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アラビアン・ダーク・ファンタジーRPG
ゲヘナ シナリオ6

『黒沙の森で待っています』

◆1.シナリオの適正

  このシナリオは獲得術儀ポイント9点〜12点の享受者4〜5人を想定して作られています。
  プレイ時間は4〜5時間程度です。

◆2.シナリオの概要

  舞台となるのは黒沙渦巻く『闇と絶望の砂漠』と、その中に孤島のように存在する『黒沙の森』です。
PC達はある獄に向かう為に『闇と絶望の砂漠』を渡ろうとします。しかし、渡っている途中で黒沙の潮流が急に変り、気が付けば『黒沙の森』と呼ばれる場所に流れ着いていました。そこでPCのうちの1人は、昔失った黒沙使いの天使であった恋人と再会します。

  恋人は「自分は死んだ……けれど肉体はこの森のどこかにある。それを探して欲しい」とPC達に頼んできます。この恋人は黒沙が恋人の人格を写しこんで生まれた魔物ヴァールラ(基本ルールブックp189)です。森の中心に生えたザクムの樹の根元に恋人の肉体は埋まっています。
しかし、その事実を言っても恋人は喜びません。なぜなら恋人の望みは再会したPCと永遠にこの森に留まる事なのですから……。

◆3.シナリオの舞台

  舞台となる「闇と絶望の砂漠」とはジャハンナムとゲヘナを隔てる黒沙の海です。黒沙は負の感情の集合体であり触れただけで傷を負います(肉体的にも精神的にも)、獄に行く為にはここを越える必要があります。
  「黒沙の森」とは黒沙が特に濃く結晶化したものが乱立した場所です。それはまるで樹や花のように見えます。しかし、その木々や花々は悪意に満ちており、迷い込んだ者を二度と森から出さずに悪意の中で永遠に彷徨わせようと考えています。

◆4.シナリオの背景

  かつて黒沙使いのファラーシャという享受者がいました(年齢・性別はターデットとなるPCに合わせて下さい。このシナリオでは20歳の女性とします)。彼女は天使でありPCとは仲の良い恋人でした。しかしPCと2人だけで冒険中に、邪霊の攻撃で死亡してしまいます。彼女はPCに逃げるように言います。そして自分の事を引きずって生きて欲しくないと、自分に同化していた謎の力を使いPCの記憶を失わさせます。その力とは世界意思の雫<草原>です。

その後、彼女の肉体は首領級邪霊がザクムの樹を育てる養分として、とある黒沙の森に埋めました。その後、意思持つ黒沙が彼女の思いを移しこみ魔物と化します。その魔物は彼女の肉体より世界意思の雫を奪いこみ、黒沙の森へ近づく者を永遠の苦しみに誘っています。

◆5.シナリオ本編

▼5−1.導入

基本的にPC達が闇と絶望の砂漠へ向かうように仕向けるのが導入です。その為には――
 ・仲間の誰かが死亡してしまい反魂をしに獄へ向かう。
 ・知り合いの黒沙使いに頼まれて、闇と絶望の砂漠へ乗り出した友達が帰ってこないので、
   一緒に探して欲しい。
などが上げられるでしょう。黒沙帯へ向かうことになったら問題ありません。

▼5−2.過去の夢

  ファラーシャと恋人関係にあったPC(ターゲット)の失った過去を演出する場面があります。適宜セッション中に挟んで生きましょう。一応、どこで挟むかの指針も記述しておきます。

 ●夢その1:セッション開始の最初の場面
若かったPC。
横には黒沙使いの天使で女性がいる。彼女の名はファラーシャ、相棒であり周りと違って弱かったPCの事を馬鹿にしないいい奴だ。金髪の天使でその髪の毛はヒザ裏まで伸びている。
その日、酒場でPCと彼女が飲んでいた時の事だ……

若い人間の享受者が「おい、ファラーシャ、カバなんかと飲んでないでこっちで楽しもうぜ」
粉をかけてくるその享受者にファラーシャはそっけなく答え。PCに――
「ねぇPC、今度の遺跡探索の依頼はかなり大変そうだから……何人か仲間を募ってみようと思うの……
   どうかしら?」
夢はそこで終わります。
しかし目覚めたPCは不思議に思います。ファラーシャという女天使も、そんな若かった頃の自分も思い出す事ができないのです。

  ●夢その2:導入が終了した時
夜、酒場から紫杯連のある宿屋に帰ってきた時、ドアの向こうからファラーシャと幾人かの享受者の声が聞こえてくる。

「何よその言いグサは! PCが一緒ならチームを組まないってどういう事よ!!!」
「だから何度も言ってるだろうが?
   だれが好き好んでドンくさいPCなんかとチーム組まなきゃいけないんだよ? 
   そんな事よりお前がウチらのチームに入れよ、お前だけならいろいろと歓迎するぜ?
   ふっ……いろいろとな。はっはっはっはっはっ……」

その夢はとてもリアルな夢だ。しかしPC自身にそんな記憶は無かった。

  ●夢その3:黒沙使いの里の夜
遺跡へ向かってファラーシャと歩いている所。

「ごめんねPC、仲間集め失敗しちゃった。でも大丈夫、私達ならきっと大丈夫!」
「始めてあった時に言ったよね?
   私はいつか地上へ出て神様に会うんだ……って、だから私は陵渦に所属しているんだって……」
「いつになるか判らないけどさ……いつか地上に出られたら、PC……一緒に…2人で…太陽を見ようね」
「約束」

どうしようもなくリアルな夢だった。しかし、やはりPCにはそんな記憶は無い。

※PCが陵渦に"所属していた"事が前提のセリフです。この後、何かあってPCは陵渦を辞めたのかもしれないです。元々陵渦でない設定なら、ファラーシャのセリフを変えましょう。重要なのは"何かを約束"する事です。

  ●夢その4:黒沙の森へ付いた時
遺跡の最奥、待ち受ける邪霊の攻撃は苦戦必死。

「まさか邪霊が待ち受けているなんて――」――黒沙で創った槍で応戦するファラーシャ。
PCにも邪霊は腕を鋭く伸ばし連撃をしてくる。口からは黒炎が打ち込まれる。
「危ないジャバール!!」――貫かれるファラーシャ
叫びを上げた所で白昼夢から覚める。もちろんPCにそんな記憶は無い。

  ●夢その5:ザクムの樹に着いた時
横たわるファラーシャ。
「PC……そこにいるの……?」
「PC……逃げて、この遺跡はもうすぐ崩れる……このままじゃあなたまで巻き込まれちゃう……」
「私は大丈夫だから……あなたは生きて、私はきっとここで死ぬ運命だったのよ……だから気にしないで……」
「じゃあ後で……後で迎えに来て、私は待ってるから……ずっとずっと待ってるから……約束するから」

――ファラーシャを連れては逃げれない。確実に死にます。とPLには言います。

PLの後ろでファラーシャの胸元が輝き、遺跡の中だったのに突然周囲の風景が変る。それは草原。
草原に横たわるファラーシャ、走っていくPL。
草原を揺らす風以外は何も無く、ただただ草が揺れている。
無論、そんな記憶はPCには無い。

※この時、PCの信条に合わせてファラーシャのセリフを変えるのが望ましい。

▼5−3.アスワドの里

   闇と絶望の砂漠に乗り出す為、黒沙使いの里へとやってきます。里の人数は100人ぐらい。うち、黒沙使いは10人程度です。里長のビクニールが出迎えてくれます。黒沙使い達は、闇と絶望の砂漠へと渡るPC達に未練が残らないように(生きて帰れる者は殆どいなかったからです)宴を開いてくれます。

▼5−4.闇と絶望の砂漠

黒沙の砂漠は丸一日で越えられます。6回イベントが発生する可能性があります。
1回目、2回目、3回目が前半。
1〜3:イベント無し。
4と5:黒沙の津波にあう。PCは1人いつ荷物を落とす。何を落としても構わない。
6  :大嵐にあう。<生存>4/2に失敗すると生命力が半分になる。

4回目、5回目、6回目
1と2:弱い嵐にあう。実ダメージ3点。
3と4:瘴気に蝕まれて堕落ポイントが4点以上の人は、一般技能のレベルがランダムで1つ下がる。
5  :黒沙の渦に飲まれそうになる。黒沙使いは≪黒沙術≫4/3。失敗すると全員飲まれて生命力に3D6。
6  :瘴気に当てられ飛び込みたくなる。≪自我≫4/2に失敗すると気力が半分になる。

  その後、黒沙の潮の流れが急激に変っていきます。≪黒沙術≫4/2に成功すると、自然的ではなく意図的な意思が感じられます。その先は黒い木々が乱立する島のような場所が見えてきます。

 ※黒沙使いがPCにいない場合は、舟を動かしてくれる黒沙使いのNPC(ビクニールさんでもいいです)が忠告します――「おかしい、この流れ……誰かに意図的に操られているしか思えん」

▼5−5.黒沙の森

  そこは黒沙の森と呼ばれる場所です。黒い黒沙で出来た木々が、地面から黒沙を吸収しており、島の大地はむき出しの大地になっています。どうやら上陸は可能なようです。
≪黒沙術≫4/1に成功すれば、少なくともこの岸からの離岸は不可能。別の浜辺(?)から再び船を出発する必要があるようです。これはNPCが船頭の場合も言ってくれます。

<感覚鍛錬>4/2で成功すれば、誰かがやってくるのがわかります。黒沙の森の中から、金髪を足元まで垂らすほどの長い髪をした天使がやってきます。

「私の名はファラーシャ、この森の防人です。どうしても頼みたい事があってあなた達を呼び寄せました」
ターゲットのPCを見て悲しそうにします。聞かれるとすぐに知らない人だと言います。
「頼み事……それは私の肉体を捜して欲しいのです。私は本当の私ではないのです。
   この森に私の肉体があるのは確かなのですが……」
「私の体が近くにある場合は、私が近くにいけばわかります。
   でも、この島には魔物もおり、1人で探し回るには危険すぎて……」

★黒沙の森特別ルール
  場面が変る事に、登場しているPCは<肉体抵抗>と<精神抵抗>を4/2で振る。失敗するとそれぞれ生命力と気力が3点減る。
  ※GMはさりげなくシーン移動のたびにダイスを振る。ファラーシャが「7」に行きそうになったら迷う。
       
   
  10 11 12  
    13    
1、5、9、13 :黒沙の海岸
  1と2と3:何も無し。
  4:瘴気に蝕まれて堕落ポイントが4点以上の人は、一般技能のレベルがランダムで1つ下がる。
  5:迷子になる。誰か1人。ランダムでダイス。
  6:魔物出現:<危険予知>4/1で失敗すると戦闘、ヴァールラ(p189)1d6体出現、 <危険予知>に
            成功していた場合は逃亡可能。また、ファラーシャが居た場合は6を振っても出てこない。

3、6、8、11 :黒沙の樹
  1と2:何も無し。
  3:風も無いのに木々が揺れ葉がPCに舞い落ちてくる。全員<防御>で3/4。生命力に実ダメージ5点。
  4:黒沙の悪意にやられて木々に触ってしまう。≪自我≫4/2。気力に実ダメージ5点。
  5:迷子になる。誰か1人。ランダムでダイス。
  6:魔物出現:<危険予知>4/1で失敗すると戦闘、ヴァールラ(p189)1d6体出現、<危険予知>に
           成功していた場合は逃亡可能。また、ファラーシャが居た場合は6を振っても出てこない。

2、4、10、12:黒沙の花畑
  1と2:何も無し。
  3と4:花の香りに魅了される≪精神抵抗≫4/3で失敗すると、花弁に斬られる。
       装甲値可能な3d6ダメージを生命力に受ける。
  5:迷子になる。誰か1人。ランダムでダイス。
  6:魔物出現:<危険予知>4/1で失敗すると戦闘、ヴァールラ(p189)1d6体出現、<危険予知>に
           成功していた場合は逃亡可能。また、ファラーシャが居た場合は6を振っても出てこない。

7:ザクムの樹
イベントは何も無し。シーンチェンジの肉体と精神の抵抗も必要無い。

▼5−6.悲しき黒沙の移し人

  ファラーシャは黒沙の集合体であり本人の表層意識を写しこんだだけの存在である。
表面上の感情はファラーシャだが、その根底にあるのは黒沙としての欲望である。
正体はヴァールラと同じなので本体の肉体に出会うと崩れ去る。なので「7」のザクムの樹の場所へは行かない。 ファラーシャの胸が輝き場面が草原に変る。

「これは世界の雫……私が肉体から奪ったもの……効果はいろいろあるけど、この<草原>の雫は……覚えているでしょPC? いえ、覚えていないからこそ効果を知っている……矛盾しているけどね……」
「全てを白紙に戻すから……だからここで一緒に……」 ファラーシャのデータはヴァールラを強力にしたもの(データはPCの強さに合わせて調整しましょう。黒沙術が使える事にして構いません)、もしくはザクムの樹に連れて行く、ザクムの樹の根元から肉体を掘り起こして持ってくる……などをすると崩れ去ります。

◆6.成長ポイントと術技ポイント

  黒沙ファルーシャを倒すと世界意思の雫<草原>を手に入れます。到達ポイントを1点PCに渡しましょう。また、術技ポイント1点と成長点5点を渡しましょう。
  以下の条件をクリアしているものにチェックをつけ、その合計分だけポイントを渡して下さい。

◆7.おまけ

◆リプレイ「孤高の戦士ジャバール」で登場したトンボのデータを掲載します。

トンボ(人間、20歳、男)
分厚いメガネをかけた軽薄な男。一人称は「トンボ様」、二人称は「チミ」。享受者としてプロ意識があり受けた依頼は確実にこなす。冥獄刀との契約で金を得る事を第一に考えている。
※PLに宣言:闘技は1Rに2回までチットの消費無視で使用。ただし堕落ポイントは使わない。

筋力:2  強靭:2  敏捷:5  感覚:5  精神:4  知力:2
刀術:5Lv 敏捷+5=判定数10
邪眼:2Lv 感覚+2=半定数4
生命力:115
気力 :42
イニシア:15 装甲値は3点。
≪防御≫3lv 強靭 判定数5
≪肉体抵抗≫1 強靭 判定数3
≪精神抵抗≫3 精神 判定数7
≪賭博≫1 ≪魔術知識≫1
「魔具」:<守護>強引な意識不明から回復する

【瞬閃】命中+5
【直破】30mに射程延長攻撃、冥獄刀能力によりダメージは装甲無視。
【無幻】近接に限り、闘技の打ち消し
【絶業】カウンター命中に+2
【奥義・破業】遠距離からの攻撃にカウンター発動
【奥義・終刺】ダメージ+20

本気になると分厚いメガネを外して邪眼フルスロットルです。
<射竦める眼>受動、相手が防御した瞬間発動、対象は≪精神抵抗≫、失敗なら防御が1下がる。
<虚構を与える眼>ウソを真実だと思い込ませる。命の危険がある場合は無効。2時間発動。
<手を操る眼>手とか簡単な部分だけ操る。≪自我≫で抵抗。武器を放すなど危険な場合は+3対象に修正入る。

冥獄刀「蜻蛉(かげろう)」
<真空の断裂Lv2> ダメージの基本は敏捷を使う、【直破】を使った時のダメージは装甲無視
「安寧の館Lv1」「見えざる閃光Lv1」「翻る風」 基準値 2/4/5 ダメージ +8/+10/+12

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