を見つけてきて、どちらの"妖霊が優秀か"を賭ける事になった」との事。
  彼はPC達に妖霊を連れてくるよう依頼します。そして彼の家の遊戯舞台(ダンスホールのような場所)にPC達を案内し――

「ここにいるのは私の所有する奴隷だ。享受者になれる素質を持つ奴をまずは見つけてくれ。君達が言う奴隷に"何とかのエキス"とやらを飲まそう」

――と言ってきます。遊戯舞台では数十人の奴隷たちが大人も子供も男も女も舞踊をしています。奴隷達はPCを見ると皆一様に悲しい目をします。<舞踊>4(基準値)/2(必要達成数)(つまり出目が4以上のダイスが2つ以上あれば成功)もしくは<意思疎通>4/2に成功すると、奴隷達はこの境遇に不条理を感じている事が感じ取れます。
それぞれ自分の得意な<術技>で4(基準値)/3(必要達成数)で目星をつける事ができます。PC達が目星を付けられるのは12歳ぐらいの少女です(種族はPCには存在しない種族がいいでしょう)。

「おい、さっさと来ないか! よし、ではこれを飲め、裏ルートで手に入れた"何とかのエキス"だ」

 アギードに言われるまま少女はザクムのエキスを飲み干し、君達の目利き通り享受者へと目覚めます。この時、少女の血を混ぜる事を示唆しないと、少女は偉い勢いで苦しみます。(※ただし享受者にはなれます)
  少女が落ち着くと(享受者になると)アギードはPC達に一枚の地図を渡します。とある情報から入手した秘密の遺跡への道を示した地図らしく、その遺跡には不思議な事に野良妖霊が頻繁に現れるらしいとの事です。
  少女を連れて遺跡まで行き、そこで妖霊を少女と契約させ連れてくるのが依頼内容です。そして報酬は――

「ただし報酬は成功報酬だ。私が所有するに相応しい外見と、なによりハサンとの勝負に勝てる従順な妖霊を連れて来い。報酬はその条件によって上乗せするからな!」

――基本報酬は全員で5000Di。前金に1000Di渡してくれます。
  依頼の期間は20日間(依頼を受けた今日を含めて)、20日後にどちらの妖霊が強いか試合を行うとの事です。試合日まで5日以上残っている状態で連れて帰ってくると追加報酬がさらにもらえます。

「それと、5日以上早く戻ってきたら、追加報酬にさらに1000Di乗せよう。5日もあれば妖霊使役の練習もできるだろうしな」

 享受者となり妖霊使いの道を強制させられた奴隷の少女は、参加したPLやPCに合わせて性格を変えてもいいでしょう。一応の例として少女のパーソナリティーを乗せます。

■ラティ

本名はラティファーといいます。(仲良くなったPCにしか言いません)12歳の少女です。
一人称は「わたし」。二人称は基本的に「〜さん」。
無口で極力他人から嫌われないように静かにしています。信条は「暴力否定的/身分否定的」です。
全ての主能力値は2とします。
<肉体抵抗(強)>1、<防御(強)>1、<舞踊(敏)>1、<自我(精)>1、<精神抵抗(精)>1

▼5−4.封印具

  プレイ時間に余裕があるならば、アギードは封印具代として1000Di渡してくれます。PC達に封印具も自分達で買えと言います。プレイ時間に余裕が無い場合は、アギードは少女の首に小さなランプのアクセサリーのついた首飾りをかけ、それが封印具だと説明します。
  封印具をどこで入手すればいいか迷うPCは、紫雲杯に聞きに行くでしょう、紫雲杯からは祈祷師組合を紹介されます。そこに行けば封印具を購入できますが、かなりの高値を吹っかけられます(2000Diです)。<交渉><枕事><賭博>4/2に成功すれば(どの技能を使うかはPCの演技によります)PCが買える値段に負けてくれます。なぜそんなに高いのかを聞くと「つい昨日、封印具をかたっぱしから購入していった享受者の3人組がいる」と教えてくれます。魔術師風の女が刀士の男と獣甲師の男を連れていたと教えてくれます。

▼5−5.アギードとハサンについて

  アギードとハサンの噂を調べるのは簡単です。<裏知識>4/2に成功するか、賭博場で<交渉><賭博><枕事>4/2に成功すれば教えてくれます。

■アギード

  アギード・トード。45歳の人間男性。一人称は「私」。二人称は基本的に呼び捨てにします。蛙のような顔をしており、声も喉が潰れているようにくぐもっています。信条は「財力肯定的/自分肯定的」です。
  ギャンブルは負けない勝負をコツコツ続ける……と豪語しているが、実はいろいろイカサマしているとも噂されている。成り上がる前はハサンから借金をしてギャンブルをしていた。今回の賭けに全財産を賭けているらしい。自分以外を道具や何かと考えているのか、とても自分サイコーな人。でも金払いだけは良いと評判である。
  また、アギードの趣味は舞踊観賞です。自分の体型は醜いと感じているのか、美しいものの方が好きなのです。

■ハサン

  ハサン・スネイル。39歳の人間男性。一人称は「俺」。二人称は基本的に呼び捨てにします。蛇のように舌を出す癖があり、いやらしい喋り方をします。信条は「財力肯定的/他人否定的」です。
  ギャンブルはイカサマだと普段から言い切っています。アギードが成り上がる前に随分なお金を貸したが、今だ全部てを返済していないと毎回イチャモンをつけているらしい。ギャンブルだけで生計を立てており、服装はいつも成金趣味。それでも破滅しないのは強運のせいだと思われるが、邪霊に関係するような輩と付き合っているとの噂もある。
  また、ハサンは少年の享受者を見出し、その子を妖霊術師にするらしいとの情報を聞きます。

▼5−6.遺跡へ

  遺跡へは徒歩で片道7日間かかります。紫雲杯に言えば馬かラクダをタダで貸してくれます(ただし、ちゃんと返却しないと賠償金を払わされます)。馬やラクダを使えば片道4日間に短縮できます。食料等をPCにしっかり買わせると、あとあと"使える"かもしれません。
  必要日数が経つと遺跡が見えてきます。遺跡を空から眺めると遥かに大きい廃墟である事がわかります。遺跡全てを見て周るなら、とても1日じゃ回りきれません。5日はかかるのではないでしょうか。

※食料・水不足――丸1日は飲食不要で耐えられます。それを超えると半日に1回、食料・水の足りない分につき1Dのダメージを生命力・気力に受けます。これは足りない分を摂取しない限り治りません。<生存>の基準値4/必要達成数(半日の経った回数)で成功すればペナルティを受けなくても構いません。

▼5−7.遺跡ルール

  遺跡は5×5のマス目で現されます。この1マスの中には1人の妖霊が存在します(1人の妖霊が他の妖霊とケンカにならないギリギリのテリトリーラインだと思って下さい)。PCは1日にこのマスを5回移動可能です。1つのマス目には必ず1人の妖霊が存在します。妖霊を見つけるには<感覚鍛錬>4/3に成功する必要があります。基本的に妖霊は隠れています。

  判定に成功した場合は、即座にPLに1D6を4回振らせ、基本ルールブックp148の「妖霊の個性表」に照らし合わせて、そのマスに住んでいる妖霊がどんな外見・性格なのか決定しましょう。外見は普通に説明し、性格はロールプレイで表現すると面白いでしょう。判定に失敗した場合、そのマスでは妖霊を発見する事ができませんでした。失敗し発見できなかった場合は、再び1/5日分を費やして発見判定を行う事が可能です。PCが納得する妖霊を見つけたら少女は妖霊と契約しまう。少女は天性の才能を持っていたのか、妖霊との契約(精神戦闘)は(1/5日)×1D6の時間で終了します。PC側に妖霊使いが存在する場合、その使役する妖霊が外にでていると遺跡の妖霊達は絶対に姿を現しません。発見判定すら行う必要はありません。妖霊が逃げている事は妖霊使いにはわかって構いません。

5回移動すると夜になります。5回目の移動場所で寝る事になるので、そのマスに存在する妖霊の性格に合わせて、悪戯をしましょう。徹夜で行動する場合はあと2回の行動が可能ですが、生命力・気力にペナルティを与えてもいいでしょう。
  遺跡から街へ戻る場合は、どの方角でもいいので遺跡の端っこのマスから出られれば無事に帰路につけます。

※妖霊の悪戯――夜寝ている時、妖霊はPCに悪戯を実行します。そのマスにいる妖霊の性格に沿った悪戯を行うと良いでしょう。陰湿なら全ての水袋に穴を開ける。子供っぽいなら顔に落書き。サディスティックなら怪我をさせてもいいでしょう。優先してやると面白い悪戯としては「食料を無くす」「持ち金全てを盗む」「馬(ラクダ)を逃がす」などが上げられます。刀士の銘刀を木刀とスリ変えたりすると凄い事になります。
悪戯は朝起きた時に、それぞれ適当な判定をさせて気がつかせてあげた方がいいでしょう。そのマスの妖霊から、盗まれた物などを返してもらうときは、やはり1/5日分消費します。(もちろん発見判定が必須です)

▼5−8.遺跡イベント

  妖霊を発見した際「妖霊の個性表」で、すでに一度出たパターンの妖霊が現れた場合、固定のイベントが発生します。(GMの裁量で、性格や外見がかぶった場合にも、固定イベントを起こして構いません)

1回目
  誰かが闘った跡があり、妖霊は存在しません。<刀術><獣甲術><黒炎術>の技能で判定し、4/2で成功すれば、それぞれの術技能が使われた事がわかります。

2回目
  今にも死にそうな妖霊を発見します。彼から話を聞くと、女一人と男2人、それに少年のパーティーにいきなり攻撃された。と話を聞けます。そこまで言うとこの妖霊は死に、炎に包まれ風へと帰っていきます。

3回目
  妖霊を倒そうとしている4人組を発見します。「あんたに恨みは無いが、依頼人の対抗馬になりえる奴には消えてもらうよ」とリーダー格の女炎術師の声が聞こえます。割って入れば戦いは中断します。邪魔をする場合4人組みは襲ってきますが、1撃でもダメージを食らうと、さっさと逃げ出します。

4回目
  <危険予知>4/3に成功しない限り奇襲を受けます。敵の<黒炎術>による遠距離射撃です。敵は射撃だけして逃げていきます。使う術は<放ち葬る炎 ルールブックp122>です。

5回目
  4人組のうち刀士だけを発見します。1人でPC達を待ち伏せており、PCの一人と決闘を(とくに同じ刀士に)挑みます。殺されても構いませんが、なるべく生きようと降参します。ハサンに雇われた享受者だと説明します。金より命だと命乞いをしてきます。

6回目……以降は同じ個性の妖霊が出現します。もう固定イベントは発生しません。

▼5−9.プレイ時間が短い場合

  遺跡から期間する際に、ハサン側に雇われた享受者達が戦いを挑んできます。これがラストバトルとなります。女黒炎術師の肩に、邪霊(ジャフール ルールブックp159)が乗っていてもいいでしょう。

「ウルサイ、この街は最高だ。賭けないか、俺達とお前達、どっちが強いか……掛け金はもちろん…タマシイだ」

▼5−10.街への帰還と報酬

  アギードに帰還を報告し、見つけてきた妖霊を見せれば「外見上」の報酬を約束されます。
  アギードの基準は「自分の趣味である舞踊に似合っているか」「使役者の少女が使って似合う外見かどうか」である。報酬無しの場合はアギードの口から「馬鹿にしているのか」「見る目がないなお前達」等の罵声を浴びせても構いません。
  妖霊と妖霊使いの少女ラティが賭け試合で勝つ事ができるなら、さらに追加報酬がある事を示唆し、PC達を歓迎して屋敷にタダで泊まらせてくれます。
  ちなみに外見的追加報酬も全て後払いです。

成功報酬マイナス1000Di 「頼りがいのある大柄」「威風堂々とした太目の体格」「筋肉質でパワフル」
成功報酬報酬無し 「刺々しい無表情」「知的だが冷たい」「ぼんやりして地味」
成功報酬プラス1000Di 「大人っぽく妖艶」「華やかでけばけばしい」「子供っぽく愛らしい」「小柄で貧弱」
成功報酬プラス2000Di 「華奢で儚げ」「中世的な容貌」

 ※プレイ時間が少なく、遺跡からの帰還時にハサン側享受者達とラストバトルを行っている場合は、このシナリオはここで終了です。お疲れ様でした。

▼5−11.アギードの策略

  遺跡から帰ってきた次の日、アギードからPC達は呼び出されます。話によると賭け試合の内容を変更したとの事です。

「妖霊という奴は自身で戦うより、誰かをサポートする事こそ本質らしいと聞いてな。ハサンの奴と話してきて、賭け試合の内容を変えてきた。"どちらも1人享受者を立てて、そいつらを決闘させる。そしてその享受者を見つけてきた妖霊と妖霊使いがサポートする"――と、言うわけで、お前達の中から誰か出せ」

 アギードは遺跡から無事に妖霊を連れ帰ってきたPC達の腕前を見込んで、自分が有利になるように賭けの内容をしました。もっともそれは、同じように享受者を雇っていたハサンも好都合だったので2人は同意したのです。PC達が嫌がるなら、他の享受者を探すまでと言い切りますが、賭け試合に負ければ全財産はハサンのものになり、PC達への報酬も支払われる事なく、タダ働きで終わる事を伝えて下さい。
  ここで「先に報酬を払え」「お前なんか知らん」と言うPC達がならば、アギードは言います――

「言い忘れたが私の全財産とは全ての所有物、奴隷達も入る。もちろん君達と数日間寝食をともにした少女もだ。ハサンの奴は奴隷と見れば怪しい輩に売り飛ばしているという噂もある。ここだけの話、その妖しい輩は邪霊と関係があるとか無いとか……そんな輩に売られた場合、奴隷の末路はどうなるのだろうな?」

 と情を引き合いにし半分脅迫してきます。PCが了承したら、アギードは「この依頼の報酬は何がいい? いくら欲しい? 私の所有している物ならなんでも欲しいものをやるぞ?」と言います。PCに相談させて下さい。

※PCがしそうな回答の例を揚げます
 ・お金いっぱい――アギードは成功報酬を倍にする約束をします。<交渉>4/3に成功すれば3倍にしてくれます。
 ・妖霊使いの少女ラティを自由に――喜んでアギードは約束します。正直享受者になった奴隷など気持ち悪いので所有していたくないのです。
・その他――魔具やアイテムは1つまで自由に渡しても良いでしょう。あまりに突拍子の無い事なら却下してもかまいません。

※お金でも情でもPCが動かない場合、このセッションはここで終了です。妖霊決闘の結果はアギードが惨敗し、全財産はハサンに持っていかれます。依頼報酬は出ません。もちろん妖霊使いの少女がどうなったか、PC達は知るすべを持たないでしょう。例え紫雲杯で聞いたとしても、辛い現実を聞くだけです。

▼5−12.賭け試合当日

  賭け試合はすでに噂になっており、勝手にトトカルチョも始まっている始末です。普段は剣闘士を闘わせる闘技場で、今回のイベントは行われる手はずになっています。
  闘技場にはアギードと一緒に向かう事になります。アギードの護衛もかねていると言えばPCも納得するでしょう。闘技場につくと、わざわざハサンが嫌味を言うために現れます。

「ほう、こんな駆け出しがお前の立てる享受者か? よっぽどこいつを援護する妖霊に自信があるって事かな?」

 言いたい事だけ言って彼は去っていきます。彼の後ろには顔の見えないローブを来た3人の護衛が従っています。一人は女性、残りは男性です。最後に女性が少しだけ振り返って、ニヤリを口の端を歪めます。

※選手控え室
  ハサン組とは別々の部屋に通されます。部屋には試合に出るPCと妖霊使いの少女(そして外に出しているなら妖霊)しかいません。何か話してもいいでしょう。PCと少女ラティが仲良くなっているなら「自由になりたい」と本音を語ってもいいでしょう。

▼5−13.試合開始

  試合に出るPCが闘技場へと入場すると、ハサン組の控え室からは、嫌味ったらしい感じの少年(貴族っぽい服を着ている)と、遺跡で会った(会って無い場合もある)刀士が入場してきます。彼らの上には邪悪な笑みを浮べた男の妖霊が付き従っています。(※敵の刀士を遺跡で殺している場合、入場してくるのは獣甲闘士です)
  また、試合に出ないPC達は観客席から、見下ろしている事になります。

  試合が開始される前に、試合に出ないPC達に<感覚鍛錬>4/3、もしくは<危険予知>4/2を振ってもらいます。判定に成功すると闘技場に入場してきた妖霊使いの少女ラティを、観客のいない影になった場所から黒炎術師の女が魔法で狙っている事を察します。今すぐ移動すれば試合開始までに女炎術師がいる場所まで移動できる事をPLに伝えましょう。

  誰も成功しなかった場合は、試合を見ているPC達の横に、PC達が連れて来た妖霊が現れ、ご主人を狙っている存在(敵の黒炎術師)を伝え、その排除を頼んできます。この場合、闘技場での戦闘1ターン目に、妖霊の援護は受けられません(妖霊は移動で終了するからです)。

  黒炎術師に近づくと付近に護衛として獣甲闘士が潜んでいる事、そして黒炎術師の後ろにハサンがいる事に気がつきます。また、ハサンの肩には小さな邪霊(ジャフール)が乗っています。観客席での戦闘開始と、闘技場での戦闘開始は同タイミングとして下さい。

◆闘技場での戦闘

  基本的に1対1の戦闘ですが、妖霊使いの少女ラティの妖霊が援護してくれます(ラティの<妖霊使役(精)>レベルは2です。つまり援護のダイスは2Dが限界)。ただし妖霊の性格によって、援護の確率は上下します。また、その援護確率によってアギードからの追加報酬も決まります。
  敵は刀士(または獣甲闘士)1人ですが、敵妖霊や敵妖霊使いの少年を攻撃する事も可能です。

100%援護する:追加2000Di
「無邪気で感激家」「真面目で献身的」「子供っぽく天真爛漫」「落ち着いているがおっとり」「好奇心旺盛」「引っ込み事案で陰気」

命中時は100%援護、防御時は3/6の確率で援護を拒否する:追加報酬無し
「熱血で自信過剰気味」「サディスティックな皮肉屋」「無感動で冷血」

常に2/6の確率で援護を拒否する:成功報酬からマイナス2000
「きまぐれなナルシスト」「面倒くさがりだが怒りっぽい」「派手好きで悪戯好き」

◆観客席での戦闘

  リーダー格の黒炎術師の女、獣甲闘士(刀士が死亡している場合はここにはいません)。そしてハサンがいます。ハサンの肩の上には邪精(ジャフール ルールブック p159)が乗っかっています。ハサンは「邪魔するな…あいつは俺の金を盗んだんだ。これは正当な行いだ」とくり返し言います。ハサンはその思いを邪霊に漬け込まれたのです。もっとも、邪霊などいなくとも、こうなっていたかもしれませんが……
  ハサンを殺すかどうかはPC次第です。基本的に邪精(ジャフール)さえ倒せば、ハサンは気絶して倒れます。

 ※NPCデータ――今回は作りたてのPCを想定しているので、敵享受者はルールブックに乗っているアーキタイプ(ルールブック p32)を多少いじったものを使用します。「刀士」「獣甲闘士」「黒炎使い」のアーキタイプデータの、術技に使う主能力値をそれぞれ2点多くしましょう。それでもバランスがPC側の方が強い場合、術技のレベルを1つ上げて調節して下さい。

▼5−14.賭けの結果

試合へ出たPCが勝った場合、ベストエンドです。報酬を計算し、アギードからも試合での妖霊の援護確率によって追加報酬をもらえたり(もらえなかったり)します。妖霊使いの少女ラティが笑顔を見せるかどうかは、自由になれているかどうかにかかってきます。

試合で出たPCが負けた場合、そのPCは止めを刺され死亡(途中で気がついて他のPCが闘技場へ降りて行き援護するのなら別です)。例えハサンの邪精(ジャフール)を打ち払っていても、アギードは全ての財産を没収され、PC達は報酬を一銭ももらえずに終わります。少女ラティや奴隷達も全てハサンの所有物となり、その後の行方は知れません。

◆6.成長ポイントと術技ポイント

  以下の条件をクリアしているものにチェックをつけ、その合計分だけポイントを渡して下さい。

▼試合に勝った:術技ポイント1、成長ポイント5。
▼試合に負けた:術技ポイント0、成長ポイント4。
▼少女に自由を与えた:術技ポイント1。

 ※プレイ時間が短くて遺跡から帰ってきた所でセッション終了:術技ポイント1、成長ポイント5。

◆7.キャンペーンの展開

◆「賭博都市の闇」

  このシナリオで賭けに勝った方(たぶんアギードでしょう)から、紫雲杯に依頼が来ます。それは護衛の依頼です。どうにも誰かに最近狙われているらしい……と。妖しいのはライバルだったハサンです。しかし、ハサンは今や一門無しで、暗殺士を雇える財力があるとも思えません。
  事件の真相はハサンから巻き上げた全財産の中に、紫雲杯袈辰にとって重要な"何か"が紛れ込んでしまったためです。その何かが何なのか、さらに深く進めれば袈辰の弱みを見つける事ができるでしょう。

◆「妖霊街の真実」

  妖霊達が集まる遺跡……そこの調査を一緒に言って欲しい。そんな依頼が飛び込んできます。依頼主は少し気弱誘うな神語術師、彼の話によると妖霊が一箇所にあるまるなど非常識にも程があるとの事。その遺跡に秘められた謎を解き明かす手伝いをして欲しいとの事です。
  妖霊が住む遺跡の地下には、シェオール時代、偉大なる王ラスマーンに関わりのある遺跡が隠されています。その場所には妖霊を使役する上で重要な――「自由を奪う」魔具が眠っているのです。もちろん、ラスマーン王の遺跡だけあって、罠もそこを守る守護者も存在します。
妖霊が集まる理由を、その遺跡が現状も動いている事にするか、邪霊がすでに巣くっているせいにするか、でシナリオの方向は変わるでしょう。

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