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天羅万象・零シナリオ

零跡 れいせき の村』



[一]シナリオを始める前に(GM"だけ"が読む所)

○シナリオ適正

  3人または4人を対象に、プレイ時間は5時間から6時間を想定しています。
(コンベンション用のシナリオです)

○シナリオの目的

強いだけでは何も守ることは出来ない・・・1人では限界があるのだ。
  人間はたった1人で何もかもできるわけが無い。思いやり、助け合うことが大切である。

○シナリオ概要

☆零幕
 流水の国の金剛機≪水神≫に部隊を襲われ、たった1人生き残ったサムライ。
 烈火の国の所有物であり、風谷の村から霊石を持ち帰るよう命を受けた金剛機。
 自らの心とは裏腹に、主人である陰陽師五行(ごぎょう)に付き従う傀儡。
 好敵手である五行と、何の因果か主従関係になってしまった機人。



☆ 一幕
 機人の故郷である風谷(かざたに)の村、この半年ほど前からその村に対して奇妙な噂が立ち始めました。「村に行って帰ってきた者はいない」「妖を見た」などという噂です。それぞれの事情で村にやって来たPC達は、村を1人で守っている少女剣士水葉(みずは)と出会います。水葉はPC達が敵ではないとわかると、村に滞在する間は自分の家に泊まるよう言います。強さに憧れる水葉の弟の炎(えん)などと出会い、PC達はその日を終えます。



 ☆ニ幕
  それぞれの目的に添って行動する2日目、しかし、調べれば調べるほど、この村の異常な自体にPCは気がつきます。どうやら今PC達のいる風谷の村は"謎"があるようです。それと同時にPC達は、水葉や炎から"強さ"について相談を受けます。その日の夜、五行は村の謎を1人解き明かします。しかし、そのことを仲間であるPC達にも話しません。



☆ 三幕
  PC達がそれぞれ村の謎について協力すると、少しづつですが村の真相に近づいて行きます。そして、村が百年前に1度滅んでいること、三年前に暴走し行方を眩ました金剛機水神、そして霊石、すべてのピースがそろった時、今いる村が百年前の過去をなぞっている事に気がつくでしょう。そして、村が滅ぶ日はもう明日に迫っています。次の日、歴史通り流水と烈火の両国の兵が風谷の村へ押し寄せてきます。一人で村を守ろうと戦う水葉、しかし無常にも村は滅んでしまいます。そして水葉も無念のまま力尽きます。



 ☆四幕
  PC達は気がつきます。そこは村の廃墟、場所は・・・どうやら現代に戻ってきたようです。少しすると村の広場があった所に、光を放つ霊石を見つけます。しかし、PCがそこに近づくと、立ち塞がる黒い影が・・・流水国金剛機<水神>。PCは気が付くでしょうか? 水神こそ修羅となり死んでいった水葉だと、記憶を取り戻した水神が、霊石の力を使って過去をやり直そうとしていたことに。また、五行は当初の目的を遂げようと機会を待っています。暴走した水神の明鏡と心珠を持って帰ること。彼は目的を果たせるでしょうか? そしてPC達は水葉に対してどう対処するでしょうか?



○ PLには「これは頼みごとなんですけど、今回のシナリオでは、PLが気が付いても、キャラクターが知らない限り、口に出すのは禁止です。真相に気が付いてもバラさないで下さい! お願いします」と頼みましょう。(真相には自分で気が付いてもらいたいものです)

[二]ステージセッティング〜前準備〜

○プレイヤーへの初期情報

 烈火の国と隣国・流水の国は百年以上前から小競り合いをする仲です。今は、三年前に流水の国から申し入れがあった休戦条約で小康状態を保っていますが、いつまでもつかはわかりません。実際、2国間でなにかあったのならすぐに戦が始まってもおかしくない状態です。今回舞台となる風谷(かざたに)の村は、国境にある小村です。いちおう烈火の国に属していますが、微妙なものです。烈火の国は災害などで人民が疲弊しており、流水の国は逆に安定しています。

○キャラクターメイキング

金剛機(修羅の魂および明鏡、[封印記憶]の説明 ← 重要です)
難しいですが、うまくやれば主役になれるでしょう。また、この金剛機は烈火の国の所有物なので名前に「火」が関係する漢字を入れてください(強制です)。

サムライ(サムライおよび『死ぬここと見つけたり』の説明)
シナリオでは重要な役割ですが宿命が役に立たないので難しいです。宿命以外の因縁だけでがんばれる方にお願いします。

戦闘用傀儡(傀儡の説明、『因縁:秘密』と傀儡の心についても)
脇役ですがロールプレイは初心者向けです。自分1人で悩まず他人とコミュニケーションを取るといい感じになるでしょう。

機人(一般人(農民)であることの説明)
本当に脇役です。PLが3人の時は削除され、サムライが三年前に風谷の村に訪れていた設定になります。(リプレイ参照)

※席順はGM左から時計回りに戦闘用傀儡、機人、サムライ、金剛機となるとやり易いです。
名前の決定。兵法の説明。

○初期の因縁2つで[因縁]ロールを振って[気合]を獲得してください。[気合]の1番多かった人が裁定者です。

○PC間の因縁

☆ 戦闘用傀儡→機人
五行に仕える者として、"感銘""同士""共鳴""好感"などが適しています。PLがうまく[因縁]を思いつかない場合<感情:機人への友情>などを提示しましょう。

☆機人→サムライ
戦を生業としてきた身として、"知り合い""憧れ""感銘""師匠""好感"などが適しています。PLがうまく[因縁]を思いつかない場合<感情:サムライへのあこがれ>などを提示しましょう。

☆サムライ→金剛機
任務に執着する金剛機は、昔の自分を思い起こします。"望郷""恐怖""腐れ縁""既視"などが適しています。PLがうまく[因縁]を思いつかない場合<感情:金剛機への同情>などを提示しましょう。

☆金剛機→戦闘用傀儡
同じ作られしモノとして、"救済""共鳴""好感""興味"などが適しています。PLがうまく[因縁]を思いつかない場合<感情:戦闘用傀儡への共感>などを提示しましょう。

○PCに[宿命]を渡します。また、セッションログシートに記入してもらいます。

○ セッション開始宣言(年代を言うのが目的です)

『時は戦国。数百年続き、行く末さえ見えぬ戦乱の時代。和神(にぎみ)61年、帝紀にして2701年。今、1つの物語が始まる』


[三]宿命

宿命:金剛機
目的:任務をまっとうする(初級)

内容:幾多の戦場、数多の暗殺、君はまだ壊れていない。壊れない限り、任務は与えられる。
 今度の任務は楽なのだそうだ。
 記憶の無い君は、それを判断できない。感情の無い君は、判断しようとは思わない。
 時々蘇る記憶・・・何かを憎んでいた自分。しかし、君にとってそれは思い出せない、思い出したくない記憶だ。
 ・・・それでいい。
 我ハ金剛機、任務ヲ実行ス。



宿命:サムライ
仇敵:流水の国の金剛機"水神"(初級)

内容:君がいた部隊は、謎の敵に襲撃された。仲間が次々と悲鳴をあげて殺されていった。
 「殺される!」君はそう死を覚悟した。しかし、偶然にも君は1人だけ助かった。いや、助かってしまった。
 何も出来なかった己の弱さを、自らの屈辱を、君は忘れない。
 襲撃者は金剛機だった・・・流水国の水神(すいじん)。君は復讐を誓った。



宿命:戦闘用傀儡
感情:五行への反感(初級)

内容:君には従うべき主人がいる。彼は希代の陰陽師であり、その力は皆が認めるところだ。
 しかし、彼の考え方には思うことが多い。このままでは、ついていけない・・・そう思う日も近いだろう。
 君は彼の命に背くわけにはいかない。自分は一人ぼっちになったところを彼に救ってもらったのだから・・・
 君は彼に従う。



宿命:機人
設定:五行とは好敵手である(初級)

内容:君はいくつもの戦場を渡り歩いた。そこで会った陰陽師は君の鏡だった。彼と会うときはいつも敵同士だった。
 幾度目かの戦を得て、君は故郷の村へと帰ってきた。しかし、もうそこには自分の居場所は無かった。
 戦人と化した自分は、もう平穏には戻れない・・・胸にぽっかりと穴が空いたようだった。
 君は故郷の村を離れた。君に残っているもの、それは昇り詰める事と彼との決着のみ。
 彼の名は五行。戦に身を投じれば、また出会うだろう。君には当ての無い確信があった。

[四]主要人物紹介

水葉<ミズハ>

    「私は思うんですよ。どんなに強くったって、守ることが出来なかったら意味が無いって・・・」

○シナリオにおける立場
  風谷の村を1人で守ろうとしている少女剣士。村にやってくる者はとりあえず疑います。常に気丈に生きようとしていますが、自らの信念に疑問を持っています。

○経歴と秘密
彼女は金剛機です。本当の彼女(金剛機)は三年前、流水の国で記憶を取り戻し暴走・・・姿を消しました。今は風谷の村にある霊石の力で幻を見ています。
龍虎一天流の使い手で、生きている時は十三の頃に村へ訪れた師匠に弟子入りし、十七の頃村に帰ってきました。しかし、その二年後、村は流水と烈火の国の兵によって滅ぼされてしまいます。彼女はその時修羅となって戦いましたが村を守ることは出来ませんでした。その時の未練を晴らすため、彼女はもう1度あの日を再現しています。今度こそ守るために・・・

○外見
十八〜十九歳ぐらいの少女剣士です(本当は十九歳)。身のこなし一つとっても一流の剣士と思われるほど隙がありません。

○ロールプレイ
村を守るために一生懸命な少女です(修羅ではありません)。泣く、笑うなどの感情表現を豊かにすると、修羅である金剛機<水神>との落差があって面白いでしょう。霊石のことを知っていますが、秘密にしています。

○人称の使い方
自分のことは「私」、父や母には「お父様」「お母様」、弟は「エン」。他人には「何々さん」

○ゲームデータ
体:6 敏:8 感:5
知:5 心:7 共:5 天:3
負傷ゲージ:軽6   /重3   /致2   /死1
活力:13
霊力:24
<白兵戦闘>上級  <兵法:龍虎一天流>上級  <意志力>中級 名称   

武器修正   射率   射程   装填数
打刀    +3    ――   ――   ―――
打刀    +3    ――   ――   ―――

[因縁]<目的:村を守る>   (上級)
     <感情:強さへの疑問> (中級)

炎<エン>

    「僕は、姉さんのように強くなりたいんです! お侍さん達はどうやって強くなったんです?」

○シナリオにおける立場
  PCの金剛機、この男の子がその人の過去になります。姉の強さに憧れ、自らも強くなろうとする少年です。プレイヤーには[封印記憶]が解除されることは黙っていましょう。「用意していない」と嘘ついてもいいです

○経歴と秘密
  少年はその日、ただ1人村で生き残りました。そして自分の育った村の惨状を見て少年は誓います。戦を、そして戦人を許さない・・・!!! そして少年は大人になり、数々の戦を経験していきます。彼の中にあるのは戦人を斬ることだけです。そして二十四歳の時、修羅となっていた彼は死にます。戦場で・・・まだ殺し足りないまま・・・。
  物語の中に出てくる少年は、まだまだ未来に夢膨らませる少年です。とても姉思いでもあります。

○外見
  十四歳ぐらいの少年です。礼儀正しく話すわりに、やることは子供です。

○ロールプレイ
  姉を慕う少年であり、姉のように強くなろうとしています。サムライのPCのことを何と呼んでいたのか、口調などを統一しましょう。金剛機のPCが記憶を取り戻した時、炎と同じ口調になったら成功です。

○人称の使い方
  自分のことは「僕」、父や母には「とうさん」「かあさん」、姉は「姉さん」、他人には「何々さん」

○ゲームデータ
体:4 敏:5 感:4
知:3 心:5 共:7 天:2
負傷ゲージ:軽4   /重2   /致1   /死1
活力:9
霊力:16
<白兵戦闘>初級  <兵法:龍虎一天流>初級 名称   

武器修正   射率   射程   装填数
木刀    +2    ――   ――   ―――
木刀    +2    ――   ――   ―――

[因縁]<感情:姉への憧れ>  (中級)
     <目的:村を守りたい> (初級)

五行<ゴギョウ>

    「興味深い・・・実に興味深いですねぇ・・・」

○シナリオにおける立場
  流水の国の陰陽師であり、行動は利己的で自分以外は道具として見ています。

○経歴と秘密
幾多の戦を渡り歩き、自らの力を磨いてきました。今は流水の国のお抱え陰陽師です。
  風谷の村には三年前に姿を消した金剛機<スイジン>を見たという情報を聞きやってきました。水神の明鏡と心珠を回収することが五行の目的です。
  彼は風谷の村がもう無いことを知っています。その上で、水葉を観察して楽しんでします。百年前に明鏡に封じられた金剛機の魂・・・水葉を見たのは大変興味深いことだったのです。

○外見
  細身で背が高く、ひょろっとした印象を受けます。

○ロールプレイ
  丁寧な口調ですが、どこか人を馬鹿にしています。

○人称の使い方
  自分のことは「私」、他人には「何々どの」、戦闘用傀儡と機人は呼び捨てにします。

○ゲームデータ
体:6 敏:8 感:6
知:12心:8 共:2 天:7
負傷ゲージ:軽6   /重3   /致2   /死1
活力:14
霊力:40
<陰陽術>上級  <白兵戦闘>中級  <回避>上級  <作法>中級 名称   

武器修正   射率   射程   装填数
小太刀   +2    ――   ――   ―――

[因縁]<感情:功名心>   (上級)
     <目的:美の探求>  (上級)
     <目的:技量の追求> (中級)

水神<スイジン>

    「村ヲ滅ボス戦人ヨ・・・去レ・・・去ラナバ、斬ル」

○ゲームデータ
体:7(13) 敏:9(15) 感:7(13)
知:5     心:7     共:5    天:6
負傷ゲージ:軽7   /重4   /致2   /死1
活力:14
霊力:24
<白兵戦闘>上級  <兵法:龍虎一天流>上級  <隠身>中級  <運動>中級

名称     武器修正   射率   射程   装填数
折れた太刀  +4(8)  ――   ――   ―――
折れた太刀  +4(8)  ――   ――   ―――

・龍虎一天流によりダメージ上昇。( )内は、その時の武器修正。
・龍虎一天流により命中判定の成功数が同じ時、相手に4点のダメージを与える。
・水神はすでにボロボロです。負傷ゲージのいくつかは埋まっていて良いでしょう。

[因縁]<目的:村を守る>  (特級)
     <仇敵:戦人を殺す> (特級)

式・式札

    五行の使う式および式札

≪戦闘用≫ 式札
憑依:1(強度)  戦闘:5  打撃:2  感覚結合無し
作成点 22   珠:5  消費霊力:10
能力値:4(9)  技能値:2  活力:4  武器修正(+2)

≪爆破用≫ 早撃ち/式札(任意)
爆破:12(ダメージ12)  飛翔:2  感覚結合無し
作成点 14   消費霊力:7

≪身代わり分身≫ 式札
憑依:1  戦闘:6  打撃:2  爆破:7(自爆ダメージ7)  感覚結合あり
作成点 32   珠:10  消費霊力:14
能力値:6(12)  技能値:3  活力:6

その他のNPC

○地五郎<ジゴロー>・・・ミズハやエンの父、50歳で風谷の村の村長をやっている。
○雷花<ライカ>・・・ミズハやエンの母、46歳。料理がうまいらしい。


[五]シナリオ本編

零幕『形亡き目的』

○第一場 〜サムライ〜

君は夜の森を仲間達と共に行軍中だった。この作戦がうまくいけば君達の部隊は、ちょうど敵の背後に回り込めるはずだ。しかし、静かなはずの森の中で、最後尾の仲間の1人が悲鳴をあげそれっきり返事も無くなる。視界の利かない暗い森の中で姿の見えない襲撃者に、1人・・・また1人と仲間の悲鳴が響き途切れる。

場所が悪い! 君はまだ無事な仲間達と共に方向を変え走り出す。こっちには川が流れていたはず、そこなら敵の姿も見えるはず! 定期的に続く仲間の悲鳴を聞きながら、君と残った仲間達は川原まで辿り着く。振り返り、夜の闇の中襲撃者を探す。また悲鳴、今度は君のすぐ隣に立っていた仲間だった。見れば首の無い体が、何色かの液体を撒き散らしながら倒れるところだった。

川を背に目を凝らす君。そこで君は見る。夜の暗闇から溶け出したような黒を、戦場を駈ける死神<金剛機>を。君は死を覚悟した。それでも仲間が助かれば、たとえ1人でも生き残れば、そう決意を固めると君は金剛機へと打ちかかった。しかし・・・

次に気が付いたとき、君は生きていた。死を覚悟したというのに。そして、その覚悟をしてまで助けたかった仲間達は誰一人として帰って来なかった。
君は後で知った。君の部隊を襲ったのは流水の国の金剛機<水神>だと言うことを・・・

○第二場 〜戦闘用傀儡〜

 君は自分を作ってくれた傀儡師と共に平和に暮らしていました。今までは・・・。今、君の周りでは黒く燃えきった家の残骸が音を立てて崩れます。まだ火が燻っているのでしょうか、煙はそこかしこで立ち昇り続けています。やがて燃え尽きたのか立ち上る煙も無くなり、あたりはすべてが焼けた匂いと、いつも通りの静寂が訪れます。君は座ったまま何時間も泣いていました。これからどうなるのか? 君はわかりません。だから、座ったまま泣きつづけました。どれ位たった事でしょうか? それは突然君の目の前に差し出されました。やさしい声で・・・一緒に来るか、と。

 そして君は救われた。拾われた・・・という者もいる。しかし、君は確かに救われたのだ。

あれから5年。君達は今、とある村にいた。そこで、農民の一揆を鎮圧した君達は、今、首謀者達を連れて行くところだった。村の民家からは一揆と無関係な農民達が、こそこそと君達を見ている視線を感じる。と、そこで、いきなり五行が式を打ち、式が村の民家へと飛んでいき爆発と共に次々と燃え上がらせる。

「さぁ行こうか」「この方が美しいだろう?」君は村人の悲鳴を聞きながら、五行と共に歩いていた。

○第三場 〜機人〜

 またお前か・・・よほど縁があると見える。敵陣深く切り込んだ君は、聞き覚えのある声に出迎えられた。五行・・・幾度となく君と対峙してきた陰陽術師。五行が胸から数枚の式札を取り出すと、すばやく空中へと放り投げる、式札はみるみる回りの紗を取り込み、化け物の形を姿作る。五行の具現した化け物度もが奇声を上げて君に襲い掛かってきた。

――ここまで強くなったのは、体を機人にしたせいもある。戦でいくどと死線を潜り抜けてきた幸運にもある。しかし、何度も自分の前に立ち塞がる、五行の存在もその一因であった――

五行が自らの式が、全て破壊されたのを見て悔しそうに、最後の式を放つ、風船に牙が生えたような式だった。君は向かってくるそれを一刀のもとに粉砕した。爆発が起こる。もうもうと砂煙が上がり、それが無くなった後、五行の姿はすでにそこに無かった。

 その後、君はいくらかの報酬を貰い、故郷へと帰って来た。これだけあれば家族が不自由なく暮らしていける。村長の息子であった君は、故郷の村が貧しいのを知っていたから。しかし、故郷の風谷の村に戻ってきたとき、そこには君の居場所は無かった。やさしい家族、昔と変わらない友人達、そして村の自然。けれど、変わらない故郷に君は違和感を感じる。君は村から離れる事にした。心にポッカリ穴が開いたようだった。そうして君は戦場へと戻っていった。

○第四場 〜金剛機〜

 烈火の国の領主に呼ばれ、あらなた任務。国境(くにざかい)に位置する村、風谷の村から不思議な力を持つ霊石を持って来る・・・という任務を受ける。噂によれば最近、風谷の村では妖(あやかし)が出るらしい。任務には2人で行ってもらう。

  ついでにプレイヤーには妖の説明をしましょう。妖とはいわゆる妖怪変化だと思って下さい。

一幕の予告

  平和な暮らしを続けている村。
  その村をたった一人で守る女剣士。
  風谷の村に集まった"つわもの"は、そこで何を感じるのか。

  次幕「彼女の名は水葉」。

[零幕の幕間]
[1]:諸行無常フェイズ――[零幕の幕間]では[因縁]の新規取得か段階の上昇しかできません。特に[宿命である因縁]の上昇を呼びかけましょう。
[2]:[因縁ロール]――できるだけ[合気チット]を[気合]に変換するよう奨めて下さい。
[3]:プレイヤーやGMと相談――天羅に慣れていないプレイヤーへのルール説明や、情報の整理など。
[4]:休憩――コンベンションならお昼休憩にするのに適しているでしょう。

一幕『彼女の名は水葉』

○第一場(サムライ、金剛機)

 烈火の国に仕えるサムライは領主(烈火貴光桜扇)にとある命を受けます。それは、風谷の村から不思議な力を持つ霊石を取って来ることです。また、どうやら隣国の流水の国も、その霊石を探しているらしく、奴等より先に手に入れろ! と言われます。烈火の国のPC2人は領主より正式な書状を渡されます。なぜその霊石が必要か・・・それは烈火の国の領主しか知りません。もしPCがしつこく聞いてくるなら、霊石は不思議な力を秘めている。その力はヨロイや金剛機を動かす動力源に近いらしい(烈火の国の陰陽師の話)と言っておきましょう。

ここでは金剛機とサムライが出会います。2人が出発したら場を閉じます。(金剛機が変装のことを聞いてきたら"虚無僧"とでも言いましょう)
プレイヤーが3人の時は、サムライは三年前に風谷の村に行ったことがあり、それも含んで今回の任務に選ばれたと言いましょう。

○ 第二場(機人、戦闘用傀儡)

 流水の国に使える機人は、領主(流水松戸信只)から呼び出しを受ける。主は隣国との国境(くにざかい)にある風谷村の出身だったな?・・・今回おまえには、ある任務を与える。・・・我が国に仕える要人を警護するのだ。また、要人の目的地は風谷の村にある。できる限りかの者の力になるのだ。ここで、陰陽師<五行>と戦闘用傀儡が入ってくる。

 出発したら、場を閉じます。機人が五行に絡んできても、領主の前では素知らぬ顔をします。機人が引き受けないようなら領主から強く言ってやりましょう!
※ なぜ、烈火の国の風谷村出身の機人が、敵国(隣国)に仕えているのか? 機人に聞いておきましょう
(例)自らの村が戦場になる可能性もあるの言うのに・・・もしかしたら、休戦条約がやぶられた際に裏切るつもり
だったのか? それとも、ただ単に賃金が良かったのか? それはプレイヤーに聞いておく。

○第三場(サムライ、金剛機)

 烈火の国組です。風谷の村までもう少し・・・といった宿場町、PCが昼飯時です。もしなにか頼んだら、払った代金の割にご飯が少ないのに気が付きます。その事を女将さんに聞くと「今年は雨のせいで不作でねぇ・・・ここらじゃそれが相場なのさ」と言ってくれます。と、そこに旅人の話す噂話を耳にします。「風谷の村には化け物が住んでるらしい・・・」「ああ、知ってるさ、行って帰って来たモンはいないって話さ・・・」

もしここでPCが情報を集めようとしたなら以下の情報が手に入ります。
☆「昔、この辺りで戦があった、その時の無念をもった魂が成仏できずに彷徨ってるんだ」
☆「あの村は森の中の盆地にあるからなぁ・・・霧に巻かれて幻でも見たんじゃ?」
☆「しかし、帰ってきた者がいないとはねぇ・・・」(←重要)
もっとも、風谷の村は、ほとんど自給自足で、外界との接触はあまりない、と言うことを言っておいてください。

○第四場(戦闘用傀儡、機人)

 流水の国組です。烈火の国組と同じように、村まであと少しの茶屋で休んでいます。五行は何の目的で風谷の村に行くのかPCの誰にも教えようとしません。PCが聞いたら「おまえは私を守っていればいいのだ。余計な事を考えるな」といいます。機人が零石が目的かと聞いたら、「零石・・・さぁ知らんな?(ニヤリ)」と匂わせておきましょう。(本当の目的を言わないのは、五行の性格からです。嫌みに優越感を出しましょう)。ちなみに、こっちは妖が出る事を知りません。茶屋を出発したら終了です。

○第五場(サムライ、金剛機)

 鬱蒼と下草の生えた森の小道を進み、PCたちは村を目指します。その道は荒れ果て、まるで何年も使われていないようです。そのうち霧もでてきて、周囲が昼間なのに薄暗くなっていきます。

 数刻も歩いたでしょうか、唐突に霧が晴れPCたちの視界が回復します。と同時にいつの間にか森を抜けていたようです。森に囲まれた盆地に20軒ぐらいの家が建っているのが見えます。この時点で午後三時ぐらいです。

 少し進むと、突然PCたちの前に1人の少女が立ち塞がります。

「こりずにまたやって来たのか! 流水の侍たちめ!!」

両手に二本の刀を構えた二刀流の少女です。水葉<ミズハ>である。
年の頃は18ぐらい、隙のない構えで、二振りの刀を君達に向けています。

PCたちが流水の国の侍でないとわかれば(書状を見せれば一応は信じます)、水葉は自分の家に来いと言います。水葉の父はこの村の村長をやっています。彼女は少し考えてから「わかりました。私の父はこの村の村長をやっています。私について来てください。」

 PCたちが着くと、ミズハの父地五郎<ジゴロー>は、PC達を信用します。いつもの侍達ならば、金剛機が来ることはないはず・・・そして彼はPC達に家族を紹介します。自分、妻の雷花、水葉、炎の順番で紹介します。ただし、炎の時だけ、炎が自分で自己紹介します。

「僕! 炎と書いて<エン>って言います! あの、お侍さんたちはいつまでこの村にいるんだ? い、いやいるんですか?」
「こら炎! お客様にいきなり何を言うんだ! 失礼じゃないか」

※この時、プレイヤーが3人だった場合、サムライは不思議に思います。自分が3年前に訪れた時と、村長が別人なのです。しかし、村の田畑の位置が変わっているわけではありません。村長一家が違うのです。
※霊石のことを聞かれたら「私は伝承でしか聞いたことがありませんし。実物を見たことも無いです。ただ、伝承に詳しい老人がいます」と言ったところで下のイベントに進んでください。

PCたちが自己紹介を済ませ、自分達の目的を語ったところで村人が、家に駆け込んできます。
「村長! てーへんだ!!」
村人の話によると、今度はPCたちが来たのと逆側(流水側)から、また誰か来たらしい。「私行って来る!」水葉が刀を二本掴んで飛び出していきます。

○第六場(戦闘用傀儡、機人)

 鬱蒼と下草の生えた森の小道を進みます。その道は荒れ果て、まるで何年も使われていないようです。五行が歩きながらPC達に言います。
「私は旅の陰陽師で、傀儡は私の弟子です。もっともまだ陰陽術は教えてもらっていない。機人は私の用心棒。わかりましたね? いざとなったら私に口裏を合わせてくださいよ。」
そのうち霧もでてきて、周囲が昼間なのに薄暗くなっていきます。数刻も歩いたでしょうか、唐突に霧が晴れPCたちの視界が回復します。

と同時にいつの間にか森を抜けていたようです。森の囲まれた盆地に20軒ぐらいの家が建っているのが見えます。と、そこに二刀を構えた水葉が・・・「こりずにまたやって来たのか! 流水の侍たちめ!!」と言ってから「・・・侍・・なのか?」

五行が言います。
「私はただの旅の陰陽師、五行<ゴギョウ>と申します。美の追求のため、各地を旅して周っているのです。この村は興味深いですねぇ、人里だと言うのに自然の雄大なる美を損なっていない。これこそ調和の美と言うのでしょう!!」

「戦闘用傀儡も機人もよく見ておきなさい! これが人のいとなみの"美"と言うものです!」 
水葉も「徴税官っぽくないし・・・」と一応信じる。
家までの道のり陰陽師はやけにキョロキョロしている「興味深い・・・実に興味深いですねぇ・・・」

○第七場

 PCたちが行かないと、程なくして水葉たちが帰ってくる。
もし、今日中に探索したいと言ってきたら「もう夕暮れです。明日のほうがよろしいのでは?」(実際、村人も家に帰ってから訪問されるのを迷惑がるだろうとGMからも言ってよし)

その夜の夕食で、陰陽師が自己紹介する。
「私は旅の陰陽師で五行といいます。少しの間、弟子共々、このすばらしい村に泊めて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」、村長の地五郎は快く承諾します。PC2人にも自己紹介させます。

※この時、金剛機は変装を解いてるはずと念を押しましょう、理由は書状を見せるという正式上、変装したままでは失礼にあたるからです。書状には○○という金剛機と○○というサムライが尋ねると書いてあるのです。

 その日の夕食、水葉の母雷花<ライカ>が「今日はやけにお客様が多いわねぇ・・・あ! ご飯のことは気にしないでくださいね。いっぱいありますから!」
PCが聞くと「今年は豊作でしたから気になさらずに・・・」
「雨で不作? この村は盆地になってますから、もしかしたらそのせいかも知れませんね」

 機人は不思議に思うでしょう。3年前に帰ってきたときは、村長は自分の家族達でした、。水葉も地五郎も機人は知りません。地五郎たちに聞いても、10年前から自分が村長だといいます。
※この1幕中に金剛機の[記憶封印]が発動したら、「君は昔、こんな感じの村に住んでいた」ことを思い出します。ちなみに、あくまで、その場でとってつけたような感じでやりましょう。

ニ幕の予告

  何かが違う・・・それが確信に変わった時、村の真実の姿が見え始める。
  強さに疑問を持つミズハ、強さに憧れるエン、彼女たちとて幻なのか・・・

  次幕「違和感」。

 ※この幕間に入る前に五行や水葉、炎と邂逅ロールを振ってください。また、水葉には全員[因縁]を取るように言ってください。炎や五行には取っても取らなくてもいいです。 [一幕の幕間]
[1][業]の上昇――今まで消費した[気合]を[業]に追加します。また、珠・カラクリ・蟲・装備の入手・技能の取得/上昇など[気合]の消費を必要とする作業ができます。
[2]諸行無常フェイズ――[因縁]の新規取得、昇華、段階の変更、特に全てのプレイヤーに[水葉に対する因縁]を取ってもらいましょう(強制です)。
[3][因縁ロール]――できるだけ[合気チット]を[気合]に変換するよう奨めて下さい。
[4]プレイヤーやGMと相談――軽い雑談などを交えて、他のプレイヤーがこのシナリオにどのようなイメージを抱いているか聞き出しましょう。
[5]休憩――十分間ぐらい。

ニ幕「違和感」

○ 第一場

 この日は朝から、PC達は情報収集などで村を回ると思うので、"場"はその時々に応じてGMが判断します。

 ただし、早起きした水葉は金剛機に稽古をつけてくれと、木刀を渡します。龍虎一天流の戦いです。ダメージは全て活力へ入れるというルールを説明します。この時、金剛機の[封印記憶]を発動させて、「昔、君は誰かに稽古をつけてもらっていた記憶を思い出す」、もし水葉との邂逅ロールが理由付けになるようなら「昔、君は自分の姉さんに・・・」としてしまってもいいでしょう。ちなみに判定方法はオープンダイスです。

○ 第二場

五行が、自分の部屋から障子を少し空けて、庭の稽古を見ています。傀儡に聞かれても、なにも言いません。

○第三場以降

 烈火の組は、伝承の詳しい老人→北の祠と行くでしょう。

流水の組は、朝食後に休憩、炎が話しかけてくる→五行に祠行くと言われ出発→村人に昔のこととかを聞けと傀儡が命じられる→機人は、奴等は烈火の密偵だろうから、お前が見張ってくれと言われる→北の祠へ

機人に村長以外の村人は友達から知り合いまで3年前と変わらない(3年分は老けている)という。しかし、話しかけても「誰ですか?」「わしゃお前なぞ知らん」村人は機人のことを記憶に無いと言う。

○ 第●場

 北の祠に先に着くのは五行と戦闘用傀儡です。五行が祠を1人で調べた後、他のサムライ達が祠に到着します。五行はサムライ達とすれ違った後、サムライ達の聞こえる場所に居る内に、傀儡に向かって「この村の謎が解けないようななら、お前のような役立たずの人形はいらん」と突き放し、傀儡を置いて一人でどこかへ行ってしまいます。サムライ達は傀儡を慰めるでしょうか? 水葉は「人間を人形だなんて酷いです!」と援護しても良いでしょう。この時、金剛機に付いている生命力感知機"霊導夢"の説明をします。ちなみに霊導夢に水葉やサムライは反応しても、傀儡は反応しません。

 祠の場面が終ったら、もう村が夕暮れにして構いません。PC達を村長の家に戻しましょう。この後、炎がサムライに話しかけて、炎が質問をぶつけます。炎に結論を出させましょう。「姉さんのように強くなりたいんだ」という炎に対して、サムライはどう対処するでしょう?

☆風谷の村のこと
 家が20軒ほどある。村の中心の広場に、中心に少し歪な穴がある。村人に聞くと、年に一度、祭りのときの、それを囲んで祭るのだ。との話。機人(プレイヤー3人の時のサムライ)はそこに霊石があったことを知っています。村人に何を祭っていたのか聞くと、不思議そうに「ん? そういえば何を祭ってたんじゃろう?」と本当に不思議そうにします。(村人は記憶から"霊石"の存在だけを消されていると考えてください)。それ以外はまったく普通の農村である。

※PCが聞くであろう情報
 その一:霊石について・・・聞いたことはある。しかし、見たことのある村人はいない。
      伝承では、霊石によって村は守られているらしい。実利益は存在しない。信仰的なもの。

 そのニ:流水の侍って?・・・風谷の村は烈火の国に属しているが、隣国と微妙な位置にあるため
       流水の奴等が税の徴収に来る。
       来たのは3週間まえ、来る時と来ない時があるが、だいたい月一で来るらしい。
       「水葉ちゃんには何度助けてもらったことか」と感謝の念。

 その三:昔、この辺りで戦が・・・村人は知らない。
       あったといえば、烈火の国の徴税官と流水の国の奴が鉢合わせしたときぐらい。
       戦というより喧嘩である。その時の結末は流水側が逃げた。

 その四:機人の記憶・・・村長は10年前から変わっていない。
       近所の友人や、おばさん、それに田畑の位置も変わっていないが、村長一家は記憶に無い
       (自分が村長の息子だから当たり前だが・・・)、友人や知り合いに聞くと「君なんて知らない」と
       言われる。

その五:他に怪しい所は?・・・村の北に土地神様を奉った祠がある。
      「よそ者は近寄るでねぇ!」ちなみに祠はちょっとした洞窟の奥にあり、別に何も無い。
      (いわゆるミスリード)

※NPCはこの幕でPC達に絡んでいきます。
水葉はサムライに自らの疑問を投げかけます。
炎は金剛機に憧れを抱きます。
五行は傀儡を突き離します。
村人は機人を知らないと言います。

☆炎<エン>・・・屋敷に残っているPC、または暇そうな戦闘PC、それに、必ずサムライには話しかけましょう。
「僕、姉さんのように強くなりたいんだ! どうやったら強くなれるか教えてください!」
「おサムライさん、(○○さん)はどうやって強くなったんですか?」
「強いことはいいことですよね? ・・・なんか姉さん・・迷ってるんだ・・・」

☆五行<ゴギョウ>・・・祠に行くと、その洞窟から出てきた所で会う。
「おやおや、皆さん・・・探し物は見つかりましたか?」(ただのカマかけです。霊石を探しているのは知らないです)
「・・・興味深い、実に興味深い・・・。どうやら貴方方も私と同じ人間のようだ・・・」
「気になさらずに、私も私の探し物がありますので」
何を探してるのか聞かれたら、適当にはぐらかす。傀儡に聞かれてもはぐらかす。

☆水葉<ミズハ>・・・PCの内、1番強そうな人、気に入った人、基本的にサムライについて行く。「私が村を案内します」「あの、私で手伝えること何かありませんか?」
「あの、村の外はどうなっていますか? 戦はまだ終わらないのでしょうか?」
「私思うんです。どんなに強くなったって、守ることができなかったら意味が無いって・・・」(←重要)
「村のみんなに『ミズハがいれば大丈夫だ』って言われて・・・でも・・・私はあの時・・・」

※もし村から出ようとすると(他の村に行こうとすると)気を失う。
村長の家へ運ばれる。

○ 第○場(傀儡にとって大事なシーンです)

 その夜の夕飯に五行がいない。どうしたんだろう?といぶかしんでいると、村人が運んでくる。村はずれで倒れていたらしい。
寝かされる五行を見て、PCは知覚判定、五行の短刀に流水の国の紋が入っている。

気が付くと「ここは・・・」「そうか・・・それで帰ってこなかったのか・・・」1人納得顔の五行。
この時五行は、この村の異常事態をだいたい理解します。

その上で傀儡に向かって「こんなことも解らないのか? 所詮人形か。」「お前は今まで、よく私の役に立ってきた。しかし、私は役立たずの道具は要らない。」「言って置いたな、もし、この村の謎が解けないようなら・・・と、お前のような無能な人形はいらん!」「道具のくせに感情などに振りまわされよって!」「道具が私に意見するのか? 分をわきまえろ!」と、つき離します。

五行はとても苛ついています。五行はこの村を本当に美しいと思っていました。しかし、この美の真実に気がついてしまい。苛ついているのです。

五行はその後、村長の部屋に行き、こそこそと何かを聞きます。そして、その答えを聞き納得顔で部屋を出ていきます。(夕食に向かったのです)
地五郎村長にそのことを聞くと、「いや、なぜかわからんが、今年の年代を聞かれただけだが?」「今? 今は正神元年、帝紀にして2625年の6月5日ですが・・・」

※この辺りで、金剛機の[封印記憶]が発動したら「自分の"姉"が戦で死んだ」ことを教えていいでしょう。これは、ニ幕の最後から、三幕の途中までにやっておきたい重要なイベントです。

三幕の予告

  この村の真実を知ったとき、もう一つの真実を知ることになる。
  「どんなに強くても、守ることが出来なかったら意味が無いって・・・」
  水葉の言葉が意味したこと、それは・・・

  次幕「既視感」。

[二幕の幕間]
[1][業]の上昇――今まで消費した[気合]を[業]に追加します。また、珠・カラクリ・蟲・装備の入手・技能の取得/上昇など[気合]の消費を必要とする作業ができます。
[2]諸行無常フェイズ――[因縁]の新規取得、昇華、段階の変更を行ないます。
[3][因縁ロール]――できるだけ[合気チット]を[気合]に変換するよう奨めて下さい。
[4]プレイヤーやGMと相談――軽い雑談などを交えて、他のプレイヤーがこのシナリオにどのようなイメージを抱いているか聞き出しましょう。
[5]休憩――十分間ぐらい。

 ※この幕間でPL達に五行に聞きたいことがあったら。考えをまとめといてと言っておきます。また、幕が変わっても時間は動いておらず、夜を続けるとも言ってください。

三幕『既視感』

○第一場

 五行は自分が流水の人間だと知られると、はじめは惚けるがあっさり自白。初めにPCたちと争う気はないと誓う。
自分は、3年前に暴走し出奔した金剛機<水神>を探しに来た。最近この辺りに出没すると聞いたので、護衛と共にやってきた。金剛機の重要性も説明しましょう。

☆五行の話・・・他のPCが何もしない場合、五行は以下の話を傀儡と機人に話します。烈火の組が聞きに来たら全部話して下さい。
「そうそう、この村が烈火と流水の戦で、百年前に無くなっているのは知っていますか?」
「村が無くなった日は(戦の合った日は)正神元年の6月6日・・・丁度明日です。もし歴史通りなら昼頃には兵が押し寄せてくるでしょう。」
「まぁ、私達はその時代の人間ではありませんから、明日の戦が終われば元の世に戻れるでしょうが・・・」
「この現象は、話に聞いた霊石の力でしょう。村人の誰かがそれを使っているのではないですかね?」

※五行は、1番なにもしたくなさそうなPLに「おや? あなたは何もしないのですか? 皆が皆、一生懸命に生きようとしているのに」と挑発しましょう。もちろん、そのPCに戦争回避への協力をさせないのが目的です。

○ 第二場・・・最後の選択です。

 この後、PCがどう動こうが昼頃には戦が始まります。まずは北側から流水の国の兵士が押し寄せてきます。その後、時を置いて、村の南側から烈火の国の兵士が村に入ってきます。村の中で乱戦となり、村は廃墟と化します。

※ PC達は以下の状況になるでしょう。 ☆水葉に明日村が戦場になることを告げ、対策を練る。水葉は1人でも戦おうとするが、それに呼応するPCがいた場合、涙を流して「ありがとう・・・」と感激する。

☆水葉に問うと「そう、霊石は私が持っています。どうするつもりですか?」
「私は守りたいんです。この村を・・・」
「明日、流水と烈火の兵が押し寄せてきます。私は1人でも戦う! 今度こそこの村を守ってみせる!!」
もし、PCが零石を壊そうとしたら、水葉はそれをさせまいと対峙します。

「その石は使用者の私が死なない限り壊れません」水葉との戦闘です。(水葉は死亡に入れてでも戦いま
す。)水葉がそうしてPCに殺された場合、映画を見ているように、戦で村が滅びる場面を見ます。そして、最後に炎の叫びを聞きます。

○ 第三場・・戦場

 戦が始まる前、もしPCが村人を逃しても、村人の3分の1は残ります。疑い、病気、訳は人それぞれです。そして炎は、姉に内緒で隠れており逃げません。もっともPCには見つかります。できれば戦をPC達と共に戦うことが出来れば最高でしょう。PCが村を出ようとすると霧に包まれ気を失います。気が付くと戦は乱戦が始まっています。

戦が始まると、水葉は前線に出て戦います。しかし、数には勝てず、村は蹂躙されてしまいます。

廃墟と化した村で、修羅となり死を覚悟して戦った水葉が(背には何本もの矢が刺さったままです)、悔しげに刀を取り落とします。「また、守れなかった」膝を折り倒れる水葉。彼女はもう置きあがりません。廃墟となった家屋が音を立てると共に、そこに1人の少年が立ちすくんでいます。少年は動かなくなった水葉を見て叫びます。「なんで戦なんてモノあるんだ! 戦人なんて・・戦人なんて・・全てこの世からいなくなればいいんだっ!!!!!」

叫び声と共に、PC達の視界がホワイトアウトしていきます。

※ 最終分岐点・・・この戦の判断で、エンディングが決まってきます。
[1]PCが全員で村を守る・・・
      村は助かります。水葉は死にますが、最後の台詞は
      「強いだけでは守れなかった。みんながいたから・・・ありがとう。」

[2]霊石を持っていた水葉を斬る・・・
      水葉が死ぬと同時にPC全員は夢を見ているような状態になります。
      その状態のまま、村が滅んでいくのを見ます。炎の叫びと共に視界がホワイトアウト。

[3]それ以外・・・
      何もしない。だれか1人でも村を守るのに協力しなかった。など、上記の以外の行動を取ったとき、
     戦で村は滅び、水葉は死にます。

四幕の予告

  折れた刀を両手に持って、今一度彼女は立ち塞がる。
  変わることの無い過去、忘れえぬ思い出。
  前に進まぬ人間に、救いの道は無いのだろうか?

  次幕「過去との決着」。

[三幕の幕間]
[1][業]の上昇――今まで消費した[気合]を[業]に追加します。また、珠・カラクリ・蟲・装備の入手・技能の取得/上昇など[気合]の消費を必要とする作業ができます。
[2]諸行無常フェイズ――[因縁]の新規取得、昇華、段階の変更を行ないます。
[3][因縁ロール]――できるだけ[合気チット]を[気合]に変換するよう奨めて下さい。
[4]プレイヤーやGMと相談――軽い雑談などを交えて、他のプレイヤーがこのシナリオにどのようなイメージを抱いているか聞き出しましょう。
[5]休憩――十分間ぐらい。

四幕『過去との決着』

○第一場(サムライ、金剛機)

 気がついた時、君達の周りには霧が立ち込めている。やがてその霧が薄れて、周囲の状況が見えてくる。
少し離れた所に、光を放つ、拳大の石が見えます。あれがきっと霊石でしょう。とここで声が聞こえてきます。

「コリズニ、マタヤッテ来タカノカ! 侍達メ!!」と、同時に君達と霊石の間に、漆黒の体を持った影が・・・
流水の国の金剛機<水神>が立ちふさがる。その装甲は所々剥がれ落ち、無残としか言いようの無い姿です。

 水神は「村ヲ荒ラス戦人ヨ。今スグコノ村カラ出テ行ケ!」金剛機は両手に二本の太刀持ち、それを隙のない構えで君達に向けます。二振りの太刀はすでに両方とも折れてしまっています。(最悪、ここでどちらかに、気がついてもらいましょう。その構えを見た君は・・とか言って)戦闘が始まる直前に場を閉じます。

○第ニ場(戦闘用傀儡、機人)

 気がつけば周囲は霧に覆われていた。そして、2人が立ち上がると、すぐそばに五行がいることが気がつく。話しかけてくる五行。「そういえば知っていたか? 烈火の国の○○は、その昔、戦場で恐れられた炎という剣豪の魂を封じてあるらしい。もし、それがあの炎なら、兄弟同士の戦いになるなぁ」

「過去に縛られ、今を生きれぬもの、それを何と言うか知っているか?」「しかし、修羅とは愚かなモノだな。見ただろう? 命をかけ修羅道に落ちようとも戦いつづけた少女を。」「ふっ、この世に命を賭けてまですることなど、何もないと言うのに・・・そうだろう? ○○(傀儡の名)よ」「どうでもいいことだ。さぁ、今、烈火の国の金剛機と、水神が戦っている。私達はその戦いが済んだら、目的を果たそうじゃないか。しかし、都合がいい! 水神と○○。2つの明鏡を手にいれられるとはな!」(うまく戦うように誘導しましょう)

○第三場

 両方同時に戦闘へ、五行は≪爆破≫の式を早打ちすると、土煙が立つ内に≪戦闘≫と≪身代わり≫を使って逃げます。

水神=修羅の水葉は何を言っても聞き入れません。村が無くなっていることも理解しています。しかし頑なに村を守り、戦人を憎みつづけます。修羅を解放させるにはどうするでしょうか? もし最終分岐点で@の場合のみPCの語り具合により水神を成仏させることが出来ます。またAの場合、霊石は砕けています。ABの場合水神を説得することは出来ません。

○第四場

 両方の戦闘が終ったら、逃げていた五行が明鏡を回収に来ます。サムライか金剛機が残っていたら、不意打ちで≪爆破≫の式を沢山打ちましょう。そこで機人と傀儡、どちらか一方に、気合を使って登場できることを言いましょう。気持ちよく五行は殺されましょう!

○エピローグ

 最後に生き残ったプレイヤーにこれからどうするかを聞きましょう。これで今回のシナリオは終了です。
 お疲れ様でした。

[カーテンコール〜後始末〜]

[1][裁定者]ボーナスの授与――それぞれのプレイヤーに[裁定者]をやった数だけ(チェック数だけ)[合気チット]を渡しましょう。
[2][業]の上昇――今まで消費した[気合]を[業]に追加します。また、珠・カラクリ・蟲・装備の入手・技能の取得/上昇など[気合]の消費を必要とする作業ができます。
[3]諸行無常フェイズ――[因縁]の新規取得、昇華、段階の変更を行ないます。
[4][因縁ロール]――できるだけ[合気チット]を[気合]に変換するよう奨めて下さい。セッション終了と共に[気合]も[合気チット]も消滅します。
[5][気合の使用]――技能や能力値の上昇などが出来ます。詳しくはp227を参照して下さい。
[6]後片付け――ごみの清掃はみんなでやりましょう。
[7]感想戦――今回のセッションについての感想をセッションに参加したメンバーでディスカッションしましょう。


最後に裏話
 3年前の休戦条約とは烈火の国は農作物の不作、国内が安定していなかった為であり、流水の国は戦略兵器金剛機<水神>の暴走・出奔である。朝練を見る五行、何が興味深いのか、それは水葉(水神の生前)を見ているからです。五行はいつ村の謎に確信を得たのか?
祠は過去の戦で壊され、現実世界では直っていません。確信したのは村を出ようとして気絶してからです。

水葉はどこまで知っていたのか?
霊石のことも、戦のことも全て知っています。だからこそ、戦のときPCが手伝うと言うと涙を流して喜ぶのです。村長家だけ違うのは、零石の力で村を再現した時、水神は自分の家族しか覚えていませんでした。そこで残りは、その時の村人(全て水神が殺した)の魂で代理にしたのです。村人が霊石を知らないのは、水神の都合が良い様に記憶を書き換えられている為です。水神は暴走した後、流水の兵士を斬りながら、やがて故郷の村に付きました。そこで、霊石が金剛機の心珠に反応し、エネルギーをそこから得ることで、過去の風谷村を再現しました。旅人が帰ってこないのは、水神が殺している為です。

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